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<あけましておめでとうパーティノベル・2005>


Sweet Home

□ 新年・静かな雪の朝
大晦日から元旦にかけて降った雪で、街は真っ白だった。
正月2日目。
海原みなもは自宅で1人、なんとなく落ち着かなかった。

「どうしたの、みなも? お雑煮、もう食べないの?」

珍しく家に居る母のみたまはそう言ったが、みたまが作った雑煮は微妙に味が足りない気がした。
それでも、みなもの隣で同じ雑煮を食べている父は文句1つ言わない。
それどころか『美味しいよ』とにっこり笑って言う姿は、まさに愛の賜物。
実の父ながら、みなもはその愛の深さに感心した。

「・・・雪、降ったから雪ダルマ作ろうかと思って」

みなもはそう言うと、ご馳走様と言って庭に出た。
朝の光の中でキラキラと舞う雪が、寒いながらもとても気分を落ち着かせてくれる。
みなもは手袋をはめた手で小さな雪だるまを作り始めた。

「あの子、寂しいのかしら?」
みたまがそう呟いた。
窓の外で一生懸命雪だるまを作る娘は、どことなく寂しそうで誰かを待っているようにも見える。
「みそのやみあおと一緒に年を越せなかったから?」
大晦日、みあおは友達の家にカウントダウンパーティーへ、みそのは御方の所へとそれぞれ出掛けて行ってしまった。
それは、2人が意図して親子水入らずになるように仕向けたのかはわからない。
だがみたまは、何か遠慮みたいなものがあるような気がしていた。

「でーきた! これがお母さんで、こっちがお父さん。それでこれがあたしで・・・」
ちいさな雪だるまを並べ、みなもはふふっと笑った。
少しずつではあるが、微妙に大きさを違えて作った雪だるま5つ。
一つ一つを指差して、みなもはそこで言葉を切った。
だが、その言葉の続きが後ろから聞こえてきた。
「こっちはみあおなの?」
聞きなれた声と、黒く長い髪が風になびいて視界に入った。
「ただいま、みなも」

いつの間にか、みなもの後ろにみそのとみあおが立っていた。

「ねぇねぇ、みなもお姉ちゃん。これがみあおで〜、これがみそのお姉様だよね?」
ニコニコと笑うみあおに、みなもは放心していた。
「まぁ、みなも。とても可愛く作ってくれたのね」
みそのはそう言って、小さな雪だるまを手に持った。
「あれ? なんで・・・? どうしてみあおやお姉様が・・・?」
そう呟くと、みなもはボロボロと泣き出した。
「どうしたの!? お姉ちゃん! まさか、みあおたちが帰ってきたのがそんなに嫌だったの!?」
「違う・・・違うんです。帰って来てくれて嬉しい・・・」
泣き出したみなもがそれでも笑顔で「おかえりなさい」と言ったので、みあおもみそのもにっこりと笑ってみなもを抱きしめたのだった・・・。


□ 晴れ姿
「あら、みそのもみあおもお帰りなさい。うふふ。よかった。ダンナ様があなたたち用に用意していたものが役に立ちそうだわ」
2人を見たみたまはそう言うと、るんるんと奥の間へと何かを取りに行った。
戻ってきたみたまの腕には、綺麗な刺繍の施された振袖が4着収まっていた。

「これを着て、皆で羽根突きしましょう」

そう言った1時間後、親子4人は振袖を着ていた。
みそのはいつもでは考えられないほど鮮やかな赤い振袖。
みなもはしっとりとした紫と青のグラデーション。
みあおはピンク地に赤と白の花が映える振袖。
そして、みたまは黒地にピンクの桜が咲き乱れた振袖を着ていた。
「羽根突きをするのに振袖を着る必要、あるんですか?」
そう聞いたみなもに、みたまが見惚れるほど美しい笑顔で答えた。

「だって、最愛の娘の晴れ姿を一時でも長く見ていたいもの」

そうして、みなもたち3姉妹とその母は父が見守る中、羽根突きをすることとなったのだった。
「羽根突き・・・なんだか新しそうな遊びですわね」
みそのが嬉しそうに笑った。


□ 羽根突き大会 in 海原家
「ルールは簡単。思いっきり羽根に思いのたけをぶつけるのみ! 勝った人は負けた人に命令できる特典付き♪」
みあおがそういってメラメラと闘志を燃やす。
「はい、1枚ずつ羽子板持ってね。うふふ。あなたたちとこんな風に遊べる機会がくるなんて思わなかったわ」
くるくると器用に振袖の袖を紐でくくると、みたまはそういって軽いウォーミングアップをした。

「お姉様、あの・・・よろしくお願いします」

仰々しくお辞儀をし、みなもはみそのと向き合った。
みなも 対 みその である。
「い、行きます!」
コン! っと羽子板に羽根を突き、みなもは優しくみそのへと羽根を送り出す。。
そして、みそのの羽子板がその羽根を突き返そうと動く・・・が。

・・・すか・・・

みそのの羽子板は、見事にみなもの打った羽根を打ち返すことなく空を切った。
「みそのお姉様の負け〜!」
みあおがピョンピョンとはしゃぎながら、落ちた羽根を拾ったみそのに駆け寄った。
「・・・とても難しいのですわね」
「ちゃんと羽根を見て打たなきゃダメよ? みその」
あっさりと負けてしまったみそのにみたまがそう言ったが、みそのはよくわからないような顔をしている。
「じゃあ次は〜、みあおとみなもお姉ちゃんね♪ まっけないぞーー!」
振袖の袖を腕まくりし、みあおはぶんぶんと羽子板を振り回した。
「みあおもみなもも、頑張って!」
みたまの応援にみなももみあおも笑顔で答える。
「ぜーったい勝つもんね☆」
「頑張ります!」

2回戦、みなも 対 みあお。サーブ権はみあお。
「必殺 『おちょうふじん』って誰?サーブ!!」
勢いよく弾かれ、みあおから打ち出された羽根はみなもに襲い掛かる。
しかし、みなもはそれを運良く羽子板に当て、みあおへと弾き返した。
「むぅ。意外と頑張ってる。それなら、これでどうだ!」
スコーンッとまたしても大きく羽子板を振り、勢いよく羽根を打ち返した。
「えい!」
その勢いを保ったまま、みなもは大きく羽子板を振った。
そして、羽根はみあおの頭上よりもさらに高いところを飛んで、地上へと落ちた。
「ずるーい! みあおの背じゃあんな高いところ取れないモン!」
ブーブーと文句を言うみあおに、みたまは言った。
「でも、取れなかったんですもの。みあおの負けよ」
優しく諭したみたまに、みあおは不満げな顔をしたものの「うん」と頷いた。

「それじゃ、最終戦は私とみなもね」
ふふっと笑ったその瞳の奥に、キラリと光る闘争本能。
「よ、よろしくお願いします・・・」
その母の瞳のきらめきに気付いたのか、みなもは少し緊張していた。
最終戦・ みなも 対 みたま。サーブ権はみなも。

羽根を持ったみなもは、考えた。
みたまから帰ってきた羽根を、みなもの力で打ち返すことが出来るのだろうか?
いや、出来そうにない。
ならば・・・。

みなもは身構えて、羽根を強く打ち出した。
勝機はこの1回のサーブ! そう思ったのだ。
「あ!?」
羽根は低空でみたまの足元スレスレに落ちて行った。
見る人が見ればアウト・・・しかし、そこは大人の余裕か、はたまた母の無限の愛か。
「うふふ、負けちゃった」
みたまはそう言うと、袖をくくっていた紐を解いた。
「さぁ、みなもは何をして欲しいの?」

みあおが、みそのが、みたまが、みなもの顔をじっと見つめた。
その顔を見てみなもは、意を決した。
そして、父に聞こえない様に小さな声でこう言った。

「あの、それじゃ・・・ちょっと手伝って欲しいことが・・・」


□ レッツクッキング!
真夜中、父が寝静まったのを見計らい、4人は台所へと集まった。
「それで、何を手伝ったらいいのかしら?」
みたまがそう言うと、みなもは1枚の紙を出して見せた。

「この図面の通りにお菓子を作りたいんです」

「それを、みあおたちが作ればいいの?」
みあおがキョトンとした顔をした。
「ううん。作って欲しいんじゃなくて、手伝って欲しいんです」
「でも、わたくし、お菓子を作ったことなどありませんけれど・・・」
みそのがそういうと、みなもはふるふると横に首を振った。
「作り方は全部教えますから、手伝ってください。お姉様」
「そうよ。私たちは負けちゃったんですもの、みなもに従わなくてはね」
微笑んでそう言ったみたまに、みそのは「わかりました」とエプロンを着た。
みあおも、みたまも、みなももエプロンを着て、お菓子作りは始まった。

「お姉様とお母さんは生クリームをお願いします。みあおはスポンジを作るのを手伝ってくれる?」
いつものみなもとは一味違う、テキパキとした指示に素直に従う3人。
「いつも卵白を泡立てるのが上手くいかなくて・・・」
「みあおにお任せ! このみあお特製の泡だて器を使えば一発で上手くいくよ☆」
「生クリームは、お砂糖入れるのかしら?」
「・・・お母様、このままではあまり美味しくありません」
女4人が寄ってたかってワイワイと台所で作業をすれば、どれだけ静かな夜でも騒がしくなる。
お菓子の見取り図は、クッキーやグミ、チョコレートにゼリーなど色々なものが組み込まれていた。
みなももみそのも、みたまもみあおもそれらを一生懸命に作りながら色々な話に花を咲かせる。
いつも留守がちな母に聞いてもらいたいことがいっぱいあった。
娘たちは、それらを尽きることなくみたまに話した。

段々と窓の外が白んでくるのが見えた。
「みあお、寝ちゃったわね」
みたまがそう呟いて、テーブルで突っ伏して寝てしまったみあおにブランケットを掛けた。
「しょうがありませんわ。みあおはまだまだ育ち盛りですから」
そう言ったみそのの顔にはチョコレートや生クリームがところどころ引っ付いている。
「あと少しですから、お母さんもお姉様もお休みになってください。起きる頃には完成していると思います」
お菓子の図面は、残すところ冷やしておいたゼリーなどを飾り付けるのみに見えた。
「そう? じゃあ、少し休ませてもらおうかしら」
みたまがエプロンを脱ぐと、寝室へと戻っていった。
「みなも、あまり無理してはダメですわよ?」
いつもは疲れをあまり感じさせないみそのの表情に、うっすらと疲労が見えた。

みそのを見送ると、みなもはお菓子の仕上げにかかった・・・。


□ Sweet Home
みあおが目覚めたのは、窓から入る日の光があまりにもまぶしかったせいだった。
「うう〜・・。もう朝?」
ふわぁ〜っと大きな口であくびをして、みあおは渋々目を開けた。
一体いつ寝てしまったのかよくわからないが、確か昨夜はお菓子作りの手伝いをしていたはずだった。
「お姉様? お母さん? お姉ちゃん?」
重いまぶたを必死で開けつつ、みあおはキョロキョロと辺りを見回した。
同じテーブルで、みなもがやはり突っ伏して眠っていた。
そして、そのテーブルには・・・

「お母さん! お姉様! お父さん!」

みなもを起こさないように、みあおはそれぞれを起こしに走った。
「なぁに? みあお」
「みあおは起きたばかりなのに、とても元気ですのね」
そう微笑む母と姉をみあおはみなもの眠る台所へと引っ張って行った。
「これ!」
みあおがそれを指差した。
お菓子が完成していた。

それはお菓子の家で、その前には小さなマジパンで作った5つの人形が立っていた。
そして、みなもの字で『Sweet Home』と生クリームを使って書かれていた。

「すごいね〜! お父さん。これみあおたちも手伝ったんだよ〜!」
みあおが無邪気にはしゃいでそう言った。
「みなもったら、あなたたちが帰ってきたの本当に嬉しかったのね」
そう呟いたみたまの言葉に、みそのは目を瞬かせた。

「わからない? SweetHomeってね『愛情あふれる家庭』という意味なの。みなもにとって、あなたやみあおも含めて家族なのよ。変な遠慮なんかいらないってこと」

そういって、みたまはシーッとみあおに言った。
「みなもを少し休ませてあげましょ。食べるのはそれから、ね?」
みたまとみあおは父と共に今へと静かに移動した。
甘い香が漂うキッチンで、みそのはみなもの頭を撫でた。

「これからも、ずっと可愛い妹でいてちょうだいね・・・」

すやすやと眠るみなもは、きっといい夢を見ていたのだろう。
みそのは、そう思った。

みなもの顔は、いつものように笑顔だったから・・・。


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┏┫■■■■■■■■■登場人物表■■■■■■■■■┣┓
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┗━┛★あけましておめでとうPCパーティノベル★┗━┛

1252 / 海原みなも / 女 / 13 / 中学生

1388 / 海原みその / 女 / 13 / 深淵の巫女

1415 / 海原みあお / 女 / 13 / 小学生

1685 / 海原みたま / 女 / 22 / 奥さん 兼 主婦 兼 傭兵


□■         ライター通信          ■□
海原みなも様・海原みその様・海原みあお様・海原みたま様

あけましておめでとうございます。
・・・だいぶ遅くなってしまいまして申し訳ありません。
この度はご家族様のお正月をご依頼いただきましてありがとうございました。
みたま様、初めましてです。お嬢様方にはいつもお世話になっております。
いつもは振り回される役の多いみなも様に、今回皆様を振り回していただこうかとこのような形にさせていただきました。
みその様が普通の女の子らしいことをするのも、意外かなと・・・。
お気に召していただければ幸いです。
それでは、今年一年がPC様PL様にとって、よい1年でありますように。
とーいでした。