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<東京怪談・PCゲームノベル>


★鶴来理沙の剣術道場

●ようこそいらっしゃいました! 〜オープニング〜

 はじめまして!
 当道場は剣神リサイアの巫女、鶴来理沙(つるぎ・りさ)の剣術道場になります。
(――――つまりこの私が道場主です!)
 場所はあやかし荘の大部屋を間借りして開いています。が、とある結界の力を用いて道場内に色んな修行の場を出現させたり、古の武術を伝える師範がいたりと、ふつーの道場ではないのです。
 武の道を極めたい人、必殺技の修行をされたい人、なんとなく和みたい人などは、ぜひ当道場の門をお叩きください。ビンボーですががんばりますので!
 あ、それと補足がひとつ。
 ただいま門下生希望者は、随時熱烈大歓迎です☆

 それでは、本日も良き修行の場になりますよーに。


●本日の修行、開始です!

 今日も空気は寒さで張りつめていた。
 寒そうにおばんてを羽織ながらおよそ道場主と呼ぶにははばかりある姿で道場を歩いていた鶴来理沙は
「うぅ〜、寒いですね〜ブルブル」
 その時――――、

   ぽかっ!

「ふぎゃんっ!!」
「忍者を一人討ち取ったり!」
 頭を叩かれしゃがみこむ理沙の側に天井から奇襲を仕掛けた影は得意げに胸をはった。その正体は謎の便利屋、 清水 コータ(しみず・こーた)だ。
 砂漠地方にいる暗殺者っぽい格好のずるずるした格好で、実にあやしさ全開だ。
「もう、私はニンジャじゃありません。忍者ニンジャって何ですか? うぅ〜、当道場に御用ということは修行希望者ですか? だったら歓迎させていただきますけど――」
 あいたた、と頭を涙目になりながら両手で押さえる理沙がギロリとにらみつける。あんまり怖くないけど。
「そう、忍者だ! 俺は忍者を超えてやる!」
 たんこぶの仇、といわんばかりに理沙は不敵な笑みを浮かべた。
「フッフッフ、そういうあなたにはうってつけの相手がいます――プリティクのいち! 汐さん! カモーン!」
 シュッタッと音もなく天井から舞い降りたのは可憐なくノ一、師範代の一人である村雨汐(むらさめ・しお)だ。くのいち装束に身を包んで重さを感じさせない身軽さで華麗な着地を決める。
「あの、カモーンだなんて奇術のヘビみたいな呼ばれ方は、ちょっと‥‥」
 それにプリティだ何て、ぽっ‥‥と頬を赤らめてモジモジしている汐に、コータはズザザッ!! と身構えた。
「むう、これはてごわそうな女子でござるよ」
「あ。修行希望の方ですね? 師範代を務めさせていただきます村雨汐と申します。どうぞよろしくお願いします」
 ぺこりと頭を下げる汐にコータはますます警戒レベルをアップさせる。
 相手は忍者――そう、卑怯、暗殺、騙まし討ちのプロフェッショナル、しかもくのいちとなれば男の天敵の代名詞‥‥警戒しすぎるということはないのだ!
「ええと、そんなに警戒しないでください、ね?」
「困った園児をやさしく諭すモードに入った汐だがコータはいっこうに警戒を解いてくれない。相手は忍びである。どのような態度も相手を油断させ隙を作るための罠に違いあるまい、と考えるのは無理からぬことだ。忍者相手に隙を見せることこそ命取りだ、とコータはそのことをよく知っているといえよう――」
「あの、理沙さん‥‥変なナレーションを入れないでください‥‥」
 困ったようにように「めっ」と軽くにらむ汐。
 そして、アサシン姿のコータと本物のくのいちは剣術道場にて対峙する。
 生ぬるい風が吹き、中庭の木々がざわめく‥‥。
 いやがおうなく緊張感が盛り上がる‥‥。

 ――――今、まさに忍者対決が始まろうとしていた!

「あの‥‥修行は‥‥」
「まあまあ、やる気みたいだし軽く相手してあげてください」
 お煎餅とパリパリかじりながら理沙はもはや観戦モードだ。
 しかし、それは油断だった。
 隙を突いたコータが開始の合図を待たずに先制攻撃を放った。忍者の戦いに開始の合図などないも同然。油断した方が悪いのだ。
「きゃあっ!!」
 汐の体に得体の知れないものが絡みついた。
 粘々というには粘性の少ない半ゲル状の液体――理沙がコッソリろその一部を舐めとった。
 甘くてぷるるん、これは‥‥

 まさか、と驚愕の表情で理沙が立ち上がる。
「こ、この術は!? 幻の忍法プリン地獄ね!!!」
 叫びながら理沙はお茶をすすった!!
「うん。ぷりん」
 あっさりと理沙のボケを受け流すという高等なテクニックのボケ流しでうなずきながらコータはさらにプリンを増量させた。ますます汐にプリンが絡みつく。
「ふえぇ〜ん‥‥ねばねばのぷるるんってしてて気持ち悪いですぅ」
「そんな‥‥信じられないわ‥‥あらゆる拷問にも耐えられる修行を積んだ、一流の忍びである汐さんが、涙目だなんて‥‥あそこまで彼女を追い込むなんて常識ではあり得ない‥‥コータさん、怖い人‥‥」
 白目になりながら戦慄する理沙。
「プリンは怖くないよ。おいしいもの」
 ボケにボケ返す余裕のコータに比べて、全身をプリンまみれにされてプリンの海でおぼれる汐は半死半生の大ピンチだ。その今日は背中にフルーチェを流し込まれた100倍の気持ち悪さと考えてもらえればその想像を絶する恐怖の一部ぐらいは理解してもらえることだろう。
 汐は息も絶え絶えにギブアップ寸前まで追い込まれたその時、意外な展開が忍者対決に起こった。

「あ――うぷ、あうああぁぁぁっ!!!」

 突然、コータが絶叫を上げて倒れたのだ。
 それは魂を絞り上げるような絶叫だった。
 悲鳴が途絶えると、コータはそのまま床に突っ伏したままピクリとも動かない。
「そこまで! 勝者――汐さん!」
「ふえぇ‥‥一体、何が‥‥」
「彼の敗因は――プリン切れね」
 プリン切れ。
 コータにとっての命にも等しい存在、プリン。それを彼は攻撃のために使い果たしてしまったのだ。まさに命をかけた攻撃だったのである。
 
「いい勝負だったわ‥‥私はこの歴史に残るような名勝負を決して忘れることはないでしょう」
 感極まって理沙はもはや前が見えない。
 感動にひたりながらさっていく理沙。
 力尽きて倒れたコートを抱きしめるように運びながら。
 長い戦いを終えた戦士に今一時の休息を与えるように‥‥。


「あ、あの、それよりも‥‥このプリン、‥‥」
 プリンの海で汐がか細い声で救いを求めるが、返事が返ってくることはなかった。
「いやぁ‥‥助けてください〜」
 しくしくしく。
 その後、汐が自力でプリンから脱出できたのは、1時間後のことだと風の噂では伝えられる‥‥。


【本日の修行、おしまい!】


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【4778/清水 コータ(しみず・こーた)/男性/20歳/便利屋】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、雛川 遊です。
 ゲームノベル『鶴来理沙の剣術道場』にご参加いただきありがとうございました。
 作成が大幅に遅れてしまい申し訳ありませんでした。今年はトラブルとの遭遇率が異常に高いような‥‥(泣)
 剣術道場はゲームノベルとなります。行動結果次第では、シナリオ表示での説明にも変化があるかもしれません。気軽に楽しく参加できるよう今後も工夫していけたらと思います。

 それでは、あなたに剣と翼の導きがあらんことを祈りつつ。


>コータさん
僭越ながら忍法プリン地獄と命名させていただきました。恐るべし秘術ですね。
えーと。こんな決着に落ち着きましたが、とりあえずコータさんは生きておりますのでご安心を。その後、修行後に出たデザートはプリンだったそうです。