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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


【  命短し、死せよ乙女  】

「ふふふ、さてお腹もすいた事だし――。今回の獲物はどうしましょうか」
闇の中、1人佇んでいた女性がぽつりと独り言を漏らす
輝く金髪に白い肌、それに合わせるように真っ白な服を着た華奢な体つきの美しい女性だった
しかし、その瞳だけが紅く、爛々と暗く輝き、まるで血を連想させる
「はやく、血を」
この前の獲物の味を思い出し、ごくりと喉を鳴らす
喉が渇く
半端な体にはもっと『栄養』が必要だ
だから・・もっと・・
若くて、精気溢れる、血を!!
「――ん?」
ふと、気がつく
吹いてくる風の中に混じった美味しそうな匂い
極上物だ
前の獲物に続いて更に美味しそうな獲物に会えるなんて中々運がついている
「ふふふ」
怪しい笑みを漏らして、闇へと紛れる
「命、短し、死せよ、乙女」
密かに、呟く
それは自分の事だったのか
自分が食べた女の事だったのか
今は、もう、如何でもいいことだった

――そして、時は少し遡る

「っと、いうわけで〜二人にこの事件を調査してもらいたいんだけど、いいかな?」
瀬名・雫は明るい口調で吸血鬼?事件の記事のコピーを、雫の協力者という名の獲物となった修善寺・美童 (しゅぜんじ・びどう)と蒼王・翼 (そうおう・つばさ)に手渡した
「ふむ、これは――」
記事を読んだ美童は、不快そうに眉を顰めた
吸血鬼と噂される犯人の犯行の手口が美童の美的センスに嫌悪感をもたらしたようだ
隣にいた翼も記事を読んで、不快げに眉を顰め、くしゃりと記事を潰した
「分りました、協力します」
「僕も勿論協力しよう」
美童に続き、翼も頷く
「良かった〜♪それじゃ、このことは任せたよ♪」
そう言うなり、いそいそと自分のパソコンへと戻る雫
彼女は他の依頼もあり、なかなかに急がしそうであった
「雫さんも忙しそうだな。仕方ない、僕達で調査を始めようか」
「そうですね」
翼の言葉に美童も同意する
「僕はサクラ公園に行ってみるけど――キミは?」
「ボクは、少し用意するものがあるので翼さんは先に調査しておいてもらえないでしょうか?」
「分かった、それじゃ――」
翼はインターネットカフェを出て、サクラ公園へと向かう
インターネットカフェから歩いて30分のところに、その公園はあった
周りには大きめの木がぐるりと囲むように植えられており、吸血鬼騒ぎのせいか人気が無く、何処かガランとしていた
「――風よ、この惨劇をもたらした正体は何だ?」
翼は静かに風に問いかける
『――紛い物――』
風が応える
「紛い物?どういう――」
『人に非ず――化物に非ず――』
(どういうことだ?人間でもなければ、噂の吸血鬼でもない?)
「居場所は?」
『闇、夜、木々の間に――』
(夜・・来るのは木の所からか・・)
「――殺害方法は?」
『命の水、飲み干す』
(命の水を飲み干す・・確か死因は出血死・・と、いうことは吸血か)
知りたい情報は揃った
翼は風に感謝の言葉を呟くと、インターネットカフェに戻っていった

「うーん、これでいいかな?」
とあるホテルで美童は部下に揃えさせた服を次々と着こなしていく
似合ってはいるが――全て女物だ
「これで引っかかってくれれば――」
美童が考えたのは囮作戦だった
これだけの犠牲を起こしているのだ
必ず再び現れるはず
服に盗聴マイクをつけ、部下達や仲間にインカムを持たせ、状況を報告する
そして女装した美童につられて犯人が出てきたら一気に――という作戦である
美童は、いかにも若者が着そうな可愛らしい女物の服を選び出し着こなしてみせる
「そろそろ夜ですね、翼さんと合流します。みんな武器の準備はいいですか?」
部下達は一斉に自分たちが持つ拳銃の点検をする
拳銃の中に装弾された弾丸は魔にも効くように銀製で梵字が刻印された弾丸を使っていた
「さて、またコレクションが増えそうですね」
くすり、と美童は嬉しそうに笑みを浮かべた

「はい、翼さんもコレを持って置いてください」
「分かった・・・・それにしても、似合ってるね」
インカムを渡すと翼は美童の姿を見て苦笑した
「ありがとうございます♪それじゃ、いってきますね」
とととっと足早にサクラ公園へと足を踏み入れる美童
翼や部下達は目立たぬように後方で待機していた
「さーて・・上手く引っかかってくださいよ」
照明があまりなく、夜のサクラ公園は薄気味が悪い
それを臆することなく、美童は公園を突っ切るように歩いていく
(うーん・・今日はハズレかな?)
ゆっくり目に歩きながら、何の反応も無い事に少し落胆する
その瞬間――
『ガサッ』
音がした
風の音ではない
明らかに「鳴らされた」音
そして、背後に「何かいる」という直感
「・・・誰・・ですか?」
美童はゆっくりと振り向く
そこには――
「今晩は、お嬢さん」
華奢な体つきの、綺麗な女が立っていた
白い肌にあわせるような真っ白な服、月夜に輝く金髪、そして――まるで血のように紅く、闇のように暗い瞳
「いきなりで悪いけど――あなたの若さをくれない?」
女はそう言い放ちながらにっこりと微笑む
鋭い犬歯が、唇からはみ出した
「あなたは・・吸血鬼、ですか?」
美童は臆すことなく問いかける
その態度に女は少し驚いたように、そして「肯定」というように笑った
「――そうですか、ならボクはあなたに食べられたくないので戦うことにしますね」
美童が言い終わると同時に、翼と部下達が女を取り囲むように現れた
「!?貴様ぁ!!」
美しい顔を歪ませ、女が叫ぶ
「出でよ、ソウル・ファッカー!!!」
「覚悟しろ!!!」
美童は自分が使役するデーモン『ソウル・ファッカー』を呼び出し、半径20m以内の霊的能力全てを無効化する
翼は剣を構え、部下達は一斉に銃口を向ける
「――――――!!」
キィイイイイン
女は口を開くと同時に頭を劈くような高音を出した
「超音波――!?」
美童は苦しそうに呻き、部下達はばたばたと倒れた
「普通」の人間にはコレで十分威力があるようだ
「ハハハ!!ツギハオマエラダ!!」
もはや人間の女の形相でも人間の声でもなかった
例えるなら――鬼、まさしく血に飢えた鬼の顔、そして獣の声だった
「半端モノめ!!」
風から得た情報に賭け、翼は叫ぶ
その単語を耳にした途端、女の顔はますます凶悪に歪む
どうやら挑発には成功したようだ
「ウルサイ!!オマエナンカニワタシノクルシミガワカルモノカ!!!」
女は咆哮をあげ、そして翼に飛び掛った
「――くっ!!」
なんとか剣で振り払ったものの、その力は凄まじく振り払った腕にじんじんと衝撃が残る
「ソウル・ファッカー!!捕えなさい!!」
振り払われた女が体勢を整えようとする隙に、美童はソウル・ファッカーに命じ、作り出した檻で女を封じる
「コンナコウソクナドキカヌ!!!」
女は、爪が尖り凶器となった手で檻を切断し檻から抜け出す
「翼さん!今です!!」
一瞬の隙、それを狙った翼がその体に深々と剣を突き立てた
「ァアアアア!!!」
鬼の絶叫
そして女の体は砂のようにボロボロと崩れていく
否、その体は砂だった
そして一本の骨だけが地面に転がった
「これは――」
「ない」
「え?」
美童の呟きに翼は顔を向ける
「魂が、ない。ここにあったのは――怨念だけ」
美童は面白くなさそうに骨を見つめた
「どういうことだ?」
「半端モノですよ。おそらく、恨みを持った人間の遺体に吸血鬼とかそういう部類が代わりの体を与えたんでしょう」
「あぁ、それで――」
だから、風は「紛い物」といったのかと翼は思う
「なら、血を吸っていたのはこの体を保つため、か」
「おそらくそうでしょうね」
翼の言葉に美童は頷く
「しかし・・誰がこんな事を――」
「調べていったら、分かるかも知れませんが――今は、雫さんへの報告が先だと思いますよ」
「あぁ、明日にでも報告に行こうか」
そして、美童と翼は未だ倒れている部下達を起こしてまわった
「しかし、奇妙な事件だったな」
翼は呟く
どんな恨みがあったかは知らないが、彼女はただの操り人形だったのだ
この裏に何があるかは知らない
「あ、そうだ、骨・・・あれ?」
「どうしました?」
キョロキョロと辺りを見回す翼に美童が問いかける
「骨がない。今までソコにあったのに――!」
「え!?」
美童や部下達も骨を捜すのを手伝ったが、見つけ出せなかった
「――砂になっちゃったんでしょうか?」
「分からない・・とりあえず、明日全て報告した方が良さそうだ」
翼の言葉に美童も頷き、一行は公園を後にした

次の日、美童と翼はインターネットカフェに赴いて昨日の出来事を全て報告した
「へぇ・・それじゃ、あの連続殺人犯は人形みたいなもんだったのね」
雫は、感心したように呟く
「これで被害者はもうでる事は無いだろうが――犯人も出る事もないだろうな」
この手で砂へと還してしまったのだから、と翼は呟く
「でも、まだ裏がありそうですね」
美童の言葉に、雫は深く頷いた
「またそれらしい情報が入ったら依頼を出すよ、今回はありがとね」
雫はぺこりと可愛らしく二人に頭を下げた

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0635】修善寺・美童 (しゅぜんじ・びどう)/16/魂収集家のデーモン使い(高校生)
【2863】蒼王・翼 (そうおう・つばさ)/16/F1レーサー 闇の皇女

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■         ライター通信          ■
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どうも、黒猫です。
今回、初のシリアス依頼となりましたがどうだったでしょうか?(汗
至らぬ点がありましたら申し訳ございません(土下座
続き物っぽくなっているのは、コレを序章として次回から新しくシリーズ依頼を始めようかなっと思っているからです。
またその時は、気がむいたときにでも参加してやってください。
そして、この度の発注ありがとうございました!!