コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


【 金白紅・壱 】

夜、月が柔らかな光を地面に降り注ぐ
「良い夜ね」
1人の女がビルの屋上からその光景を見下ろす
己が閉じ込められていた頃にいつも夢見ていた光景
その光景に嬉しそうに目を細める
月の光に反射してキラキラと輝く金の髪、白い肌よりも更に真っ白な白い服、そして紅くぎらついた光を放つ瞳
その紅い瞳の先には、自分が作り出した『人形』と『人形』の獲物となる人間
人間は必死に逃げていた
その顔に浮かぶは恐怖
息を切らし、つまづきながらも必死で逃げる
死にたくないから?生きていたいから?
「――くだらない」
女がそう呟いた途端、『人形』は大きく跳躍して人間へと襲い掛かる
圧倒的なスピードと力
成す術もなく、人間は押し倒される
そして、人間は人間だった『モノ』へと変わった
「ははは!!!」
愉快、愉悦、快感
『狂気』だ
この何ともいえない高揚感は『狂気』
「早くきて、あたしを、楽しませてね」
自分の気に入りの人形を壊してくれた人間達
誰が壊したかなんて関係ない
自分が楽しければそれでいいのだ
「ふふふ、あははははははは!!!」
金白紅の色彩を持つ女は笑う
女はレイジ・ホワイトと呼ばれていた
そして、女はもう一つの名を持っていた
『 Geisteskrankheit(ガイスティスクランクヒィト) 』
その名の意味は狂った精神
『狂気』である


「――と、いうことなんだけど、協力してくれるかな?」
事のあらましを説明し終えた瀬名・雫が、先程自分が話へと誘った三人に問うた
「吸血鬼騒ぎねぇ――」
話を聞き終え、どうりで朝から女生徒達に避けられてたんだなと一人納得しているのは狩野・宴(かのう・えん)
犯人と同じ金色の髪に白い服、そして紅い瞳を持つ女性である
ちなみに、彼女が女生徒に避けられているのは何時もの事だという事に気づいていない
「偶の休日に来てみれば厄介な事に巻き込まれたな」
宴の隣で呟いたのは、風間・悠姫(かざま・ゆうき)
今日の予定が全部パーになったなと密かに溜息をつく
「やはり、まだ終わってなかったのか」
雫の話を聞き終わり、不快げに眉を顰めるのは、蒼王・翼(そうおう・つばさ)
「まぁ、被害者が増え続けているのだとすれば、早々に解決しなければいけないね」
「そうだな・・私も少し気になるし、その仕事は引き受けよう」
「僕も勿論協力させてもらう。こんなことをする奴は許せないからね」
三人の答えに、雫は嬉しそうに笑った
「ありがと!!私もできる限り詳しく調べてみるね!!」
ぺこりと三人に頭を下げて、雫はパソコンのところへと戻る
「さて、我々も調査と行こうか」
宴の言葉に、悠姫と翼は頷いた

「調査とは言ったもののどうするんだ?」
被害があったという道路を歩きがなら、悠姫が宴に問いかける
上機嫌で歩いていた宴の動きがピタリと止まり、無言で爽やかに微笑んだ
「―――考えてないんだな」
「キニシナイキニシナイ」
はぁーっと隣で道路を調査していた翼が溜息をつく
「前は夜に『人形』が出現していた。多分、今回もそうだろう」
そしてあらかじめ雫から貰っておいた周辺地図の中の被害があった場所にマークを書き込む
「今回は、範囲が広くなってる。――出てきたら、風に聞けばすぐ場所が分かるからいいんだけど。別の場所に同時にこられると危険だ」
「私は主戦力としては役不足だからね、誰かを援護させてもらうつもりだけど――」
「最悪、1人で戦う事になる可能性もあるという事か」
三人は、地図を見ながら被害が出ている場所を確認する
「僕はサクラ公園を。悠姫さんはこの道路を。宴さんはそのまた向こうの道路を調査ってことにしないか?」
「分かった。まだ昼だし、別々に行動しても支障はないだろう」
「了解、それじゃ行ってくるね」
三人は別れ、それぞれの場所を調査する
どの事件現場にも人気がなく、そこだけが孤立しているような、何処か別世界のような印象を受けた
「夜に出てくるといっていたけど、まだ時間はある。さて、どうしようかな」
宴は、キョロキョロと周りを見回す
「――ん?」
周りを見回していた目に飛び込んできたのは輝かんばかりの金色の髪を持つ女
着ている服は真っ白で、その瞳は紅色だった
「金、白、紅、怪しいね」
こっそりとあくまで自然にその女に近づく
「アナタ、近づくときはもうちょっと心臓の音を抑えなさい」
女が突然振り向いて呟いた
「――え?」
クスリと女は笑う
それは優しげな微笑だった
「あなたは――」
「ふふふ、今度会う時はもうちょっと緊張を抑えてからにしなさいね」
ザァアっと強い風が宴をに向かって吹いた
「うわ!?」
思わず眼を一瞬閉じる
再び眼を開けたときには、女の姿は消えていた

そして、時はあっという間に過ぎ夜へと変わる
三人はサクラ公園で合流し、調査の結果を言い合っていた
「僕の所は手がかりになりそうなのは見つからなかったけど、風に聞いてみたら今日此処に金髪の紛い物がいたって知らせてくれた」
「そう。私が調べたところには何もなかったわ」
悠姫が残念そうに結果を報告する
「それじゃ宴さんは?」
「私の所も特に。でも不思議な女性とはあったよ、金髪紅眼で白い服の」
「本当!?」
翼が詰め寄ると、宴は頷いた
「でも、あっという間に消えちゃった」
「そうか。また調べて見る必要があるな」
「そうだね、でもまずは――」

ガサッガササッ

木々から数人の人間が姿を現した
数はざっと8、共通して金色の髪に白い服、紅い瞳――どうやらこの人間こそが『人形』らしい
「奴らの相手をしようか」
宴が眼帯を外し、翼が剣を構えた
『チヲ!!チヲヨコセ!!!』
人形達は飢えたように叫びそのうち3体が悠姫へと襲い掛かった
「悪いけどあんまり遊んでられないの」
悠姫が呟いた瞬間、悠姫の背後の空間がぐにゃりと歪み、無数の武器と鎖が浮かび上がった
「バイバイ」
人形の鋭い爪が、悠姫の顔面へと迫った瞬間パチンと指を鳴らす

ドシュッ!ドガガッ!!!

3体のうち、2体が剣と槍に体を貫かれ、地面へと縫い付けられ、砂へと還らせる
そして悠姫の顔面へと手を伸ばしていた人形は上半身を粉々に壊され、地面に縫い付けられた2体と同じ砂へと還った
『ニンゲンデハナイナ、オマエラハナンダ!!!』
「人形ごときがそんなこと知らなくてもいいと思うけどね」
宴がのんびりと構えながら、叫んだ人形と眼を合わせる
その瞬間、グラリと人形の体勢が崩れた

ザシュッ!!

その隙を狙い、翼は体勢を崩した人形の頭を切り飛ばした
『オノレ!!』
近くにいた人形が翼へと飛び掛る
その瞬間、人形の足に蔦が絡みつく
宴が呼び出した葡萄の蔦だ
『ナニ!?ギャアアアア!!』
いかなる隙をも見逃さないというように翼に剣を深々と突きたてられた人形はボロボロと崩れるように砂へと還った
「あと2体!!」
悠姫が素早く構える
『ガァアアア!!!』
既に思考が獣に変わり果てた人形が宴に飛び掛った
「おっと!!」
蔦を大量に呼び出し、盾代わりにしてその攻撃を防ぐ
「大人しく砂へと還りなさい!!」
悠姫が爪を鉤爪状へと変化させ、人形を引き裂いた
「あと一体!――翼さん?」
悠姫が振り向くと、そこには倒れ伏せた人形に何かを呟く翼の姿があった
「キミを作ったヤツは誰だ?」
『キ・・キョウキ・・ガ・ガイスティス・・ク、クランク・・ヒィト』
ガクガクと震えながら言葉を紡ぐ人形
「何のために?」
『ア・・アソビ・・ア・・アハハハハハハハハ!!!!』
突然狂ったように人形が笑い出した
『アハハハ!!ナンノタメニ?キマッテルジャナイノ、タダノアソビヨ』
パクパクと人形の口が動き、その口からは別の女の声が発せられた
「お前が元凶か!」
『ソウヨ、ワタシノナマエヲシリタイ?』
にぃっと人形が笑みを浮かべる
『レイジ・ホワイト――ヨロシクネ』
ケタケタと人形は笑う
『サーテ、ニンギョウヲコワシテクレタオレイニ、アナタタチノイライシュヲコワシテアゲル』
その言葉にさっと3人の表情に緊張が走る
『ハハハ!!!タノシミニネ、メノマエデズタズタニシテアゲルカラ!!アハハハハ!!」
狂ったように人形は笑い続け、やがて声は止まりボロボロと崩れ砂へと還った
「狂気、か」
苦々しげに翼が呟く
「とりあえず雫さんに一刻も早く報告した方が良さそうね」
「そうだね、今の言葉が本当なら危険だ」
「でも、もう夜中だし――明日を待つしかないか」
腕時計を見れば深夜2時、流石に寝ているだろうしメールで連絡するにもメールアドレスを知らない
「朝、できるだけ早く行ってすぐ合流できるようにしましょう」
そう決めて、3人は別れた
それぞれ、何処か緊張した面持ちのまま――


「義姉さんも趣味が悪い事するわね」
サクラ公園を見渡せるビルの屋上
そこに1人の女が立っていた
金色の髪に白い服、そして紅い瞳の女
女はずっとあの3人の様子を見ていた
「さて、このゲーム――どちらが勝つのかしらね?」
くすりと女は微笑んで、闇へと消えた

そして、辺りは静かな、まるで何事もなかったように静かな夜となった


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【2863】蒼王・翼 (そうおう・つばさ)/16/F1レーサー 闇の皇女
【3243】風間・悠姫 (かざま・ゆうき)/25/ヴァンパイアハーフの私立探偵
【4648】狩野・宴 (かのう・えん)/80/博士 講師

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
どうも、黒猫です。
シリーズ第一回目です、どうだったでしょうか?
至らぬ点がありましたら申し訳ございません(土下座
何かしょっぱなから雫さん巻き込んで大騒ぎな予感がします(ぇ
第二回目も近日中に出しますので、気が向いたら参加してやってください
この度は発注ありがとうございました!!