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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


零ちゃんのお仕事〜犬探し〜

「犬を捜して下さい。お願いします」
 と、泣いている子供をあやしている若い母親が草間に頼んでいた。
「……なるほど。かなり遠くに彷徨っている可能性が? ……そして、保健所にも連絡は……? そうですか」
  珍しく普通の仕事だから、草間はてきぱき、意気揚々と対応している。
 怪奇事件ばかりなので、安くても普通の探偵業ができれば其れで満足でもあるのだ(彼からすれば)。
 頭に猫を乗せて、掃除をしている妹の零は草間の対応に心の中で笑っていた。
 ただ、子供を見ていると、自分が何とかしたくなってくる。

 情報の一通り(写真、親子の連絡先など)とチラシを貰い、親子は帰っていった。
 帰る前に、泣いている子供に零が近づいて
「ちゃんと捜して見つけ出すからね、泣かないでね」
 と、ニコリ零が言う。
「あ、ありがとうお姉ちゃん」
「お、お願いします」

「あのー兄さん」
「なんだ?」
「わたしが、捜したいんですが」
 妹のお願い攻撃がでてきた。
 実のところ、草間はこの所零のこの攻撃に弱い……。
「……久々に俺一人で出来る……ふつ……」
「お願い! 兄さん!」
 草間は彼女の言葉で突っ伏した。
 猫はその時に重しのように彼の頭の上に乗っかった。
「にゃー」
「わかった……わかったから……お前に任す……しかし無理になったら、俺に言え……よ……」
 と、言いながら草間は久々の普通の仕事を妹に盗られ、心の中で泣いた。
 いよかんさんが其れに気付いて慰めてくれたが、あまりクダモノにされても嬉しくない草間3X歳であった。

 蛇足だが、あの小麦色に慰められていたら、逆に腹が立つだろう。


1.助っ人?
「危険な依頼に興味もたれるよりマシでしょ? 武彦さん」
 苦笑しながら突っ伏している草間の頭を撫でるシュライン・エマ。
 すでに、零ちゃんは行ってきますと資料のコピーを抱えて探しに出て行った。
「いや、まあ、其れは其れで良いのだが」
 すでに、2名助っ人でやってきている。
 メイドな高校生大曽根千春とフリーライターの鷹旗羽翼である。
「まずは……同じ方法が重なりそうな事だから分担でいきましょうか」
「特に、零の手柄にする方向が良いよな」
「其れについては賛同するわ。サポートにまわりましょう」
 と、羽翼とシュライン
「あのぅ。わたしは零さんと一緒に探したいです……皆さんで一緒にやった方が早くできるかと〜」
「零ちゃんの手柄にした方がいいのよ」
「なるほどです〜」
 シュラインさんは苦笑して、資料を千春に渡した。
「では行ってきますねぇ」
 パタパタとメイド服の少女は去っていく。
「アイツのことだ。そこら中の浮遊霊に聞き込みしているな」
「おいおい……」
 羽翼は拗ね状態草間の言葉に苦笑する。
「なら俺もチラシ配りと聞き込みを。もちろん別行動だけどな、情報あったら教える」
 と、羽翼が資料を全てに目を通し、と、羽翼は事務所を出て行った。
「いってらっしゃい。あたしは、周りの動物病院を調べるわね……」
 シュラインはネットで動物病院から情報を聞き出すことになった。今のところ保健所は除外である。
 

2.ストラップ?
「あのーこういう犬さん見なかったですかぁ?」
 と、千春は何もないところで何かを話している。
 遠くで退いてしまう羽翼。
 千春が話している相手が幽霊というのは能力者であればすぐわかるが、堂々と幽霊に聞き込みするとは結構肝っ玉が据わっているかバカなのかだと思うだろう。
「さて、俺は俺なりで探すか」
 と、別の地区に移動する。
「かわうそ?のストラップか……決め手は」
 何となくそう思っているのは零やシュライン、羽翼だけである。
 どこのアーケードを見てもアレのストラップが売っている情報を見たことがない。
――UFOキャッチャーのぬいぐるみはあるとは聞いているけどな。

 零の草間興信所の半径5キロでは人気があるらしく、世間話に花が咲いていたが、しっかり仕事をこなしている模様。
「あの、こういう犬を見かけたら連絡下さい」
「はい、まかせて。零ちゃん、頑張ってるわねぇ」
「お兄さんおもいやねぇ」
「お仕事ですから」
「零さーん、この叔父さんが何かいってますぅ」
「お姉ちゃん……助手さんが何か言ってるわよ」
 流石、ご近所さん。天然娘の言っていることをあまり理解したくないが、理解してしまった。
 近くに幽霊がいるッてこと。
 原因は、見てしまう天然霊感娘…千春の所為何だが。

「え? この付近を通り過ぎた? ですかぁ?」
 千春は浮遊霊のおっさんから情報収集。
「と言うことは、この辺にはいないですね」
 と、零は地図をみる。
 元気な老犬の行動範囲からは凄くかけ離れている場所。其れにこの付近には動物病院が一杯あるのだが、全部をあたることは骨が折れる。
「千春さん、動物の霊とも会話できますか?」
「あうーそれはむりですぅ」
 にっこり微笑みながら返答する千春。
 あまり役に立たない感じ。
 かわうそ?さん探しなら役に立つのでしょうね……、と思っちゃった零ちゃん。
 
「この近辺の動物病院には何も情報はないわ」
「そうか」
「そうですか」
 動物病院の情報を聞いた聞き込み班は、シュラインが送ってくれた情報を元に聞く場所を変える。
 地道な作業、チラシ貼りに近所の聞き込み。
 既に零を知るご近所からかなり離れたため、彼女の聞き込みは困難を極めていくが(近くに千春が霊会話しているので退かれてしまうのだ)、羽翼は既に探査系に特化したデーモン:『ヘンブリー・アイズ』を飛ばし上空2kから50万匹に及ぶ野犬や迷い犬をチェックしている。またそれ以外でも彼は世間話が巧いために何とかポチらしき存在を絞って言っている。もちろんその情報はシュラインに提供し、シュラインがそれとなく可愛い妹に教えているのである。

 それから、数日がたった。
 まだ、見付かっていない。

 一方、まだ拗ねている草間は
「このストラップは曲者と思うな」
 と、写真の一枚を見てぼやいていた。
「カワウソでなくかわうそ?だから?」
 ネットや電話でしらみつぶしに確認し、書類をまとめているシュライン。
 既に零ちゃんは、地道な努力の聞き込みで、千春と一緒に今度は自転車で遠征だ。
――事故しなきゃ良いけど。特に千春。
「そのかわうそ?って何なんだ」
「理不尽と不条理の固まった謎生物だ」
「……」
 思考が止まる羽翼
 いや其れしか表現できないんだが……(草間)
 単なるストラップなら良い。ただ、アレが絡んでいるならアレに訊いた方がいい……しかしかわうそ?を探すことはまず、千春をこの事件から一端退かせることになるので色々厄介だ。
 草間はナマモノには関わらない方が良いと思い、
「あ、今のは聞き流してくれ」
「わかった」
 羽翼は最新の情報に目を通して仕事に戻った。

「わう?」
「わうわう」
「きゅーん」
 ――流石にわからないですね
 零ちゃん犬語の勉強しながら今度は犬に聞き込みしている。
 怨霊を武器にする以外に、無害な動物霊からの感情を知って、実戦中。
「わたしもわからないですぅ」
 千春が困ったようでそうでない顔で答える。
 其れを上空2kmからデーモンを通し見ている羽翼は
「天然か?」
 と、ぼやく
――はい、天然です。特にメイド服の方。
 

 さて、デーモンから何とか絞り出せた模様の羽翼。
 デーモンからうっすらとポチらしい犬を見つけたのだ。
 場所は区と別の市の境目にある住宅街。
「シュライン、それらしいのを見つけた」
 と報告。
 デーモンの視覚から彼の脳裏に見えるのは、光の屈折で見えない。しかし。徐々に犬が“点滅”していたのだ。
「あらら、ヤッパリあの子の……」
 シュラインさんぽつりと言う。
「あの子って?」
「武彦さんが言っていたかわうそ? あの子って探そうとすると見付からないのよ」
「ああ、そう言うことか」
「場所を零に伝えてくれ。確実に探している“ポチ”だ。かわうそ?ストラップが付いている」
 デーモンからハッキリ其れが見えた。
「場所は、住宅街でその家族に可愛がられている。子供と楽しく遊んでいる。あと、此処のコミュニティ新聞でも“預かっています”項目に載っている。流石に興信所から遠いな」
 徐々に目的地にたどり着いた羽翼が携帯越しで話す
「わかったわ、ありがとう」
 シュラインも、電話から音を“確認”していた。


3.交渉順調
 そして、零がシュライン、千春、羽翼と合流し、その場所に向かった。
「零ちゃん」
「はい」
 呼び鈴を鳴らす零。
「どなたでしょうか?」
 と、インターフォン越しから声が。
「草間興信所の者なのですが……コミュニティから迷い犬を探しておりまして」
 と、交渉に入っていった。

「確かに数ヶ月前にうちの子が拾ってきまして……」
「そうですか」
「首輪のことが気になっていたわけですが、子供がどうしても……と」
 話はだいたい見えてきたようだ。
 ポチを拾った家族は動物好きであり、元気なこのポチがとても可愛くて、通報も出来なかったとかという。鎖の錆びた後などからして逃げたのだから近所と思っていたのだ。まさか、23区と市境目まで
飛び出して来たとは思わなかったようだ。
「お母さんただいまー。 テツ凄い力だ〜」
「テツ?」
 零たちが首を傾げる。
「うちの息子が勝手に……浩太……。お話しがあるの」
「うん」
 事情を、ゆっくり話す零を訊いて、浩太という少年は、涙ぐむが
「うん、わかった。でも……たまにテツ……ううん“ポチ”にあっていい?」
「田中さんが良いと言いますから」
「うん。僕も一緒に遊びたい!!」
「わう!」
 少年は笑った。

「一件落着だな」
 羽翼が皆に飛び乗ってじゃれる犬を撫でて言った。
「本当に老犬なのかしら?」
 シュラインさんは心の中で思った。
 とても元気で病気もしていない。


4.さて、報酬というよりか問題点
 再会を喜んだ健二君とポチで、少し離れた家族とのアフターケアも零ちゃんがやっている模様。
 コレといった問題はないようだ。
 報酬としては、今までの怪奇事件の報酬と比べると微々たるものだが普通の探偵業ならそんなものだろうという金額で、何故かかわうそ?ストラップが付いていた。
「ヤッパリ力はあるのは確からしい。ただ、これだ!」
 草間はかわうそ?ストラップを見せる。
「ヤツの力の少しが入ってやがる」
 何か忌々しい口調だ。
 例のアレにからかわれているからだろうか?
「確かに、探すとき苦労したな。痕跡なかなか見付からなかった」
 羽翼が自分の特殊能力デーモンで検索が困難だったことを思い出す。
「謎能力かしら?」
「でしょうねぇ」
 零とシュラインが首を傾げる。
「かわいいですぅ。ほしいですぅ」
 何も考えてないメイドな高校生。
「事故、保健所捕獲などが出来なかったのがコレというなら封印した方がいいかも……って逃げるか」
「千春さんにあげます」
「ありがとうございます〜」
 喜ぶ最強天然娘。
「ま、コレで良かった」
「はい、田中さんからいただいたお菓子で休憩しましょ」
 シュラインさんと零が皆にコーヒーとお菓子を配り、雑談することになった。

 後日談だが
 あれからも、ポチはとても元気に走り回っているそうな。
 本当に老犬なのか疑わしくなるが獣医から診ると15歳のおじいちゃんと断定。謎だ。
 もちろん、預かり手の家族と田中家はとても仲良くなったみたいだ。
 

End

■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【0170 大曽根・千春 17 女 メイドな高校生】※
【0602 鷹旗・羽翼 38 男 フリーライター兼デーモン使いの情報屋】

■ライター通信
 滝照直樹です
 『零ちゃんのお仕事〜犬探しに〜』参加して下さりありがとうございます。
 何とかすんなり事件が片づきました。コレも皆さんの行動のおかげです。
 とはいっても千春さんは天然役炸裂でしたが。

 千春さんはナマモノのストラップが欲しいと言ってましたので進呈します。アイテム欄を確認して下さい。
 鷹旗羽翼様初参加ありがとうございます。

 では機会が有ればあいましょう。