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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


あやかしの指輪

ーオープニングー

アンティークショップ・レンにはいつものように不思議な品物が入荷して来た。
店主、碧摩・蓮は入荷した品物一つ一つをチェックしていた。
この店に入荷されるものはどれもこれも不思議なものばかり。
アンティークショップ・レンで普通の品というもを見かけた事が無い。
それは店主である蓮の趣向であり、それは店を訪れる人間にも受け入れられて来た。

今日も蓮が選びアンティークショップ・レンに縁あって運ばれて来た品物を見ていた所、店主の蓮が珍しく声を上げた。
「ほう」
蓮は一つの指輪を取り上げるとじっと見つめた。
その指輪は中央に翠の石が飾られたシルバーのリング。
かなり年期が入っているようで、シルバーの輝きはくすみ鈍く光を放っていた。
そのシルバーの部分に比べ中央の翠の石は妖しく光を放っていた。
まるでその石の中に誰かが閉じ込められている、そんな錯覚を起こしかねない人間の瞳と間違うような輝きだった。
蓮はその光を見ると
「これはまた、珍しいものが入って来たね。誰かをお待ちなのかねぇ。」
ふとそんな言葉を呟くとそれを聞いたかのように静かに店の扉が開いた。



ー ジョン・ジョブ・ジョー ー

「全く本当の話なのかわからねぇな。」
ジョン・ジョブ・ジョーはアンティークショップ・レンの店の前でぶつくさと呟きながら煙草をふかした。
ジョン・ジョブ・ジョーの風貌は、赤い髪の毛に赤い瞳。そして適度な身長の割にはがっしりとした体つき。年令は23歳と言った所だろうか
ジョン・ジョブ・ジョーの仕事は廃品回収業者。まあ良く言えばリサイクル業者というものだ。ジョン・ジョブ・ジョーは品物を安く仕入れては高く売る、そんな事を繰り返し金儲けをしてきた。
いつものように仕事をしていたとき、ある仕事先でアンティークショップ・レンの話を耳にした。普通じゃ手に入らない珍品があるという噂。
最近資金繰りに困っていたジョン・ジョブ・ジョーはすぐにその話に飛びついた。
そして今アンティークショップ・レンの店の前に立っていると言う訳である。
「とりあえず入るか。」
ジョン・ジョブ・ジョーはそう言うと豪快に店のドアを開けた。


ー アンティークショップ・レン ー

「おお!ここか。噂の店は。」
煙草を吸いながらジョン・ジョブ・ジョーはどしどしと音を立ててアンティークショップ・レンの店内を物色しはじめた。
「これもいい。しかし安く買って高く売らないとこっちのもうけが少なくなるからな。」
そんな事をぶつぶつ言うと、入り口からはしの商品までぐるりと見回した。
そして店の奥に店主と思われる女性とその近くには黒い髪の毛に青い瞳、そして細身で低めの身長。女の子に間違いそうな感じの華奢な少年が立っていた。
ジョン・ジョブ・ジョーは少年を見ながら年令は中学生くらいか、と思いさらにじっと見つめると少年の手には中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを持っていた。少年の年令には似つかわしく無い代物だ。
「いらっしゃい。何かお探しかい?」
店主と思われる女性は入荷商品をチェックしていた手を止め、入って来たジョン・ジョブ・ジョーに声をかけた。
その声にジョン・ジョブ・ジョーは豪快に答えた
「探してる、探してる。金になるもので安く買えるものはないか?」
ジョン・ジョブ・ジョーは単刀直入に答えた。面倒な話は嫌いだ。用件は簡潔に面倒な話は省く。それがジョン・ジョブ・ジョーのモットーだ。
店主の女性はそんなジョン・ジョブ・ジョーの態度に少し飽きれながらも
「難しい注文だね。これから取引するなら名前を聞いておこう。なんて名前だい?」
そう言うと店のカウンター傍にある椅子に腰掛け足を組むとジョン・ジョブ・ジョーへ尋ねた。
「名前か、面倒だな。でもまあ仕方ない。ジョン・ジョブ・ジョーって名前だ。少し長い名前だが覚えてくれよ。」
店主と思われる女性は少し笑うとジョン・ジョブ・ジョーに向かい
「ジョン・ジョブ・ジョーだね。あたしは碧摩・蓮。ここの店主だよ。」
その碧摩・蓮の言葉にジョン・ジョブ・ジョーは頷き腕を組むと
「よし、碧摩・蓮だな。これから商談をする相手というわけだな。」
そう言うと中学生と思われる少年を指差し碧摩・蓮に向かって
「で、このちびっ子いのはこの店の店員か?それともあんたの子供か?」
と失礼な言葉を吐いてみせた。少年はは口をぱくぱくさせて反論しようとしたが、その前に碧摩・蓮が大きな声で笑いはじめた。
「あはは!よしとくれ。あたしに勝手に子供なんか作らないでおくれよ。」
碧摩・蓮はお腹を抱えて笑うと少年を指差し
「この子は石神・月弥。うちの常連さんさ。」
ジョン・ジョブ・ジョーは石神・月弥を見つめるとその体を触りはじめた。
(華奢な体してんなー)
そんな事を考えながらジョン・ジョブ・ジョーは石神・月弥の体を触った
「!!」
石神・月弥は驚き声を上げようとした瞬間ジョン・ジョブ・ジョーは吸っていた煙草を石神・月弥に吹きかけ
「ちゃんと飯食ってるのか坊主?ちゃんと食べないと大きくなれないぞ。」
そう言うと石神・月弥の肩をポンポンと叩くとポケットの中からいつも常備しているお気に入りのストロベリーミルクのキャンディを出し石神・月弥の手に握らせた。
ジョン・ジョブ・ジョーはうんうんと頷きキャンディーを握った石神・月弥を見つめた。
それが石神・月弥とジョン・ジョブ・ジョーの初めての出会いだった。

ー 石の中に住む人 ー

「俺も忙しい。さっそくだが商談に入らせてもらおうか。」
ジョン・ジョブ・ジョーは碧摩・蓮に向かい単刀直入に言ってみせた。
その言葉に碧摩・蓮は少し考えるとジョン・ジョブ・ジョーに向かい
「あんたの予算を聞いておこうか。商談はそれからだよ。」
と淡々と言った。その言葉にジョン・ジョブ・ジョーは少し考えると
「予算か。言いにくいが今日の持ち合わせは10万程しか無い。」
その答えを聞くと碧摩・蓮はやれやれという顔をすると
「そうかい。その金額だとそうだねぇ。」
碧摩・蓮は座っていた椅子から立ち上がり石神・月弥の持っていた中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを取りジョン・ジョブ・ジョーへ見せた。
「今日入荷した品物だけど、どうだい?」
ジョン・ジョブ・ジョーは見せられた指輪を手に取ると碧摩・蓮を見つめ
「よし、これでいい。で、いくらだ?」
そう言うとポケットから財布を出そうとした。しかしその瞬間どこからともなく
「冗談じゃないわ。何でわたくしがこのような野蛮な男の元に行かねばならないのです!」
という若い女性の声が聞こえて来た。その場にいた三人は同時に
「わたくし?」
と声を重ねるとジョン・ジョブ・ジョーの持っていた中央に翠の石が飾られたシルバーのリングを見つめた。
するとまたどこからともなく女性の声が聞こえてきた
「失礼な方達ね。レディをジロジロと見つめるなんて失礼きわまりないわ。」
石神・月弥は指輪をじっと見ると、二人に向かい
「この翠の石の住人からみたい。」
と言った。すると中央に翠の石が飾られたシルバーのリングからシフォンのような柔らかな布のドレスをまとった女性が飛び出て来た。
翠色の石から飛び出て来た女性は銀色の髪の毛を腰までたらし、耳の上に翡翠の髪飾りをつけている。顔つきは上品でどこかの令嬢もしくは姫君といった感じだ。
ドレスの色は上品な翠色でその女性にとても良く似合っていた。
「わたくしをつける方にはそれ相応の気品がなくてはいけませんわ。」
翠の石から出て来た女性は胸に手を当てるとつんとした顔で3人に言ってみせた。
その態度を見ると石神・月弥は恐る恐るその女性に向かい
「失礼ですが貴女のお名前は?」
と聞いた。すると女性はドレスの裾をそっと持つと
「わたくし?わたくしの名前は翠緑玉と申します。」
そう言うと3人に向かい深々と礼をした。


ー 翠緑玉 ー

「断固拒否しますわ!」
翠緑玉の声がアンティークショップ・レンの店内に響き渡った。
「しかし、あんたは俺が買う事になっている。断る権利はあんたには無い。」
ジョン・ジョブ・ジョーはタバコを深く吸い込むと吐き出した。
(めんどくさい事になった)
ジョン・ジョブ・ジョーは煙草をふかしながらそんな事を考えた。
こんな時はキャンディを口にほおりこみたいが、今持っている煙草を消す灰皿が見当たらない為、ジョン・ジョブ・ジョーは煙草を吸い続けた。
石神・月弥はジョン・ジョブ・ジョーからもらったキャンディを口にほおりこむとその様子をじっと見つめた。
「ともかく、わたくしはこの野蛮な男の元に行くつもりはありませんわ。」
翠緑玉はそう言うと石神・月弥の後ろにすっと隠れた。
「あなたもわたくしと同種なのでしょう。あなたがあの男の元に行く事を考えたらわたくしの気持ちがわかるはずですわ。」
そう石神・月弥に訴えた。
(同類?)
ジョン・ジョブ・ジョーは翠緑玉の言葉を聞き石神・月弥を見つめた。
(同類って何だ?この坊主も翠緑玉みたいなもんってことか?)
ジョン・ジョブ・ジョーはその疑問をぶつけようかと思ったが、これ以上面倒な事になるのはご免だと思いその言葉を飲み込んだ。
石神・月弥はあたまをポリポリとかくと
「うーん、でもあんたはジョン・ジョブ・ジョーに買われたんだからついていくのが当然だろ?」
その言葉に翠緑玉は怒った声で
「わたくしはまだその男のものではありませんわ!そうでしょう碧摩・蓮。」
碧摩・蓮はカウンター傍の椅子に座ると仕方が無いねぇ、という顔をして翠緑玉へと答えた。
「確かにまだあんたをジョン・ジョブ・ジョーに売ってはいない。それは確かさ。でもねぇ、あんたはうちに入荷した商品なわけだしどうするかはあたしが決めるのが当然だと思うのだけど。どうだい?」
その答えに翠緑玉は手のひらをぐっと握ると黙り込んだ。
そのやり取りをしばらく見ていたジョン・ジョブ・ジョーは頭をかきむしり
「あーもう面倒くせぇ!!お前なんかこっちがお断りだ。お高くとまりやがって!」
と突如キレて大声で叫びはじめた。
(俺は面倒な事は嫌いなんだ!くっそー早くここから出て次の仕事に行きたいぜ)
ジョン・ジョブ・ジョーはそんな事を考えながら赤い髪の毛をかきむしった。
「もう、勝手におし。」
碧摩・蓮はひらひらと手を振ると再び入荷商品のチェックをはじめた。
その様子を見て石神・月弥は翠緑玉とジョン・ジョブ・ジョーの仲に割って入り
「まあ、まあ二人とも。落ち着いて。」
と言って二人をなだめた。
「翠緑玉はジョン・ジョブ・ジョーの持ち物になりたく無いんだよね。」
石神・月弥は翠緑玉に聞いた。すると即座に
「そうですわ。」
という答えが返って来た。そして石神・月弥はジョン・ジョブ・ジョーにも
「ジョン・ジョブ・ジョーは翠緑玉を買ったらすぐに転売して自分のものにするつもりは無いんだよね。」
そう聞いた。ジョン・ジョブ・ジョーはむすっとした声で
「そうだ。」
と一言答えた。
「じゃあ翠緑玉は少しだけ我慢すればすむことだと思うけど。」
その言葉に翠緑玉は言葉につまると石神・月弥に向かい
「本当にあの野蛮な男の手元にいるのは少しの間ですのね。」
怒りを押し隠しながら静かな声で答えた。
それを聞いたジョン・ジョブ・ジョーも
「あたり前だ!お前なんかと長く一緒にいられるか!!」
腕組みをするとタバコを深く吸い込み言い放った。
すると石神・月弥はパンと手を叩き
「じゃあ、商談成立!ジョン・ジョブ・ジョーは翠緑玉をすぐに売ればいいんだよ。」
カウンター傍の椅子に座っていた碧摩・蓮からも
「それはいい考えだねぇ。転売先ならあたしが紹介してやってもいいよ。」
そんな声が聞こえてきた。翠緑玉も少し考えたあと
「まあ、碧摩・蓮がわたくしの居場所を探して下さるのなら・・・」
と言いはじめた。石神・月弥と碧摩・蓮の言葉にジョン・ジョブ・ジョーも渋々ながら
「わかったよ。すぐに転売すりゃあいいんだろ。」
と言って碧摩・蓮に10万円を手渡した。碧摩・蓮はお金を受け取ると
「翠緑玉はあんたの所にいたくないらしいから、転売先が決まるまでこっちで預かるよ。」
ジョン・ジョブ・ジョーは抗議の声を上げようとしたが、翠緑玉は
「わたくし、絶対野蛮な男の所には参りませんわ。」
というと碧摩・蓮の後ろに隠れた。ジョン・ジョブ・ジョーは手を白くなるまでギューと握ると吐き捨てるように
「くっそー、わかったよ!!」
石神・月弥は楽しそうに手を叩くと
「これで一件落着!」
そう言うと翠緑玉に向かって笑ってみせた。


ー その後 ー

その後翠緑玉は碧摩・蓮の紹介により大手企業の社長令嬢の手にわたった。
ジョン・ジョブ・ジョーも転売先の提示した金額に満足し、アンティークショップ・レンをあとにした。
そして石神・月弥は転売先の社長令嬢の元に月に1回は通い翠緑玉の話し相手になっていると言う。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
整理番号 4726/ PC名 ジョン・ジョブ・ジョー (ジョン・ジョブ・ジョー)/ 性別 男性/ 年齢 23歳/ 職業 廃品回収(リサイクル業者
職業の説明

整理番号 2269/ PC名 石神・月弥 (いしがみ・つきや)/ 性別 男性/ 年齢 100歳/ 職業 つくも神


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■         ライター通信          ■
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翠の石に隠れた住人の話はいかがでしたでしょうか?
アンティークショップ・レンに入荷した品物としては珍しくないものかもしれませんが、楽しんでいただけると嬉しいです

>ジョン・ジョブ・ジョーさま
はじめまして、月宮です。ご注文頂き有り難うございました。
チンピラっぽい感じと言う事ですが、それが表現できたかどうかが心配です。
ヒヨッコの私にご注文頂き本当に有り難うございます。
また機会がありましたらよろしくお願いしますvv