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【absolute/together】
いつも見ている、変らぬ夢。
ボクに何を伝えたくて、夢はこの風景をいつもみせるのだろう。
大切な人が、ボクをどう想っているか伝えるため?
それとも、今のボクではダメだという警告のため?
見るたびに胸が苦しくなる夢。
でも、幸せそうに笑うキミを見ていると、胸がとても温かくなるんだ。
◇ ◇ ◇
遠い昔の記憶。
そこは大きな城で、ボクの傍らにはいつも微笑みかけてくれる女騎士。ただの騎士じゃない。彼女は騎士を束ねるえらい人。ボクに仕えてくれている、特別な人。
大切で大切で、いつだってボクを護ってくれる彼女を、ボクは愛しいと想っている。
「私の顔に、何かついていますか?」
あまりにボクがじっと見つめすぎただろうか。彼女はどこか照れくさそうにそう言った。
大きくかぶりを振って、そんなことはないよ、と答える。
「キミに見とれていたんだ」
正直な気持ちをそのまま口に出すと、彼女の頬が赤く染まった。そんなちょっとした仕草がかわいらしい。
普段は戦場で厳しい中戦っている彼女も、一度場を離れればこうして女性らしい一面をみせてくれる。
彼女は戦場から戻るたびに、どこか寂しそうな表情を見せて言った。
「平和が続けば、いいですね」
けれど、平和はそうそう続かない。
幸せな日々は、すぐに壊されてしまう。
ボクはこの夢がたどる結末を知っている。
いつも、この夢の最後は――とても悲しいくて、胸を締め付けられる。
だからこうして、彼女と共に過ごせる幸せなときをかみ締めるように、彼女をその瞳に捕らえる。
「愛している」
「え?」
「キミを、愛してる」
だからこうして、彼女と共に過ごせる幸せなときをかみ締めるように、彼女に自らの想いを告げる。
彼女はそっと答えてくれた。
「私も、愛しています」
◇ ◇ ◇
夢の中でボクに微笑みかける彼女は、現実でいつもボクの側にいてくれる彼女。
夢の中のボクが彼女へと抱えており想いは、確かにボクのもので、今尚変わることはない。
ボク以外の誰のものでもない大切な想いなんだ。
◇ ◇ ◇
風景が赤に染まる一瞬。
焼け焦げたにおいと煙に巻かれて、うまく呼吸ができない。
焼け落ちる城の中に、ボクはいる。もう、この城は持たない。すぐに崩れ落ちて、壊れてしまう。
「先に外へ出て、城から逃れた兵を集めて民の安全を」
騎士をまとめる立場の人間である彼女に命令を出す。これは彼女の身を護るためでもある。だから、黙って従ってほしい。
「城の中に残っているものがいないか確認してくるから」
「今からですか! もうすぐ崩れようとする建物です。危険ではないですか!」
「大丈夫。だからキミは、早く外へ」
きっと彼女にはわかってしまっただろう。
もう、助からないと。
けれど、自分にはやら泣ければいけない使命がある。彼女を巻き込めない。
だからせめて、彼女だけでも生きて――ほしい。
「これは命令だ。行きなさい」
「でもっ」
「命令が聞けないのか。キミは!」
強く、突っぱねるように言い放つと、彼女はぐっと下唇をかみ締めて「わかりました」と小さく漏らした。
そして背を向けて、駆け出す。
こぼれる涙が見えた。その涙を、もう拭うことはできない。
できないけれど。
「ありがとう……わがままを聞いてくれて。どうか、生きて」
◇ ◇ ◇
夢の中の彼女が求めた「ボク」と、今の彼女が見つめる「ボク」。
彼女は彼女のままで想いと心を持っていて、ボクは姿も性別も変わってしまって遠い昔のボクとは違う。
焼け落ちる城から彼女だけを逃がし、共に歩むことができなくなった遠い昔のボクのように。
今のボクも、いつかキミと一緒に歩けなくなってしまうのかな。
ううん。そんなことは絶対にしない。
ボクはいつまでも、キミと歩いていきたいんだ。
キミを悲しませないために。
キミに二度と、遠い昔のような想いをさせないために。
でも、時々不安になる。
今も昔も決して変わらぬキミの想いに、今のボクは答えられるのかな……。
◇ ◇ ◇
「ライカ、ライカ……どうしましたか?」
頭上で優しい声が響く。すっかり眠ってしまったボクを起こす声。
「え?」
「ずいぶんうなされていましたよ」
うなされて?
そうかな。
やっぱりあの夢は、自分にとって辛い夢だから、うなされたのかな。
ゆっくりと目を開いて見上げた先、声を裏切らない優しい表情で、彼女はボクを見つめていた。
その表情が、夢の中の彼女と重なり――
「……ごめん」
思わず謝ってしまう。
ボクはそのままもう一度目を閉じて、眠りの中に身をゆだねた。きっと彼女は不思議に思って、頭上に疑問符をくっつけているのだろう。
でも、今のボクにはこれしか言えない。
たった、これだけのことしか。
◇ ◇ ◇
悲しませてごめん。
苦しい思いをさせてごめん。
一緒に歩いていけなくてごめん。
今度のボクは、きっとキミと一緒に、どこまでも歩いていくから。
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ライターより。
この度は発注ありがとうございました! ライターの山崎あすなです。
また、雷華さんの物語をこうして描くことができて、嬉しいです(^^
夢と現実との重なりということで、心理描写を多くさせていただきました。
変わらぬ想いと、変わっていくもの。変わってしまったもの。
でも、雷華さんはきっと、不安を抱えながらも強く、前を向いていくのかなと思いました。
楽しんでいただければ光栄ですv
それでは失礼します。また、お会いできる日を心よりお待ちしております。
山崎あすな 拝
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