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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ミズの魔女が語る時。

オープニング

-…私は『ミズの魔女』です。
自分の能力を使ってここにアクセスしております。
どうか私を助けてください。
私は今、暗くて寒い場所に閉じ込められています。
どうか、私を助けてください。
私が閉じ込められている場所は…。

ゴーストネットOFFに書き込まれたのは助けを求める文章だった。
だけど、書き込みにあった住所は数十年前から
廃墟になっている大きな屋敷のみで人が住んでいる気配は全く見られない。
とりあえず、書き込みを信じてその場所に向かったのだが…?


視点⇒ベル・アッシュ


 暇つぶしに覗いたゴーストネットOFF。
 そこにはベルの興味を惹く面白そうな書き込みがあった。書かれていたのは自らを『ミズの魔女』と名乗る人物からの書き込みで助けを求める文章だった。
(自分で魔女って名乗る辺りが胡散臭いわねぇ)
 しかも『ミズ』の部分だけがわざわざカタカナで投稿されている。カタカナという事は無変換のキーを押したということだから間違いはない。
「ミズ…水とも見ずとも取れるわね」
 先日起きた魔女の事件でも現代の人間の中に前世の人間が閉じ込められているって言えばそうだ、だから助けを求めているものが常に弱者という事はない。
「第一、何で閉じ込められているのかが問題よね」
 それに、とベルはパソコンの画面に映し出されている文章に目をやった。この書き込みをした人物は『寒くて暗い場所』と抽象的な言葉のみで具体的な場所を言わない。
「マトモな閉じ込められ方じゃないって事かしら」
 それとも、見ずと考えて盲目だから具体的な場所が言えないのかもしれないとベルは考える。
「とりあえず、このミズの部分の回答を求めてみようかしら」
 ベルはキーボードを叩いて『あなたは誰?抽象的な場所しかいえないのは盲目が故なのかしら?』と打ち、返信キーを押す。魔女の受け持ちの大元は暴食の王だから、その名に誓って答えてもらうわ。嘘言えば蠅に集られてお終い
 すると打ち込んだと同時にそれに対する返事が返ってきた。早いわね、そう思いながら帰ってきた文面に目を通す。

『初めまして、ベル・アッシュさん。私の書き込みに返事を書いてくださってありがとう、だけどあなたはまだ私を半分以上疑っていますのね、無理もありません。とにかく来ていただければ全てが分かるかと思います。胡散臭い書き込みでしょうが私を信じてください』

 返ってきた文章を見てベルは驚きを隠せないでいた。まず一つ目、ミズの部分の回答を求める書き込みを打ち込んだだけで名前は名乗っていない。名前の欄も適当にナナシと書き込んだにも関わらずに『ミズの魔女』はベルの名前を言い当てた。
 そして二つ目、ベルが思っていた胡散臭いという言葉を言ってきたこと。書き込みは何の感情も読めない文章にしたはずだ。なのにベルが疑っている事を知っている。
 最後に一つだけ分かった事がある。ネカマでない限り、ミズの魔女を名乗る人物は女性である可能性が高い。
(まぁ…カマかもしれないけれどね…)
 とにかく、この住所の場所に行ってみるしか解決する方法はないのだけれど。
 仕方ないわねー、と呟きながらベルは住所の場所へと足を向けた。


「何よ、これ」
 その住所の場所に行ったベルの最初の言葉がそれだった。
 たどり着いた場所、それはもう素敵な…廃墟だった。人の気配が数十年はなくなった建物、カルトまがいの連中が喜んで生け贄の儀式などをしそうな場所。
「本当にここにいるのかしら…」
 ふぅ、と溜め息を漏らしながらベルは廃墟内に足を踏み入れた。
「うっわぁ…中もボロボロ。誰か手入れとかしないのかしら」
 綺麗にしていれば見栄えのする屋敷だっただろうに、とぎしぎしと悲鳴をあげる床を見ながら言う。
(…だれ、か…。わた、しを――…)
 かすかに聞こえてくる声に鳴らない声が聞こえ、ベルは足を止める。
「…そこ?」
 声の聞こえる部屋のドアを開けてみるが、中には誰もいない。
「…子供部屋…?」
 部屋の中には、子供が好む遊具などが散乱していた。散らかっているというものではなく、何か争った跡のような感じにも思えた。
 はっきり言ってベルにとっては閉じ込められている人物が善人だろうが悪人だろうが関係ない。助けを求めるってことは結構切実なわけだろうから、自分と契約してもらって、その代償に閉じ込められている場所から出してあげる。
(誰か…私を…ここから出して…)
 先ほどからベルに軽い頭痛と共に頭の中に女性の声が聞こえる。
 いや、その声は女性と言うより…。
「子供?」
 そう呟いたときに子供ベッドの横に不審なものを見つけた。ベッドに隠されるようにして小さな扉がある。だけど、何か封印のようなものがあってバチと電気が走った。
「…っ…魔女の大元の主である暴食の王なら戒めを解くのも何とかしてくれるでしょ。
ねぇ、そこに閉じ込められているんでしょ?あたしと契約しない?そしたらそこから出してあげるわ」
(ケイ、ヤク?いいわ、ここから出して)
 その答えを聞き、ベルは暴食の王を呼び出し、ドアの戒めを開放させる。ドアはキィと軋む音をたてながらゆっくりと開いていった。
「…こ、れは…」
 そこにあったのは、小さな、本当に小さな白骨と大きな白骨。小さな白骨の方はフリルのたくさんついた服を身に纏っている。
(…ここに私を閉じ込めたのはお母さん。このお家に強盗がやってきて、私一人が生き残ったら可哀想だからってここに一緒に閉じ込められたの)
 ぼぅと青白い光を放ちながら小さな少女が現われた、恐らくはこの小さい方の白骨の魂だろう。
(おかしいよね、あたしは生きたかったのに。死にたくなかったのに。可哀想だからってお母さんがあたしの運命を決めちゃった)
 涙をボロボロと流しながら少女はベルに話しかける。
「ミズの魔女ってのは…?」
(あたし、占いが凄く当っていたの。お母さんがそれを仕事にして、あたしの事をミズの魔女って呼ばせてた。だけどね、みんなが笑うの。有名なミズの魔女も自分の運命は見えなかったのねって)
「もうここから出られるはずよ。ここから出て好きなところに行きなさい」
(ありがとう、最後にあなたのことを占ってあげましょうか?)
 少女の言葉にベルは暫く考えて「やめとくわ」と答えた。
「運命なんて、人に決められるものじゃなくて、自分で切り開くものでしょ?」
 そう言ってベルは少女が消えていくのをただ見ていた。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2119/ベル・アッシュ/女性/999歳/タダの行商人(自称)

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■         ライター通信          ■
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ベル・アッシュ様>

いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です^^
今回の『ミズの魔女が語る時。』はいかがだったでしょうか?
前作を見ても分かりますように、自分の中で魔女ブームなのです^^:
魔女関連のシナリオばかり考えているんですよ^^;
ベルというキャラは何度も書かせていただいたおかげか凄く書きやすいんです。
カッコイイお姉さんなんですけど、丸っきりのいいひとでもない。
そういうところが好きです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

            −瀬皇緋澄