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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


あやかしの指輪


ーオープニングー

アンティークショップ・レンにはいつものように不思議な品物が入荷して来た。
店主、碧摩・蓮は入荷した品物一つ一つをチェックしていた。
この店に入荷されるものはどれもこれも不思議なものばかり。
アンティークショップ・レンで普通の品というもを見かけた事が無い。
それは店主である蓮の趣向であり、それは店を訪れる人間にも受け入れられて来た。

今日も蓮が選びアンティークショップ・レンに縁あって運ばれて来た品物を見ていた所、店主の蓮が珍しく声を上げた。
「ほう」
蓮は一つの指輪を取り上げるとじっと見つめた。
その指輪は中央に翠の石が飾られたシルバーのリング。
かなり年期が入っているようで、シルバーの輝きはくすみ鈍く光を放っていた。
そのシルバーの部分に比べ中央の翠の石は妖しく光を放っていた。
まるでその石の中に誰かが閉じ込められている、そんな錯覚を起こしかねない人間の瞳と間違うような輝きだった。
蓮はその光を見ると
「これはまた、珍しいものが入って来たね。誰かをお待ちなのかねぇ。」
ふとそんな言葉を呟くとそれを聞いたかのように静かに店の扉が開いた。


ー 石神・月弥 ー

石神・月弥はいつものようにふらふらとアンティークショップ・レンの前に訪れた。
つくも神で元はブルームーンストーンの化生である石神・月弥にとって、アンティークショップ・レンは同類が集まり話ができるそんな場所だった。
石神・月弥の今の姿は黒い髪の毛に青い瞳、そして細身で低めの身長。
女の子に間違われる事が多々ある。そんな風貌だった。
体が不安定なので小学生から中学生の間を行ったり来たりしているが、今日の姿は中学2年くらいの年令だ。
石神・月弥の細くて華奢な手がアンティークショップ・レンのドアを静かに開いた。
「いらっしゃい。ってあんたかい。」
碧摩・蓮は頻繁にやってくる石神・月弥にまたかという顔をしてみせた。
「また来ました。だって俺ここ好きだから。」
石神・月弥は碧摩・蓮に向かいにこっと笑ってみせた。
「全くあんたも物好きだね。ん?そういえばこの指輪。」
碧摩・蓮はそう言うと石神・月弥に向かい持っていた中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを見せた。
石神・月弥はその指輪がちゃんと見える距離まで近づきじーっと見つめた。
「あんたのお仲間かもしれないよ。ヒマならその指輪と話でもしたらどうだい?」
碧摩・蓮はそう言うと石神・月弥に指輪を渡し、途中だった入荷した品物のチェックをはじめた。
「同類ねぇ。」
石神・月弥はそう呟くと指輪に話しかけた。
「あんたは誰ですか?」
そう聞くと指輪の中から石神・月弥にしか聞こえない声が聞こえてきた
(まあ、わたくしと同類なのね)
石神・月弥は指輪の翠色の石を見つめると頭をかきながら”まあね”と答えた。
そしてここに来た経緯を聞きはじめた。
(わたくしは70年前に生まれて、さる高貴な方の持ち物となったのです。でもその方がある事情からわたくしを手放す事になってここに来たのです。)
そこまで聞くと石神・月弥は首を傾げて
(持ち主だった人はあんたが石の中にいる事知ってたの?)
石の中の人物に詳しい事情を聞こうとしたそのとき、アンティークショップ・レンの扉が豪快な音をたてて開いた。


ー ジョン・ジョブ・ジョー ー

「おお!ここか。噂の店は。」
煙草を吸いながら男はどしどしと音を立ててアンティークショップ・レンの店内を物色しはじめた。
「これもいい。しかし安く買って高く売らないとこっちのもうけが少なくなるからな。」
そんな事をぶつぶつ言うと、入り口からはしの商品までぐるりと見回した。
赤い髪の毛に赤い瞳。そして適度な身長の割にはがっしりとした体つき。年令は23歳と言った所だろうか
石神・月弥に比べるとかなり男性的な人物だ。
「いらっしゃい。何かお探しかい?」
碧摩・蓮は入荷商品をチェックしていた手を止め、入って来た男に声をかけた。
その声に男は豪快に答えた
「探してる、探してる。金になるもので安く買えるものはないか?」
石神・月弥はあきれ顔でその男を見つめた。なんて単刀直入な男だ!
「難しい注文だね。これから取引するなら名前を聞いておこう。なんて名前だい?」
碧摩・蓮は店のカウンター傍にある椅子に腰掛け足を組むと男へ尋ねた。
「名前か、面倒だな。でもまあ仕方ない。ジョン・ジョブ・ジョーって名前だ。少し長い名前だが覚えてくれよ。」
碧摩・蓮は少し笑うとジョン・ジョブ・ジョーに向かい
「ジョン・ジョブ・ジョーだね。あたしは碧摩・蓮。ここの店主だよ。」
その碧摩・蓮の言葉にジョン・ジョブ・ジョーは頷き腕を組むと
「よし、碧摩・蓮だな。これから商談をする相手というわけだな。」
そう言うと石神・月弥を指差し碧摩・蓮に向かって
「で、このちびっ子いのはこの店の店員か?それともあんたの子供か?」
と失礼な言葉を吐いてみせた。石神・月弥は口をぱくぱくさせて反論しようとしたが、その前に碧摩・蓮が大きな声で笑いはじめた。
「あはは!よしとくれ。あたしに勝手に子供なんか作らないでおくれよ。」
碧摩・蓮はお腹を抱えて笑うと石神・月弥を指差し
「この子は石神・月弥。うちの常連さんさ。」
ジョン・ジョブ・ジョーは石神・月弥を見つめるとその体を触りはじめた。
「!!」
石神・月弥は驚き声を上げようとした瞬間ジョン・ジョブ・ジョーは吸っていた煙草を石神・月弥に吹きかけ
「ちゃんと飯食ってるのか坊主?ちゃんと食べないと大きくなれないぞ。」
そう言うと石神・月弥の肩をポンポンと叩くとポケットの中からキャンディを出し石神・月弥の手に握らせた。
それが石神・月弥とジョン・ジョブ・ジョーの初めての出会いだった。


ー 石の中に住む人 ー

「俺も忙しい。さっそくだが商談に入らせてもらおうか。」
ジョン・ジョブ・ジョーは碧摩・蓮に向かい単刀直入に言ってみせた。
その言葉に碧摩・蓮は少し考えるとジョン・ジョブ・ジョーに向かい
「あんたの予算を聞いておこうか。商談はそれからだよ。」
と淡々と言った。その言葉にジョン・ジョブ・ジョーは少し考えると
「予算か。言いにくいが今日の持ち合わせは10万程しか無い。」
その答えを聞くと碧摩・蓮はやれやれという顔をすると
「そうかい。その金額だとそうだねぇ。」
碧摩・蓮は座っていた椅子から立ち上がり石神・月弥の持っていた中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを取りジョン・ジョブ・ジョーへ見せた。
「今日入荷した品物だけど、どうだい?」
ジョン・ジョブ・ジョーは見せられた指輪を手に取ると碧摩・蓮を見つめ
「よし、これでいい。で、いくらだ?」
そう言うとポケットから財布を出そうとした。しかしその瞬間どこからともなく
「冗談じゃないわ。何でわたくしがこのような野蛮な男の元に行かねばならないのです!」
という若い女性の声が聞こえて来た。その場にいた三人は同時に
「わたくし?」
と声を重ねるとジョン・ジョブ・ジョーの持っていた中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを見つめた。
するとまたどこからともなく女性の声が聞こえてきた
「失礼な方達ね。レディをジロジロと見つめるなんて失礼きわまりないわ。」
石神・月弥は指輪をじっと見ると、二人に向かい
「この翠の石の住人からみたい。」
と言った。すると中央に翠の石が飾られたシルバーのリングからシフォンのような柔らかな布のドレスをまとった女性が飛び出て来た。
翠色の石から飛び出て来た女性は銀色の髪の毛を腰までたらし、耳の上に翡翠の髪飾りをつけている。顔つきは上品でどこかの令嬢もしくは姫君といった感じだ。
ドレスの色は上品な翠色でその女性にとても良く似合っていた。
「わたくしをつける方にはそれ相応の気品がなくてはいけませんわ。」
翠の石から出て来た女性は胸に手を当てるとつんとした顔で3人に言ってみせた。
その態度を見ると石神・月弥は恐る恐るその女性に向かい
「失礼ですが貴女のお名前は?」
と聞いた。すると女性はドレスの裾をそっと持つと
「わたくし?わたくしの名前は翠緑玉と申します。」
そう言うと3人に向かい深々と礼をした。


ー 翠緑玉 ー

「断固拒否しますわ!」
翠緑玉の声がアンティークショップ・レンの店内に響き渡った。
「しかし、あんたは俺が買う事になっている。断る権利はあんたには無い。」
ジョン・ジョブ・ジョーはタバコを深く吸い込むと吐き出した。
石神・月弥はジョン・ジョブ・ジョーからもらったキャンディを口にほおりこむとその様子をじっと見つめた。キャンディの味はストロベリーミルクでとても甘いものだった。
ジョン・ジョブ・ジョーの風貌を見た限りではストロベリーミルクのキャンディを持っているようには見えず、かなり以外な感じだった。
(この人の趣味なのかな?)
石神・月弥はキャンディを口の中で転がしながらそんな事を考えた。
「ともかく、わたくしはこの野蛮な男の元に行くつもりはありませんわ。」
翠緑玉はそう言うと石神・月弥の後ろにすっと隠れた。
「あなたもわたくしと同種なのでしょう。あなたがあの男の元に行く事を考えたらわたくしの気持ちがわかるはずですわ。」
そう石神・月弥に訴えた。石神・月弥はあたまをポリポリとかくと
「うーん、でもあんたはジョン・ジョブ・ジョーに買われたんだからついていくのが当然だろ?」
その言葉に翠緑玉は怒った声で
「わたくしはまだその男のものではありませんわ!そうでしょう碧摩・蓮。」
碧摩・蓮はカウンター傍の椅子に座ると仕方が無いねぇ、という顔をして翠緑玉へと答えた。
「確かにまだあんたをジョン・ジョブ・ジョーに売ってはいない。それは確かさ。でもねぇ、あんたはうちに入荷した商品なわけだしどうするかはあたしが決めるのが当然だと思うのだけど。どうだい?」
その答えに翠緑玉は手のひらをぐっと握ると黙り込んだ。
そのやり取りをしばらく見ていたジョン・ジョブ・ジョーは頭をかきむしり
「あーもう面倒くせぇ!!お前なんかこっちがお断りだ。お高くとまりやがって!」
と突如キレて大声で叫びはじめた。
ジョン・ジョブ・ジョー の性格なのだろうか、ずいぶんと短気なようだ。
「もう、勝手におし。」
碧摩・蓮はひらひらと手を振ると再び入荷商品のチェックをはじめた。
その様子を見て石神・月弥は翠緑玉とジョン・ジョブ・ジョーの仲に割って入り
「まあ、まあ二人とも。落ち着いて。」
と言って二人をなだめた。
「翠緑玉はジョン・ジョブ・ジョーの持ち物になりたく無いんだよね。」
石神・月弥は翠緑玉に聞いた。すると即座に
「そうですわ。」
という答えが返って来た。そして石神・月弥はジョン・ジョブ・ジョーにも
「ジョン・ジョブ・ジョーは翠緑玉を買ったらすぐに転売して自分のものにするつもりは無いんだよね。」
そう聞いた。ジョン・ジョブ・ジョーはむすっとした声で
「そうだ。」
と一言答えた。
「じゃあ翠緑玉は少しだけ我慢すればすむことだと思うけど。」
その言葉に翠緑玉は言葉につまると石神・月弥に向かい
「本当にあの野蛮な男の手元にいるのは少しの間ですのね。」
怒りを押し隠しながら静かな声で答えた。
それを聞いたジョン・ジョブ・ジョーも
「あたり前だ!お前なんかと長く一緒にいられるか!!」
腕組みをするとタバコを深く吸い込み言い放った。
すると石神・月弥はパンと手を叩き
「じゃあ、商談成立!ジョン・ジョブ・ジョーは翠緑玉をすぐに売ればいいんだよ。」
カウンター傍の椅子に座っていた碧摩・蓮からも
「それはいい考えだねぇ。転売先ならあたしが紹介してやってもいいよ。」
そんな声が聞こえてきた。翠緑玉も少し考えたあと
「まあ、碧摩・蓮がわたくしの居場所を探して下さるのなら・・・」
と言いはじめた。石神・月弥と碧摩・蓮の言葉にジョン・ジョブ・ジョーも渋々ながら
「わかったよ。すぐに転売すりゃあいいんだろ。」
と言って碧摩・蓮に10万円を手渡した。碧摩・蓮はお金を受け取ると
「翠緑玉はあんたの所にいたくないらしいから、転売先が決まるまでこっちで預かるよ。」
ジョン・ジョブ・ジョーは抗議の声を上げようとしたが、翠緑玉は
「わたくし、絶対野蛮な男の所には参りませんわ。」
というと碧摩・蓮の後ろに隠れた。ジョン・ジョブ・ジョーは手を白くなるまでギューと握ると吐き捨てるように
「くっそー、わかったよ!!」
石神・月弥は楽しそうに手を叩くと
「これで一件落着!」
そう言うと翠緑玉に向かって笑ってみせた。


ー その後 ー

その後翠緑玉は碧摩・蓮の紹介により大手企業の社長令嬢のてにわたった。
ジョン・ジョブ・ジョーも転売先の提示した金額に満足し、アンティークショップ・レンをあとにした。
そして石神・月弥は転売先の社長令嬢の元に月に1回は通い翠緑玉の話し相手になっていると言う。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
整理番号 2269/ PC名 石神・月弥 (いしがみ・つきや)/ 性別 男性/ 年齢 100歳/ 職業 つくも神
整理番号 4726/ PC名 ジョン・ジョブ・ジョー (ジョン・ジョブ・ジョー)/ 性別 男性/ 年齢 23歳/ 職業 廃品回収(リサイクル業者
職業の説明


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■         ライター通信          ■
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翠の石に隠れた住人の話はいかがでしたでしょうか?
アンティークショップ・レンに入荷した品物としては珍しくないものかもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです

>石神・月弥さま
はじめまして、月宮です。ご注文頂き有り難うございました。
ご満足頂けましたでしょうか?
ヒヨッコの私にご注文頂き本当に有り難うございます。
また機会がありましたらよろしくお願いしますvv