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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


双六!【青の書編】


□オープニング

 「双六をしましょう!」
 その日、突如草間興信所を訪れた少女はそう言った。
 鼻息も荒く、なにやら張り切った様子の少女に草間武彦は盛大なため息をつくと首をひねった。
 「・・・なんで?」
 「実は最近みょうちきりんなものを購入したんです。」
 少女・・紅咲 閏はそう言うと、文庫本サイズほどにたたまれた紙を手渡した。
 ・・双六の紙だ・・・。
 右隅には“ドキドキ☆人生の縮図のようだよ!大双六大会!【青の書】”と書かれている。
 ・・・なんとも力の抜ける題名だ。
 「青の書って言うのは・・コレが入っていた箱が青かったからだと思うんですけど・・。」
 閏はそう言うと、すっと青い箱を取り出した。
 そこにも“ドキドキ☆人生の縮図の・・・(以下略)”と書かれている。
 「・・と言う事は、青以外にもあるのか?」
 「・・ふふ・・秘密でーす。・・それで、どうしてココにコレを持って来たかと言いますと・・。」
 閏は武彦の耳にごしょごしょとなにやら囁いた。
 「実現する!?コレに書かれていることがか・・!?」
 「そうでーす!なんと、実際に書かれてることが起きちゃうんです!なんだかとってもお得でしょう!」
 ふんと、力瘤を作りながら自慢げに話すが、まったくもって得ではない。
 「あ〜〜そう言うのは管轄外だ。他をあたって・・。」
 「え〜!ここだから持って来たのに〜!!もしかしたら、億万長者になるとかって言うのも・・。」
 「・・・よし!分った!やろう、ここで!!」
 武彦は力強くそう言うと、閏の手からそれをひったくった。
 その影で閏が小さく舌を出していたのは・・見ていなかった・・・。

 ○如月 緑樹

 その日、如月 緑樹は何の気なしに草間興信所へと足を向けていた。
 散歩をしようと思い外に出たのだが・・たまには草間武彦の元を訪れるのも悪くは無い。
 冷たい風を全身に受け、銀色の髪を風になびかせる。
 『・・エンジュ・・この道・・。』
 「そう、久しぶりに武彦さんの所に行ってみようかなって・・・。」
 『なっ・・新手のイヤガラセかっ!?』
 肩口にしがみ付きながらわめく相棒に向かってほんの少しだけ微笑むと、緑樹は言った。
 「何かあるかもしれないでしょ?」
 『・・何時もそう言ってるけど、ロクな事があったためしがあったか?』
 ノイはブスっとした口調で言うと、緑樹の顔を覗き込んだ。
 『・・まぁ、エンジュが行きたいって言うなら、別にいいけど。』
 小さく呟くノイに苦笑すると、緑樹は草間興信所へと歩を進めた。

 草間興信所とかかれた扉をほんの少しだけ見つめると、緑樹はドアを押し開けた。
 ドアが開いた途端に、何者かが緑樹の腕をガシリと掴んだ。
 あまりの事に、緑樹は驚きの視線を腕へと向けた。
 見慣れない少女だった・・・。
 「ヨォッシャァっ!これで8人目ゲットォー!私ってば、すぅっごぉーい!」
 少女はそう言うと、小さくガッツポーズをした。
 ・・・なんなのだろうか・・。
 『ほらみろ、ロクな事が無い。』
 肩口でノイが呆れたような声をあげる。
 「さぁさぁ、こっちへこっちへ!」
 少女は緑樹の腕をグイグイと引っ張ると、椅子の上に座らせた。
 既に興信所に集まっていた面々の視線は、机の上に置かれている文庫本サイズほどに畳まれた紙へと注がれている。
 「一緒に双六やリマショー!」
 少女は緑樹の瞳を覗き込みながら微笑んだ。
 しかし、その瞳は笑ってなんかなかった・・・。


■さぁ、双六を始めましょう!

 ぐるりと円形に座らされた一同の顔を、紅咲 閏が順々に眺める。
 そして、にっこりと微笑むと机の上の双六を取り上げた。
 「さぁさぁ、皆様!コレより双六を開始するための手続きを開始いたしまぁ〜す!」
 「・・手続きなんてあるの?」
 「はい、ありますよ〜。さぁ、まずはシュライン エマさん!こちらに来て・・。」
 閏はそう言うと、シュラインを手招きした。
 シュラインがおずおずと席から立ち上がり、閏の前へと歩み出る。
 閏はさっとシュラインの手を取ると、双六の上に乗せた。
 「はい、コレでもう大丈夫ですよ!次、神納 水晶(かのう みなあきら)さん!」
 水晶もシュラインと同じように双六の上に手を乗せる。
 「次、深山 揚羽(みやま あげは)さん!」
 「ジュジュ ミュージーさん!」
 「狩野 宴(かのう えん)さん!」
 「斎 黯傅(いつき くろもり)さん!」
 「葉陰 和歌(はのかげ わか)さん!」
 「大曽根 つばさ(おおそね つばさ)さん!」
 「如月 緑樹(きさらぎ えんじゅ)さん!」
 ポンポンと、リズム良く名前を呼んでは双六の上に手を乗せさせる。
 もっとも、手ではなく肉球を乗せたものもいたが・・・。
 「次、草間 武彦さん!」
 名前を呼ばれた武彦が、まってましたとばかりに立ち上がると双六の上に手を乗せた。
 最後に、閏も手を乗せてポンと双六を机の上に放り投げた。
 「これで手続き終了です。」
 「・・アレだけネ・・?」
 「はい。これでもう皆さん・・双六をやらざるを得なくなりました!」
 閏はにっこりと微笑むと、ぴっと、細く切った紙を取り出した。
 「・・これはなんだ?」
 「順番を決めるための紙ですさぁさぁ、皆様引いてください!」
 閏はそう言うと、グイっと皆の目の前に紙を突き出した。
 緑樹から時計回りに紙を引いて行く・・・。
 「さぁ、皆さん引きましたね?まだ紙は見ないで下さいっ!これより注意事項をいくつか説明します。」
 ピット人差し指を突き出す。
 「一つ、双六は最高6人グループでやらなければなりません。よって、5,4で皆様を2つに分けたいと思います。5人チームの方には草間さんが付き、4人チームの方には草間さんと私が付きます!」
 閏は自分の持っていた紙を表に返した。
 そこには青い星の絵柄が書かれている・・・。
 「星の絵柄が書かれている方が、4人チームです。次に、これが最重要注意事項なのですが・・・。」
 一呼吸置く。
 その間が、なんとも不気味だ・・・。
 「双六は一度始めると途中で終了できません。皆様、今のうちに支度を済ませてください。」
 “何の支度ですか?”などと間抜けに聞くものは誰もいなかった。
 言わずとも知れた事だった・・それを人は暗黙の了解と言う。
 気のきいた数人が席を立ち、茶菓子だなんだと持ってくる。
 更にもっと気のきいた人達は、一人一人に救急セットを手渡していく・・・。
 「それにしても武彦さん、どっちもの双六に参加するなんて、大丈夫なの?」
 「あぁ、もし2つともで憶万世長者になったら、一気に兆億万長者だな!」
 無邪気に笑う武彦が、何故か酷くかわいそうな・・それでいて純粋な人のように見えてくる・・・。


 ●星グループ

 「草間さんって、実はポジティブシンキングな人やったんやねぇ。」
 つばさのそんな呟きに、少々緩んだ顔のまま武彦が振り返った。
 「なにがだ?」
 「双六にもよるけど、“破産”か“株価暴落”とか、けったいなところでは“呪い”で二回位休みとかぎょーさんあるのにな。」
 バサバサバサっと、手に持っていた紙を床にばら撒く武彦。
 その顔はまさに『そんな事考えもしませんでした』と言っている。
 和歌が遠くの方を見やり、ため息をつく。
 『な?ロクな事なさそうだろう?』
 「・・そうだね・・。」
 ノイと緑樹がため息混じりに言い・・黯傅が馬鹿にしたように一つだけ鳴いた。
 「・・草間さん、考えてなかったんですか・・?」
 緑樹の素朴な疑問に、武彦はグルリと閏を見やった。
 「・・憶万長者になれるんだろう・・?」
 「さぁ、保障はいたしかねますが。」
 ケロリと言ってのける閏の、人見の奥はやはり笑っていない。
 冷たい空気の流れる中・・。
 「まぁ、始めるとするか。」
 和歌の言葉で双六はスタートした。

 ○第一投目

 黯傅→5
  『貴方の目の前に小さな箱が見えますね?双六!からのプレゼントです。どうぞ受け取ってください。』
 グラリと視界が揺れ・・目の前にあったはずの興信所の風景が掻き消えた。
 代わりに現れたのは、RPGゲームなどで良く見かける宝箱だ・・。
 黯傅はそっとフタに手を乗せると、パカリと開いた。
 そこにはビスクドールが横たわっていた。
 (ビスクドール・シンディー入手)

 和歌→3
  『生麦生米生卵、隣の頭はゆで卵の禿た孫。と微笑みながら言ってください。』
 和歌はにっこりと(物凄く営業っぽい)微笑を撒き散らした。
 「生麦生米生卵、隣の頭はゆで卵の禿た孫。生麦生米生卵、隣の頭はゆで卵の禿た孫。生麦生米生卵、隣の頭はゆで卵の禿た孫。」
 もはや文句のつけようがないくらいに完璧だった。
 場内外を問わず、拍手喝さいだ!

 つばさ→5
  『貴方の目の前に小さな箱が見えますね?双六!からのプレゼントです。どうぞ受け取ってください。』
 グラリと視界が揺れ・・目の前にあったはずの興信所の風景が掻き消えた。
 代わりに現れたのは、RPGゲームなどで良く見かける宝箱だ・・。
 つばさはそっとフタに手をかける、パカリと開いた。
 そこにはビスクドールが横たわっていた。
 (ビスクドール・シンディー入手)

 緑樹→2
  『さて、ここは舞台の上です。貴方がジュリエット、貴方の前の方がロミオ。『あぁ、貴方はどうしてロミオなの!?』と感情タップリに言ってください。そして・・ロミオさん、貴方が何故ロミオなのか説明してあげてください。』
 ボンヤリと視界が霞んだかと思うと、強烈なライトの光を浴びせられて緑樹は瞳を伏せた。
 ライトの熱は四方八方から緑樹を照らし出し、熱くさせる。
 ぱっと服を見ると・・何故かアンティークドレス調のドレスに身を包んでいた。生地はポンパドゥール風だ・・。
 細身の緑樹には良く似合っている・・。
 「おぉロミオ・・。貴方はどうしてロミオなの?」
 緑樹の口から、勝手に言葉があふれ出す。
 その声は少しだけ躊躇したような響きを持っていた。
 ぱっとスポットライトが別の場所を指し示す。そこには、ピシっとした王子服を身に纏ったつばさの姿があった。
 つばさには、黒の生地が良く似合う・・。
 「・・おぉ、ジュリエット!モンタギューとキャピュレットの・・」
 つばさがかなりノリノリで演技に浸りつつ言う。
 何かの賞が取れそうなほどの迫力があり、素晴らしいつばさの演技は、見るものを感動の渦へと巻き込んだ。
 
 武彦→4
  『トラップです!大変です!頭上から貴方へ向かって金盥がっ・・!!』
 「・・金盥・・?」
 首をひねり、上を向いた武彦の顔面に・・凄まじい音を伴って金盥が落ちた。
 グワングワンと響く金盥の下。上を向いたままの武彦の顔が潰れている。
 隣にいた緑樹が気を利かせて金盥を武彦の顔からどけた。
 『うっ・・。草間・・あ・・なんか、ちょっと、顔・・変・・だぞ・・?』
 緑樹の肩口から、ノイがかなりひかえめな発言をする。
 そう・・武彦の顔は赤くはれ上がり、なんだかちょっと鼻が低くなったようにさえ思える。
 「く・・草間さん・・大丈夫・・??」
 緑樹が金盥を床に置いた後で、おずおずと言った。
 「あぁ。問題ない、さぁ、次だ、次っ!」
 ・・かなりやる気オーラを発する武彦に気おされつつも、一同はチラリチラリとその赤くはれた顔を見つめた。

 閏→2

 ☆黯傅&つばさ→武彦→和歌→緑樹&閏


 ●第二投目

 黯傅→6 (11)
  『あぁぁぁっ!大変です!今まさに、蜂の大群が貴方の背後からっ!』
 「にゃっ!?」
 驚く黯傅の背後より、大量の蜂が襲い掛かる・・。
 黯傅は咄嗟にわきに避けると、その難を脱した。
 流石に猫だけあり・・瞬発力と反射神経はとても良かった。

 和歌→5 (8)
  『ピンチです!この部屋にある何かが今・・まさに爆発しようとしています!!』
 「えっ!?な・・なんだこれはっ!?」
 和歌は言いながら、辺りをキョロキョロと見渡した。
 どこにも異変はないように思える・・。
 「あそこだ!あそこが怪しい・・?」
 ビシリと名探偵のごとき鋭い指差しをしたものの・・その語尾がちょっと怪しい。
 武彦がスタスタと和歌が指差した場所へと赴き・・小さな箱を取り上げる。
 すると、持ち上げた瞬間凄まじい爆発音が響き・・武彦が紙吹雪まみれになった。
 双六のマスには『大ラッキーピンチ脱出!』と浮き上がっている・・。
 が、硬直した武彦には大ラッキーどころか大不運だ。
 未だに瞬きもしない武彦だったが・・その心臓が止まっていない事を祈りたい。

 つばさ→2 (7)
  『未来予想です。貴方は・・10年後に・・・3人の子供を授かるでしょう。ちなみに名前は一番最初から『すご』『禄』『青』でなくてはなりません。』
 「・・なんやコレ・・!そもそも、これって未来予想図って言うん?」
 どちらかと言うと、予想と言うより予言である。
 「それより、これって確か書いてある事が実現するって・・。」
 緑樹の呟きに、つばさは引きつり笑顔で緑樹を見つめた。
 「・・それにしても、名前が“すご”“禄”“青”って・・・。」
 なんとも可哀想な名前である。
 「って言う事は、10年後に本当になるって言う事なんっ!?」
 ・・多分その通りである。

 緑樹→5 (7)
  『未来予想です。貴方は・・10年後に・・・3人の子供を授かるでしょう。ちなみに名前は一番最初から『すご』『禄』『青』でなくてはなりません。』
 「あっ!僕もここに止まっちゃった・・。」
 緑樹はそう呟くと、既に未来確定済みになっているつばさを見つめた。
 すがるような視線に、同情の視線を返される。
 『すご』『禄』『青』
 ここにまた1人、犠牲者が増えた・・。

 武彦→1 (5)

 閏→4 (6)

 ☆黯傅→和歌→つばさ&緑樹→閏→武彦


 〇第三投目

 黯傅→1 (12)
  『スリには気をつけましょうね☆』
 そんな、☆をつけたところで到底可愛いとは思えない文章が双六に浮かび上がる。
 しかし・・お財布を持っていない黯傅にとって、スリはちっとも怖くなかった・・。

 和歌→3 (11)
 『あぁぁぁっ!大変です!今まさに、蜂の大群が貴方の背後からっ!』
 「なっ・・蜂っ!?」
 驚く和歌の背後より、大量の蜂が襲い掛かる・・。
 和歌は咄嗟にわきに避けると、その難を脱した。
 それなりに運動神経の良い和歌にとって、不意打ちだろうと何だろうと、それほど怖くは無かった。

 つばさ→6 (13)
  『ゼハールポイント』
 急に双六から白い煙が出たかと思うと、そこから1人の少女が出現した。
 違う・・正確には、少女の顔をした男の人だ。大きな鎌を持ち、恭しく揚羽に頭を下げる。
 「お呼びでしょうか?」
 「え・・あんたは・・??」
 「私は堕天使ゼハールです。貴方様は今私を召喚なさりました。」
 「・・召喚って言うても・・ただ・・。」
 「マスター。貴方様の願いはなんでしょうか?」
 ゼハールはそう言うと、すっと揚羽を見た。
 「そうは言われてもなぁ・・。でも、うちが願いを言わなければ、あんたは帰れへんちゃう?」
 つばさの質問に、ゼハールはただ首を縦に振った。
 「う〜ん・・そうやねぇ・・。あっ!もし、興信所が爆破とか、壊滅とかになりそうになった場合・・無効にすることって、できるん?」
 「分りました。仰せのままに。」
 ゼハールはそう言って僅かばかり目を伏せた後で、再び双六の中へと入って行った・・。
 (興信所の破壊行為、無効)

 緑樹→2 (9)
  『貴方から3つ前の人と一緒にドナドナを哀愁タップリに歌い上げてください。そして・・貴方の後ろの人・・子牛役に決定です。室内を一周してください。』
 緑樹、黯傅(歌)、武彦(子牛役)
 緑樹と黯傅が歌いながら、武彦の入った荷馬車ならぬ、台車を引いている。
 ちなみに黯傅はすべて『にゃ』で歌っているが、そこは別段問題はないらしい。
 台車の上にちょこりと体育座りで座っている武彦がなんだか悲しい。
 歌とあいまって、やけに哀愁タップリだ・・。
 「モー。」
 武彦が、モロ棒読みで鳴く。
 しかし・・棒読みの割に哀愁が伝わってくる気がするのは気のせいだろうか・・?
 「モー。」

 武彦→4 (9)
  『貴方から3つ前の人と一緒にドナドナを哀愁タップリに歌い上げてください。そして・・貴方の後ろの人・・子牛役に決定です。室内を一周してください。』
 武彦、和歌(歌)、閏(子牛役)
 武彦と和歌がノリノリで歌いながら、閏の入った荷馬車ならぬ、台車を引いている。
 台車の上にちょこりとアヒル座りで座っている閏がなんだか可愛らしい。
 歌とあいまって、こんなに可愛らしい子牛・・じゃない、閏を売るなんて・・と涙を誘う。
 「モー。」
 閏が、楽しそうに鳴く。
 満面の笑みで、ニコニコだ。
 「モー。」

 閏→3 (9)
  『貴方から3つ前の人と一緒にドナドナを哀愁タップリに歌い上げてください。そして・・貴方の後ろの人・・子牛役に決定です。室内を一周してください。』
 閏、つばさ(歌)、黯傅(子牛役)
 閏とつばさがノリノリで歌いながら、黯傅の入った荷馬車ならぬ、台車を引いている。
 台車の上にちょこりとお座りしている黯傅がなんだか可愛らしい。
 それでもどこか歌とあいまって、やけに哀愁タップリだ・・。
 「ニャー。」
 黯傅が、モロ棒読みで鳴く。
 しかし・・棒読みの割に哀愁が伝わってくる気がするのは気のせいだろうか・・?
 「ニャー。」

 ☆つばさ→黯傅→和歌→緑樹&武彦&閏


 ●第四投目

 黯傅→1 (13)
  『貴方のお財布を見てみてください・・増えているでしょう?』
 ・・そうは言われても、何度も言うようだが生憎黯傅はお財布を持ってはいない・・。

 和歌→3 (14)
  『貴方は白雪姫です。7人の小人達と一緒に仲良く仕事を・・していますか?』
 グラリと視界が揺れ、目の前に小さな小屋が出現する。
 小屋の前にはカラフルな洋服を身に纏った小さな小人達・・。
 「仲良く一緒に仕事、してるよな?」
 和歌がニッコリと微笑みつつ小人達にきいた。
 ブルブルと小人達が震えながら頷き、真っ赤なりんごを差し出した。
 ・・・毒りんご・・な事は、明白だった・・・。

 つばさ→5 (18)
  『さぁ、サンバの始まりです!ノリノリで踊りまくってください!2番前の方と一緒にどうぞ!』
 2番前・・黯傅だ。
 ノリノリでサンバを踊りまくるつばさと・・なんだかよくワケの分からないジャンプを繰り返す黯傅。
 ちょっとやる気のなさそうな黯傅とノリノリのつばさ・・。
 微妙な空気が流れた瞬間だった。
  
 緑樹→5 (14)
  『貴方は白雪姫です。7人の小人達と一緒に仲良く仕事を・・していますか?』
 グラリと視界が揺れ、目の前に小さな小屋が出現する。
 小屋の前にはカラフルな洋服を身に纏った小さな小人達・・。
 「仲良く一緒に仕事、してるよね?」
 緑樹がニッコリと微笑みつつ小人達にきいた。
 コクコクと小人達が大きく頷き、真っ赤なりんごを差し出した。
 ・・・毒りんご・・で、ない事は分っていた・・・。

 武彦→2 (11)
  『あぁぁぁっ!大変です!今まさに、蜂の大群が貴方の背後からっ!』
 「え・・?おい、そんな・・嘘だろう・・。」
 そう言ってオロオロとする武彦の背後から大量の蜂が飛んでくると・・たちまち武彦は蜂の中に埋まった。
 なんだかよくわけの分らない叫びが興信所内に木霊する。
 ・・・・・・・合掌。

 閏→6 (15)

 ☆つばさ→閏→和歌&緑樹→黯傅→武彦


 〇第五投目

 黯傅→2 (15)
  『突然窓から狙撃です!危ないっ!』
 バリンと興信所の窓が割れ、そこから鉛球が黯傅目掛けて襲ってくる。
 その類稀なる運動神経で難を脱した黯傅は、右にとびのくとヒラリと着地した。
 鉛球が床に着弾する。
 武彦がわけの分らない言葉を叫びながら窓と床とを指差す。
 「大丈夫ですよ草間さん。興信所の破壊行為は無効にしてもらうように頼んだじゃないですか。」
 緑樹が言うか早いか、窓と床は瞬きをする間には直ってしまっていた。
 これもゼハール様様である。

 和歌→6 (20)
  『今日はバニーガール日和です!偶数の方、皆さんバニーガールになりましょう!』  
 「え・・?」
 ポン、ポン、ポンと、軽快な音がして・・白い煙が辺りを包み込んだ。
 和歌、緑樹(ノイも)、そして閏がバニーガールの姿へと変貌した。
 「な・・なんだこれはっ・・!!」
 かなり驚いた様子で自身の体を見ているのは和歌だ。
 しかし・・細身の身体にはバニーガールが良く似合う。足なんかは美脚と言っても過言ではない。
 「・・僕も・・バニーガール・・?」
 『それより、ボクもかよっ!』
 呆然としながらも小首をかしげたのは緑樹だ。その肩口ではノイがわけのわからない舞いを踊っている。
 ・・多分、取り乱してオロオロしているだけだと思うが・・なにかの儀式の踊りのようにさえ見える。
 緑樹も細身のため、バニーガールが良く似合う。ノイは・・多分・・似合っている・・?
 可愛らしいと言えば可愛らしいが、ちょっと含み笑いをしてしまいそうになる。
 そして最後・・ちょっと恐ろしいのが閏だった。
 「私もバニーガールですね!」
 そう言って、少しだけキャッキャとはしゃいでみせているものの・・目が笑っていない・・。
 とてつもなく黒いオーラを背負い込んでいるのが傍目にも分る・・。

 つばさ→2 (20)
  『今日はバニーガール日和です!偶数の方、皆さんバニーガールになりましょう!』  
 和歌同様、あの魅惑のゾーンにはまってしまったつばさだが・・既に偶数の面々はバニーガールへと変身している。
 なので、何も起こらなかった。

 緑樹→2 (16)
  『早口言葉です。“隣の柿はよく客食う柿だ”』
 「隣の柿はよく客食う柿だ、隣の柿はよく客食う柿だ、隣の柿はよく客食う柿だ。」
 緑樹がアナウンサー張りに素晴らしく滑らかな発音で難なく言ってのけた。
 『待て・・。なんで柿が客を食うんだ・・!?』
 ノイがしっぽをパタパタさせながら言う。
 バニーガールの尻尾はふさふさだ・・。
 「そっちの方が言いにくいからな。」
 和歌がケロリと言い、数人が納得の表情を見せる・・。

 武彦→6 (17)

 閏→4 (19)
  『本日は暑いですね〜。』
 「・・これは・・。」
 何かを言いかけた閏の背後から、猛烈に暑い熱風が吹き込んできた。
 ・・なんなんだこれはと、困惑する一同をよそに何処からとも無く熱風が吹き荒れる。
 “暑いですね〜”なんてレベルではないっ!
 サウナ以上だ!南の島以上だ!!
 ・・うだるような暑さの中、バニーガールとその他の人々はそれでも双六に向かい合った・・。

 ☆和歌&つばさ→閏→武彦→緑樹→黯傅


 ●第六投目

 黯傅→2 (17)
  『目の前に、枯れかけた鉢植えが見えますね・・?』
 突如黯傅の目の前に、小さな鉢植えが現れた。
 その中の花は茶色く元気がない。・・水が足りていないのだ。
 黯傅は直ぐにコップに水を汲むと、花へと注いだ・・。
 その瞬間、鉢植えから光が走り・・花の中から何か小さなものが飛び出した。
 『初めまして、ご主人様。わたくしの名前は瑠璃蝶々。瑠璃蝶々の精でございます。』
 「んなぁー・・。」
 『この鉢植えを助けてくださり、どうもありがとう御座いました。お礼に、わたくしが誠心誠意尽くしてご主人様のお世話をさせていただきますわ。』
 「ニャー。」
 『・・ふふ、黯傅様・・ですね。それでは、なにかありましたら何なりとお申し付けくださいませ。』
 瑠璃蝶々の精はそう言うと、テーブルの上に置かれた小さなケースへと入って行った。
 (瑠璃蝶々の精を入手)

 和歌→5 (25)
  『奇数の女の子はメイドさんに変身〜っ!』
 ・・・またしてもイロモノマスに止まった和歌。
 黯傅、つばさ、そして・・武彦がメイド衣装へと変身する。
 「・・んなーっ!!」
 驚きを鳴き声で表現する黯傅。
 「なんだか、この衣装ごっつ動きにくいなぁ〜!」
 そう言ってスカートの裾をヒラヒラさせているのはつばさだ。どうやら動きにくいのがおきに召さないらしい。
 「メイド・・。」
 額に縦三本線をつけながら自分自身を見つめる武彦。とっても似合っていないのは、仕方がない・・。
 バニーガール(ガールじゃない方を含む)とメイドさん達。
 ハタから見たらこれは一体何の集団なのかと疑ってしまいたくなるような光景だった。
 ・・これが興信所内での出来事だから良い。
 しかし、もし・・これが外での出来事だったならば・・。
 拷問以外の何物でもない。精神的苦痛だ。最上級のイジメだ・・。

 つばさ→1 (21)
  『貴方の目の前に小さな刀がありますね?どうぞ、双六!からのプレゼントです。』
 突如目の前に、小さな剣が浮かび上がってきた。
 とても強い光を発するそれを・・つばさは手に取った。
 (七里刀入手)

 緑樹→3 (19)
  『本日は暑いですね〜。』
 「・・これっ・・。」
 何かを言いかけた緑樹の背後から、猛烈に暑い熱風が吹き込んできた。
 ・・なんなんだこれはと、困惑する一同をよそに何処からとも無く熱風が吹き荒れる。
 “暑いですね〜”なんてレベルではないっ!
 サウナ以上だ!南の島以上だ!!更に、先ほどの熱気と合わさって、息も出来ないくらいの熱風が襲い掛かる。
 ・・うだるような暑さの中、バニーガールとメイド達はそれでも双六に向かい合った・・。

 武彦→6 (23)

 閏→4 (23)

☆和歌→武彦&閏→つばさ→黯傅→緑樹


 〇第七投目

 黯傅→6 (23)
 『お財布を見てください!ミラクルイリュージョンが起こっています!』
 ・・・何度も言うようだが、黯傅はお財布を持っていない。
 よって、ミラクルイリュージョンだろうが、トリプルイリュージョンだろうが、エクセレントミラクルイリュージョンだろうが、起きるはずがない。
 双六が少しだけつまらなさそうに“回避”の文字を点滅させた。

 和歌→4 (29)
 『さぁ、縄跳び5回!跳んで★跳んで!』
 和歌の目の前に、長い紐が現れた。
 結構太さもある紐だ・・。
 その紐が、何の前触れも無く回り始めた。
 和歌は何とか1回、2回と跳び・・あまり危なげない様子で5回跳び切った。
 「これは一体なんだったんだ・・??」
 跳んだ意味がまったく分らずに、和歌はすっと紐に手を伸ばした・・その時、その紐が動き・・和歌の手に向かって大きな口をあけた。
 寸での所で和歌は手を引っ込め、マジマジと紐を見つめた。
 ・・蛇・・??
 それは太い蛇が何匹も繋がって出来ている紐のようだった。
 つまり、引っかかった途端にジ・エンドだったと言う事だろうか・・?

 つばさ→3 (24)
 『さぁ、貴方はサーカスの熊です!玉乗りをしてください!』
 「は?玉乗り・・??」
 ボンっと鈍い音がして、つばさの身体の周りに白い靄が立ち込める・・。
 なんだか嫌な気がしてみてみると・・いつの間にかもじゃもじゃの茶色い毛が身体全体を覆っていた。
 実際には、ただ着ぐるみを着せられた状態だったのだが・・。
 目の前に大きくカラフルな玉が転がってくる。
 ・・これに、乗れと言うのだ。
 つばさはひょいと玉の上に乗ると、バランス良く玉の上で歩いた。
 これはサーカスの熊とどっこいどっこいか、それ以上の上手さだ!外野からも大きな拍手が巻き上がる!
 ・・もちろん、玉乗りを上手いと褒められても、どこか素直に喜べない所があったが・・。

 緑樹→6 (25)
 『奇数の女の子はメイドさんに変身〜っ!』
 イロモノ系のマスに止まってしまった緑樹だったが・・。
 残念ながら奇数の女の子はすでに和歌の魔の手によってメイドへと変えられていた。
 ・・とっても意味深な表現の仕方だが・・。

 武彦→3 (26)

 閏→2 (25)

 ☆和歌→武彦→緑樹&閏→つばさ→黯傅


 ●第八投目

 黯傅→2 (25)
 『奇数の女の子はメイドさんに変身〜っ!』
 イロモノ系のマスに止まってしまった黯傅だったが・・。
 残念ながら奇数の女の子はすでに和歌の魔の手によってメイドへと変えられていた。
 ・・とっても意味深な表現の仕方だが・・。

 和歌→3 (32)
 『この部屋に爆発物が隠されてマース。さぁ、直感でドーゾ!』
 「また爆発物ネタか・・。」
 和歌は少々困ったように眉をひそめたが・・本当に勘でぱっと指差した。
 そこは武彦がいつも座っている椅子の上だった。
 武彦が大慌てでそこを見に行った時・・先ほどまで武彦が座っていた席から爆発音が響いた。
 モチロン、ゼハールに興信所の破壊行為の無効を願っただけあり・・ただ“爆発音だけ”が響いたのだが・・。
 「うわぁ、草間さんの席、モロやったやんなぁ〜。」
 「危機一髪って感じかな・・?」
 「葉陰・・お前・・。」
 物凄く凄く勘違いしたような視線を、和歌に向ける。
 「お前は命の恩人だっ!」
 「・・いや、違うから・・。」
 和歌がスパリとそう言い、喜び勇んで走ってくる武彦を避けた。
 武彦が机にぶつかり・・滑り落ちた・・・。

 つばさ→5 (29)
  『さぁ、縄跳び5回!跳んで★跳んで!』
 つばさの目の前に、長い紐が現れた。
 結構太さもある紐だ・・。
 その紐が、何の前触れも無く回り始めた。
 つばさは難なく1回、2回と跳び・・素晴らしい運動神経で軽く跳び終えた。
 「これは何だったんや・・??」
 跳んだ意味がまったく分らずに、つばさはすっと紐に手を伸ばした・・その時、その紐が動き・・つばさの手に向かって大きな口をあけた。
 寸での所でつばさは手を引っ込め、マジマジと紐を見つめた。
 ・・蛇・・??
 それは太い蛇が何匹も繋がって出来ている紐のようだった。
 つまり、引っかかった途端にジ・エンドだったと言う事だろうか・・?

 緑樹→6 (31)
 『お財布の中を見てください。ちょこっとですが、ほんのお気持ち程度に。』
 緑樹はすっとお財布の中を見た。
 なんと・・!!!
 『500円』増えているではないかっ!!
 ・・・これでコンビニのおにぎりが4つは買える・・。
 なんだかほんの少しだけ得した気分だった。

 武彦→3 (29)

 閏→6 (31)

 ☆和歌→緑樹&閏→つばさ&武彦→黯傅


 〇第九投目

 黯傅→4 (29)
 『さぁ、縄跳び5回!跳んで★跳んで!』
 黯傅の目の前に、長い紐が現れた。
 結構太さもある紐だ・・。
 その紐が、何の前触れも無く回り始めた。
 黯傅は難なく1回、2回と跳び・・素晴らしい運動神経で軽く跳び終えた。
 「うにゃー・・??」
 跳んだ意味がまったく分らずに、黯傅はすっと紐に手を伸ばした・・その時、その紐が動き・・黯傅の手に向かって大きな口をあけた。
 寸での所で黯傅は手を引っ込め、マジマジと紐を見つめた。
 ・・蛇・・??
 それは太い蛇が何匹も繋がって出来ている紐のようだった。
 つまり、引っかかった途端にジ・エンドだったと言う事だろうか・・?

 和歌→6 (38)
 『今日は寒いですね〜。』
 ・・暑いに引き続き、今度“寒い”だ。
 和歌の背後から強烈な冷気が襲う・・が、未だに暑い部屋には丁度良いそよ風だった。
 が・・プラスプラスマイナスでまだ結構暑い・・。
 
 つばさ→4 (33)
 『スクワットタイム!男の子なら女の子、女の子なら男の子の一番軽い子を抱っこしてスクワットを十回してね!女の子で、力ないって子は双六を持ってスクワットしても可!』
 「・・なんやこれ、めちゃくちゃやなぁ。」
 「そもそも・・女の子が男の子を抱っこって時点で何か間違ってる気がする・・。」
 「しゃぁない。双六でももって・・。」
 そう言いながら双六を持ち上げようとしたつばさの手が止まった。
 「・・どうしたんだ?」
 和歌が怪訝な顔でつばさを見つめる。
 「これ・・めっちゃ重いやんけぇっ!」
 ズビシっと宙に突っ込みをするつばさ・・。
 「どれどれ・・・本当だ・・。」
 持ち上げようとした和歌も、げんなりとした顔つきで双六を下ろす。
 「そぉですかぁ?最初は重くなかったはずなんですけど・・。」
 閏がケロリとそう言うが・・その瞳は全てを知っているかのように輝いている。
 「そんなら、男の子で一番軽い・・。」
 すーっと、つばさの視線が椅子の上でゴロリと成り行きを見ていた黯傅へと注がれた。
 黯傅の視線とつばさの視線が合い・・つばさの瞳の奥に潜んでいる静かな炎を感じ取った黯傅は驚いて椅子から飛び降りようとした。
 そこをつばさがしっかとキャッチする。
 「はぁなぁさぁへぇんでぇぇぇ〜!うちのスクワットに付き合ってもらおか〜!」
 「ニャーッ!!」
 つばさは満面の笑みで黯傅を抱っこしながら、なんなく十回スクワットをやってのけた。
 すっきりしたような笑顔のつばさと、ぐったりと力なく座る黯傅。
 どっちがスクワットをしたのか、分からない・・。

 緑樹→2 (33)
  『スクワットタイム!男の子なら女の子、女の子なら男の子の一番軽い子を抱っこしてスクワットを十回してね!女の子で、力ないって子は双六を持ってスクワットしても可!』
 「・・僕もここに止まっちゃった・・。」
 緑樹が“やってしまった”と言うような苦々しい顔をした。
 椅子の上でぐったりとしている黯傅を見つめ、口の中で『それは可哀想か・・』と呟く。
 『緑樹、ボクを持ってスクワットしたら良いじゃん。』
 肩口でノイがそう言い、緑樹をつつく。
 「でも、それって大丈夫なのかな・・?」
 一応、ノイは双六には参加していない・・。
 “OKです!”と双六のマスに文字が点滅した。
 「大丈夫みたい・・。」
 緑樹はほっと安堵のため息を漏らすと、ノイを抱っこしてスクワットを十回やってのけて。
 「ありがとう、ノイ。」
 『いや、別に・・。』
 微笑む緑樹と、少し照れたように頬を染めるノイ。
 少しだけ暖かな雰囲気になった・・。

 武彦→1 (30)
 『大変です!果たし状がっ!!』
 「・・果たし状・・?」
 首をひねる武彦の背後から、矢文が飛んできた!!
 興信所の硝子を突き破り、一直線に飛んでくる矢文を武彦は寸での所で避ける。
 ザクリと興信所の机に刺さる。
 しかしそこはゼハール様様だ。瞬きをするうちに硝子は何事も無かったかのように元通りに戻っていた。
 机も、矢文を取った場所に穴なんてあいていない。
 武彦は矢から手紙をとると、開いた。
 『果たし状』
 そして大きな空白の後。
 『果たしました。』
 ・・・完全に“なに”の部分が抜けている。
 何が果たされたのか、さっぱり分らない。
 「な・・なんじゃこりゃぁーっ!!」
 武彦はグシャリと紙を潰すと、ポイとゴミ箱へ投げ入れた。

 閏→3 (34)
 『さぁ、元素記号!5個以上は答えてください!』
 「元素記号・・?えぇっと・・。」
 閏が虚空を見つめながら指を折る。
 「水素がH、ヘリウムがHe、リチウムがLi、ベリリウムがBe、硼酸がB、炭素がC、窒素がN、酸素がO・・。」
 閏が原子番号順にスラスラと言っていく。
 このままではローレンシウムのLrまで言ってしまいそうな勢いに、双六が正解の音を出した。

 ☆和歌→閏→つばさ&緑樹→武彦→黯傅


 ●第十投目

 黯傅→6 (35)
 『目の前で小さな女の子が泣いています!』
 グニャリと視界が歪み、目の前に何処かの街角の風景が広がる。
 真っ白なワンピースを着た女の子が目の前でシクシクと泣いている・・。
 黯傅はその子にそっと近づくと、その足に擦り寄った。
 「ニャー?」
 「ひっく・・えぇっく・・。だ・・だって・・。」
 「ンナーァ?」
 「ころ・・転んじゃったんだも・・っ・・。」
 女の子はそう言うと、顔を上げた。
 確かに、足から血を流している。座り込んでしまった女の子の頬を優しく舐め、勇気付けるように頬に擦り寄る。
 「・・ありがとう・・ネコさん。」
 少女は泣くのをやめ、ニッコリと微笑むと黯傅の頭を撫ぜた。

 和歌→5 (43)
  『ゴール前に、ちょっと休憩しませんか?ケーキとお茶をお出ししますので!』
 グラリと視界が揺れ、目の前に美味しそうなケーキと香り豊かな紅茶が置かれている。
 和歌は用意されている椅子に腰掛けると、ケーキと紅茶を存分に味わった。
 「うん・・なかなか美味しい・・。」

 つばさ→2 (35)
 『目の前で小さな女の子が泣いています!』
 グニャリと視界が歪み、目の前に何処かの街角の風景が広がる。
 真っ白なワンピースを着た女の子が目の前でシクシクと泣いている・・。
 つばさはその子にそっと近づくと、そっとその頭を撫ぜた。
 「どうしたん?」
 「ひっく・・えぇっく・・。だ・・だって・・。」
 「ん?言うてみ?」
 「ころ・・転んじゃったんだも・・っ・・。」
 女の子はそう言うと、顔を上げた。
 確かに、足から血を流している。座り込んでしまった女の子と視線を合わせるように屈むと、つばさはポケットから絆創膏を取り出して傷口にはった。
 「ほな、これで大丈夫や!これはっとたら、すぐ治る・・だから、元気だしぃや。」
 「・・ありがとう・・お姉さん。」
 少女は泣くのをやめ、顔を上げるとつばさに向かって満面の笑みを向けた。

 緑樹→3 (36)
 『双六!終了まで貴方は姫です!さぁ、この衣装をっ!』
 ポンと乾いた音がして、白い煙がもうもうと立ち上った。
 緑樹はむせかえりながらも自分の服を見つめた・・。
 姫・・と言うよりは、ゴシックロリータ。ゴスロリというよりは、どこぞの魔女・・。
 真っ黒なスカートの裾には真っ白のレースがひらひらと付き、靴は膝下まである編み上げブーツ。
 そして・・何故かオプションとして木の杖が付いている・・。
 ・・真横に大なべが見えてくるから不思議だ・・。
 それでも可愛らしく見えるのは、肩口にしがみ付いているノイまでも、同じ格好をしているからだろうか・・。

 武彦→2 (32)

 閏→4 (38)
  『今日は寒いですね〜。』
 閏の背後から強烈な冷気が襲う・・暑い暑い寒いと来て、少し暑かったのが一気に丁度良い温度になる。
 つまり・・プラスプラスマイナスマイナス=ゼロだ。

 ☆和歌→閏→緑樹→黯傅&つばさ→武彦


 〇第十一投目

 黯傅→5 (40)
  『お財布の中を見てください!・・イリュージョンです!』
 ・・なんでこうも財布ネタが多いのだろうかと、黯傅は頭を悩ませた。
 しかし、どうせイリュージョンだろうがなんだろうがロクナコトにはならないのは良く分っていた。
 つまり・・財布を持っていないほうが得なのだろう。
 きっと・・いや、絶対・・。

 和歌→4 (44)
  『ゴール』

 つばさ→5 (40)
  『お財布の中を見てください!・・イリュージョンです!』
 「な・・なんや・・?」
 恐る恐るお財布を開くつばさ。
 ・・なんだか札入れがパンパンになっている。
 「えっ・・?」
 驚いてお札を引っ張り出すつばさ。
 目に映る、見慣れぬ肖像がの人物。そして・・印字される“一億”の文字。
 「・・一億円札・・!?」
 「な・・なんだって!?」
 武彦がすかさずつばさの手から一億円札を抜き、まじまじと見つめる。
 ちゃんと透かしも入った・・本物だ!
 1枚2枚・・ぎっしりと入っているお札は30枚くらいだろうか・・?
 「って事は、30億円!?」
 はしゃぐ武彦。それを、冷ややかな目で見つめるつばさと和歌。そして黯傅とノイ。
 緑樹だけがキョトリとした顔で一同を見つめている。
 「でも・・。」
 「使えないんじゃ?」
 「使えないやんか?」
 「・・なんで?」
 「だって、そんなお札・・。」
 「ないじゃないか。」
 「ないやんけ。」
 和歌とつばさが完璧にハモって事の真相を伝える。
 『アホだ・・。』
 ノイがため息混じりにそう言い、黯傅も呆れたような鳴き声をあげる。
 武彦の手からボトリと落ちた億円札の肖像画の人物が、僅かに笑んだ気がした・・。

 緑樹→3 (39)
  『未来予想図です・・。』
 そこまで見て、緑樹は思わず身構えた。
 先ほどの未来予想図では勝手に子供の名前まで決められてしまったのだ・・!
 『貴方は、3年後に・・猫を飼うでしょう!』
 「なんだ・・。」
 緑樹はほっと、息をついた
 しかし・・その肩口で息を呑んだのはノイだった。
 『緑樹!ボクは認めないからなっ!ネコだけは、絶対にっ!』
 あの悪夢が蘇ってくるノイなのだった・・。

 武彦→1 (33)
 『スクワットタイム!男の子なら女の子、女の子なら男の子の一番軽い子を抱っこしてスクワットを十回してね!女の子で、力ないって子は双六を持ってスクワットしても可!』
 「・・一番軽い・・。」
 武彦が言いながら、一同を見渡した。
 すっと誰かの方に歩いていこうとする武彦の首根っこを閏が掴むと、ピっと言い放った。
 「ダメですよ!男の子なんだから、もっと試練に挑戦しないとっ!」
 「は・・?試練・・?」
 「あれです!」
 ビシリと指し示す先には双六があった。
 あれを持った事のある和歌とつばさが顔をしかめる。
 それほどまでに重いのだ。
 「でも、双六持つのは女の子だけやって・・。」
 「大丈夫です!ね、双六?」
 絶対零度の微笑で双六に話しかける閏。・・なんだか脅迫現場を目撃してしまったような気持ちになる。
 双六のマスに浮かぶ“OKです”の文字が心なしか震えている・・。
 「さぁ、ファイトファイト!」
 無邪気に言いながら双六をひょいと渡す閏。
 ・・どれだけ力が強いのだろうか・・。
 それを持つ、武彦の顔に浮かぶ焦り。
 「お・・重っ・・!!」
 「さぁっ!レッツファイトファイトっ!!」
 鬼のような閏の激励から数分後・・ぎっくり腰にならなかったのが奇跡としか言いようのないくらいに腰を痛めた武彦が、痙攣しそうになる足を引きずって双六をテーブルの上に置いた。
 その顔は、人生の全てを悟ったと言うような顔だった・・。


 閏→2 (40)

 ☆和歌→黯傅&つばさ&閏→緑樹→武彦


 ●第十二投目

 黯傅→4 (44)
  『ゴール』

 和歌
 (ゴール済)

 つばさ→4 (44)
  『ゴール』

 緑樹→5 (44)
  『ゴール』

 武彦→6 (39)

 閏→5 (44)

 ☆和歌→黯傅→つばさ→緑樹→閏→武彦


 〇第十三投目

 黯傅
 (ゴール済)

 和歌
 (ゴール済)

 つばさ
 (ゴール済)

 緑樹
 (ゴール済)

 武彦→5 (44)
  『ゴール』

 閏
 (ゴール済)

 ☆和歌→黯傅→つばさ→緑樹→閏→武彦


□双六終了の後

 「お・・終わった・・。」
 わけの分らない疲労感でいっぱいになった一同は、グッタリと机の上に身体を預けた。
 興信所が破壊される事が無かったのは・・全てはゼハールのおかげであった。
 「もし、あの願いが無かったら、どうなってたんだ?」
 和歌の呟きに、思わず双六の内容を振り返る。
 ・・・まず、興信所は爆破され・・そして少なくとも窓ガラスは粉々になっていた。
 「それにしても・・どこが億万長者なんだ!?どこがっ!」
 武彦は言いつつ、ニコニコと双六を畳む閏へと視線を向けた。
 「・・億万長者じゃないですか。十分。」
 つばさをビシリと指しながら閏は口を尖らせた。
 確かに、億万長者は億万長者だ。なにせ、財布の中身が全て億円札に変わってしまったのだから・・。
 しかし・・使えなければ意味がない。
 「大体、人生にそんな棚ぼた的な都合の良い事が起こるとは思えませんし。」
 閏が結構シビアな発言をする。
 たしかに・・そうである。
 そう言えば、この双六も『ドキドキ☆人生の縮図のようだよ!大双六大会!【青の書】』と言うのが正式名称だった気がする。
 そりゃぁ、人生の縮図のようだよ!で、億万長者はあまりにも飛躍しすぎだ。
 「なにせ人生の縮図なんですから・・」
 「あんな危険な人生が起こってたまるかっ!!」
 武彦がソファーと、窓と、天井を指し示しながら言う。
 つまり、爆弾と、矢文と、金盥だ。
 「ソレも全て人生の・・・」
 「そんな人生あってたまるかぁっ!!!!!」
 ・・・それには激しく納得である。

 ★エピローグ

 それなりに面白い体験をした緑樹は、微笑みながら興信所を後にしようとしていた。
 興信所から出て、道を少し歩いていた時・・ふいに背後から声をかけられた。
 「如月さん。」
 振り向くと、そこにはあの閏と言う少女がニコニコ顔で立っていた。
 「どうしたんですか?」
 「あのですねぇ・・。ジャッジャーン!如月さんには、これを差し上げます!」
 閏はそう言うと、緑樹の掌になにやら緑色の液体の入った小さなカプセルを乗せた。
 「これは・・?」
 「これ、変身薬って言うんです。飲めばたちまち性別が変わるんですよ〜!」
 「へぇ〜・・。」
 『なんっつー怪しい・・。』
 一応は頷いてみるものの・・なんだか怪しい。
 肩口のノイですらも顔をしかめている。
 なにせ、液体の色が悪い。これを飲むのには相当の勇気がいりそうだ。
 「それじゃぁ、また今度お逢いしましたら〜!」
 閏はそう言うと、手を振りながら去って行った。
 「あっまた〜っ!」
 その背に手を振りつつ、緑樹は再び手の中の緑色の液体入りカプセルを見つめた。
 ・・変身薬。少し気になる。
 2つ組みのうちの一つを出し、すっと飲み込む。
 『え・・?おい、緑樹・・・!?まさかっ・・!』
 水無しでも飲める、ある意味ありがたい薬だ。
 すると、パンと何かがはじける音がして、目の前に白い煙が出現した。
 それは直ぐに風に消され・・緑樹は自分の体を見た。
 いつもよりも高い視線、筋肉の付いた腕・・。
 ショーウインドーの硝子で確認する、自分の姿・・。
 『う・・うわーっ!!』
 そこには緑樹の男性版がいた。いつの間にか、髪の毛も短くなっている。
 「これは・・凄いな・・。」
 声までも低くなり、男ことばになっている。
 緑樹は肩口のノイに向かってニッコリと微笑むと、残りの変身薬をしまった・・。
 『こ・・怖〜っ!!』


   〈END〉

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 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 ☆  3317/斎 黯傅/334歳/男性/お守り役の黒猫

 ☆  4701/葉陰 和歌/22歳/女性/怪奇小説家

 ☆  1411/大曽根 つばさ/13歳/女性/中学生、退魔師

 ☆  1431/如月 緑樹/19歳/女性/旅人


 ♪  0086/シュライン エマ/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

 ♪☆ 4563/ゼハール/男性/15歳/堕天使/殺人鬼/戦闘狂

 ♪  3620/神納 水晶/男性/24歳/フリーター

 ♪  4537/深山 揚羽/女性/21歳/香屋「帰蝶」の女店主

 ♪  0585/ジュジュ ミュージー/21歳/デーモン使いの何でも屋(特に暗殺)

 ♪  4648/狩野 宴/80歳/女性/博士/講師


 
 ♪☆ NPC/草間 武彦/30歳/男性/草間興信所所長、探偵
 ☆  NPC/紅咲 閏/13歳/女性/中学生兼夢幻館の現実世界担当


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 ■         ライター通信          ■
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 この度は『双六!【青の書編】』にご参加いただきありがとう御座いました。
 ライターの宮瀬です。
 なんだかとてつもなく長くなってしまい申し訳ありませんでした。
 今回、新しいジャンルの小説に挑戦してみようと思い執筆いたしましたが・・。
 実際にサイコロを転がしながら執筆すると言うのは楽しく、先が見えないという点ではハラハラしたりもしました。
 一番焦ってしまったのが・・家にサイコロがなかったと言うことです・・。
 どうしようとオロオロした挙句、次の日にサイコロを買いましたが・・ww

 如月 緑樹様

 初めまして、この度はご参加ありがとう御座いました。
 なんだかノイ様の不運な一日のようになってしまいましたが・・いかがでしたでしょうか? 
 そして・・変身薬です。
 10〜12時間で効果はきれますが、副作用などはありませんので、安心してお使いくださいませ。
 と言いますか、貰ってやってくださいませ。

 それでは、またどこかでお逢いしました時はよろしくお願いいたします。