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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


Grand-guignol −第三夜−


【0.操る者】

 オペラを手放したのは本当は間違いだったのではないかと、碧摩・蓮は何時に無く真面目な顔で窓から輝く月を見ていた。
 宮田邸に潜伏している謎の二人の人物と、正体の知れない声。
もしその二人の人物がフェリオが新しく作った人形だったとして、草間興信所からの情報が正しければ、フェリオは生きていたとしても80歳は超えている計算にならなければおかしい。
 それなのに、その二人を呼んだ声は若かったと言う。
 人形が自分の手を離れた時点で、この事件も自分の手を離れる事だろうと少なからず考えてしまった自分に叱咤して、蓮は椅子から立ち上がる。
 …カラン―――…
 静かに店の鐘がなる。
「あぁ、今日はもう閉店だよ」
 時計はとっくに10時を回り、こんな時間にやってきた不躾なお客に蓮は不機嫌たっぷりの口調でつっぱねる。
「…!!?」
 入り口の立ち並ぶ同じ顔の双子。
 そこだけに広がるシンメトリーの世界。
「「知っていますよ、碧摩・蓮。貴女はマスターの邪魔をする人だ」」
 同じ声、同じトーン。そして、同じ硝子の瞳。
「…いい。メロディー、シンフォニー」
 シンメトリーの二人が同じ歩幅で左右に移動し、真ん中の通路を開ける。
「…あんたは!?」
 メロディーとシンフォニーと呼ばれた二人は、軽く頭を下げると、オペラの顔を抱きしめたマスターと呼ばれた人物が蓮の前へと進み出る。
「さぁオペラ……」
 頭だけの月蝕人形オペラの瞳がゆっくりと開く。
「君の歌を聴かせておくれ」
 言われるままに店中に広がる歌声。
 蓮は、その意識が遠くなっていくのを感じた。


【1.知りたい者】

 先日見た宮田の話をした翌日、御守殿・黒酒は早朝から修善寺・美童をアンティークショップ・レンに連れて行く羽目になり、かなり機嫌が悪かった。
「そんな面白い話があるなら、ぜひ呼んでもらいたかったね」
 魂を集める事に楽しみを感じている美童は、その宮田の一族の魂や、マスター果てはメロディーとシンフォニーの魂を収集し、その嘆きを恨みを聞ければさぞ楽しいだろうと思った。
「蓮さぁん、こいつに月蝕人形の話しをしてあげてくれないかなぁ」
 柄に無い早起きで、細くつり眼がちで神経質そうな顔が尚更少しの事で怒りそうなほど、むすっと歪んでいる。
「何の事だい?」
 店の奥から出てきた蓮は、抑揚の無い声で答える。この不機嫌そうな声は早朝に押しかけてしまったからだろうか?
「早朝にすいません、蓮。ボクも貴女の元に寄せられたという月蝕人形の話しをぜひお聞かせ願えませんか?」
 黒酒の隣で、一見薄幸の美少年に見える美童が、蓮へと真摯は言葉で訴える。だが、そんな美童の言葉も分からないというよりは、無視に近い形で、ただ黒酒を見つめている。
「何?」
 あからさまに見つめられている事実に、黒酒は首をかしげ、そんな蓮の無表情な視線に何を勘違いしたのか、美童はむっと少し顔を引きつらせ、その大きな瞳を細める。
 美童にとって、蓮が黒酒を見つめることなど「ありえてはいけない」出来事だ。
 腸ちょっぴり煮えくり返したい気持ちを抑え、勤めて紳士に笑いかけると、
「ゆっくりと昨夜の事を話しながら、散歩でもしませんか?」
 見る人が見れば美少女スマイルを浮かべて、蓮へと一歩近づく。
 そんな美童の言葉にも、無表情の蓮は近づく美童の顔を見上げて、ふっと視線を落とす。そんな二人のやり取りを傍から見ていた黒酒が、ふられちゃったねぇと背を向けると、肩でクスッと笑う。
「帰りな。あんた達の言っている事はわけがわからないよ」
 くるっと背を向けられ、何時ものキセルに手を伸ばした蓮の背中に近寄れない雰囲気が漂っている。
(どういう事だぁ?)
 美童の手が行き場を失い宙を泳ぎ、あれだけ月蝕人形をどうにかしようとしていた蓮の変貌振りに、黒酒は眉を寄せて振り返る。
「蓮さん今日おかしくなぁい?何かあった?」
 黒酒は背を向けた蓮に早足で近づき、その肩を掴むと自分達の方へと向ける。
 半眼のまるで焦点の合っていない瞳が、黒酒の顔を付きぬけ明後日の方向を見つめている。黒酒がむっと眼を細めた瞬間、
「……っ!?」
「蓮!?」
 蓮が腕を払った瞬間、黒酒は美童の横を通り過ぎ店の外へと飛び、地面に激突する。蓮のその細腕のどこにそんな力があったのかを驚いている美童は、背中から上がった鈍い音に我を取り戻すまで、その場で呆然と立ち尽くしていた。
「…帰りな」
 蓮がまたぼそりと呟いた声と共に、美童は店から追い出された。


「大丈夫ですか?黒酒」
 完全に閉じられた扉の前で、ゆっくりと上腿を起こした。
 もしかしたらという思いで、蓮の店の中を調べようと、黒酒は地面についた手から持ち前のデーモンである『ピンキー・ファージ』を同化させる。

「「この前の、おいたをする悪い子だね」」

 地面に座り込んでいた黒酒の顔が一気に強張る。
「くそっ!」
 黒酒の叫びと共に、『ピンキー・ファージ』が黒酒の手に戻る。
「どうしました?」
 倒れている黒酒には一切手を貸すことはせず、ただ上から声だけをかける美童。
「蓮さんが、落ちた」
 この言葉に、美童の顔が凍りついた。


【2.誘う者】

 顔だけの月蝕人形オペラを、その元の持ち主である先日ニュースにもなった「宮田喜一」の家へ返しに行った時に見た、メロディーとシンフォニーというそっくりの双子。
 それを黒酒は今日同化させたデーモンからレンの中に見た。レンから一度戻ると、黒酒はその事を美童に話した。
「戻りましょう。蓮が心配です」
 黒酒も先日関ってしまった月蝕人形の事や、先ほどの蓮の反応、そしてメロディーとシンフォニーに不信感を抱いていた。
「何が何でもその双子を始末してくださいね。蓮に手を出した罪は重たいです」
 美童は黒酒が金さえ出せばなんでもやる事を知っている為、あえてその言葉を使い無記入の小切手を手渡す。
「お〜け〜」
 黒酒はセレブのやる事は違うものだと思いつつ、美童を連れレンへと戻った。
 遠目に見て、何か見たことのある人影が蓮の店から飛び出してきた。黒酒は美童をほったらかしにして、その場へと駆ける。
「メロディー!シンフォニー!?」
 見た事のあるあの双子が、これまた見たことのない青い髪の青年に殴りかかり蹴り飛ばされている。
「あんたは?」
 すっくと立ち上がった青年―月宮・誓に、
「キミこそ誰かなぁ?どうして、メロディーとシンフォニーに襲われてるんだ〜い?」
 質問に質問を返す。相手の少々の腹立たしさが見て取れた。
「「…っ!!」」
 こっちが呑気に話しをしていようとも、相手は待ってはくれない。お互いがお互いに迫る双子の攻撃を避けると、どちらからともなく、名前を名乗りあった。
「蓮!」
 最後にゆっくりとこの場に現れた美童は、ただ虚空を見つめている蓮に駆け寄り、そっと手を伸ばす。
「…消しなさい……」
 声とともに、蓮がすっと流れるように美童の手にナイフを泳がせる。その顔は、やはり力なく無表情で、
「っ…蓮」
 小さな美童の悲鳴じみた声がした瞬間、蓮を取り押さえるように美童のボディガード達が辺りを取り囲む。
 誓はその光景をぎょっとして見つめる。
「彼女を傷つけるのは許しません!」
「おいで……」
 ボディーガードを止める美童の声と、中性的だがどこか幼い少年の声が、辺りを包み込む。何処からの声かと見回せば、屋根の上に一人の少年が立っていた。
その声と同時に誓と黒酒に襲い掛かっていたメロディーとシンフォニーが飛び上がり、その声の主の両脇へと控える。
「…陽一!」
 叫んだ黒酒に誓と美童の視線が集まる。
 あの屋根の上に立っている彼の名は「宮田陽一」。この事件の発端である月蝕人形オペラの犠牲者として死亡した「宮田喜一」の息子――。
「キミがやっぱりマスターだったのかぁい?」
「どういう事だ?」
 この場で、あの事実を知る物は黒酒しかない。
「何も知らないのに、誓さんは巻き込まれちゃったんだねぇ。ご愁傷様」
 美童は自ら望んでこの事件に足を突っ込もうとしているから除外だ。
「この事件はねぇ、月蝕人形って言う人を操って人を殺す人形が蓮さんの店に持ち込まれちゃったことに、端を発してるんだよ〜」
 黒酒はそこで言葉をとぎらせると、屋根の上のお決まりな登場をしている陽一を睨みつけ、
「で、その人形の製作者であるフェリオって奴と、ボク的にあの陽一が似てるってわ〜け」
「なるほどな」
 誓は黒酒の説明に簡潔な言葉を返し、屋根の上の3人――いや、蓮を含めて4人を見据える。
「ナンであろうとも、向かってくるなら応戦するまでだ」
「それってぇ、向かってこないから何もしないって事かなぁ?」
 正直、そんな事を言っている場合じゃないのだ。
 もしあの双子が、フェリオが造った新しい人形ならば、確実に壊さなくてはいけないのだ。
 地面を見下ろす陽一の視線はどこか下等な生き物を見下しているようなモノと同じ。見ていて気分のいいものではない。
「……消しなさい…」
 蓮と同じ氷の瞳の陽一が、メロディーとシンフォニーに命ずる。
「「我らにとって、能力者など皆同じ」」
 声に応えるように、貼り付けたような笑顔を浮かべたままの双子が、飛び上がり無防備に無上げているだけに見える黒酒と誓へと殴りかかった。
 そして、ボディガード達に囲まれた美童に向けて、蓮が小回りの効くナイフを構え走りこむ。
「美童!?」
 一応心配するように声を荒げるが、実際はスポンサーに死なれては元も子もないとう思いから。
「大丈夫です!いいですか、必ず人形を始末しなさい!」
 今までの話から推測すれば、このメロディーとシンフォニーが人形である確率は高い。もし人形じゃなかったとしても、あの屋根の上に立つ陽一に操られている可能性だってあるだろう。
 フェリオ自身にも人を操る能力があったのか、黒酒は軽く舌打ちし、飛び込むメロディーの攻撃を後ろへ飛んで避けた。
 もう、どっちがどっちだか区別が付かないので、自分に向かってきている方を勝手にメロディーと呼ぶ事にした。
 地面につけた足元から、デーモン『ピンキー・ファージ』が景色に同化していく。後は旨い具合に避けながら、あの人形を捕まえる算段を練る。
 当たり一帯に同化を果たしたデーモンは1k四方以内ならばいつでもスライム化させられる。
 巧みに攻撃を避けながら、ちらりと誓を見る。
 さすが、初撃を避け且つ反撃をして見せただけのことはある。どうやら、1対2となるような場面にはならなくて済みそうだ。1対1ならば、軽快する範囲も小さくていい。
 黒酒は悪魔にも効く銀製の梵字が刻印された弾丸が装填された拳銃を取り出すと、メロディーに向けて数発放つ。
 案の定、予想通りにメロディー弾丸を一切避ける事はせず、黒酒に突っ込んできた。
 黒酒は真正面に構え、メロディーが起動を変えないよう勤めつつ、そっと周りを見回す。
 そして、旨い具合にレンの扉が開け放たれたままなのを見る。
(…よし)
 建物の中こそが『ピンキー・ファージ』最大の力を発揮することが出来る。
「…っと!」
 黒酒は避ける振りをして、徐々にレンの中へと移動していった。
 無駄に暴れまわって店の品物を壊してしまっては、きっと正気を取り戻した蓮にこっぴどく怒られる事が目に見えている。だが、それも『ピンキー・ファージ』にすり替えさえておけばなんら問題はない。
 少しだけ、この自分を消そうと迫るメロディーより、怒りを露にした蓮が怖い黒酒なのであった。
 やはり、お面とも呼べる笑みを浮かべ迫るメロディーは異質。
「っく…!」
 店の中を逃げ回り、とうとう壁にぶち当たる。
 逃げ場のない店内で振り返ると、メロディーがその口の両端を弓なりに吊り上げた。
 追い詰めたと思っている余裕からの笑みなのだろう。だが、コレこそが黒酒が待っていた瞬間だった。
「!!?」
 絶望に俯いたと見せかけて、レンの四方、左右天上床からスライム状になった『ピンキー・ファージ』がメロディーの足に絡みつき、ぶつかり、のしかかる。
「ックックック…。キミもあの壊れたオペラ人形みたいな能力を持っていたら捕まらなかったのになぁ」
 完全に押しつぶされ、軋みを上げるメロディー。
「オペラ様は壊れてなどいない」
「…何?」
 締め付けをどれだけ強めようとも、メロディーは一切の悲鳴を上げない。やはり、人形だから痛覚がないのだろうか。その代わり間接などから、鈍い音が聞こえる。
 完全に動きを止めたメロディーを見て、黒酒は店の外へと駆け出した。


【3.現れた者】

 店の中から走り出た黒酒が見たのは、屋根から降り、美童に迫る陽一の姿だった。
 メロディーは言った。オペラは壊れていないと。
ならば、
「オペラを持っていない陽一は、フェリオじゃない!」
 だが陽一が行動を起こしてくるよりも早く、黒酒は叫ぶ。
「ソウル・ファッカー!」
 生きているものならば、魂がない事などありえない。
 美童の命令どおりに、それは一瞬で終わる。
 地面に倒れた陽一を見て、『ソウル・ファッカー』がその魂を抜き取ったのだと分かる。
 美童の使役しているデーモンの能力を知っている美童は、指して驚いた様子もなく、その光景をただ見つめた。
「いきなり魂を抜くのはやりすぎじゃないか?」
 倒れた陽一に付き添う誓の言葉に、美童はふっと冷笑をもらす。
「魂に絡みついた操り糸から開放するためには、魂を取り出すしかないんですよ」
 そう答えた美童の言葉に、誓の顔がいっきに険しくなる。
 どちらが陽一を助け出そうとも黒酒にはどうでもいい訳で、陽一が解放されたのならば、
「とりあえずさぁ、話し聞きたいから、陽一の魂戻してもらえるかなぁ」

 美童の能力であるデーモンの力によって魂を抜かれた陽一だったが、程なくして意識を取り戻した。
「大丈夫か?」
 ゆっくりと上腿を起こした陽一に、誓は問いかける。
「大丈夫…です。俺はなんで、こんな所に…」
 操られていた時の記憶はまったくないのだろう。陽一は誓に支えられ起き上がると、辺りを見回した。
「あんた!この間の…」
 陽一は黒酒の姿を見つけるなり、失礼にも指差して叫ぶ。
「っく…。操られていた間の記憶はないか…」
 だが黒酒には、目覚めたばかりの時に陽一が呟いた言葉しか耳に届かず、情報が得られないと理解するや、叫びの方はまったくの無視を決め込んだ。



 コツコツとゆっくりとした足取りで、その場所に現れたのは宮田喜一の娘、真紀だった。
 その腕に抱えられているのは、
「オペラ……」
 ぼそりと黒酒が呟く。
「歌っておくれ…オペラ」
 真紀が愛しい者に触れるような優しい手つきで、オペラの頬を撫でる。ゆっくりと瞳を開いたオペラは、先日黒酒が宮田邸に届けた人形のものとはまったく違い、人間味を帯びていた。
「無駄ですよ。ソウル・ファッカーがいる限り、キミの操り糸は作れません」
 美童の言葉に開きかけたオペラの瞳がまた閉じていく。
「そう…残念だね。オペラの歌が聴けないなんて」
 だんだん近づいてくる真紀に、陽一の瞳が見開かれる。
「あ…あれは、お姉ちゃんじゃない!!」
「失礼だね、宮田陽一。洋一と同じ音を持つ君が私を否定するのかい?」
 ぎゅっと支える誓の服を掴み、がたがたと震えている。
「俺にも妹がいるが、本当に姉なら弟にこんなに怯えられるわけないだろう」
 誓の言葉に、真紀は嘲う。そして、自分に向けてトントンと指差した。
「姉だよ。この、身体はね」
 すっかり思い違いをしていた。写真のフェリオに似ていたから陽一がフェリオなのではなかと、思い込んでいた。
 だとしたら、今目の前にいるのは――
「フェリオ・フランベリーニ……」
「ご名答」
 黒酒の呟きに、真紀は…いや、フェリオはにっこりと微笑むと、優雅にそのスカートの端を掴み、お辞儀をして見せた。
「さぁ、帰ろう洋一。迎えに来たんだ」
 諸悪の根源が目の前にいるのに、逃がすわけには行かない。黒酒は、同化させたままの『ピンキー・ファージ』でフェリオの足元を捉えた。
「…?」
 ゆっくりと足元見たフェリオは、くすっと肩で笑う。
 フェリオの足元から魔力が、立ち上った。
「なっ……」
 絡み付いていた『ピンキー・ファージ』が四散している。
「仕方ない」
 身体を傾けたフェリオの姿が目の前から消える。
「さぁ、帰ろう」
「!!?」
 すっと虚空から現れたのは、誓と陽一の眼前。陽一は完全に誓の後ろにしがみついている。
「いい眼だね。絶望を知った事がない、幸せな瞳」
 なまじ器である真紀の顔がそれなりに整っているだけに、誓に向けられたその微笑が妖艶に見える。
「あの双子はいいんですか?」
 蓮の店の中で黒酒に潰されたメロディーと、誓の結界の中で動けなくなったシンフォニー。
「フフ……あげるよ。私を止められる者は誰もいないから」
 すっと動かした腕の軌跡を追うと、誓の後ろがふっと軽くなる。
「嫌だ!た…助けてぇ!!」
「陽一!!」
 自分の後ろで震えていたはずの陽一が、フェリオの手に渡っている。
「ばいばい」
 可愛らしく手を振る姿を見つめたまま、3人は動く事が出来なかった。


 黒酒は蓮の店の中でスライム状の『ピンキー・ファージ』に拘束されたままのメロディーへと足を向ける。
「捨てられた。同じように捨てられた」
 切ない声音。だが、やはり人形なのだろう、涙は出ない。
 誰の事を言っているのかと黒酒は顔をゆがめたが、今それを知るすべはない。
 製作者に捨てられた人形のなんと哀れな事か。
 そしてゆっくりと閉じられた硝子の瞳は、二度と開く事はなかった。


―――そして、月蝕は……









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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0635 / 修善寺・美童 (しゅぜんじ・びどう) / 男性 / 16歳 / 魂収集家のデーモン使い(高校生)】
【0596 / 御守殿・黒酒 (ごしゅでん・くろき) / 男性 / 18歳 / デーモン使いの何でも屋(探査と暗殺)】
【4768 / 月宮・誓 (つきみや・せい) / 男性 / 23歳 / 癒しの退魔士】


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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、今回はGrand-guignol −第三夜−にご参加下さいありがとうございます。ライターの紺碧です。今回は正直バトルばかりで実は話的にはまるで進んでいないという不思議な話です。ですがこの話しには一番重要なキャラを出す事が出来たのでそれだけはよかったと思っています。
 黒酒様におきましては通算3度目のご参加ありがとうございます。前回の宮田邸の内情を知っている方のご参加があったおかげで、陽一や真紀がかなり出しやすくなりました。ありがとうございました。
 それではまた、黒酒様に出会える事を祈りつつ……