コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


屍病院からの脱出!


□オープニング
 
 「さんしたク〜ン、今回はここに取材に行って来て。」
 アトラス編集部内に、今日も碇 麗香の声が響き渡った。
 上機嫌で呼ばれた相手・・三下 忠雄はビクリと大きく肩を上下させた後に、恐る恐る上司の顔色を伺った。
 麗香の血色は良く、口の端は僅かに上がっている。いたって健康的だ。
 身体的にも、精神的にも・・・。
 放って置くとガタガタと震えそうになる肩を必死に押さえ、三下は麗香の前へと歩んだ。
 「はいっ。」
 軽く手渡されたのは、遊園地のビラだった。
 最近出来たばかりの・・・。
 「・・え・・?」
 「だから、ここに取材に行って来て。」
 麗香は再度そう言うと、プイと視線を逸らした。
 「ぼ・・僕がですかぁ〜・・?」
 「あなた以外に誰がいるのよ・・。別に、嫌ならこっちの取材でも構わないんだけど?」
 デスクの上に放り投げてある記事を取り上げる。
 “山荘に潜む幽霊!一家ざん・・・”
 「い・・いえ!こちらの方を行かせて頂きますっ!」
 妙にひっくり返った声をあげて、麗香に向かってビシリと敬礼した。
 「そ、じゃぁお願いね。」
 麗香は妙に優しい微笑みを浮かべると、シッシと手を振った。
 自分のデスクに戻る三下の背後に、声をかける。
 「さんした君だけじゃぁ頼りないから、他にも誰か呼んで一緒に行ってきなさい。」
 ピタリと止まる足。
 恐る恐る振り向くと・・そこにはやけにすっきりとした笑顔をたたえた麗香がいた。
 「な・・なんでですか・・?ゆ・・ゆゆゆ・・遊園地の・・取材・・・ですよね・・?」
 ニッコリと差し出すのは、新聞の切抜きだ。そこに踊る“幽霊が出る遊園地!”の文字。
 すーっと飛びそうになる意識を戻したのは、他ならぬ麗香の声だった。
 「心霊写真の一枚でも、撮って来なさいっ!!」


 〇湖影 龍之助

 「こんにちわ〜!今日も何か手伝える事って・・」
 「あぁ、丁度良かった!今から連れてきてもらおうと思っていたところだったのよ。」
 アトラス編集部の扉を開けた途端、麗香が龍之助の元へと駆け寄ってきた。
 その顔はいかにも“助かりました”と言う顔で・・龍之助は思わずビクリとひるんでしまった。
 「な・・なにか・・?」
 「待ってたのよ〜!ささ、こっちに座って座って!」
 麗香は龍之助の手を引っ張ると、自身のデスクへと龍之助を座らせた。
 自分はと言うと・・近くにいた人の椅子を取り上げて座っている。
 「紅茶お願いね!一番高いやつで良いわ。」
 キビキビと、椅子を取り上げた相手に指示を飛ばし、さっさと行ってくる様に目で命じる。
 指示された相手は、スゴスゴと給湯室の方へとしょぼくれた背中を見せながら歩いて行く・・。
 ・・それにしても・・。
 龍之助は思わず視線を明後日の方向に飛ばした。
 ニコニコと目の前で微笑む麗香の顔が怖い・・。
 タラリと冷や汗が落ちる。
 先ほど指示を出された男の人がお盆に高価そうなティーカップといかにも高そうなケーキを乗せてやってくる。
 それを龍之助の目の前にコトリと置くと、一礼してその場を去って行った。
 「さぁ、どうぞ。」
 「あ・・はい・・。」
 チラリと上目遣いで伺う麗香は、にこやかだ。
 手が震えてしまいそうになるのは、いたしかたの無い事だ・・。
 「あの・・それで・・今日は・・」
 「え?」
 「今日は、三下さんは・・。」
 龍之助が恐る恐るきいてみると、麗香は一つだけ微笑んだ。
 そして、ゴク簡単に・・。
 「取材よ。」
 とだけ言うと、ついとデスクの上を指差した。
 そこには最近出来たばかりの遊園地のビラが置かれていた。
 「これって・・。」
 「そう、遊園地。さんしたクンはそこに取材に行ってもらってるの。それでね・・龍之助君に、ちょっと頼みたい事があるんだけど・・。」
 「なんスカ?」
 「そこのね、遊園地に行ってほしいの。さんしたクンを追って。」
 麗香がパンと手を合わせ、すまなそうに頭を下げる。
 ・・・そんな、そんなことして下さらなくても、俺はよろこんで行くっすよ!
 龍之助はそう心の中で叫ぶと、席を立った。
 「あ、龍之助君。こっちも見てほしいんだけど・・。」
 手渡された新聞記事の切り抜きに、龍之助は思わず固まってしまった。
 “幽霊の出る遊園地!”その下に書かれている場所は、先ほど見せられたビラの場所・・・。
 「さんしたクン、もしかしたら倒れちゃってるかも知れないから・・よろしくね?」
 「任せてくださいっす!」
 龍之助はビシリと麗香に向かって敬礼をすると、紅茶をグイっと一気飲みしてその場から走り去った。
 「・・麗香さん、良いんですか・・・?」
 「なにが?」
 「三下さんだけじゃなく、他の人達もいたじゃないですか・・。」
 「でも、他の人達はお仕事中だし。結局使い物にならないさんしたクンだけどうにかしてくれれば良いのよ。」
 「・・・麗香さん、鬼ですかあなた・・。」
 「・・・なんか言った?」
 三下さんと遊園地でデート!!
 とか思いながら先を急ぐ龍之助には、その会話は聞こえていなかった。
 ・・・それどころか、目の前でその話をされたところで上の空だっただろう。
 なぜならば、すでに脳内はめくるめくワンダーワールドだったのだから・・・。


■やっぱりいつも通りの三下君

 屍病院に着き、龍之助はぐるりと辺りを見渡した。
 どこかに三下が自分を待っていてくれているのかと思うと・・まるで天にも昇る気分だった。
 無論、三下は龍之助を待っているわけではないし・・三下以外にも人はいたのだが・・。
 龍之助は迷わず屍病院へと歩を進めると、関係者以外立ち入り禁止と書かれている扉を開けた。
 ・・一応、関係者なので・・。
 ガタリと音を立てながら扉を開いた先・・数人の男達がこちらを見つめている。
 「な・・誰だ・・?」
 「ここは関係者以外立ち入り禁止になってるはずじゃ・・・」
 ・・なんだ、他の人もいたんスか・・。
 龍之助は少々ガッカリしながら、肩を落とすと、パタリと扉を閉めた。
 薄暗い照明に照らし出されて浮かび上がる面々・・。
 右から羽角 悠宇、修善寺 美童、劉 月璃、シオン レ ハイ。
 ・・・あり??
 どうもあと1人見当たらない・・。
 それこそ、今日のメインの・・。
 「あれ??三下さんは・・・」
 キョロキョロと探す先、ベットに寝かされた三下の姿を捉える。
 ・・・ぐったりと力なく横たわる、手は胸の上でくまれ、顔には白いハンカチ・・・。
 死・・・死死ししししししししし!!!???
 「・・シオンさん、何時の間に手をくませたんですか?」
 「さっきの間です。」
 悠宇とシオンの会話は龍之助の耳には届かない。
 会話はプスリと龍之助の耳に突き刺さり・・スっと右から左に抜けていく・・。
 「さ・・・ささささささささ・・三下さん・・!!!!?!????!?!?」
 龍之助がとても人とは思えないほどのスピードで三下に近づくと、ガクガクとその身体を揺さぶり始めた。
 「三下さん!なんで、なんで俺が来るまで生きててくれなかったんスか!?」
 残念ながら、三下はまだ死んでいない。
 「あの・・三下さんはまだ死んで・・」
 「俺が、俺がもっと早く来れば!!」
 ・・だから、まだ死んでいない。
 今にもオイオイと泣きそうになる龍之助の身体を、三下からベリっとはがすと・・美童は手に持った三下の魂を龍之助に見せた。
 「カレはまだ死んではいないよ。まぁ、もっとも時間の問題だが・・。そうだな・・助ける方法を教えてあげようか。」
 「本当っスカ!?なんスカ!?」
 「カレの身体を屍病院のゴールまで運ぶことだよ。そうすれば、カレは助かる。」
 「そうなんスカ!?わかりました!それじゃぁ超特急で!!」
 「待った。ボク達と行かなければダメなんだよ。」
 「・・分りました!」
 「ここは色々な霊がいるらしいからね、せいぜいカレを守ってやってくれ。」
 「大丈夫っスよ!三下さんは俺が守るっス!」
 ・・・な・・・なんて華麗な嘘・・。
 悠宇、シオン、月璃はただ唖然とその光景を見守っていた。
 「これでカレを運ぶ手間が省けただろう?」
 確かにそれは一理あるが・・。


 □井戸端会議+相談所=除霊+降霊

 姫抱っこで運ばれる三下。
 なんだかちょっと嬉しそうな龍之助。
 害のありそうな霊を手当たりしだい捕まえる美童。
 微妙に薄汚れた本を必死で読むシオン。
 その光景にため息をつきながら互いに顔を見合わせる月璃と悠宇。
 ・・これはハタから見たら、変な集団以外の何ものでもなかった。
 確かに、屍病院内は霊の巣窟と言っても過言でもなかった。しかし・・。
 『ちょっと、アンタ!話を聞いてるわけ!?それでね、そのバカップルって言うのが・・。』
 「そうなんですか、ソレは大変でしたね。」
 『でねでね、酷いのよ〜!!アタシ、ちゃんと女だって言ってるのに!生物学上は男だからって、男だからって〜!!』
 「お・・落ち着いて、話せばわかる。な??」
 「・・霊の井戸端会議場・・みたいなものでしょうか・・。」
 必死になって霊達の話を聞く悠宇と月璃の背後で、シオンがのんびりとそう言った。
 「シオンさん!手伝ってください!」
 目の前のマリア(仮名)と話をしていた悠宇が、ぴっと目の前を指し示す。
 月璃と悠宇の目の前に並ぶ幽霊達・・数え切れいないほどに・・。
 シオンは頭をかくと、その辺にあった板に『月璃、悠宇のお悩み相談所』と書いて掲げ持った。
 「・・・シオンさん、何をなさっているんですか・・??」
 「いや、もっと人を呼んだほうが・・」
 「人を呼ぶ前に、手伝ってください!」
 シオンはおろおろと、その場を回ると・・なにかをひらめいたのか、ポンと手を打った。
 背後から取り出すは明らかに怪しいラジカセとカセットテープ・・・。
 スイッチオンで流れ出す、場違いなまでに軽快なメロディー・・・。
 「シオンさん、何をなさっているんですか?」
 「幽霊さんが楽しい気持ちになれば話しやすいかもと・・」
 「話しやすくって言うより、この人数をどうにかしてください!」
 わらわらと集まってくる・・その人数は計り知れない・・。
 「え〜っと、え〜っと・・。」
 グルグルグルグル・・。
 「あ、そうだ、これを実践すれば・・。」
 再びひらめいて、取り出すは先ほどからチマチマと読んでいた“初心者でもできるお手軽3分除霊術!”という本。
 ・・胡散臭さ満点なのは、ひとえに表紙で微笑む魔女のせいもあるだろう。
 「え〜っと、なになに・・。ヴァルゲ・デー・・うん?これはなんて読むんでしょう・・?パル?ポル?ペル??」
 読めていない時点で既にダメだ。
 「あぁ!分りましたよ!ヴァルデ・ダー・ピョロ・モニュール・ダン!ですよ!」
 ・・さっきと言っていることが違うようにも思うが・・。
 ボワリと音がして、見た先にはちょっと普通じゃない感じの女性の霊。
 この世の全てを恨みながら死んでいきましたよ〜とでも言いたげな瞳がじっとシオンを見つめる。
 「ひぃぃぃ〜〜!!悠宇さん!!月璃さん!!ヘ〜ルプ!!」
 「え?なに・・?」
 「どうしまし・・・」
 シオンの絶叫に驚いて振り向いた先・・除霊術の本によって呼び出された一人の女性の霊。
 ちっとも除霊ではないじゃないか!
 「な・・!?なにしたんです!?シオンさん!」
 「ちょっと除霊を・・」
 「降霊じゃないですか!」
 「・・や・・やっぱりこの本、ダメだったのでしょうか・・。ゴミ置き場で拾ったものですから、やっぱり・・」
 拾わないでほしい。こんなにあやしい本を。
 「ど・・どうしましょう!」
 「とりあえず、離れてください!」
 「こう言うのは、美童さんが得意のはずでは・・」
 ガシャコンと、女性の上に鉄の檻のようなものが降ってくると・・動きを封じた。
 「・・なにをやってるんだい、キミ達は・・。」
 「び・・美童さん・・!」
 「なんでこんなに凶悪な霊なんか・・?さっきここらの害がありそうな霊は一掃したはずだけど?」
 美童はそう言うと、腰に下げ持った虫篭状の檻をチラリと見せた。
 「実は・・除霊術をやろうと思いましたら、うっかり呼び寄せてしまいまして・・。」
 シオンは手に持った本を美童に差し出した。
 美童は僅かに遠くを見つめた後で、悠宇と月璃を振り返った。
 「それで、ボクの方は大体終わったけれど・・こっちは?」
 「全然終わりません。」
 「それよりもなんだか増えているような気が・・。」
 「あの〜ところで、三下さんと龍之助さんは・・?」
 「あっちだよ。」
 指差された先、霊に向かってなにやら世間話をしている龍之助と、その腕の中でぐったりと力尽きている三下。
 なんだかちょっと楽しそうな雰囲気に、悠宇と月璃はため息をついた。
 背後にワラワラと出現している霊達。
 その悩みを聞いて成仏をさせるなんて・・きっと今日中には終わらない。それどころか、明日だって、明後日だって・・・。
 「悠宇さん、どうしましょうか。コレだけ沢山霊がいると・・浄霊は難しいですね。」
 「けど、除霊だって難しいでしょう・・?これだけいれば・・。」
 『ちょっと貴方たち!ここ、相談所なんでしょう!?』
 違う。断じて相談所なんかではない!
 『ちょっと、話を聞きなさいよ!』
 『あたしはね、昔・・』
 キャンキャンと騒ぎまくるおばちゃん霊達。
 シクシクと泣き出す、若めのお姉ちゃん霊達。
 最近の若いもんは〜と、お決まりの台詞でお説教をしだすおじいちゃん霊達。
 ・・・ザワザワ
 「ちょ・・落ち着いてください!」
 「順番を守って・・!」
 騒がしい霊達の声に混じって、なんだかお経のような音まで聞こえてくる・・。
 ・・・ん?お経・・?
 『南無阿弥陀仏・・南無阿弥陀仏・・』
 「え?」
 振り向いた先、そこにはついさっきまで場違いなまでに軽快なメロディーを紡ぎだしていたあのラジカセ・・。
 「なっ・・なんで・・!?」
 『南無阿弥陀仏・・』
 「ひぃぃっ!やっぱりこれもダメでしたか〜!?」
 押し寄せる霊の大群、お経を唱え続けるラジカセ・・。
 そして、背後は壁。
 絶体絶命の大ピンチだ!!
 「これ、どうすれば・・!?」
 「うわ、ちょ・・落ち着いて!!」
 「ちゃんと並んで・・・押さないで・・!!」

 ・・・・・・・・・・!!!!!!!!!

 『ガシャコン』

 ・・・・・・・・・・?????????

 五月蝿くなくなった屍病院内。
 思わず瞑ってしまった瞳をそーっと開くと、そこには檻の中に入った霊達の姿・・。
 「これで写真を撮って、依頼終了だ。」
 パシャリと一枚だけ写真を撮ると、美童はカメラを月璃に手渡した。
 そして、そのまま檻を掌サイズほど縮める。
 「後でどこか広いところで出して決めようじゃないか。」
 「・・なにをですか?」
 「除霊するか、ココに残すか、はたまた・・・ボクのコレクションにするか・・。」
 ニヤリと微笑む美童に、ちょっと冷や汗が背中を滑り落ちる。
 「みなさん!やりましたね!!」
 走り来る、龍之助。そしてその手には三下・・。
 「龍之助さんも、お疲れ様です。」
 無論、省略した部分には(三下さんのお守)と入る。
 「それにしても・・もっと早くこうしていればよかったのかもしれませんねぇ。」
 もう音が聞こえなくなってしまったラジカセを持ちながら、シオンがもそっと呟いた。
 「美童さんの能力で霊さん達を檻の中に入れて、1人ずつ出してゆっくりと・・」
 ・・それもそうだ・・。


□結局ただ働きですか?

 どっと疲れた身体を引きずりながらアトラス編集部に帰ってきた。
 もちろん、この表現が使えるのは月璃と悠宇だ。
 シオンの場合・・。
 使えなくなってしまったラジカセと、どうも胡散臭い除霊術の本を持って、トボトボとアトラス編集部に帰ってきた。
 そして美童の場合・・。
 コレクションに出来そうな霊達を大量に捕獲でき、上機嫌でアトラス編集部に帰ってきた。
 最後、龍之助の場合・・。
 腕の中にグッタリとした三下を抱えながら、王子様気分でアトラス編集部に帰ってきた。
 ・・まるで三者三様の帰って来方に、麗香は少しだけ目を丸くした。
 一番最初に、龍之助の腕の中で力なく目を瞑る三下を見つめ、眉を跳ね上げた後で、疲れきった表情の月璃と悠宇に同情の視線を送る。
 シオンにいたっては、寂しげに見つめるラジカセが全てを物語っているので、別段何もアクションは起こさなかった。
 「やっぱりさんしたクンはダメだったのね。・・・それで、写真は撮ってこれたの?」
 「えぇ。」
 月璃は頷くと、胸の前に持ったカメラを麗香に差し出した。
 「これ、現像してくれる?」
 麗香が近くにいた男性にカメラを放り投げる。
 「ところで龍之助君、ソレ・・重くないの?」
 「いえ、全然大丈夫っス!」
 「・・・・そう・・。」
 麗香は一つだけ盛大なため息をつくと、一同に席に座るように進めた。
 「それで、どうだったの?霊はいた?」
 「えぇ、いたにはいたんですけれど・・。」
 実はかくかくしかじかで・・。
 ふんふんと、頷きながら聞いていた麗香が、今日何度目かのため息をついた。
 「ま、そんなものよね。病院だし、雰囲気も霊にとっては良いだろうし・・。だから集まっちゃったんでしょうね。」
 「そうだと思います。」
 「まぁ・・一応幽霊はいたわけだし・・記事には出来そうね。もっとも、写真次第なんだけど・・。」
 「麗香さん!現像あがりました!」
 「早いわね。ありがとう。」
 先ほどの男性が走ってきて、麗香に一枚の写真を差し出した。
 写真を見つめる、麗香の顔が見る見る変わって来る・・・。
 「これ・・なに??」
 「え・・?」
 「全然撮れてないじゃない!!」
 「そんなはずは!!」
 麗香の手から、なかばひったくる様にして写真を取る。
 覗き込む・・写真は真っ白だ!!
 「な・・なんで!?」
 「ちゃんと撮れていたはずでは・・??」
 「写真に霊達が写らなかったということは、考えられる可能性は2つだな。」
 「なに?」
 「強大な力の霊がいた、もしくはお経や賛美歌と言った、何か霊達を抑えるような・・・」
 すーっと、一同の視線がシオンの持ったラジカセに注がれた。
 「え??私が何か??」
 「・・・と、言うわけで、報酬はなしね。写真がないようじゃ、記事にも出来ないし・・。」
 麗香がサラリと言い、背を向ける。
 「あ〜でも、今回の経費はさんしたクンのお給料から引いておくから、安心してね。」
 あんなに頑張ったのは、いったいなんだったのか・・・。
 ガックリと力なく椅子にもたれかかる月璃と悠宇。
 「これ、どうぞ・・。」
 先ほどの男性が、気をきかせてか温かいお茶を持って来てくれる・・。
 とても美味しいのだが、美味しいのだが・・・!!
 何故か涙の味がしたのは、言うまでもない。
 

〇おまけ

 家に帰り着き、本日の事を思い出しながら一息つこうとした時だった。
 “その事”を思い出したのは・・。
 「あっ!!」
 思い浮かぶ光景は、アトラス編集部内でぐったりとソファーに横たわる三下の姿・・。
 「魂戻してないじゃないっスか!!」
 ・・・忘れ去られたまま美童の腰につく虫篭状の檻・・。
 その中で、三下は必死に叫んでいた。

 『ヘルプ・ミー!!!』

     〈END〉



 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

  4748/劉 月璃/男性/351歳/占い師

  3525/羽角 悠宇/男性/16歳/高校生

  0635/修善寺 美童/男性/16歳/魂収集家のデーモン使い(高校生)

  3356/シオン レ ハイ/男性/42歳/びんぼーにん(食住)+α

  0218/湖影 龍之助/男性/17歳/高校生・アトラスアルバイター

 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 ■         ライター通信          ■
 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

 この度は『屍病院からの脱出!』にご参加いただきありがとう御座いました。
 ライターの宮瀬です。
 ほぼコメディー仕立てということで、最終的にはただ働きということになってしまいました。

 湖影 龍之助様
  初めまして、この度はご参加ありがとう御座いました。
  他の方々とは少し違った視線から執筆いたしましたが、如何でしたでしょうか??
 
   それでは、またお逢いしました時はよろしくお願いいたします。