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<東京怪談・PCゲームノベル>


文月堂奇譚 〜古書探し〜

高村 明日菜&平 代真子編

●平代真子
 冬のある晴れた日、古書店『文月堂』の店内に一人の少女が入って行った。
 少女の名前は平 代真子(たいら・よまこ)といった。
 代真子は自分が子供の頃に大好きで何遍もも何遍も読んだ絵本がどうしてももう一度読んで見たくて古本屋を見つけてはその絵本を探していた。
「こんな所に古本屋があったんだね」
 そんな風な事を考えながら、代真子は文月堂の扉を開け中に入ったその時であった。
 代真子はまさか出入り口の近くに踏み台が置いてあるとはまったく夢にも思わず、その踏み台に足を取られてしまう。
「あ、ちょ、な、なんでこんな所に!」
 思わずそんな風に毒つきながらも代真子はバランスを崩してしまう。
 そしてバランスを崩した代真子が向かった先は本の大量に並べてある本棚であった。
 当然バランスの崩した人間と本棚がぶつかればどうなるか、それは自明の理であった。

……ドスンッ!
………バサバサバサッ!
…………コツンッ!

 本棚にぶつかり倒れた代真子の頭上に本がさながら雨の様に降り注いだ。
 そして、最後の一冊が代真子の頭にぶつかるというお約束までしっかりついてであった。

●高村明日菜
 代真子が文月堂の中で本の雨を浴びてる頃、同じ様に文月堂の前を通りかかった人影があった。
「なんだ?このお店から凄い音がしたけど?」
 そう言って高村明日菜(たかむら・あすな)は通りかかって今まさに通り過ぎようかとしていたお店に気が付く。
「へぇ、『古書店文月堂』か……。こんな所に古本屋があるとは思わなかったな。なんか面白そうな本があるかもしれないしな、ちょっとよって見るか」
 明日奈はそう言って文月堂の扉を開ける。
 そこには自分もよく知ってる人間が本の山に埋もれている姿があった。
「おいおい平じゃないか、一体何をやってるんだ?そんな所で」
 思わずあきれた様な声で、本の山にうずもれながらへたり込んでいる代真子に声をかける。
「何って見て判らないの?」
 思わず売り言葉に買い言葉で答えた代真子の所に奥から店員らしい女性が出てきて声を掛けた。
「さっきの凄い音は一体何が……、お、お客さん大丈夫ですか?」
 奥から出てきた黒髪の女性がへたり込んでいる代真子に慌てた様に声をかける。
「すみません、ちょっとそこの踏み台に足を取られてしまって本棚の中身を落っことしてしまいました」
 何処かばつが悪そうに店員に話し掛ける代真子に店員は申し訳ないといった風に頭を下げる。
「すみません、ちゃんと片付けていなくて……。それよりもお怪我の方は大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。たいした事はないから」
 そう言って立ち上がろうとした代真子であったが、思わず痛みに顔を歪める。
「余り大丈夫じゃないかも、ちょっと足をひねっちゃったみたい」
「おいおい大丈夫か?」
 そんな代真子を少しあきれたように見る明日菜であった。
「まったく、平は平だな。本は大切にしろよ?すまんね、本をこんなにしちゃってさ」
 明日奈は店員に向かって代真子に代わって謝る。
「ううん、踏み台をそこに置いておいた私も悪いのだもの、気にしないで。それよりも治療した方が良いわよ。こっちに来てやってあげるから」
「あ、ありがとうございます。あ、あたしは平代真子っていいます」
「代真子さん、ね。私はこのお店で店員をしている佐伯隆美(さえき・たかみ)というのよろしくね」
「ほら、本は俺が片付けておいてやるからさ、平は素直に言葉に甘えて治療しておきな」
 明日菜のその言葉に代真子は小さく頷くと、救急箱を用意していた隆美の方に足を気にしながら歩いて行った。

●本の山
 本を片付けながら手当てを受けている代真子を見て明日菜は小さくため息をつく。
「はぁ、まったく平はなんでこういつも何かをしでかさなきゃ気がすまないんだろうな」
 思わずそうごちてしまう明日菜であった。
「それで、今日は何を探しに来たんですか?」
 器用に慣れた手付きで足にテーピングをしている隆美をじっと見つめる代真子であった。
「へぇ、なんか手馴れているんですね?」
「妹がね、結構ドジだから怪我とか良くするのよ。だから慣れちゃってね……っとこれで良しっと。代真子さん達は今日はどんな本を探しに?」
 テーピングをし終わると隆美は二人に今日どんな本を探しにきたのか問う。
「あ、あたしはちょっとその絵本を探しに……」
 さすがに高校生にもなって絵本と言うのに多少恥ずかしい気持ちがあるのか、少し小さい声で隆美に説明をする。
「絵本、か。うーんあるかもしれないわね、ちょっと探して見るわね」
「あたしの姉が何回も読んでくれた絵本なんです。どうしてももう一回読んでみたくて……」
 代真子は自分のその言葉で明日菜が幼少の頃に家族をなくしてしまっていた事を思い出してしまい、つい明日菜に悪い事をしたと思い一瞬明日菜の事を見て一瞬言葉を発しようと思った代真子であったが、何も言えずそのままうつむいてしまう。
 隆美もその代真子の様子を見て怪訝そうに動きが止まる。
「そう、だったらもしこの中にあるのならぜひ見つけてあげたいわね」
 隆美はそう言って、山と詰まれた本を見る。
「俺は中世ファンタジーとかそういうお話の奴、とにかく色々読んでみたいんで、気に入れば全部だって買って行くつもりだ」
 本の山を見つめる隆美に明日菜も自分の希望を伝える。
「全部?それはまた凄いわね」
「ああ、最近読んでいなかったんでな。色々読んでみたくなったんだよ。
「なるほど、それじゃそっちも探して見るわね」
 そう言って三人はそれぞれ本棚に向かった。

……
………
…………

 本を探していた三人であったが、一時間ほど探したあと、両手一杯の主に明日菜の捜し求めていた本をカウンターに持ち寄っていた。
「さっきの絵本だけど、らしい本が何冊かあったんだけどどれだかわからなかったから全部持ってきたのよ」
 そう言って隆美は数冊の絵本を代真子に手渡す。
 その絵本を受け取った代真子は一冊一冊中身を確かめる。
 明日菜も山と詰まれた本を一冊一冊確かめ始める。
 渡された絵本の中から一冊の絵本を取り出す。
「隆美さん、これがあたしの探していた絵本だよ。探してくれてありがとう。まさか本当に見つかるとは思わなかったよ」
「前から探していた本だよな?見つかってよかったな、平」
「ありがと、まさか明日菜からそういう風に言われるとは思わなかったよ」
「だって前からずっと探していたじゃないか」
 代真子は嬉しそうに何度も何度も表紙を眺めていた。
「さてと、俺の方はどうやってこれだけの本を持って帰るか、そっちの方が問題だな」
 目の前に山と詰まれた本を見上げてため息でも出そうな感じでボソッと明日菜は呟く。
 その呟きを代真子は目ざとく聞き逃さなかった。
「大丈夫、あたしが大半は持ってあげるよ」
「え?いいのか?」
「うん、今日のあたしはこの絵本が見つかって気分が良いんだ」
「そっか、それじゃお言葉に甘えさせてもらうかな。けどただ持ってもらうだけじゃどうにもアレだから帰りになんか奢ってやるよ」
「本当?」
「ああ、こんな事嘘言っても仕方ないだろう。ただ銀行に行ってからな?」
 その明日菜のギブアンドテイクな提案に代真子も二つ返事で答える。
「それじゃ隆美さん、ここに代金はおいておくな」
 そう言って、明日菜は今日買った本の代金と代真子の絵本の代金をカウンターに置いた。
「ありがとう、重いですから気をつけてくださいね?」
「大丈夫、平はこう見えて結構力持ちだから」
 何処か含むものでもあるかのような明日菜の台詞に代真子は不満げな抗議の声を上げる。
「何よ、それじゃあたしが馬鹿力みたいに聞こえるじゃない」
「誰もそんな事は言ってないだろう?」
 こみ上げてくる笑みを必死にかみ殺しながら明日菜はカウンターに置いてある本の一部をさっと手に取るとそのまま軽やかに文月堂を出て行った。
「あ、逃げるなー、こらー!」
 慌てて、その明日菜を追いかけうとした代真子であったがカウンターの上の本に気が付いてまずはそのほんの入った袋を手に取った。
「それじゃ隆美さん、今日は色々ありがとうございました」
「いえいえ、探していた本が見つかってよかったですよ」
 そうお礼を言った代真子に隆美は微笑みなが答える。
 そして代真子は、袋を持つと慌てて逃げて行った明日菜の事を追いかけるように文月堂を出て行った。


Fin

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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≪PC≫
■平・代真子
整理番号:4241 性別:女 年齢:17
職業:高校生

■高村・明日菜
整理番号:4085 性別:男 年齢:23
職業:本屋の主人兼探偵

≪NPC≫
■ 佐伯・隆美
職業:大学生兼古本屋

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■         ライター通信          ■
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 どうも初めまして、ライターの藤杜錬です。
 この度は『文月堂奇譚 〜古書探し〜』にご参加ありがとうございました。
 今回は平代真子さんと高村明日菜さんの共通文章となっております。
 二人の絶妙な関係を上手く描写で来ていれば良いのですが。

●平代真子様
 この度はご参加ありがとうございました。
 代真子さんはこの様な感じでよかったでしょうか?
 らしさが出せていれば幸いです。
 それではご参加ありがとうございました。

●高村明日菜様
 この度はご参加ありがとうございました。
 明日菜さんはこの様な感じでよかったでしょうか?
 初めての発注だったようで、こういう感じでいいのか試行錯誤しながらの執筆となりましたが、らしさが出せていれば幸いです。
 それではご参加ありがとうございました。

 それではお二人ともありがとうございました。

2005.02.10.
Written by Ren Fujimori