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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


古よりの因縁【後編】


□オープニング

 
 草間武彦は、資料に目を通すと考えをめぐらせた。
 霊宝鏡月の事、冥衛聖籠の事・・朝倉セイの事。
 そして・・。

 『月夢村で変貌してしまった3千人の霊宝鏡月の子孫達・・。』

 明日の日没後には、その命が絶たれる・・。
 時間は無い・・。
 武彦は考えをめぐらす・・分かっている範囲内で、考えられる全ての仮定を・・。
 森の中で『殺してやるよ』と言った朝倉セイ。
 森の中で『殺して下さい』と言った冥衛聖籠。
 それが示す一つの仮定・・。
 “朝倉セイと冥衛聖籠は魂と身体が入れ替わっているのではないか”
 つまり・・朝倉セイの身体には冥衛聖籠の魂が、冥衛聖籠の身体には朝倉セイの魂が・・。
 そして、きっと冥衛聖籠の方が強い。
 日没後には朝倉セイと言う人物の全てが消え、古の時に生を絶たれた冥衛聖籠がこの世に降り立つ。
 古の時より受けた“アヤメの神殺しと言う名の濡れ衣”
 霊宝鏡月を憎んでいる心を持って・・。
 分からないのは、霊宝鏡月の真意。何故、冥衛聖籠を死に至らしめたのか・・。
 謎が・・多すぎる・・。
 武彦は盛大なため息をつくと、ソファーに腰を下ろした。
 時刻は夜中の11時過ぎ・・。
 武彦は集まった面々の顔を見ると、呟いた。
 「明日、事実を確かめに行く・・。朝一で、ココに来てくれ。」
 そう言った後で、武彦はポツリと呟いた。
 「3千人はもちろんの事、朝倉セイも・・救える道は無いか・・。」 



『 様々な思いが蠢き、交錯する。
  人の心と言う物はいかなる場合においても一定する事はない。
  今宵の殺意が明朝の悲しみと同じではないように。
  明日の希望が今宵の絶望ではないように。
  日々変化する時にもまれ、のまれ、消えていく思い、生を受ける思い。
  決して通じ合う事の出来ぬ思いも稀に生まれ、一方通行の思いだけが世界に取り残される。
  相反する感情は裏と表ぐらいに近く遠い。
  愛は憎しみに変わり、憎しみはいずれ愛へと変わる。
  感情と言う一種の波にもまれながら、行き続ける不幸を、嘆く事すら叶わない・・・。 
  様々な思いが蠢き、交錯する。
  愛の成れの果ては憎しみ、憎しみの成れの果ては愛。
  裏と表、愛と憎しみ、現世と来世、古の時と、現世。
  古より続き、現世へ流れるは、来世への愛と憎しみ・・・。 』


■夢幻館

 東京下町夢幻館。
 現実と夢、夢と現実、そして現実と現実が交錯する館。
 望んだ者のみが見つける事の出来る、小さいようで大きな館・・・。
 その前に、草間 武彦を始めとする総勢6人が立ち並んだ。
 「・・ここが・・夢幻館ね・・。」
 シュライン エマが聳え立つ夢幻館を見上げながら小さく声を漏らす。
 「とても面白いものが“みえ”ますわ・・。」
 その隣で、海原 みそのが妖しげに微笑みながらそう漏らす。
 それほど目立つような館ではない。何処にでもあるような少し大きめの館だ。
 それなのに、何故か存在感だけが大きい。
 「威圧感があるな・・。」
 蒼王 海浬がため息交じりにそう呟いた。
 「確かにね、いつも思うけど・・異様な雰囲気よね。」
 火宮 翔子が頷く。
 その口調から、何度かこの館に来たことがあるようだった・・。
 「あぁ、でも・・。嫌な雰囲気ではねぇな。」
 幾島 壮司がふっと微笑んだ。
 確かに、異様な雰囲気だが嫌な雰囲気ではない。不思議な異様さをかもし出しているこの館は、不快感はない。
 「それじゃぁ、中に入るぞ。」
 武彦は言うか早いか、夢幻館の扉を大きく開け放った。
 少しだけ扉が軋む音が耳に障る・・。
 開いた先は綺麗な洋風のホールだった。その奥から、銀色の髪をした細身の男が小走りでやってきた。
 その瞳は青い・・。
 「おや、お客さんですか・・・って、武彦さんじゃないですか。お久しぶりですね、如何いたしましたか?」
 やけにスローテンポで話す男は、ゆっくりとした動作で武彦の後に立っていた一同を見渡すと少しだけ首をかしげた。
 「お客さんですか・・?」
 「あぁ。」
 「初めまして、俺は夢幻館の支配人をしています沖坂 奏都(おきさか かなと)と申します。」
 丁寧に頭を下げる奏都に、思わずつられて頭を下げる。
 「夢への扉を開いて欲しいんだが・・・。美麗はいるか?」
 「えぇ、美麗さんならご自分の部屋でおくつろぎですよ。さぁ、こちらへ・・・。」
 武彦の問いかけに、奏都がすっと先頭を切って夢幻館の中を歩き始めた。
 いくつかの角を曲がり、いくつもの扉の前を横切る。中は迷路のように複雑で、入り組んでいた。
 外観だけを見るとそれほど大きくない館なのに、何故か中は巨大な造りになっている・・・。
 「さぁ、ここです。」
 ふっと、奏都が1つの部屋の前で足を止めた。
 少し豪奢な装飾のついたその扉を、そっと押し開ける。
 「美麗さん、お客さんです。武彦さんと・・興信所のかたがたです。」
 「どうぞお入りくださいませ。」
 中から、凛と透明に響く声が聞こえてくる。
 不思議なまでに心地良く鼓膜を揺らす声に、この世の者ではない雰囲気を感じる・・・。
 開け放たれた扉の先、漆黒に濡れる長い髪と瞳がじっと一同を見つめる。
 その肌は悩ましいほどに白い・・・。
 「まぁ、草間様ではありませんか。さぁ、どうぞ中へお入りなさいませ。」
 「美麗・・今日は・・。」
 「承知しておりますわ。初めましてお客様方。わたくしは夢宮 美麗(ゆめみや みれい)と申します。」
 美麗はそう言うと、ゆっくりと頭を下げた。
 その動作は嫌味なほどに優雅で、その外見とあいまって美しかった。
 「夢の世界へ行きたいのですね・・?」
 一人一人と瞳をあわせながらそう問う。漆黒の瞳には不思議な色が宿り、妖しく揺れている。
 「夢の世界ってーか、霊宝鏡月が生きてた時代に行きたいんだけど・・。」
 「えぇ、ですから・・夢の世界ですわ。」
 壮司の問いかけに、美麗は微塵も表情を崩さずにそう言った。
 「夢の世界って、どう言う事なの・・?」
 「現世と言うものは、ほんの一瞬の通過点にしか過ぎません。この刹那の時のみが現世です。現世に繋がるは古。継がれるは来世。遥か古も、来世も、それ全て夢・・。」
 「つまり、霊宝鏡月様が存在なさっていた時代は、遥か古・・つまりは夢の世界と言うことですの・・?」
 「左様でございますわ。刹那の時以外は、それ全て夢。夢の中に浮かぶ孤島のみが、現実でございますわ。」
 美麗はにっこりと微笑むと、みそのに軽く頷いた。
 武彦は、小さくため息をつくと肩をすくめた。
 「美麗・・。その話は後で良い。緊急だ・・。」
 「承知いたしましたわ。さぁさ、こちらで御座います。」
 美麗はそう言うと、部屋の中にでんと構えておいてある扉の前に立ちはだかった。
 豪華な装飾の施されたその扉は、七色の輝きを放っており、不思議な威圧感を持っている。
 「夢の中は常に一定のベクトルに向かって動いております。重複する時を垣間見るために、お客様方の御心に従い夢へと導きます。」
 美麗の言葉に、壮司と翔子が軽く瞳をあわせた。
 言っている言葉の意味がいまいちよくつかめない。
 それは不自然に丁寧な、それでいて曖昧な表現で話しているからだろう・・。
 神秘を纏おうとしての故意なのか、それとも存在が神秘ゆえの必然なのか・・・。
 「行ってらっしゃいまし、古の夢へ・・。」
 美麗はそう言うと、すっと扉に手をかけた。
 重そうな音と共に扉が奥へと開け放たれる、ゆっくりと・・・。
 真っ白な光に包まれ、身体が中へと引き込まれる。その力は強大で、購う術はなかった。


□存在の意義


 白い光の力がふっと弱まり、温かな風が頬を撫ぜた。
 そっと瞳を開ける。
 そこは何も無い荒野だった。茶色く煤けた地面には草木は無い。見渡す限りの荒野だ・・。
 「ここは・・。」
 「何も無い所だな・・。何があったのか・・?」
 シュラインが辺りを見渡し、それに海浬が答える。
 「なんも無いな・・。」
 壮司も率直な感想を述べる。
 その場に、みそのと翔子の姿は無い。
 「なんだか焦げ臭いわね。」
 「血の匂いもしまするな・・・。」
 風に運ばれてくるのは、生臭い鉄の香りと生木の燃える様な匂い。ねっとりと温かい風は、肌をべたつかせる。
 「・・これは・・戦の後だな・・」
 「戦いの後・・・?」
 壮司はそう言うと、小さくした打ちした後に左眼を手で覆った。
 神の左眼・・それには一体どのぐらい酷い惨状が映っていたのだろうか?
 苦々しく歪められた表情が、全てを物語っていた。
 見渡す限り何も無い荒野に視線を落とす。それを地平の彼方まで引き伸ばす・・・。
 「あら?・・あれ・・。」
 シュラインが思わず声を上げる。
 見渡す限り地平が囲むその場所・・瞳が一点の黒い点の上で止る。
 米粒ほどにしか見えないその黒い影は、人間のようだった。
 「あれは・・。」
 「“アヤメの神”じゃねぁか・・・?」
 壮司がじっと“見る”。
 その点はゆっくりとした動きでこちらに近づいてくる。
 米粒ほどだったのが豆粒ほどになり、次第に形作られていく影は小さな女の子の曲線を現す。
 長くしなやかな黒髪と、細く白い腕、そして・・紫に妖しく光り輝く瞳・・。
 その瞳が連想させるのは、村で豹変した子孫達・・。
 精巧に作られたお人形のように愛らしいアヤメの神の頬には、どす黒い血が幾筋も張り付いていた。
 それがアヤメの神の血でない事だけは分る。
 着ている白い着物は、ほとんどが赤に染め上げられてしまっている。
 アヤメの神の視線が、どこか一点を見つめながら大きく見開かれる。その紫の瞳に、生気はほとんど感じられない。
 「お主ら、この世界の民ではないな・・?」
 直接鼓膜を揺らす声は、細かに震えていた。
 声帯を通さないそれは曖昧な響を伴いながら一定の枠を持って耳へと届く。
 確かに“誰か”を見つめてはいるが、それは3人ではない。
 「アヤメの神・・。そうか、遥か遠い来世ではそのように呼ばれておるのか。」
 そう言うと、ふっと自嘲気味に微笑んだ。
 幼い顔に浮かぶ表情は大人びている。・・いや、大人だってもう少し愛らしい表情を浮かべるだろう。
 表情が死ぬ一歩手前・・諦めを含んだ表情しか出来なくなっている時・・。
 「わらわは神ではない。人ならず者・・・。」
 瞳に手を当てる。
 紫色に輝く瞳は死んだようにしっとりと濡れている。
 「紫の瞳を持つものは凶の民。人間よりも成長の遅い、鬼の子等・・。秀でているのは殺しの術。」
 次々に発せられる言葉は、一体誰に向けられているのだろうか・・・?
 確かに誰かと会話をしているアヤメの神の前には誰もいない。
 ただ、荒野に向かって必死に語りかけている。
 「わらわ達、凶の民の時は緩やかで・・。人の10年わらわ達の1年。体術に優れ、殺める事を専門とする影の忌み民。」
 しっとりと、生暖かい紅の風が吹きぬける。
 わずかばかり枯れた土地の砂を巻き上げる・・。
 「わらわに名前は無い。ただ、アヤメと呼称されておる。それが可憐な菖蒲なのか、忌み民の殺めなのかはわらわにも分らぬ。」
 アヤメの袖から小さな刀がするりと落ち、乾いた音を立てて地面の上に寝転がる。
 その刃は赤く染まっている。まだ乾ききっていない誰かの命・・・。
 「わらわはアヤメ。ただの・・忌み民の子よ・・。」
 アヤメが小さく微笑む。
 ・・しかし、それは微笑には見えなかった。今にも泣きそうな・・・。
 グラリと視界が揺れる。
 丁度ジェットコースターを連続で乗った時のような、フワリと宙に浮く感じの不快感が全身を襲う。
 耳にはラジオのノイズのような音が響き、目の前はテレビの砂嵐のように右から左へなにかが走り抜ける。


 ふっと視界が戻った時、そこは月夢村だった。
 小さな空が告げるのは古の時より生ける小さな村。
 しかしそこは3人が知っている月夢村とは少し違っていた。もっと、時代が古い気がする・・・。
 「さっきの・・なんだったのかしら?」
 「アヤメ・・アイツ、誰に向かって話してたんだ・・?」
 シュラインと壮司が首をひねる。
 「主ら、また会ったの。」
 ザワザワと森を抜けてきた風が梢を騒がせる。
 背後から聞こえてきた声に反応して振り返る。
 寂れた家々の間にあの、荒野で見た時とまったく変わっていないアヤメの姿があった。
 黒の髪も、白の肌も、紫の瞳も変わってはいない。
 しかし・・瞳の輝きだけが違っていた。
 感情を伴った、怪しく光る無邪気な表情・・。
 その視線はまたしても3人を捕らえてはいなかった。
 「表情が・・。」
 シュラインが思わず言葉をこぼす。
 「わらわはまだ神ではないと言っておろうが。ただの、アヤメで良い。主らはなんと申す?うら若き姫君達よ。」
 「姫君達・・・って事は、女の子・・?」
 シュラインの脳裏に、あの扉を一緒に通った2人の少女の顔が蘇る。
 それは海浬も壮司も同じだった。
 今、この場にいない2人の姿・・・。
 その時ガサリと音がしてアヤメの背後から影が現れた。
 ・・・言葉を失う・・。
 「アヤメ様・・?こちらの御方々は・・?」
 狂い咲く菖蒲の花々の間を割って出てきたのは、銀の髪の毛の儚い印象を受ける男性・・。
 「聖籠、村人らの事はもう良いのか?わらわの側仕えなどせずとも・・・。」
 「村の事は、鏡月に任せてありますゆえ・・それで、こちらの御姫君方は・・。」
 高くも無く低くも無い声は、幻想的に空気を震わす。
 その瞳は、アヤメと同じ輝きを放っている。
 アヤメの言う“忌み民”の証・・・。
 「姫君達、この男は聖籠と言う。わらわの友人の一人じゃ。この姫君達はみそのと翔子と言う・・。」
 アヤメはそこで言葉を切ると、上目遣いでチラリと見やった。
 小柄なアヤメは悪戯っぽく微笑むと、そっと小さく呟いた。
 「わらわの友人らよ・・。」
 恥ずかしそうに言うアヤメの仕草は可愛らしかった。菖蒲の花のように可憐で、清楚な印象を受ける。
 「やっぱり・・・。」
 「どうやら妙な事になってるようだな。」
 「どう言う事だ?同じ扉を通ってきたのに、向こうはあっちに見えて、こっちは見えないって・・。」
 「さぁな。美麗の言葉を借りるわけじゃないが、これが“御心”ってやつなんだろう?」
 海浬はそう言うと、小さく肩をすくめた。
 「さぁ、ココで立ち話もなんだ。わらわの住む社にでも行こうぞ。」
 くいっと、村の奥のほうを指差す。
 その時空から2羽の雀がアヤメの頭上から飛んで来て、その周りをクルクルと回り始めた。
 アヤメにじゃれる様に羽ばたく姿はどこかで見たような気がした。
 ・・違う、正確には“見てはいない”。雰囲気が同じなのだ。以前に会った誰かに・・・。
 「如何した?なにか慌てておるようだが・・。風に空?」
 アヤメが2羽の雀に向かってそう呼びかけた。
 3人がすっと視線を合わせる。
 風と空。古の時より死を絶たれたアヤメの神に仕える巫女達。
 あの2人が、この雀・・?
 確かに“気”は同じようだ。
 飛び回る雀は何かを警告しているかのようだった。クルクルと、甲高い声を上げながらアヤメの周りを飛び巡る。
 突然、背に冷たいものを感じた。
 びくりと大きく肩が跳ね上がる。・・・急にわけも分らない恐怖が全身を支配し、頭の中を真っ白に染め上げる。
 「な・・なに・・・?」
 「何かが来るな・・。」
 「くそ!なんだこれ!!」
 壮司がサングラスをはずし、恐怖の源を見つめる。
 金色に輝く神の力で・・・!
 風と空が一層高く泣き叫び、狂ったようにアヤメの周囲を飛び回る。
 「みその、翔子・・?主ら、どうした・・?」
 アヤメがきょとんとした顔をで小首をかしげる。
 その少し後に立っている聖籠の表情は硬い・・。
 「アヤメ様・・・村の奥へ・・!!翔子様とみその様をお連れになって・・!!」
 聖籠が脇に刺してある長い刀を抜いた。すっと銀色の光が中を切り裂く。
 艶かしい光は、それまでに幾人者命を吸い取っている輝きがある。
 「聖籠・・?如何いたした・・?」
 「アヤメ様、お早く!!」
 聖籠はそう言うと、アヤメを村の奥へと押しやった。その手が空中で何かを掴み、それを奥に押しやる。
 「あれが・・2人なのか・・?」
 海浬が聖籠の手元を見つめながら呟く。
 すっと刀を構えて立つ聖籠姿は絵のように美しかった。このまま、大きな豪邸の客室にでも飾ってありそうなほどに。
 「アヤメ様!!聖籠!!」
 村の奥から凛と通る声が響いた。その声は切羽詰っているかのようだった。
 走り来る人物・・・黒く長い髪、聖籠と対照的ながっしりとした体つき。
 「霊宝鏡月・・・!?」
 「霊宝鏡月だって!?」
 手に持っている刀は聖籠のよりも大きく重そうだ。キラキラと七色に輝いて見える宝石が沢山ちりばめられた柄、豪華な装飾・・。
 シンプルな聖籠の刀が玩具のように見えてしまうほどにしっかりとした刀だった。
 「鏡月も、如何したのじゃ?慌ておって。村人らとの話は・・・。」
 「アヤメ様!敵です!また・・!!アイツラが!!」
 慌てふためいた様子の鏡月は、必死にアヤメの前に立ちはだかる。
 「みその様、翔子様!どうかアヤメ様を連れて・・村の奥へ!!」
 聖籠の言葉を最後まで終わらない内に、アヤメの体がついと何かに引っ張られるように動いたかと思うと、村の中に駆け出して行った。
 「どうする・・?」
 「ひとまず、後を追おう!」
 海浬がそう言い、3人はアヤメの姿を追った。
 肌で感じる強大な恐怖は、確実に近づいてきていた。
 背後から、剣が交わる音が響く。
 怒号、叫び、剣の響き、そして・・菖蒲の花が踏み荒らされる音。
 アヤメが小さく悲鳴を上げた。
 「聖籠・・・鏡月・・・!!」
 シュラインは自分の肌で感じた“絶対的な確信”を否定したかった。
 しかし・・・それを否定する事は出来なかった・・・。
 「あいつら・・あの村のヤツラの先祖だ・・・。」
 風が吹く。後方からの風だ。
 含まれる湿気に、鉄のにおいが混じる。
 壮司の呟きをかき消すのは、哀しい風・・。
 「人の子らよ・・・わらわの力を欲する、人の子らよ。鏡月と聖籠の力を欲する・・・外の子らよ。」
 うわ言のように呟く、アヤメ。
 壮司はふっとさっき“見え”た光景を思い出していた。
 禍々しいほどの欲望をむき出しにして襲ってくる、人間達。
 それは、現世で冥衛聖籠に殺されかけている人々の血筋の源。
 「どう言う事なの・・・?」
 シュラインはグルグルと回る思考についていけずに、ただ走った。
 「真実が、何時だって幸せなものとは限らないって事じゃないのか・・?」
 海浬が微塵も息を切らせずにそう言った。
 「大抵の真実は、酷い場合が多い。これも・・そのうちの一つだ。」
 言い聞かせるような言葉には、幾重にも重なった重みがあった。
 「翔子、あの先に見えるがわらわの社よ。ひとまずそこへ・・!」
 アヤメの言葉に俯きかけていた顔を上げる。
 目の前に迫る神社のような場所にアヤメは走りこんだ。
 その後に続く・・・バタリと勢いよく引き戸が閉まり、思わず床にへたり込む。
 中はかなりな広さがあるものの、かなり綺麗に片付けられていた。微かにカビのにおいがする。
 急にアヤメはが僅かに顔をしかめた。そして、ゆっくりと視線を中に彷徨わせながら言葉を紡ぎだした。
 「わらわには、殺めの力がある事は知っておるな・・?その力を、欲する者がおるのだ。世は戦の時代。血で血を洗う時代・・・。絶対的な力が必要なのじゃ。」
 みそのか・・翔子か、どちらかが何か質問をしたのだろう。
 アヤメの瞳は未だに3人を捕らえてはいない。
 「そうじゃ。わらわの力と、聖籠の力。そして・・鏡月の力。」
 「聖籠の力と、鏡月の力・・?」
 3人が瞳を交わす。
 「あやつらも忌み民の子らよ。紫に染まった瞳が、たいそう艶だったであろう?」
 アヤメはそう言うと、自分の瞳をすっと隠した。
 “艶であったろう”と、誇らしい笑みを浮かべているが・・その瞳は笑ってはいなかった。
 「この村の民は俗世を離れた者達じゃ。わらわ達を忌み民と言って蔑視する事は無い。しかし・・・外から命を狙われるともなれば・・・。」
 すっと、高い位置に取り付けられている窓の外を仰ぎ見た。
 雀が2羽、こちらを覗き込むような調子でクルクルと旋回を繰り返している。・・空と風だろうか・・・?
 「冥衛聖籠、霊宝鏡月・・・。なんとも美しい字を書くのう。」
 雀が甲高く鳴く。尾を引くそれは、真っ直ぐに心に刺さる。
 「命画 逝老(みょうえ せいろう)。霊崩 狂月(れいほう きょうげつ)。名は体を現すとは、この事よの・・。」
 「・・・なんですって・・?」
 シュラインが思わず声を上げた。しかし、その声さえもアヤメには届いていない。
 「聖籠は、滅びを司る。鏡月は、歪みを司る。命を写す絵は老いた逝き人。霊が崩れる時は、狂う月・・滅びの刃を振るうは菖蒲の花びら。」
 菖蒲が小さくそう言ったのと、外で大きな爆発が聞こえたのは丁度同じだった。
 3人がすぐにそちらを振り返る。
 「狂わすは月、殺すは菖蒲、逝くは画・・・。しかし・・・その力は封印すると決めたのじゃ。」
 肌で感じる、殺意・・。
 壮司は“見えて”いた。走り来る人々の情報・・明らかな欲望の殺意・・!
 アヤメは、窓の外を飛び遊ぶ雀を見つめている。


 『のう、わらわは死ぬまでに・・何度この世に生を受けた事を後悔すれば良い?』


 『何人の人々を犠牲にして、生き続ければ良い・・・?』


 『誰かに必要とされる事無く、誰かを必要とし、その命を踏み台にして上る。』


 『わらわの存在意義はなんじゃ?何のために生きておる?それが分らぬ限り・・・。』




 『何度わらわは死ぬまでに、生まれてきた事を後悔すれば良い・・・?』




 アヤメの低い声が耳に届く。
 しかしそれに反応する前に、視界がボンヤリと揺れ始めた。
 フワリと宙に浮くような不快感、そして耳を劈くノイズ音・・・。
 再び目の前の景色が変わって行く・・・アヤメの言葉をかき消すかのように・・・。


■かみ合わない歯車


 白い光の力がふっと弱まり、温かな風が頬を撫ぜた。
 そっと瞳を開ける。
 そこには先ほどまでいた社があった。・・けれど、明らかに違う。時間が、時空が・・。
 「ここは・・?」
 「さぁな。だが、あの感じがしない。」
 海浬はそう言うと、僅かに眉をひそめた。あの感覚が蘇ってきたのだろうか・・?
 明らかな欲望の殺意。
 シュラインは思わず二の腕をさすった。
 「・・どうやら、別段変な者もいねぇみてぇだ。」
 壮司はそう言うと、左眼を隠した。
 はずしていたサングラスを素早くかける・・・。
 「主ら・・もしや、翔子やみそのと同じ世界から来た者達か・・?」
 その声は確かにアヤメのものだった。
 思わず3人が振り向く・・・いつの間にか畳の上に座っていたアヤメとしっかりと視線が合わさる。
 アヤメが3人を見ている証拠だ・・・。
 「見えるの・・!?」
 「・・変な事を申す者よのぉ。見えているから声をかけているのではないか。」
 アヤメはそう言うと、微かに微笑んだ。
 「そのた達、みそのや翔子と同じ世界から来た者であろう?同じ雰囲気がする。」
 「あぁ。そうだが・・・その2人はここにはいないのか?」
 「・・ほんに変な事を申すのぉ。いないに決まっておるではないか。いるのならば、そなたらにも見えておろう?」
 アヤメがクリと首をかしげる。
 まったくもってもっともな事だが・・こちらはどういうわけか2人の姿が見えないのだから仕方がない。
 「丁度暇をもてあましていた所なのじゃ。僅かばかりわらわの戯言に付き合わぬか?」
 アヤメはそう言うと、3人を自分の目の前に導いた。
 一人一人の顔をじっくり見つめた後で傍らに置いてあったお茶を差し出す。
 自分の前にも小さな花柄の湯飲みを置き、それを一口だけ飲んだ・・。
 「あ・・っ・・。」
 海浬が小さく声を漏らす。
 「・・どうしたの・・?」
 僅かに視線を揺らし、何かを考え込むような顔つきをした後でゆっくりと首を振った。
 「いや・・。なんでもない。」
 「・・そう?」
 視線を逸らす海浬の真向かいに座っているアヤメの口の端が僅かばかり上がったのが見えた気がした。
 「そうさのう・・恋の話でもどうかの?」
 突然の言葉に、危うく口に含んだお茶を噴出しそうになる。
 器官に入る一歩手前で踏みとどまり、涙目になりながらゲホゲホと咳き込む姿をアヤメが面白そうに眺める。
 「恋の話って・・!」
 「主に思う人がいたとする・・その者は自分の妹弟と仲が良かった場合・・邪魔者は誰かのぅ・・?」
 アヤメがもう一口お茶をすする。
 これは・・アヤメの神と霊宝鏡月、そして冥衛聖籠の恋物語ではないか・・?
 村にいた時に僅かばかり聞きかじった情報を記憶の引き出しから引っ張り出す。
 「いつもいつも助けてくれての。恋と言う物は難儀なものだ・・。恋敵を血の契りで縛った所で、気持ちの問題じゃ・・・。」
 微笑む、アヤメの表情がどこか疲れていることに気付く。
 どこか遠くを見つめる瞳は心なしか虚ろだった。
 「それでも恋しいと思うのは、病んでいるからじゃの・・。」
 アヤメの手から、湯飲みが零れ落ちる。
 畳の上に緑茶を撒き散らし、アヤメの体も畳の上に崩れ落ちる・・・。
 「なっ・・!!アヤメちゃん・・!?」
 「触るな!」
 思わず立ち上がろうとしたシュラインを、海浬が引き止める。
 ただ首を振って、瞳だけで否定する。
 アヤメが咳き込む・・愛らしい顔が段々と苦しそうな表情に変わり、その口からは鮮血がほとばしる。
 「これが・・アヤメの神の毒殺の場面だって言うのか・・?」
 「だろうな。」
 「なんでこんな・・!!」
 ひゅーひゅーと息が喉を通る音が聞こえてくる。畳の上に零れたお茶に、吐いた血が混ざる。
 「わらわは・・菖蒲の花からその名をとったのじゃ。忌み民の親・・わらわの母君・・・。わらわを愛してくれた・・・。」
 アヤメの瞳が段々と色を失っていく・・・。
 「母君は、身体の弱い方で直ぐに亡くなった・・。後に残されたわらわは忌み民としての命を受けて・・幾人もの血を浴びた。」
 もう・・瞳は白く濁っている。
 なにも見えてはいない・・・。
 「わらわはその度に生まれてきた事を後悔した。何度も、何度も・・・。・・・最期くらい、後悔をせずに死にたかったのじゃ。最期くらい、誰かの幸せを願いたいのじゃ。」
 アヤメがそっと瞳を閉じる。
 「もう、誰に言われて殺める事のない、安息の地に・・・。2人は、わらわに良くしてくれた。今度はわらわがその忠義に報いる時なのじゃ・・・。」

 『のう、もしも2人に会ったのならば伝えてくれぬか?後悔はしていないと、ずっと2人を愛していると・・。』

 「わらわは、最期に誰かの幸せを願いながら後悔せずに死ぬ事を、幸せに思っていると・・・。」
 すっと、口元に笑みが浮かぶ。
 そしてそのまま・・・。
 視界がぼやける。
 社の扉の向こうから聖籠と鏡月の姿が見える・・・。
 一緒にいた2人。今も・・必死になって事切れたアヤメの身体をゆすっている。
 ・・それではどうして、鏡月は聖籠を・・・?
 一体、どうして・・・?
 それより一番分らないのは・・・

 『どうしてこんなに途切れ途切れの場面しか見えないのか・・』
 これが・・御心だとでも言うのだろうか?
 全てを知りたいのに、それを拒む何かがあるのだろうか?
 御心が?それとも・・他の強大な力が・・?


 視界が揺れ、ぼやける。
 しかしそれはほんの刹那の出来事で・・直ぐに視界はクリアに戻る。
 そこにはただ一人・・霊宝鏡月が夜空を見上げながら切り株に座っていた。
 思いつめるような視線は艶めいた女らしさをかもし出し、少しだけ噛んだ下唇は僅かに震えていた。
 夜風が鏡月の長い髪を揺らす。
 「・・明日は・・狂の月か・・。私が・・この世に生を受けた日・・。アヤメの神様が、見つけてくださった日・・。」
 そっと瞳を閉じる。
 「そして・・聖籠と会った日・・。」
 しばらくそうした後で、鏡月は右腕を見つめた。
 そこには真横に引かれた刀傷の跡が痛々しく張り付いている。
 「私の、姉妹・・。血を分けた、契り・・。」
 そっとその傷に口付けをする。
 愛しそうに・・寂しそうに・・。
 「可哀想なアヤメの神様。人を殺めすぎたばかりに、成長を止められた・・可哀想なアヤメの神様・・。」
 頬を一筋の涙が滑り落ちる。
 顎を伝い、地面に落ちる。
 その次も、その次も・・とどまる事無く落ち続ける涙。
 「アヤメの神様・・貴方は、聖籠と一緒になりたかったのですか・・?血の契りをせずに、他人のままで・・。」
 涙を、手の甲で拭う。
 濡れる瞳からはもうあふれ出てこない。
 「貴方が亡くなったのは、あの世で聖籠と共になりたかったからなのですか・・?」

 『それが、人を殺める事しか存在を許されなかった貴方様の、最期のささやかな願いなのですか・・?』

 “違う”と、言ったはずの言葉は声にならなかった。
 こんなにも近くにいるのに、鏡月には姿はおろか声すらも届かない。
 届けたい言葉は届かない。
 伝えたい気持ちは伝わらない。
 願いは届かず、届いた願いは間違い・・。
 互いを思う気持ちは強いのに、どこかすれ違う感情は歯止めがきかず。
 かみ合っていないことすら分からない。

 神は巫女を愛するあまり自分の気持ちを閉ざしたまま手の届かぬ場所へと旅立った。
 残された巫女は神を愛するあまり自分の気持ちを閉ざしたままその手を血に染めた。
 血に染まった巫女は全てを恨んだ。

 “3千人の民の見守る狂の月の日、濡れ衣を着せられたまま死して行く”

 恨みは次第に高まり、殺意を含む。
 鏡月の血筋が“3千人に達した時の狂の月の日”その子孫全員を同じ目に・・!!
 

 視界が揺れる。
 そして・・洪水のように様々な場面が情報を伴って流れてくる。
 アヤメの神が生まれた時・・やさしい母の顔、その腕のぬくもり。
 母が死して、忌み民としてその手を赤く染め上げる。
 なにもない荒野で・・ただひたすら己の滅亡のみを願う。その足元には小さな菖蒲の花・・。
 それを・・踏み潰す。
 真っ赤に染まる視界、断末魔、生暖かい血飛沫、鉄の匂い・・。
 戦場の中で聞こえる小さな泣き声。・・倒れた母親の胸元で泣く、忌み民の子供・・。
 差し出した指を握る、小さな力。
 狂月・・鏡月・・・。
 再びの戦場、終わりのない殺戮の回廊。
 その時に見た・・忌み民の子供・・。
 走る、走る、走る・・。
 両手に鏡月と聖籠の手を持って、走る・・。争いのない村へ。
 穏やかな日々。それが崩れる・・恐怖を伴う感情。
 なだれ込む民、合わさる剣の音、叫び声、風に乗る生暖かい匂い・・。
 再び、忌み民の使命へと戻る。
 赤い殺意、その後で襲う底知れない罪悪感。
 鏡月も、聖籠も、アヤメも、心に浮かぶのは“生まれてきた事への後悔”。
 甘い恋心、姉妹の契り、見ていて苦しいのは・・病んでいるから。
 生を手放す決意。
 恋を手放す決意。
 業火の中で生をたたれる聖籠。
 3千人の瞳に浮かぶ、軽蔑の視線。
 豪華の上空を2匹の雀が飛び舞い・・その中に入り込む。
 鏡月の頬を伝う涙。
 艶かしい銀の光・・飛び散る、赤の生。
 飲み交わす、死者の命。
 その中で・・飲まなかった一人の青年!!

 村に現れた猛将。
 戦乱に濡れる村。大地を赤く染め上げる、民。
 生き残ったごく少数の村人達。
 村に残る者、別天地を目指す者。
 その中には・・あの日の青年の姿・・。
 あの青年の妻は別の村の民。その下に生まれた2人の子供・・。
 その子供が成長し、結婚し、そしてあの青年が死ぬ。
 2人の子供が再び子供を生み、その子供が成長して結婚し、2人の子供が死ぬ。
 そして・・・。
 永遠に続くかのように思われる人の一生。
 それがふとある場面で途切れる。
 あの青年の子孫達・・男と女。結婚し・・生まれいずる男の子・・。
 それが

 『朝倉 セイ』


□古よりの因縁は伝う術無き恋衣


 周りの風景が消滅する。
 何も見えない、真っ暗な世界。何も聞こえない、何も感じない。
 ただの闇・・・。
 とりあえず、前に進む。
 それ以外に出来る事はない。ただ、真っ直ぐに・・、真っ直ぐに・・・。
 一体どのくらい歩いたのか、突如目の前に白い点が浮かび上がった。
 段々と近づくそれは、天から降り注ぐスポットライトのように血を白く染め上げている。
 その円の中央に、小さなものが蹲っている。
 黒くなって・・絶命している・・・小さな鳥。
 ぐったりと地にその身体を投げ出しているのは、雀・・・。
 そっとその身体に触れようとした時、雀の体から白い靄のようなものが抜けた。
 その靄は段々と濃さを増し、何かの形を作り上げていく・・・。
 ふわふわと形作られたそれは人だった。
 幼い少女の姿・・・。
 左の瞳が白で、右の瞳が紫。
 「あんたは・・・?」
 瞳がゆっくりと、壮司を捉える。
 不機嫌そうに歪められた眉が、僅かに緩む。
 一瞬だけ、月夢村であった少女の姿を思い出す。あの、黒い影を一掃した・・。
 空・・しかしすぐに頭を振る。
 目の前の少女は左が白で右が紫だ。確か空は左が紫で右が白だったはずだ。
 「そなたはあの村で会ったのぉ・・?」
 「は・・?」
 「我の名は風。そなたの名は?」
 「俺は幾島 壮司。あんた・・空の双子の・・?」
 風がコクリと頷いた。
 「そなたは・・・聖籠を助けてくれる者かのぉ?アヤメの神様の御心に従い、聖籠と・・鏡月を助けてくれる者かのぉ?」
 「風・・?」
 「アヤメの神様の願いは取り違えられてしもーてのぉ。しかし・・我はアヤメの神様の最初で最期の願いを聞き届けたいのじゃよ。鏡月とアヤメの神様はすでに楽園におるしのぉ。後は・・。」
 「冥衛聖籠・・か・・?」
 「そうじゃ。繊細で、正義感が強く、いつも周りの者を幸せにする力のあった聖籠・・。聖籠が・・鏡月の子孫全員を殺める姿など、見とうない。」
 風が、ふわりと壮司に近づき・・その頭に手をかざす。
 「しかし・・我は・・子孫達を助けたいのじゃ。可哀想な、朝倉 セイを筆頭に。」
 温かなものが頭の中を駆け抜け、全身にしびれるような感覚を引き起こす。
 「聖籠は、アヤメの神様と鏡月、伝えられなかった恋衣の歯車の間に挟まってその生を閉じた。なんとも・・やりきれぬのぉ。聖籠は被害者じゃ。だが、その理由が子孫全員を殺して良いかと言うと、それは違う。」
 くすぐったいような甘い痛みは、温かな力を持って体内に残る。
 「わらわには出来ぬがのぉ、そなたなら、朝倉セイ達を助けられると信じておる。」
 グラリ、視界が揺れる。
 先ほどまでの揺らめきとは違う・・身体が引っ張られるような感じ。
 「我は・・全てをかけて、そなたを護る事を・・ここに誓う・・。」
 風が胸に手を当てたのを最後に、壮司の身体は引っ張られた。
 上に、上に・・・。


■護る者と、助ける者


 引っ張る力は加速する。
 眼も留まらぬ速さで夢幻館の美麗の部屋を駆け抜け、夢幻館を後にする。
 その身体は空を駆け抜け、幾つもの町の上を通り過ぎる。
 なにか柔らかい膜に包まれているように、風は身体に刺さらない。
 夕日が地平線に下半分を飲み込まれている。
 日没まで・・あとわずか・・・。
 加速が止まり、地面に向かって降下し始める。
 見慣れた村・・人々がひしめき合っている・・月夢村・・。
 東と西の両端に、聖籠とセイの姿が見える。
 東が聖籠、西がセイ。
 ゆっくりとゆっくりと、東に向かって降りはじめる・・・。
 ふと周りを見ると、海浬とシュラインの姿もあった。
 3人は一緒に地に降り立った。
 冥衛聖籠の姿をした朝倉セイの元へ・・・。 


 「朝倉・・セイ君ね・・?」
 「貴方達は・・?」
 冥衛聖籠の姿をした、朝倉セイがおどおどと聞き返す。
 まったく邪気を含まない雰囲気は、確かに朝倉セイのものだった。
 「私はシュライン エマ。それと・・・。」
 「蒼王 海浬だ。」
 「俺は幾島 壮司・・。」
 「あ、俺は・・。」
 「朝倉セイだろう?知ってる。」
 壮司のそっけない言葉に、セイは少しだけ上目遣いに様子を伺った。
 「貴方達は・・冥衛聖籠を殺そうとして来た人ですか?その・・子孫達が呼んだ・・。」
 「まさか。そう見えるのか?」
 海浬の問いに、セイは幾分考えて・・考えて・・考え抜いた後に戸惑いがちに首をひねった。
 ・・ここは素直に見えませんと言って欲しいものだが・・・。
 「・・それでも、誰でも良いです。俺を・・殺してください。今ならまだ、俺の意識があります。だから・・聖籠もろとも押さえ込める。」
 「それは・・どう言う事なの?」
 「俺と聖籠の意識はどこか自分でも分からない根底で繋がってるんです。ですから・・今ならそれを手繰り寄せる事が出来る!日没後は俺の意識がなくなってしまいます!そうなると、もう誰も聖籠を止められなくなってしまう・・だから・・!」
 必死に頼み込むセイの横顔を夕日がオレンジ色に染める。
 どうしてここまで必死になっているのか・・分るようで理解らない。
 村では虐げられてきたと聞く。それなのに、自らの命を差し出してまで村人を・・3千人の命を救おうとしているのだ。
 「貴方は・・どうしてそこまで必死になるの?」
 「なにがです・・?」
 「あんたさ、殺し屋まで雇われたんだぜ?普通そこまでするか?」
 「・・・人が、人を思うことは・・理由ではないんだと思います。」
 「え?」
 「人が人を助けたいと思う気持ちとか、人が人を愛する気持ちは、自分の知らないどこかで動いていくものなんです。いつの間にか身体が勝手に反応するものなんです。」
 セイはそう言うと、顔を上げて満面の笑みで3人の瞳を覗き込んだ。
 「そんな偉そうな事言っても、俺自身は助けたいと言うよりは・・自分が誰かを殺したくないって言う気持ちのが強いんだと思います。」
 「なぁセイ。お前の願いは何だ?」
 海浬の低い呟きに、セイは少しだけ小首をかしげた後でゆっくりと言葉を紡いだ。
 「子孫が・・生き残る事です・・。聖籠の手で誰かが死ぬ事無く・・。」
 「だったら、セイ君も助からなくちゃ意味がないじゃない。」
 「え・・?」
 「あんたも、一応3千人の子孫のうちの一人だろう?」
 「でも・・。」
 「それが、願いなんだろう?」
 「・・・はい・・。」
 セイが力なくその場に座り込む。慌てて駆け寄った3人の顔を順々に見つめた後で、セイは小さく言った。
 『助けてくれてありがとうございました』
 ・・と・・・。
 ザワリと木々が揺れる。
 もう既に太陽は下半分を地平線に飲み込まれている。
 「とりあえず、セイ君は助けられたけど・・問題は聖籠ね・・。」
 「たしか西の方に見えたな。」
 「えぇ。みそのちゃん達がそちらに行ったと思うんだけど・・。」
 「そーんなに気にせんでもだーい丈夫じゃー!」
 フワリと柔らかな風が頬を撫ぜたかと思うと、木々の茂みから風が姿を現した。
 「どう言う事だ・・?」
 「アヤメの神様なら大問題じゃが・・相手は聖籠じゃ。3千人の命は最初から保障されとるよ。」
 「え・・??」
 「ほれ、ちーと思い出してみぃ。聖籠の元の名を。ほれほれ。」
 風はそう言うと地面から小さな木の枝を取りあげ、シュラインに手渡した。
 「冥衛聖籠って・・確か・・命画 逝老だったよな?」
 「えぇ。」
 壮司の言葉どおりの文字を地面に書き記す。
 『命画 逝老』
 「聖籠はもとより滅びを司っておる。それも・・魂だけの滅びをな。」
 「魂だけの・・ですか・・?」
 「そうさ。この世に生きる者達は必ず入れ物と魂が一緒になっておる。そして・・魂は入れ物によって保護されておる。・・分るか?」
 「つまり・・身体によって魂が守られてるって事よね?」
 「聖籠が司る滅びは、魂の滅びじゃ。肉体の滅びはアヤメの神様が司っておる。・・さて、ここから推測できるものはなにかのぉ?」
 風が悪戯っぽい瞳を振りまく。
 肉体の滅びを司るアヤメの神と、魂の滅びを司る冥衛聖籠・・聖籠には3千人の命を奪うだけの力は無い・・。
 「そうか。まずは肉体が滅びてからでないと聖籠は・・。」
 「ほんに理解力の良い坊よのぉ。」
 風はそう言うと、海浬の頭を撫ぜた。
 ・・どう考えても見掛けは海浬の方が年上だ。
 実年齢についてはどうとも言えないが・・。
 「お褒めいただき、ありがとう御座います。」
 海浬はそうとだけ言うと、ふいと頭を避けた。
 「さて、そろそろ聖籠のほうも頭が冷えてきた事じゃろう。行ってみるかのぉ。」
 風の言葉に、一同は重い腰を上げると西へと向かった。


 
 「・・知ってたさ。けどな、どうして良いのか分からずに、そのままにしておいた。それがあの結果だ。」
 ついたそこで聞こえてきたのは聖籠の、自嘲じみた声。
 瞳に光が差す。
 あの時に見た・・柔らかい表情・・・。
 「けど・・鏡月が俺を業火の中に放り込んだ理由までは分らなかった。だから・・殺意は鏡月にのみ向いた。」
 「聖籠様・・?」
 「なぁ、本当は3千人を皆殺しなんて、俺には出来ないんだよ。アヤメの神様ならものの数分でやってのけただろうが・・。」
 「どう言う事なの?」
 「霊宝鏡月は、歪みを司る巫女だ。アヤメの神様は殺戮の神。そして俺は・・命画 逝老。滅びを司る。」
 「滅びは、そのものの命がなくなっておらん事には出来ぬ。つまり・・・。」
 「つまりは、3千人の命をかけた戦いなんて・・そもそも無かったのよ。」
 ガサリと茂みから出て、みそのと翔子に近づく。
 「聖籠は魂の滅びを司る。アヤメの神は肉体の滅びを司る。」
 「そうか!肉体が滅びてからでないと聖籠は・・。」
 「嬢も坊とまったく同じ言葉を紡ぐのぉ。」
 風はそう言うと、ヤレヤレと言いたげな様子で首を振った。
 「坊・・?」
 「この坊の事よ。なぁ、坊?」
 坊と呼ばれた海浬が苦々しい表情を作る。
 「それより・・どうして3千人の子孫は白昼夢を見たり、瞳が紫になって変貌したりしたの?」
 「そうだ・・。聖籠には魂の滅びしか出来ないはずだろう?それなのになんであんな・・。」
 「そう、まるで・・狂いを司る鏡月のような・・か・・?」
 空が小さく笑う。その声はどこか禍々しさを含んでいた。
 その隣で、まったく同じ顔の風も小さく微笑む。
 瞳の色が対照的という以外は同じつくりの双子巫女。
 「鏡月はのぉ、分っておったのじゃ。」
 「分っていたって・・・何を・・?」
 「こうなる事じゃ。古の時より引き継がれる憎悪の念が、来世に再び舞い降りる事を。」
 「だから鏡月は最期に祈ったのじゃ。聖籠の思いが遂げられるようにと・・・。」
 「え・・・?」
 「なんだって・・!?」
 太陽の最後の一欠けらが・・完全に地平の向こうへと飲み込まれる。
 光るは星と月の瞬き。しかし、この村の上空には月はない。新月・・狂の月・・。
 温度が一気に下がったのは、太陽が消えたからではない。
 「己報いは来世で・・最も愛したものを滅した罪は、最も愛したものの手によって。」
 「のぅ、皆、己の願いのみよのぉ。」
 「アヤメの神は己の命と引き換えに2人の幸せを願った。・・しかしのぉ、情けは人のためならずと言うしのぉ。」
 「霊宝鏡月はアヤメの神の御心を汲むと言って、聖籠を葬った。しかしのぉ、最後の最後で来世への願いを託した。」
 「聖籠は・・・お主は何を望む?」
 空と風の瞳が怪しく光る。白い方の瞳には黒い靄のようなものが入り込み、紫の瞳の奥は金色に輝く。
 「・・・なんだ・・!?」
 「な・・なにこれ・・!?」
 「空ちゃん!?風ちゃん!?」
 「聖籠と、鏡月、アヤメの神、そして・・我ら風と空。コレ全て、古よりの因縁。」
 「因縁・・?」
 「果てなく続く道の上、終わりのない魂の回廊。」
 「何度も輪廻転生する。その運命は変わることはない。」
 「アヤメの神と鏡月は来世でも、その次の来世でも、聖籠に恋焦がれる。」
 「そして聖籠は何度も、その命を業火の中に投げ込まれ、こうして子孫を抹殺しようと現世へいたる。」
 「コレ全て、最も底なる古よりの因縁。わらわ達は、その最底なる古の時より見守る者也。」
 「そなたらも、この輪廻の因縁の中に取り込まれた。」
 「来世も、その次の来世も、またこうやって聖籠をとめに来る。」
 「いかに姿形が変わっていようと。」
 「いかにこの現世から遠ざかろうと。」
 「因縁は主らを取り込んで離さぬ。」
 「永遠に続く因縁の中で・・。」
 「主らは再びこの日を繰り返す。」
 「何度も・・。」
 「何度でも・・!」
 一陣の風が吹く。
 全ての魂を連れ去ってしまうかのように強い風に、思わず膝をつく。
 風は直ぐにやみ、再び頬を撫ぜる程度の風が地面をくすぐる。
 「・・驚いたのぉ、今のはなんじゃ?」
 風が髪の毛を押さえながら眉根を寄せる。
 その瞳は再びもとの輝きを取り戻していた。その隣にいる空も・・。
 「なんだったの・・?」
 シュラインの呟きに答えられるものは誰もいなかった。
 ただ、遥か遠い人知も及ばぬほどの古より受け継がれる因縁と言うなの回廊の中に引き込まれてしまった事だけは理解できた・・。


□来世へ引き継がれる因縁と言う名の絆


 「それではのぉ、聖籠をあの世へ送るとするかのぉ。」
 風の声が、場違いなほどに木霊する。
 人々が倒れる村の中央で、風と空が朝倉セイと冥衛聖籠と真ん中にしてなにやら唱え始めた。
 2人の身体から雪のような光があふれ出す。
 「さっき風と空が言った言葉が本当だったとしたら・・また、来世でも会えるよな?」
 朝倉セイの姿をした聖籠が、少しだけ困ったような顔をしながら小首をかしげた。
 「・・また騒ぎを起こす気満々かよ・・。」
 「できれば・・もう勘弁願いたいわね。」
 「そうですわね・・・。」
 「なんか酷っ!!」
 冷たい言葉に、聖籠がオーバーリアクションで抗議する。
 「もっと、ちゃんとした形でなら・・会いたいわね。」
 「あぁ。」
 「因縁とかじゃなくてさ、自分達の力だけで会いたいよな。」
 「・・断ち切って見せるさ・・きっと・・多分・・。」
 「おいおい、段々意志が弱くなってきてるぞ・・。」
 「いや、だってさ・・これが何度目の因縁なんだろうって思うとさ。結局、それまで断ち切れてないって事じゃん?」
 「それでも・・今回はわたくし達がその中に入り込みましたわ。」
 「一歩前進ってね。」
 「・・そうだな・・・。」
 光がドンドンと大きくなる。
 肌で感じる・・聖籠が逝く事・・。
 「また、来世で会えたらな。」
 その言葉と、笑顔を最後に・・朝倉セイの身体から力が抜け、聖籠の身体が消滅した・・・。
 「これで・・終わったのぉ。」
 空に瞬く星の中で、どれか一つが聖籠のもので、鏡月のもので、アヤメのものだったならば・・どんなに素敵だろうか。
 「ねぇ、貴方達は人として生きる事は出来ないの?自分達の全てを捨ててまで、過去に死んだ者に仕える必要は無いわ。自分の為に生きて、自分の為に死ぬ・・そういう生き方も出来る筈よ。」
 翔子の言葉に、風と空は少しだけ瞳を合わせた。
 「そうさのぉ。もう・・アヤメの神に仕える必要はない。」
 「今度は来世に生まれ出アヤメの神に仕える。」
 「それが・・貴方達の因縁なの?」
 「因縁・・わらわ達は因縁には囚われてはおらぬ。」
 「課された指名は監視よのぉ。未来永劫果てなく続く因縁を監視する者。」
 「それは・・。」
 「それがわらわ達の仕事。古の過去より引き継がれる意志。」
 「主らとも、いずれ会おう。またその生が生まれ出時・・我らはそなたらを因縁の中に引き込み監視する。」
 「わらわ達も、そなた達も・・終わる事なき魂の因縁・・。」
 フワリと、温かな光が零れ出る。
 風と空の足元が透けて行く。
 段々と、膝へ、胸へ・・そして・・。
 「全ては因縁。その者達も、主らも、我らも、全ては因縁。」
 「来世で会うのは偶然のような必然・・・。」
 ふっと掻き消えた。
 「・・因縁か・・。」
 「この方々も・・因縁だったのですね・・。」
 村に倒れる子孫達。これも全て引き継がれる古よりの必然・・。
 何故だか心の底に重いしこりが残っているような気がした。
 古と・・必然の中に・・。
 「・・で・・これはどうすれば良いんだ・・?」
 海浬が村を指し示す。
 星が照らす中、倒れている人人人・・・。
 「「「「・・・あっ!!」」」」
 ・・・どうやら今夜は眠れそうにない・・。


■エピローグ


 「・・疲れた・・。」
 壮司はそう言うと、ソファーの上に腰を下ろした。
 あの後、武彦と連絡を取って3千人の子孫を帰宅させた。
 ・・3千人だ・・!
 それが終わったのは昼過ぎだった・・。
 盛大なため息をついた後で、ふと左眼に触れた。
 あの夢の中で見えた・・アヤメの神の湯のみの中の毒。
 あそこでアヤメの神が毒を飲む事を阻止しなかったのは・・あれが過去の出来事だったから・・。
 目を閉じれば瞼の裏に浮かんでくる・・アヤメの神の血・・。
 「〜〜〜〜あ〜〜くそっ!」
 壮司はソファーを蹴ると立ち上がった。
 乱暴に冷蔵庫から水を取り出し、コップに注ぐ・・。
 それにしても・・。
 「古よりの因縁か・・。」
 ずっと続く回廊の中、偶然のような必然。昔から決められている・・。
 「あ・・?」
 くいっと、心の底で何かが引っかかった。
 偶然のような・・必然・・・??


  『古よりの因縁は、長く続く回廊の中での必然。
   さて、貴方の前世はどの因縁の中に・・?』


  〈And that's all‥?〉




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 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

  1388/海原 みその/女性/13歳/深淵の巫女

  0086/シュライン エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

  4345/蒼王 海浬/男性/25歳/マネージャー 来訪者

  3974/火宮 翔子/女性/23歳/ハンター兼フリーター

  3950/幾島 壮司/男性/21歳/浪人生兼鑑定屋

  *受注順になっております

  NPC/夢宮 美麗/女性/18歳/夢への扉を開く者
  NPC/沖坂 奏都/男性/23歳/夢幻館の支配人

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 ■         ライター通信          ■
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 この度は古よりの因縁【後編】にご参加いただきありがとう御座いました!
 ライターの宮瀬です。
 なんだかとてつもなく長くなってしまって申し訳ありません・・。
 古よりの因縁【後編】は私が初めて書き直したものでもあります。
 受注終了から1週間くらいでお話自体は完成しておりました。
 しかしどうしても納得できない部分が多く、最初から書き直しました。
 まとまり自体は最初の作品の方がありましたが・・それでも、こちらのほうが世界観が広がったと思います。
 長さも倍近くになりましたが・・。
 今回、夢幻館から行った夢の中では2グループに分けて執筆いたしました。
 みその様と翔子様、シュライン様と海浬様と壮司様です。
 もし時間が御座いましたら御覧下さい。


 幾島 壮司様

 前編後編と続けてのご参加ありがとう御座いました!
 如何でしたでしょうか・・?
 朝倉セイを助ける・・と言う事でしたが・・結果彼は助かりました。
 もちろん、現在の因縁では・・・。

 それでは、またどこかでお逢いしました時はよろしくお願いいたします。