コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>



呪いの鏡〜飯城里美編〜

「あら、あんた今日はその鏡を選ぶのかい?」
蓮の声に楓華は振り返ると無邪気な笑顔をみせた。
「だっていい加減に見習い卒業しないと仕事だってこないじゃない。」
「だけどねぇ・・・・」
蓮はため息をつくと楓華から二面手鏡を取り上げた。
鏡はかなりの年数を経ているらしく、古びているが何やら人を魅了させるような不思議な光彩を放っていた。
「この鏡はうちでも特別のいわくつきなんだよ。何てったって何度浄化しても中から次々と怪物が出てくるという話だし、壊そうとした者もいたらしいけどどうやったって壊れもしないという話だしね。」
「だっから面白いんじゃない♪」
楓華は明るく笑った。
「浄化してもしてもなかなか浄化出来ないんでしょう?これ一個でいい練習台だわ。」
その言葉に。
蓮は再び大きくため息をついた。
「練習ったってまだあんたライティア以外の攻撃呪法、ほとんど使えないんでしょう?危なっかしいったらありゃしない。」
「だーいじょうぶよ♪」
楓華は連から手鏡を取り返すと明るく笑った。
「今日も手伝ってくれる人がいるもの。心配しないで。大丈夫。」
蓮はあまりの能天気さに呆れてため息をついた。
「分かった分かった。好きにするといいよ。」
諦めたような蓮の声に楓華は鏡を見つめると、外に向かって声をかけた。
「じゃああなたたち、よろしくね♪」


声をかけられて。
泰山府君はため息をついた。
額に宝玉を埋め込み、中華風甲冑を身に付け、長い黒色の髪を1つにたなびかせた端正な顔立ちはものすごく様になっている。
里美はそう思いながら、腹の中ではさっきの泰山府君と楓華とのやりとりに1人爆笑していた。
里美はゲーム会社『(株)スター☆ソサエティー』のゲーム開発部部長。
このアンティークショップへはゲームのネタを探しに来ていたのだが、そこで面白いやりとりを見てしまったのだ。
「何だ、貴様は!!」
声がするのに里美が振り返るとそこには美しい青年と顔馴染みの楓華が立っていた。
楓華は青年にまとわりつくと明るくきゃろんとした声で遠慮会釈なくいつものように骨董品の解呪の手伝いを頼みこんでいた。
「あたし楓華ちゃん。16歳の解呪師見習いなの。ね、あなた力がありそうね。今から楓華ちゃん、呪われた品物の解呪の練習をするの。手伝って♪」
その言葉に青年の額にみるみるうちに青筋が立っていく。
里美は腕組みをしほくそそ笑みながらその成り行きを見守っていた。
『やってるやってる♪さて、勝者はどちらといきますかね♪』
もちろん、里美は楓華の日常を知っている。
だからこそ、ゲームのネタの予感も期待してここにやってくるのだ。
青年はジャキンと青龍偃月刀を取り出した。
そして楓華を睨み据える。
「いきなりそのような態度で人に頼み事をするとは何たる無礼な!その性根、叩き直してやる!」
だが。
そんな刀で動じる楓華ではない。
それどころか更に目をきらきらさせて泰山府君に抱きついた。
それを見て里美はくすりと笑った。
『綺麗なお兄ちゃんの負けだね。』
はたして。
「きゃーっ、かっこいいーー♪あなた頼れそうだわ!ますますお願いしたくなっちゃった♪♪♪」
そんな楓華に。
泰山府君は諦め果てたように赤兎馬を下ろした。
どうしようにもこの小娘には言葉と礼儀というものが通用しないらしい。
「で、貴様は我に何の解呪の手伝いをさせたいのだ?」
「呪われた鏡。」
楓華はにっこり笑った。
「その鏡はね、ここでも特別のいわくつきなんだって。何てったって何度浄化しても中から次々と怪物が出てくるという話だし、壊そうとした者もいたらしいけどどうやったって壊れもしないという話だしね。」
「何度浄化しても中から怪物が次々と出てきて壊そうとしても壊れないだと?」
「そう。」
楓華は頷いた。
「だからね、解呪の練習に最適かなぁって。楓華ちゃん、まだ解呪師見習い中だからね。頑張って本物の解呪師にならないと!うん!!」
「で、1人では自信がないから我に声をかけたというわけか。」
「う゛・・・・」
ここで初めて楓華の勢いが止まった。
図星らしい。
里美はとうとう耐え切れず笑いながら2人の前に現れた。
「大当たりだよ。さっすがにいい勘してるわねえ。」
「里美姐!!」
飛びついてくる楓華をいなしながら里美はいつものスーツ姿で泰山府君の前に姿を現した。
「何だ、貴様は?」
「飯城里美。ゲーム会社『(株)スター☆ソサエティー』のゲーム開発部部長よ。こいつは水戸楓華。このアンティークショップのトラブルメーカーさ。で、あたしはゲームのネタを探してたまにこいつとつるんでんの。こいつといるといいネタが結構でてくるのさ。」
「ひっどーい!!」
あっはっはっと笑う里美に楓華が抗議した。
だがそんなもの里美が受け付けるはずがない。
泰山府君は疲れたように一言2人に言った。
「どうでもいいが、早く始めよう。」
それは早く2人との関わりを切りたいとでもいうような態度でもあったのだが、もちろんそんなのがこの2人に通用するはずもなかった。


「まぁよい。事情はわかった。その曰く付きの鏡を壊せば良いのだな。しかし、幾度となく浄化や破壊を試みても無駄とは…。無駄な足掻きであろうとも、それをどうにかせねばならぬな。小娘、貴様もわずかではあるが能力を持っておるのだろう。我と共に浄化しようぞ!嫌だとは言わせぬぞ?」
泰山府君の迫力にさしもの楓華もこくこくと頷いた。
どうやらいきなり頼まれたことを根に持っているらしい。
珍しく身が後ろに引いている。
ちなみに。
里美は腹の中で大爆笑していた。
泰山府君は鏡を目の前にすると呟いた。
「まずは破壊からといくか。」
「でもあんたがやったんじゃこのチビの解呪師の練習にならないよ。」
泰山府君に里美が口出ししたが、泰山府君は聞いてはいなかった。
「この『赤兎馬』に斬れるものなどない!参る!」
それに里美が大きくため息をついた。
「何だかあんたと同じくらい人のいうことを聞かない奴だねぇ・・・・」
「それはないよ!!あたしちゃんと人の言うこと聞くもん!!」
「聞いてない聞いてない。」
そんな2人には我関せずと泰山府君は赤兎馬を放った。
だが。
闇の膜が鏡を覆い、赤兎馬の刃を弾き返した。
「な、なんと・・・・赤兎馬を弾き返すとは・・・・」
驚く泰山府君に里美が言った。
「やっぱり正攻法ではいかないってことだね。中の悪魔を呼び出して解呪するしかないか・・・・楓華、やりな!!」
「うんっっ!!」
楓華は頷き合わせ鏡を構えた。
「いくよ・・・・」
楓華が声を潜める。
「長き時に縛られし呪われし己が合わせ鏡よ・・・・今ここにその姿を現せ・・・・そして我が力でこなたの心を解呪せん!!」
その言葉と共に楓華は二面鏡に光を合わせた。
すると同時に怪しげな紫の光が辺りに飛び交った。
そこに現れたのは長い髪の毛を背に束ねた人面顔の牛の化け物だった。
「呼んだのは貴様か。」
「うんっ!!」
楓華は明るく返事した。
「今からこの楓華ちゃんが呪いから解き放ってあげるよ!!」
「笑止!!」
化け物はニヤリと笑った。
「ここはワシの大事な館なのだ。そう簡単に解呪されるわけにはいかんな!!」
そう言って化け物は鋭い爪を楓華に向かって繰り出した。
「うひゃあ!!」
それを楓華はすんでのところでかわすと右手に光の力を込める。
「ラィティア!!」
だがそれで化け物はおさまらなかった。
どころか、ぽりぽり顔を掻いている。
「何かしたかの?小娘・・・・」
「うげ、マジ?」
化け物は力を込めると黒い煙玉のようなものを放ってきた。
「ダークスモーク!!」
「あんぎゃあっっ!!」
その様子に。
泰山府君は里美に呆れたように尋ねた。
「奴は本当にやる気があるのか?」
里美はくつくつ笑いながらも泰山府君に答えてやった。
「あるさ。ただ、実力が見事なほどに伴ってないけどね。」
そう言いながら里美はよいしょと壁から背を持ち上げた。
「いい加減助けてやるか。」
そして楓華に声をかける。
「もうちょっと右手に光の力を集中させるんだよ!手の平全体じゃない、手の中央だけだ!!」
「うん!!」
楓華は右手に力を込めた。
そして分散されていた光の力を手の中央に集中させる。
「ラィティア!!」
すると、光が集中し、閃光となって化け物の目を鋭く貫いた。
「あんたはまだ力がないからかなり集中しないとラィティアじゃ目潰し程度にしかならないのさ。」
「さんきゅ、里美姐!!」
明るく笑って振り向く楓華に泰山府君が叫んだ。
「危ない!!」
そしてその身体を抱いて化け物の爪をかわして斬り裂く。
「小娘、攻撃直後が一番の油断になるのだぞ!!気をつけい!!」
「あ、ありがと。かっこいいお兄ちゃん♪」
「・・・・我は女なのだが・・・・」
ポツリと呟いた泰山府君の言葉に里美も楓華も驚いた。
しかしすぐに里美の胸の中でゲームの構想が浮かんでくる。
『いける!いけるわ!!アホチビガキの小娘と中性的な美青年!!絵になるわよぉぉぉ!!!』
そんな里美の視線とは裏腹に化け物は猛り狂って3人に遅いかかってきた。
それを避けると里美は楓華に指示を出す。
「いいかい、心臓と脊髄の二箇所を狙うんだ!!そうすりゃあんたの威力のないラィティアでも奴は倒せる!!」
「うん、分かった!!」
楓華が力を腕に込めた。
光が彼女の右腕に集中する。
『心臓・・・・心臓!!』
ラィティアが化け物の心臓を貫いた。
同時に楓華は次のラィティアの光を既に腕に集めていた。
そして脊髄に向かって放つ。
「うぎゃああああっっ!!」
化け物の動きが止まった。
そしてやがてその姿が辺りへと霧散していった。
泰山府君が楓華の背中に手を伸ばした。
「頑張ったな。鏡の魔力は弱っておる。あとは解呪するのみだ。」
「うん!!」
楓華も明るく笑った。
楓華が印を結ぶ。
「呪われし二枚の合わせ鏡よ・・・・ここに今、解呪師、水戸楓華の力によってそなたを呪いより解き放たん!!」
光が鏡に収束した。
鏡が紫の光を弱めていく。
楓華の額に光の汗が浮かんだ。
「はあっっ!!」
楓華が鏡に全ての力を解き放った。
そして鏡から煙が収まると楓華は疲れたようにふうと息をついた。
そのときだった。
鏡の中から魔物の爪が楓華の心臓めがけて放たれてきたのは。
「楓華!!」
里美は楓華を抱き寄せると床の上を転がった。
床には点々と血の跡が零れ落ちていた。
「里美姐・・・・」
「大丈夫だよ、こんぐらいね!!」
里美の右腕が爪で引き裂かれていた。
「ゴメン、里美姐!!」
「ふん、あの鏡、やっぱりただのシロモノじゃなかったようだね。」
里美はにやっと笑ってみせた。
「あの合わせ鏡は合わさることによって異界の通路から魔物が来るようだね!だったらこうするまでさ!!」
里美は滴り落ちる血を手にするとその血に力を込めた。
そしてぶわっとそれを膨れ上がらせて鏡の片側に叩きつけた。
鏡が光を失った。
と同時に魔物が辺りから気配を消した。


「そなた、なかなかの力を持つようじゃのう。一度手合わせしたいものじゃ。」
泰山府君の言葉に里美は笑った。
そしてその肩にがしっと手を置くと頼み込むように泰山府君に頭を下げた。
「そう思うんなら一度、うちの会社のゲームのモデルやってくれない?あんたいい絵になるのよねぇ・・・・」
その言葉に楓華が飛びついた。
「ちょっとちょっと楓華ちゃんは?楓華ちゃんだって頑張っているんだよ!!」
それに里美は艶っぽく笑うと楓華の鼻先をつんとつついて笑った。
「あんたはまだまだだね。でもギャグキャラにはちょうどいいから一度遊びにおいで。メシおごってやるよ。」
「楓華ちゃん、ギャグキャラじゃなーい!!」
楓華の叫びを残して。
鏡の封印の夜は終った。


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号:638/PC名:飯城・里美 (いいしろ・さとみ)/性別:女性/年齢:28歳/職業:ゲーム会社の部長のデーモン使い】
【整理番号:3415/PC名:泰山府君・― (たいざんふくん・ー)/性別:女性/年齢:999歳/職業:退魔宝刀守護神】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
水沢里穂です。今回は受注頂きありがとうございました。それなのにものすごく遅くなってしまって申し訳ありませんでした;;;人数が集まらなかったので、最終的には1人で書く覚悟でいましたが、参加してくださった方がいたので何とかなりました。本当に遅くなってしまって申し訳ありませんでした。でも里美は書いててものすごく楽しいキャラでした。性格が違っていたらごめんなさい。つい、楓華と顔見知りにしてしまいました。ボケツッコミができるかなと。(笑)また、機会があればよろしくお願いします。本当に遅くなってしまって申し訳ありませんでした。