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◆初診
「エイダ・ブリトニー HGSね……」
加登脇美雪はカルテを見て呟く。
カナダから留学して来た特殊疾患の少女。
先天性高機能遺伝子障害という、未知の病気を持ち能力があるという。ただ、彼女自身の性格は普通らしいが、HGS制御装置をつけていないと何時能力が暴走するかわからないそうだ。
副産物として、特殊能力を持つが、どこかに欠損部分があるとわかるととんでもないことになる。今までサイオニックや最新医学による遺伝子治療を試みたが、その“穴”がわからないため、能力制御を優先させる事に。
既に、その手のスペシャリストとして加登脇美雪にエイダ・ブリトニーの担当医として白羽の矢が建ったというのだ。
「さて、どんな子かしらね?」
マインドシールド解除。
対テレキネシス防御展開。
サイブロッカー発動。
まず、自分の能力を調整していく。
「初めてのHGSだから、緊張するわ……」
加登脇はHGS論文を読んだが、初めて診るのであった。
とは言っても彼女自身……長い時間生きているので実のところ、驚くことではないのだが。
エイダはあやかし荘近くのバス停でじっと待っていた。手にはしっかり紹介状を握っている。
「どんな人……なのかな? 加登脇先生って」
背中には3対の小さな翼をつけたリュックを背負っている。
その翼がピクピク動いていた。
正確にはリュックに翼はついていない。
彼女の能力で翼が現れるのだ。
障害の為に体重は何故か100kgを超す場合があり、実のところ制御装置をつけていても緊張のあまり発動している様なのだ。
「うぐぅ。いけない……深呼吸……そしてピアス」
大きく深呼吸して、ピアスを弄る。
翼は殆ど消えたが、上の1対だけは可愛いリュックアクセサリになっていた。
そしてバスがやってきた。
バスに乗って30分かかったのだろう。
通称「癒しの館」と言われる井ヶ田総合病院。ここはかなり大きいのだが療養所のような落ち着きがある。新館は鉄筋コンクリートだが、加登脇が居る場所は旧館。
受付に向かうエイダは、流暢に日本語で招待状とここに来たことを話す。
「はい、エイダさんですね。少々お待ちを」
受付の看護士がパソコンでデータ検索していた。
奥の方では、電話の子機とおなじ携帯電話で患者が来たと別の看護士が話をしている。
物々しさはない。
「うぐぅ……何か違う……」
彼女は不安になった。
カナダでは、彼方此方に点滴を打たれ、まるでモルモットのようだった。
此処でもおなじ事になるのだろうかと不安になる。
その時、パタパタとサンダルの音が聞こえた。
眼鏡をかけて、白衣に少しラフっぽくスーツを着こなしている女性がやってきたのだ。
「あなたが、エイダちゃんね?」
「あ、はい」
いきなり、名前を言われたので、驚くエイダ。
そこで、制御できず彼女の心を読んでしまう。
――大丈夫よ
――え?
既に見越していたのか、加登脇の心は純粋にエイダと仲良くなりたいという気持ちなのだ。
しかも、サイオニクス暴走を防ぐため滅多に使わない別のサイブロッカー能力も展開している。
マインドブランクを展開していない。
其れよりも、
「私が、あなたの主治医になる加登脇美雪。宜しくね」
と、彼女の声がとても安堵感を与えるモノだった。
「あ、はい。ボク、エイダ。エイダ・ブリトニーです!」
日本に来て、おそらく初めての笑顔を見せたエイダであった。
「既に“読んで”いるだろうけど、念のためにあなたからHGSを聞きたいの。個人差はあるから」
と、診察所にて問診が始める。
「原因不明の遺伝子障害で、現代医学では無理と聞いています。でも……」
「でも?」
「あははは、ボク、よくわかんないんです!」
実際特殊な能力があるという実感はあっても、感情も理屈でも理解していないらしい。
「ふふふ、大丈夫だから。流石に遺伝子については専門外だけど、その制御装置無しで能力制御できればと思っているわ」
「え? できるんですか?」
「能力暴走者の治癒は私が殆どやっているから。そっちが専門なの」
加登脇はニコリと笑う
「すごいー!」
感心するエイダ。
「では、制御装置外して、疲れない程度で展開してみて。すでに私がサイ・ブロックしているから暴走することはまず無いと思うから」
「はい」
と、制御ピアスをオフにする。
パソコンのHDDの様な音が大きく鳴り響き、エイダの背中に3対の翼が現れた。
そして、加登脇の机に置いてあったESP反応センサーがSPS(サイオニクスパワーストレングス)値をはじき出している。
「ディーヴァね……綺麗よ」
ディーヴァ……天使のことである。3対の翼をみての事だろう。
「うぐぅ はずかしい」
赤面するエイダ。
戸惑いながらも、暫く加登脇と話をしていくウチに、心を開いていき、あやかし荘と神聖都の出来事を話していた。
「たしか、あやかし荘には先天性神格覚醒者の世話をしていた人が……あの人も特別だけど」
と、ある人物を思い出す加登脇。
「え? 見たこと無い」
「忙しいみたいだから。でも“蓮の間”にお邪魔すれば会えるかも」
「うん」
|Д゚) 蓮の間 かわうそ? よくいく
いきなり現れた超謎生物K。
「かわうそ? エイダちゃんが驚くからいきなり現れるのは止めなさい」
加登脇がかわうそ?を叱る。
|Д゚)ノ かたいこといわない
ナマモノ反省無し。
エイダは、固まっている。
|Д゚) てんしーv
小麦色、エイダをみてはしゃぐ。
「か、かわいいいい!」
と、エイダはいきなりかわうそ?を抱きしめた。
(;´Д`) いやー!
メキボキバキと良い感じの音がする。
「あらら、気に入られちゃったみたいね」
クスクス笑う加登脇。
どうも彼女のHGSの副産物は、イオニクス以外に“怪力”もあるようだ。
元々HGSは、前述しているとおり、遺伝子欠損があり、疲れやすいし、病気に対して抵抗力低いなどという症例があるのだが、通常の人間が使用する肉体能力をほぼ100%引き出せる事などがあるし、知能も高いと言う統計的結果があるらしい。感情が高ぶれば、際限がない。コレを暴走と呼ぶ。
SPSはとうとう1kを超しそうになるので、加登脇がオフにする。そして
Eブロックを全開、
「エイダ、其れぐらいにいないと可愛い小麦色ちゃんがしんじゃうわよ」
と、相変わらずの笑みで彼女に言った。
「は、ご、ごめんなさい!」
彼女は直ぐに小麦色を離した。
かわうそ?は顔面蒼白になり、失神している。
「ああ、うぐぅ! ど、どうぢよう!」
慌てるエイダ。
加登脇が抱きしめる
彼女の暖かさが心地良い。まるで母親に抱かれたような。
感情の高ぶりもなくなり、落ち着くエイダ。
まぁ小麦色は無視の方向で。
|ДT) <ひどい〜 がくっ
サイ・ブロックのおかげで、周りの物品は壊れなかった。
「これからも、よろしくおねがいです!」
エイダは、加登脇にとても懐いた。
「はい、よろしくね、エイダちゃん」
少女の頭を撫でる加登脇。
そして、丁度バスが来たのでエイダは元気に手を振って加登脇と別れた。
「また〜!」
「はい、またね♪」
好スタートと言っても良いだろう。
さて、あれは? と……
例の小麦色は現在ICUにいるらしい。内臓破裂だそうな。しかし、ナマモノだから大丈夫だろう。
――総合病院といって動物も診るのかというツッコミな無しです。つか、ナマモノに突っこんでも意味がありません。
End
■登場人物
【2006 エイダ・ブリトニー 13 女 留学生】
【NPC 加登脇・美雪 ? 女 精神科医】
【NPC かわうそ? ? ? かわうそ?】
■|ДT) 通信
※ 現在ICUで治療中によりナマモノからの通信はありません(ぉ
加登脇「これからも宜しくね」
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