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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>
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Opening>>>
曇り空が広がるある日。
アンティークショップ・レンの店主、碧摩 蓮(へきま れん)は表情無く店内に1人立っていた。
「…」
長めのパイプをふかしながら、軽く右足に重心をかけると
深くスリットの入ったチャイナドレスからスラリとした足が伸びる。
ふぅ〜
白い煙を吐く。
それは連の頭ほどまで広がりながら上ると、靄をかけるように消えていく。
「まいったね」
そう言いながらも慌てた様子などなく、ただ荒らされた店内に目を向けていた。
目に入る範囲に視線を向けると、器用に片眉を上げる。
「本当に参ったねぇ。あれがないじゃないか」
そしてもう一度パイプを銜えると、さっきよりも大きく煙を吐いた。
一歩後ろに下がって寄りかかったカウンター。
蓮は腕組みをして窓ガラスから見える曇り空を見据えた。
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「ハロウィンですか。懐かしいですねぇ」
女は東京へと足を踏み入れた。
曇った空に湿った風はそんな女にピッタリとまとわりつく。
白い肌は黒い髪に映え、赤い瞳はまっすぐと街を見つめる。
時期は丁度ハロウィンらしく、街は怪しく飾られていた。
女の名前は狂闇 楓(きょうやみ かえで)
真祖と死徒のハーフであり、自らを死祖と呼んでいる。
見た目は若いが、実は長い年月を一人で生きてきた混血の吸血鬼だ。
ニンマリと笑った口元は血のように赤い。
「何だか気持ちの悪い風ですね」
自分にまとわりつく風を手で払いのけながら楓は足を進めた。
街はお祭り一色。
店の軒下にはランタン用に彫られたカボチャが並べられ
魔女やミイラ男、狼男などの仮装をした子供や大人で溢れ返っていた。
そんな人ごみを掻き分けながら楓は進んでいく。
どこに行くわけでもなく ただ進んで行く。
賑やかな町並みを歩きながら、楓は嬉しそうにはしゃぐ子供たちを見て
フと穏やかな笑みを灯した。
幸せなものは好きだ。
自分の幸せよりも、周りが幸せであることを望む。
楓は常にそう言う考えの下に自分を置いてきた。
「…?」
気づくと今まで歩いていた大通りを抜け路地に入り込んでいる事に気づく。
後ろを振り返ると狭い道の先で右から左へ、左から右へと多くの人が行き交っていた。
いつの間に…
引き返そうと一歩後ろに下がるが、どうしてか道の先が気になる。
「…」
楓はそのまま進み始めた。
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カラン カラン…
銅製の鐘がドアの開閉に伴って大きく揺れ、鈍い音を発する。
「…」
楓は背中でドアをしめると中をぐるりと一週見渡した。
「…何か用かい?」
声をかけられ視線を落とすと、カウンターによりかかり右手で長いパイプを持った
女が自分を見ている。
「いえ。ただ…」
何故ココに来たのだろうか…。
言葉に詰まった楓を見て女は寄り掛かっていた体を起こし、一歩二歩と楓に近づいた。
「ふーん。あんた、呼ばれたね」
「呼ばれた?」
「待ってたよ」
楓の質問になど答える様子もなく、女はクルリと向きを変えた。
「あたしは碧摩蓮。このアンティークショップ・レンの店主さ」
「…アンティークショップ…ですか」
楓はもう一度店内を見渡した。
「大掃除中ですか?」
「……そう見えるかい?」
ガサガサと何かをあさっていた蓮は振り返り、軽く煙を吐いた。
「えぇ。随分な様子ですし」
「…荒らしさ。ようは、泥棒だね」
「…」
「うちの店で扱ってるものは特別でね、どれも曰く付きの物ばかりだ。
中にはとんでもない値がつくものもある。
…扱い方を間違うととんでもない事になるものもね」
蓮はそこまで喋ると一枚の写真を楓に差しだした。
「あんたに頼みたい」
蓮の目を見た楓は、答えなど出さず差し出された写真を手に取る。
写っているのは銀の装飾をかたどった手鏡。
写真からでもそれがすばらしい物だと推測できる。
「きれいだろ?だが、それはダメだ」
「ダメ?」
短く聞き返すと蓮は小さく頷き、そしてパイプを口に運ぶ。
軽く息を吸うと筒の中で草が赤くもえた。
蓮は楓の顔にかからないよう微かに横を向き煙を吐いた。
「その鏡には数百年前に魔女が封印されたんだ。それからはその封印が解けないよう
色々方法で守られてきた。その封印を継続するのがハロウィン…つまり今日だったんだけどね」
蓮は楓の目を見る。
「今朝盗まれてしまったんだ。で、魔女が蘇ってしまった…と言うわけ」
「…それで」
「ん?」
「この街に足を踏み入れると、気持ちの悪い風に包まれましたから」
蓮は「あぁ」と含み笑いを浮かべる。
「あんたを警戒してるんだろうよ」
しばらくの間二人の周りを沈黙が包んだ。
蓮がパイプを口から離し、そしてふっと笑みを漏らす。
「あんたに、依頼して良いかい?」
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どこがいいだろう。
楓は蓮の店で地図を見せてもらい、思う存分精霊たちを放せる場所を探した。
「この公園は今は人がほとんどいないと思うけどね」
地図にひときわ大きくスペースを取られている公園を指して蓮が呟く。
蓮の店を出て、賑やかな繁華街を抜けると目の前に生い茂った木々が見えた。
あそこ。
楓の口元が若干緩まる。
公園へ足を踏み入れると自分にまとわりつく空気の感触が変わった。
来た。
緩んだ口元はニヤリと笑う。
楓はスーっと静かに息を吸うと澄んだ大きな声を出した。
「魔女さん!今からあなたに喧嘩を売ります〜!!」
楓の長い黒髪が足元から吹き上がる風によってふわりと上に上がる。
「精霊さんたち。お掃除をお願いします♪」
楓は精霊たちを召喚した。
「さぁ、この公園にいらっしゃい。私に勝てば貴方は一生自由の身です」
楓の言葉にわらわらと現れたのは魔女ではなく死者。
楓の目が冷たく光る。
そして、もう一度ニヤリと笑った。
「…Go」
楓の唇がそう形どられる。
楓の回りに召喚されていた多数の精霊のうち半数がその場から消えた。
「残りは私の護衛です」
そう言って目の前のベンチに座る。
軽く足を組み、取り出したのは輸血パック。
ストローをさし、口へと運んだ。
チュゥゥゥゥゥッ…
「あぁ、おいしい」
そしてふふふん。と笑う。
「これを飲み終わる頃には、あなたはココに来ざる得なくなりますよ」
言い終わり、また口へとパックを持って行った。
最後の一滴を吸い終えた時、明らかに今までと違う空気が楓を取り巻いた。
それは生ぬるいものではなく、冷たく冷え切ったもの。
楓は組んでいた足を下ろしゆっくりと立ち上がる。
「来ましたね」
そしてニッコリと笑った。
目の前には魔女がいた。
魔女と言ってもおばあさんではなく、まだまだ若い。
自分を封印しに来た楓に対して明らかに敵意をむき出しにしていた。
「初めまして。狂闇 楓ともうします。以後、お見知りおきを」
「…私を、またあの鏡に封ずる気か?」
「さぁ。それは貴方次第ですから」
楓は飲み終えた輸血パックを丁寧にたたみながら、魔女の顔を見る。
魔女は怒りと焦りで震えていた。
クス。
「…戦いと和解、どちらが良いですか?」
キリリ…と歯を食いしばっていた魔女が両手に持っていた鍵を楓へと向けた。
「和解?そんなもの必要ない!!!」
鍵の先端が強く光り、それは楓へと向かって放出された。
「シールド!」
光は楓の召喚した精霊によって吸収された。
「!?」
「精霊さん、お願いします」
笑顔でにっこりと楓が微笑む。
楓の影から二又の狼が飛び出し、魔女へと飛びつく。
「うわっ!!!!」
魔女を蹴り上げその後ろに着地した狼の口には魔女の鍵が銜えられていた。
「っ?!!!!」
「壊してください」
狼は楓の言葉に両眼を金色に輝かせた。
銜えていた鍵がドロリと溶ける。
楓が一歩近づくと魔女は森の方へと一歩下がる。
「…クス。自分からそちらに行ってくれるとは、好都合です」
「なに…?」
「貴方を拘束します」
魔女は背後から植物のツタによってひねあげられた。
「!?????」
口をふさがれ、身動きが取れない状態で宙に浮く。
浮き上がった魔女の衣装から銀色に装飾された鏡が落ちた。
それを手に取り、楓は魔女を見上げる。
「依頼完了、ですね」
「…んんんん!!!」
「もうすぐ警察が来ます。鍵もない貴方を鏡に封じるのは流石に可愛そうですから」
楓は鏡を大事そうにハンカチにくるむとそれをしまった。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【4973/狂闇 楓/女性/571歳/暗殺者(混血の吸血鬼)】
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■ ライター通信 ■
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はじめまして。創始です。
この度はご指名いただきありがとうございました。
初めてだったので四苦八苦しながらの製作になりましたが
どうだったでしょうか?イメージを壊してなければ良いなぁと
汗があふれ出そうです…。
もし気に入っていただけたらこれに懲りずまた声をかけてください。
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