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【 金白紅・参 】
「あはははははは!!!」
闇の中、『狂気』は笑っていた
力の代償に痛む体を震わせながら
濃い瘴気を纏わせ、その顔は狂気に彩られていた
「ふふふふ」
何が可笑しいのか
何故笑っているのか
それは自分でも分からない
ただ、笑いたいのだ
「あはははははははははははははあははははあはははあはは!!!!」
全て、全て、可笑しくて堪らない
心が、身体が、どす黒く、染まっていく
「アハハハハハハハアハハハハハアハハアハハアハアハアハハアハアハハハハハハハ!!!」
狂気は笑う
早く、早く、いらっしゃい、と
この狂気の、宴に―――
―――時は、遡る
「いくら調べても、ダメ、ですか――」
修善寺・美童(しゅぜんじ・びどう)は、落胆を表す様に溜息をついた
全くダメというわけではない、ただ、あやふやなのだ
レオナ・ホワイト―――『傍観者』と名乗る女の行動、そして素性は全てにおいて統一性が感じられない
経歴も、住んでる場所も、行動パターンも
すべてがのらりくらりと気ままに変え、ソレが本当の事なのか分からなかった
美童はレオナを晩餐へと呼び、レイジの事を聞いて、手を貸りたいと頼むつもりであった
だが、有力な情報を得られず、しかも依頼を受けた張本人であれ会った事もない者から晩餐へと誘いがあっても誘いにノるかどうか分からなかった
しかも、もともと吸血貴族と呼ばれる彼らは誇り高い
人間が呼んでも不快に思うこともあるだろう
それに何より、連絡方法がないのだ
情報を集めるのは比較的簡単だ
金に物を言わせ、欲しい所から引き出せばいいのだから
だが、連絡となると問題は変わってくる
居場所は今分からない
これでは連絡しようがない
大きな誤算だ、否、致命的といってもいい
いくら情報があっても、伝えることが出来なければ無駄なのだから
美童は仕方なく晩餐を諦め、部下に指示を渡す
レイジの居場所は、雫のメールにいつのまにか送信されていた
多分、レオナの仕業だろう
レオナとの交渉は会った時にという事になり、美童達は戦闘の準備を万全にする事に集中した――
―――夜
月が雲に覆い隠され、何とも気味が悪い夜
待ち合わせ場所に指定されたサクラ公園に、皆は集う
黒榊・魅月姫(くろさかき・みづき)は、友人である雫の為に来ていた
前回、雫のピンチに駆けつけられず申し訳なく思っていた
今回は雫を苦しめた者を倒せる依頼
この機会を逃すわけにはいかなかった
「みんな揃ったようですね」
魅月姫の言葉に、蒼王・翼(そうおう・つばさ)は頷いた
美童に雇われた蜂須賀・大六(はちすか・だいろく)と前回の鬼ごっこに参加した七枷・誠(ななかせ・まこと)も待ち合わせ場所へと姿を現していた
美童とその部下達は、防弾プロテクターで全身を被い、バイザー付ヘルメットのインカムをつけ、準備を万全にしていた
「皆さん、このインカムをつけていてください」
半ば強引に美童は仲間にインカムを配り、皆はそれを身に着けた
『集まったわね』
キィンっと頭に響く声
辺りを見回しても姿は見えず、声のみが頭に響く
『私の下僕が、レイジの場所に案内するからついてきて。そこに私も、レイジもいるわ』
バササッと一匹の蝙蝠が目の前に現れ、案内するようにゆっくりと飛行する
「―――行こうか」
翼の言葉に、皆は頷き、闇の中、足を踏み入れる
『狂気』が住む場所へと――
―――暗い森
その森の奥の奥、一般人がまず立ち入る事がない場所に皆は案内された
「きたわね―――」
案内をしていた蝙蝠が消え、そして女が現れる
金色の髪、真っ白の服、炎のように紅い瞳
「美しい」としか言いようのない美貌の女は、翼達を見回して眼を細めた
「私はレオナ。『傍観者』よ――ついてきて」
そう名乗り、さっさと後ろを向いて歩いていってしまう
「ま、待ってください!?」
美童が慌てて呼び止める
「私達に力を貸してくださいです!」
くるっとレオナは振り向いて、美童を見る
「言ったでしょう?私は『傍観者』、そう易々と手を貸していい身分ではないの」
「では、結界だけでも――」
「無理よ」
即座に、きっぱりと、レオナは答える
「あの結界は、厳密に言えば結界じゃない。義姉さんの負の感情が生み出した波動の塊」
「―――どういうことだ?」
「義姉さんが生きている限り、その結界は破れる事はなく、そして例え神が作り出した結界でさえ、その感情に直接『影響』されその効力をなくす」
「つまりは、どんな威力や効果を持つ結界を張っても、無駄ってことか?」
誠の言葉に、レオナは頷く
ごくりと、誰かが息を呑む
「前回の鬼ごっこをしている人なら分かるでしょう?結界を作ってもその波動に押しつぶされてしまった事ぐらい。自分の力だけでなんとかなるなんて思わないことね―――義姉さんの恨みの波動は、何の『力』を持たない『人間』なら容易く発狂させられるわ」
美童と大六の後ろで控えていた部下を見て、レオナが警告する
「大丈夫ですよ、ボクにはソウル・ファッカーが―――」
「今の説明を聞いてなかったか?どんな『効果』を持つ結界も、あの中じゃ『発動』できないんだよ」
「そんな―――」
美童は俯き、翼の表情には焦りが生じる
二人とも結界を作り出し、自分たちを有利にしようとしていた
それが『無駄』と分かったのだ
「だから、レオナさんは1人ではなく、5人呼んだのですね。―――1人じゃどうにもならないから、せめて同等に戦えるようにと」
魅月姫の言葉にレオナは頷く
「そうよ、1人じゃどうにもならない。相手は、純血の吸血鬼、『狂気』に駆られた鬼、同族殺しのレイジ・ホワイト―――」
「―――依頼、安請け合いしちゃったですかね」
レオナの言葉に、大六は苦々しそうな顔で呟いた
どうやら、思ったよりもかなり敵は厄介な部類らしい
「義姉さんは怨恨により、命が削られている。その代わり、力を増して、『化物』へと『進化』しているのよ」
「完全に『化物』になる前に終わらせる、という事だな」
翼は、緊張した面持ちで剣に手を伸ばす
浄化能力がついた剣でどれだけ持ちこたえられるか、脳内でシュミレーションする
「純血の吸血鬼、ね―――」
考え込むように呟いたのは魅月姫
真祖である彼女も、純血の吸血鬼である
「貴女は私達のお仲間みたいだけれど―――精々血を吸われないようにね」
自分だけが特別な力を持っているわけではないから、と皆に聞こえるよう、レオナは静かに『警告』した
「そうね、あなた達が殺されそうになったら――攻撃を防ぐ事ぐらいはしてあげましょう。それ以外は無理だからね」
そういいながら、くるりと背を向けてレオナは歩き出す
皆はソレについていく
それぞれが緊張した面持ちで、奥へと足を踏み入れた――
―――狂気の声
「いらっしゃい。レオナ、また随分と人間をつれてきたのね。――まぁ、『夜食』には丁度いいかしら?」
その声と共に、雲が遠のき、月が辺りを照らす
広い庭らしき場所に、『狂気』はいた
金色の髪、真っ白の服、血のような紅い瞳
レオナと良く似た容姿を持つ女――レイジ・ホワイト
「義姉さん、私が呼んだのは5人。後ろの『一般人』は勝手に呼び寄せたものが連れてきただけよ」
クスクスと笑うレイジに、レオナは感情の篭らない声で返した
レイジはピタリと笑うのを止め、そしてすぅっと眼を細める
ぞくりっと誠達に悪寒が走った
ぞわぞわと背筋を這い登るような殺気
「うぅ・・・・・」
誠が一歩、美童と大六の部下達が呻き、二歩後ろに下がった
「うぅうう・・・・」
誠はズキズキと襲い来る頭痛に呻き声をもらす
それどころか、心臓を圧迫されるような感覚
どさどさと、部下達が口から泡を吹いて倒れていく
誠は倒れるのを耐えるが、頭の中が真っ白になって、そこからどんどんとどす黒いモノが侵食していく
黒く、黒く、全てが、黒く、塗り潰されて―――
「は・・ぁ・・・・」
「大丈夫ですか!?」
魅月姫の声が聞こえた
だが、ソレは何処か遠くから聞こえてきているような感覚
目の前の、女と目があった
女は狂っているように、笑んで見せた
そして、意識が、黒いモノへと完全に侵食される――
「・・・・何処だ」
「え?」
「俺の・・狩る化物は・・・何処だ!」
誠は近くにいた魅月姫に向かって、聖水をぶちまけた
「きゃっ!!!」
魅月姫は咄嗟に飛び退く
無表情な顔に焦りが浮かぶ
「どこだドコだドコダ何所だ何処だ!!!」
誠の思想は、レイジのあまりにも重い狂気に引きづられ、周囲に在る人外の存在を滅ぼさずには居られない状態になってしまった
誠は、剣を構えている翼へと目を向け、言霊を紡ぎだす
「聖なるものを使う不浄なる鬼の者の矛盾、血を吸う鬼が弱さを克服することの矛盾、矛盾なる力を全て除け。――俺が命じる」
「なっ!?」
突如として翼に、バチっと電流のようなものが体中に流れ、剣を落としてしまった
拾おうとしてもその剣に触れられない
「誠さん!正気に戻って―――」
「鬼を滅ぼす白き槍。闇を打ち抜く白き杭。撃ちぬけ、俺が命じる!」
魅月姫の言葉に耳を貸すどころか、持っていた白木の杭を言霊で操り、放つ
「くっ――!!」
避ける、掠る、飛び退く
いつまでも杭は追ってくる
攻撃を吸収しようと、闇を操るが誠の言霊の前にかき消されてしまう
「魅月姫さん!?ソウル・ファッカー!行って下さい!」
美童は急いでソウル・ファッカーを呼び出した
結界は使えないが、動かす事ぐらいは出来る
ソウル・ファッカーは、誠に思い切り体当たりを食らわせた
「ぐぁ!?」
誠は無防備な体勢で体当たり喰らい、吹き飛ばされ倒れこむ
魅月姫を追っていた杭も、効力を失ったように地に落ちた
「―――あーあ、やっぱり一般人はダメね。狂うまもなく倒れちゃうし。ソッチの坊やは耐久力がなかったみたいねぇ」
誠との攻防を暢気に眺めながら、レイジは呟く
「次に倒れるのは貴女ですよ!!」
大六が叫び、デーモン『ホーニィ・ホーネット』を呼び出だした
巨大な女王蜂型の本体から繰り出された幾つもの小型の蜂型戦闘機の戦闘端末をレイジに向けて放つ
『ドドドドドドドド!!!!』
ぐるりとレイジを囲むように放たれた小型の蜂型戦闘機は己が持つ霊的機関砲で狙い撃った
凄まじい音、そして微かな悲鳴
「やったですか―――!?」
「―――やった?誰を?」
ぞくり、と背筋に凄まじい殺気
弾は当たっていた
ただし、腕を掠っていただけでその他は避けられ、小型の蜂型戦闘機は全て破壊されてしまっていた
「中々やるじゃない?結構痛いわよ、コレ」
言葉とは裏腹に、くすくすと面白がるようにレイジは笑う
戦闘機本体である『ホーニィ・ホーネット』を踏みつけながら――
「威力は強いけど、避けられる可能性も考えといた方が良いわね?あたしは生き物なんだから」
「なるほど、勉強になりますよ」
大六は、口元を歪め、吐き捨てるように言った
「んー素直な子は好きよ、そっちのお嬢さんも――堂々と攻撃したらどうなの?」
レイジは腕を伸ばし、影の中に潜んでいた魅月姫を無理矢理引きずり出す
「な―――!?」
「貴女だけが、特別じゃないのよ?」
「危ない!!!」
ぶんっと乱暴に投げられた魅月姫を翼は急いで受け止める
「―――そんなに動いてもいいのか、レイジ?お前の心臓の音、段々弱くなっていくぞ」
「ふふふふふ、そう?皆が強いんで、動きすぎちゃったかしら?」
ケラケラと笑いながら、挑発を受け流すレイジに、翼は剣を構える
誠が気絶したため、自分の能力も使えるようになっていた
「今すぐ楽にさせてやる!!」
「やってみなさい!!」
ブゥン!キン!ザシュッ!
剣を振る音、受け止められる音、そして肉を傷つける音が闇に響く
「くっ―――」
翼は、腕から血を流しながら眉を顰めた
対するレイジは、頬から血を流しながら笑みを浮かべている
「ソウル・ファッカー!!」
美童の声に動いた『ソウル・ファッカー』の攻撃をレイジは足を少し動かし、最低限の動きで避ける
「翼さん、伏せて!」
大六の言葉に、瞬時に翼は体を伏せる
その上を小型の戦闘機たちが通過し、レイジに霊的機関砲を浴びせる
「―――――っ!!!」
一瞬、美童の『ソウル・ファッカー』に気をとられていたレイジは、腹・左腕・右足をそれぞれ貫かれる
「今度は当たりましたね、レイジさん?」
「そうみたいね」
ほんの少し眉を顰めたレイジに、伏せていた翼が足を狙って横凪に剣を払う
「このっ!次々と――!!」
咄嗟に飛び退き、翼の一撃を回避するが、息は目に見えて荒くなっていく
力が増してきている分、耐久力・体力共に格段に落ちているのだ
「捕まえましたわ!!」
「―――!?」
闇の中から、魅月姫の手がレイジの足を捉えていた
「闇に抱かれてお眠りなさい」
レイジの体に闇が這い、その体を拘束していく
「っ・・・・ふふふ・・・あはははははは!!!!」
「何が可笑しい?」
「ココが、何処だか分かってないようね?」
「何―――?」
闇の動きが、止まった
『あたしは、貴方達を、恨む』
「「「「!?」」」」
ズシリッと体が潰されそうになる感覚
体が、動かない
「何を、した!?」
翼の問いかけに、闇から脱したレイジは笑いかけた
「ココは、あたしの感情が作り出した場所」
「その感情に呼応して、相手を『縛り付ける』力が強くなる――だったわよね、義姉さん?」
翼達を庇う様に、レオナがレイジの前へと立った
「あら、Zuschauer(ツゥシャウァー)、貴女は傍観してるだけじゃなかったの?」
「この子達と約束しちゃったからね、危なくなったら攻撃を防ぐぐらいはしてあげるって」
「あははははは!!!!!お人好しね、レオナ!いいでしょう、防げるかどうかやってみなさい!!!」
レイジはわざとレオナを避けるように、怨恨の波動によって動けない美童、翼、大六、魅月姫を狙って風の刃を放つ
「相変わらず性格が悪いわね」
腕を揺らした瞬間、そこから風が巻き起こり風の刃を相殺させる
「貴女だけには言われたくないわ!」
跳躍し、レオナの懐へと潜り込んだレイジは、鳩尾に向かってその鋭い爪を持つ手で突く
レオナは、横へと一歩ステップを踏み、ぎりぎりで避ける
「はぁああ!!」
打つ、弾く
蹴る、受け止める
放つ、相殺する
凄まじい攻防の中、誠は目を覚ます
「―――ぅう・・・」
体が重い
頭がガンガンと痛む
目だけを動かして周りを見ると、仲間が倒れこんでいて、そしてレオナがレイジの攻撃を受け止めていた
「・・・っ・・」
横を見ると、白木の杭
もう一度、レイジを見る
レオナに集中して他が見えてないようだ
自分の声は―――まだ、いける
ほんの一瞬のチャンスを狙い、誠は口を開いた――
「レオナ、さん!」
美童が重くなった体をなんとか動かそうとしながら叫ぶ
「もうちょっとで、動くのに――!!」
護られている、という立場に苦々しく呟きながら魅月姫が怨恨の波動に抵抗を試みる
「くっ!!!」
何とか『ホーニィ・ホーネット』を動かそうと、大六は神経を集中させる
だが、カタカタと小型戦闘機は揺れただけで、未だ飛ぶまでは至らない
「私の腕、動いて!!!」
なんとか剣を握り、身を起こそうとするが、その重圧に体が圧倒される
「レオナ、どうしたの?いつものキレがないわよ?それだと―――――死ぬよ」
ドスッ!!!!!
レイジの手刀が、レオナの腹を貫通する
「あはははははは!!!ほらね、ほらね!!!!」
思い切り腕を動かしながら腹から手を引き抜こうとした
「―――義姉さんは、いつも最後の最後で油断する」
「何、です、って?」
動かない
レオナによって腕は捕まれ、身動きが取れない
「離せ!はな―――」
「狂気なる鬼よ!白き槍に心を射抜かれ、現世よりその姿を去らん!貫け、俺が、命じる!!!」
ズシュッ
「――ぁ?」
のろのろと、レイジは自分の胸を見る
そこには深々と刺さった白木の杭
吸血鬼を倒す方法、それは、白木の杭を心の臓に刺す、こと
「う、そ―――?」
「俺を、忘れて、もらっちゃ、困る」
痛みで苦しげに眉を顰めながら誠は口を歪めて笑った
「誠さん、正気に戻ったの!?」
「なんとか―――いいトコ取りしてすまないな」
魅月姫に軽く笑いかけると、仕方ないというように魅月姫が首を振った
「あたし、が!あたし・・・が・・・」
「レイジ―――」
怨恨の波動が消え、自由に動けるようになった翼はレイジを哀れむように見た
その強力な力ゆえ、心の臓に杭を打たれて尚息をする吸血鬼
苦しみ悶え、その先にあるのは、ただの死なのだ
「レオナさん、魂を――」
「不要よ。逝かせて上げて」
『ソウル・ファッカー』の能力を発動させようとした美童は、その言葉に頷き、発動を止める
「レオナ―――!!!」
「お疲れ様、義姉さん。―――私もすぐそちらに行くから、もう少しだけ、待っていて」
顔を恨みに彩ったレイジをレオナは、優しく抱き寄せた
「レオナさんっ!?」
「大丈夫よ、もう傷つける力さえ、無いから」
大六に言いながら、レイジの頭を優しくなでる
レイジは驚いたように目を大きく見開き、そして目を伏せた
「最期まで、貴女は、姉に対する、態度じゃないのね――」
「義姉さんより、私の方が精神年齢が上だからね」
「ふふっ・・・本当に・・・可愛く、ないんだから・・・・」
恨みが抜けたような、全てが馬鹿らしくなったような、そんな笑みを浮かべながらレイジは灰へと還った
「レオナさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ――腕のほうは大丈夫かしら?」
「あぁ、これぐらいなら」
翼は気遣うようにレオナを見るが、レオナは微笑をたたえているだけで、目の奥に隠された感情が読めなかった
「誠さん、貴方は?」
「大丈夫です。レイジにやられたわけじゃないですから」
暴走してしまった気恥ずかしさからか、ぽりぽりと頬をかきながら誠は答える
「終わった、のですか?」
魅月姫の問いに、レオナは目を細める
そして、月を仰ぎ見ながら呟いた
「えぇ、終わったわよ。長い間続いた、姉妹喧嘩がね―――」
美童達は、怪我の手当てをしてそれぞれの家へと帰った
そして思い出す
別れる時、レオナの目から、一筋だけ
涙が、零れ落ちたことを―――
森の奥に建てられた人気の無い屋敷
それが建て壊される事に決定した
しかし、いざ建て壊そうとすると一人の女が邪魔するらしい
その女は、金色の髪と真っ白な服、そして炎のように紅い瞳だったらしい
その末、建て壊しは禁止された
それ以来、あの屋敷にはその女が住んでいるといわれている
金白紅の色を持つ女は、満月の夜、その紅き瞳から、涙を流し、歌を歌う
その歌は、悲しい、そして、優しい音色を持つ、鎮魂歌―――
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0630】蜂須賀・大六 (はちすか・だいろく)/28/街のチンピラ デーモン使いの殺し屋
【0635】修善寺・美童 (しゅぜんじ・びどう)/16/魂収集家のデーモン使い(高校生)
【2863】蒼王・翼 (そうおう・つばさ)/16/F1レーサー 闇の皇女
【3590】七枷・誠 (ななかせ・まこと)/17/高校二年生 ワードマスター
【4682】黒榊・魅月姫 (くろさかき・みづき)/999/吸血鬼(真祖) 深淵の魔女
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■ ライター通信 ■
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どうも、黒猫です
金白紅・参、如何でしたでしょうか?
これでこのシリーズは終わりという事になります
レイジをかなり強めに設定して苦戦させてしまいましたが、最後までお楽しみいただけたら幸いです
この度の発注、本当にありがとうございました!!
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