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＜東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン＞
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夜にも奇妙な悪夢 〜バニーガールＤＥ大パニック☆〜
●オープニング
――――悲劇はここから始まった。
アンティークショップ・レン。
「なにいい！！！ これはなんじゃーーー！！！！！！！」
店内はバニーガールの山、山、山！！
「いやねえ、納品予定のアイテムにちょっと変り種が紛れ込んでいてねェ」
と、 人造六面王 羅火（じんぞうむつらおう・らか） の絶叫にも動じることなく、店長の碧摩蓮が姿を見せた。
バニーガールの格好をして飄々とキセルをふかしている蓮に思わず目が点になる。いつの間に時間を止める能力を身につけたんだこの人‥‥。
「そう硬直するな。それで折り入って頼みがあるのだが、この騒動の原因でもある《呪いの兎》を捕まえてくれないかねえ。どうだい？」
「《呪いの兎》だと？」
「ああ、兎の人形なんだが、これが生きてるみたいにピョンピョン動き回ってさ。その上、人に呪いまで掛けちまうという性質の悪さで、封印してあったんだが檻から逃げ出しちまってねえ」
「ううむ、呪いのう‥‥」
店内に溢れるバニーガールを指差した蓮に納得する。なるほど。それは確かにおぞましい呪いかも知れない。
「なに他人事みたいに言ってんのさ。アンタ、自分の格好を見てわかっていってるのかい？」
これは一夜限りの悪夢。深遠の淵――。
●バニーガールＤＥ大パニック☆
人造六面王 羅火は、祈るような気持ちでもう一度自分の姿を確認した。
「な、な、な‥‥‥‥」
竜の目が完全に点になってる。
やはり、何度見返しても体は女性のそれだ。
アンティークショップ・レンの店内においてある姿見の鏡に視線を向けると、バニーガールになってる自分の全身が丁度収まるように写っていた。
――――大胆な黒のボディスーツに大人びた網タイツ。クビに白のカラーと紅の小さなリボンをあしらい、唇には背伸びしたようにアダルトな雰囲気でルージュまでさりげなくひかれている。
そして極めつけは頭の上でピョコンと揺れているこのウサギの耳。
通称ウサ耳。
「なんじゃこれはあああああ！！」
赤髪に小麦色の肌をした美女のバニーガールがそこにいる。
条件反射のごとく引き抜くようにそれをひっぱったが、ウサ耳は根付いたようにしっかりと頭から外れることはなかった。
いつの間にか自分もバニーガールになっていた。この呪いを解くためには、兎の人形を捕まえるため街中に行かなければならない‥‥。
ただ絶叫するしかない。
レンを揺るがすように叫んでいると羅火に声がかけられた。振りかえった瞬間、羅火はまた呆然となった。
銀髪のショートヘアをしたバニーガールの 神納 水晶 がいる。
「――――ま。どうにもならないんじゃ仕方がないな」
「待てぇ！ ぬしはなにゆえ平然と受け入れておるか！？」
あっさりと状況を受け入れている水晶に、思わず羅火は突っ込まずにはいられない。
「だってさ、どうにもならないものはどうにもならないだろ？」
「では、ぬしはこの事態をいかが致すつもりだ」
「話は聞いたはずだぜ。街に捕まえに行くんだよ。その《呪いの兎》ってヤツをな」
水晶の答えに、羅火の空気がピキーンと凍る。
捕まえに行く 街に
バニーガール姿で
「うおおおお！！ それはこの格好で街中へ行けと申すか！？」
「キャハハハ！ アンタら、アタシを笑い死にさせる気？」
羅火の使い魔である牝の狗鷲、琥珀がはやしたてる。ギロッと目つきで目つきで鬼を射殺すような羅火。自分の使い魔にまでおちょくられる始末だ。
「五月蝿い！ しばし黙っておれ！」
「赤い髪のウサギさんが怒ってるよ！！ キャハハ！」
バニーガールによる威嚇に対して一向にいうことを聞く気配を見せない琥珀は愉快そうに笑い続けるが、水晶は全くひるまない。
「で、《呪いの兎》はどんなヤツだ？」
「んー、普通にウサギの人形だね。白くって、２０から３０センチくらいかい？ とにかく生き物みたいによく動いてるから一目でわかる」
「ま、女の体に入っていたこともあるんで女体化は気にならないんだが、それよりバニーガールというか――この格好はどうにかならないか」
妖刀として暴れてた頃に一時封印されたコトがあり、その直前、江戸時代後期頃だろうか、女性の体に入っていたこともあった。だからかもしれない。女体化はそれほどもないが、それでも露出過多の衣装を着せられているという体験は衝撃的だ。この異常なまでの恥ずかしさ。
「ぬしは気にしないようじゃが‥‥」
羅火はブンブンと頭を振った。
もう一度鏡を覗き込む。
じーーーーーーーーーーーーーっ。
‥‥ちょっとだけ、うつくしいかも、しれぬな‥‥。
――――！！？
羅火は頭から湯気を噴いて鏡の前から飛び退った。アブナイ。今、すごく危なかった‥‥おかしな世界に引き込まれかけた‥‥！！
これではまるで変態ではないか。
しかもこの姿で人通りに出て行かなければならないとなると、まさに生粋のまごうことなき変態。そう。変態資格２級くらいは楽にありそうだ。
顔を真っ赤にしてどうにか気持ちを沈静化させるべく早鐘のようにドキドキうるさい心臓をなだめように胸を押さえた。しかし、本能はどうしても今後の運命の展開を猛回転で予想してしまう。
‥‥街中に突如現れたバニーガール、好奇の視線を向けてくる無数の眼差し、羞恥に耐えながら街中を走らされ続けるわし‥‥。
どのような騒ぎになるか想像もつかない。というより想像すらしたくない。
羅火は悩む。恥ずかしさもそうだが、より困難な問題があった。
季節は冬だ。
冬の寒さでこの露出は自殺行為としか思えない。
コートを着て寒さをしのごうと考えた羅火だが、コートを羽織った途端、ぼうんと音がしてコートが消えてしまった。
「ぬおおおおお！！ これはわしに対する挑戦かああーーー！！！
一応それでも寒さはなくなっていた。
羅火は大きく深呼吸すると深く息を吐き出し、覚悟を決めた。
こうなっては、可及的速やかに自分の全力を持って《呪いの兎》とやらを捕まえねばならない。
この姿で一生を過ごすわけにはいかないのだ。
☆
水晶は、力いっぱいドアを開る。
そのまま顔を上げて大声で叫んだ。
「羅火、さっさと行くぜ！！」
立ち止まることなく水晶は一気に駆け出していく。
「待て！！ わしも行く！！」
水晶の背中を追いかけて羅火も外に飛び出した。
普通に走っている銀髪のバニーさんと電柱の影に隠れながらコソコソと移動する赤髪のバニーさんというこの上なくあやしくも目立つ存在が人目を引かないはずもない。
通りは人で溢れている。ここで立ち止まっては全てが終わりだ。振り返ってもダメだ。顔を上げるなど論外以外の何者でもない。
「お、オイ‥‥なんだあれ？」
「――――バニーガールだ」
「何かの宣伝？ それともパフォーマンス？？」
「こんな寒い中ですごいわねぇ」
聞こえぬ聞こえぬわしには何も聞こえぬーーーーーー！！！！
羅火は自分に言い聞かせるように走り続けた。
街中を軽快に走っていく謎のバニーさんに驚きと好奇と入り混じった通行人たちの視線が注がれる。
「うぬぅ〜、‥‥一刻も早くウサギを捕まえねばどうかしてしまいそうじゃ」
このような姿、もし知り合いにでも見られようなら末代までの恥であろう‥‥。
はたと一人の男性と視線があった。
お互いに硬直すること時間にしてほんの数秒ほどだ。
でも、それは永遠にも等しい時間のように感じられた。その目つきから自分がどんな風に見られているのか明瞭に悟ることができる。
上から下まで、まさに舐めるように眺められるという言葉通り。羅火バニーさんは全身に鳥肌を立てて逃げ去った。
「コラ！ 水晶、わしを置いていくでない！！ ぬしはどうして平然と街中を走れるのじゃ」
「下手に隠すよりも堂々としてた方が怪しまれないだろ？」
「理屈としてはわからなくもないが‥‥」
「ふふふ、諦めて開き直れよ。お話はそれからよん♪」
「はあ？」
女言葉、今のは聞き間違いか？
と不吉な予感を覚える羅火を差し置いて水晶は通りかかった男子高校生に声をかけた。
「ね、坊や‥‥兎の人形を近くで見かけなかったかしら？」
「わ！ その、――さっきこの先の通りでそれらしい人形が走っていくのを‥‥」
「あ・り・が・と・う‥‥素直な坊やは好きよ。これはお礼ね、チュッ☆」
水晶は、もはやノリノリですらある。
心から楽しそうに人々に投げキッスを振りまきながらも、入手した情報に従い大きな交差点で止まった。
見つけた。
獲物を捕まえるには、まずは位置を捉えなければ追いかけられない。その対象を交差点の向こう側に見つけたのだ。
ウサギの人形が水晶に気がつき身をひるがえす。
「ち、待ちやがれ――！」
水晶は周囲も気にせず飛び出すと、自動車を次々とを避けて、人並みを軽やかにかわしていく。
しかし、その先には待ち伏せていたように拳を鳴らしながら立ちはだかるもう一人のバニーガールが‥‥。
「ほほーう、この糞兎がすべて元凶かの、これはきっちり仕返しをせねばのう」
身を翻した兎の人形を羅火と水晶が追う。
しかし、思わぬ事態が待っていた。
《呪いの兎》が通り過ぎた後では、明らかに異質な空気で包まれていくのだ。
なんと、ウサギの通り過ぎた人々が次々と『バニーガール』へと変わっていくのだ。
呪いは感染していき次々と街中にバニーガールが広がっていく。
「わしは知らぬ、わしは知らぬ、わしは知らぬーーー！！！」
何も見なかったことにしてとにかくウサギの捕獲に専念する。
《呪いの兎》は人々の頭上を越えるように跳躍した。
野生のウサギにはあり得ない２０〜３０メートルはある跳躍で建物の壁面から壁面へ、あるいは看板、またあるいは電柱へとジャンプを繰り返して逃走していく。まさに脱兎の如くとはよく言ったものだ。
「たしかに並の動きじゃないようだ。だが、わしらに出会ったことを後悔するがよいぞ‥‥逃がしはせぬ！！」
ウサギの人形は普通のウサギに比べて動きは素早かったかもしれないが、今や水晶と羅火の敵ではなかった。
羅火が行く手を遮りラグビーボールをキャッチするように《呪いの兎》を捕まえる。同時に上空から着地した水晶が本体である刀をウサギの目の前に突き立てた。
「――――解呪！」
瞬間――――。
ボウン。
羅火を包んだ煙が晴れた。
「呪いが、解けたか‥‥？」
しかし、それは人形が消えた煙だった。
自分の体を見るが、服装は依然としてバニーガールのコスチュームのままで、呪いが解けた様子はない。突然、着信音が鳴る。
『蓮だ。呪いは消えたけどね、効き目はしばらく残りそうだからそこのところよろしく』
それだけ言って電話が切られる。
ツーツーツー。
羅火はぺたんと地面に座り込んだ。脱力したまま目の前の光景を眺める。街中にバニーガールが溢れ返り、まるでバニーガール祭だった。
悪夢はこれからが本番といわんばかりに周囲は喧騒に包まれ続けている。
ふと側にあったショーウィンドウの窓ガラスに写った自分の姿に目をむけると。
「ぬ‥‥」
バニーガール姿の自分が映っていた。
――――もう、どうとでもなるが良い！！
その時、ゆるやかな風が吹く。
頭にくっついた可愛らしいウサ耳がふわりと揺れた。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
【1538／人造六面王 羅火（じんぞうむつらおう・らか）／男性／428歳／何でも屋兼用心棒】
【3620／神納 水晶（かのう・みなあき）／男性／24歳／フリーター】
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、雛川 遊です。
一夜限りの悪夢へようこそ。
シナリオにご参加いただきありがとうございました。
半定型形式ということもあり一風変わったシナリオになりましたが、悪夢のお味はいかがでしたでしたか？
トンデモナイ非常識な夢にて永遠に繰り返される素晴らしき宴を手に入れました。夢から覚めるも永遠に沈むも、すべてはあなたが望まれるままに――。
なーんて。本編は一夜の夢でして、描写はされていませんが「いやな夢を見たなあ‥‥」と汗かきつつ目を覚ましているはずですのでご安心をー。‥‥多分ね。（え？）
――にしても今回、やけに男性キャラクターのご参加が多かったのは何故‥‥？
それでは、夜にも奇妙な悪夢《ナイトメア》から無事目覚めることを祈りつつ‥‥。
＞羅火さん
一夜限りの悪夢へようこそ。
それと作成が遅れ申しわけありませんでした。
半定型形式ということもあり一風変わったシナリオになりましたが、悪夢のお味はいかがでしたでしたか？
というわけで水晶さんと共同プレイです。プレイと呼ぶにははばかられる雰囲気もあるのですが‥‥。いやー、羅火さん総受けですなー（総受けとかいうな）
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