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DEAR MY LOVELY DOLL!
今宵の月は見事な満月。
バイトも無事終わりファルス・ティレイラは、遊びに来たルイセ・メイフィートと自分の部屋で話をしながらくつろいでいた。
「……なんだ?さっきから人の顔をじろじろ見て。」
「ううん、なんでもな〜い。」
不思議そうに首を傾げ、ティレイラを見つめるルイセ。
その金色の瞳と髪は、降り注ぐ月光に照らされきらきらと光り、白い肌はまるで人形のように美しかった。
だが身長差のせいか、はたまた性格のせいか、立場で言えばティレイラのほうがずっとルイセの人形に近いかも知れない。
『たまには逆転して、ルイセを玩具にして遊んでみたい!そう、いっそお人形に!』
実はそんなことを企んでいたティレイラは、こっそり極秘ルートから人形変化の秘薬なるものを入手していたのだ。
『ふっふっふ、これでルイセは私のお・も・ちゃ!』
くすくすと含み笑いをする彼女の姿を怪訝に思いながらもルイセは、『いつものことだな』と余裕を持って見ているだけだった。
この後に起こる悲劇に気付かずに――。
「そ〜おだ!とっておきの美味しい紅茶があるんだっ。煎れてくるね!」
「うむ……。」
わざとらしく今思いだしたかのようにそう言うと、ティレイラはバタバタとキッチンへ向かい、ルイセからは死角になる場所へ入るとそっと様子を伺った。
『のんきにお月見なんかしちゃってるわね、よぉ〜〜し!』
紅茶を注ぐと、ポケットからブルーの小瓶を取り出した。
栓を開け、ルイセのカップに秘薬を数滴。
ピンクと白のマーブルを描いたかと思うと、すうっと元の紅茶色に戻ってしまった。
特別変わった匂いもしないし、これなら絶対バレないだろう。
期待に胸を躍らせつつ、ティレイラは紅茶を運んだ。
「お待たせ〜、さぁどうぞ召し上がれっ。」
「いただこう……。」
その言葉の後に『秘薬をね』という言葉が省略されていることなど、思いもよらないルイセは、疑うことなく特製紅茶で喉を潤した。
「なんだティレ、そのしかめっ面は……。」
「…べっつにぃ〜〜〜。」
おかしい。あれから随分経つというのに、秘薬の効果は一向に現れない。
もしやインチキ商品を掴まされたのだろうか?!しかし、入手ルートは他のどこよりも信用できるものだ。
しびれをきらしたティレイラは、とうとう実力行使に出ることにした。
「ねぇ〜ルイセ、私もお人形欲しいな〜って思ってるんだ。」
「そうか、確かに人形は良いぞ。」
満足そうにルイセは、抱いていた人形『りゅーな』の頭を撫でる。
「そうよね、人形っていいよねっ!可愛いしっ!」
「どのような人形が良いのだ?望むなら私が作ってやっても良いが。」
来た!とティレイラの眼がキラリと光る。一方ルイセに悪寒が走る。
「私ルイセ人形がいいっっ!!」
数秒の沈黙の後ルイセは魂胆を理解し、溜息と共に却下と言い放った。
「ほらほら、こんな可愛いのがあるんだよ〜素敵でしょ、ね?ね?」
どこから調達したのか、ルイセの好みそうな黒の服がずらりと並べられる。
しかしティレイラのきらきら光る眼を見れば、これを着た自分をどうしようと企んでいるかなど一目瞭然。
ルイセはぷい、とそっぽを向くが、ティレイラはなんとか目的を達成しようと必死で食い下がり続ける。
「……いい加減諦めたらどうだ。ティレが私の玩具、其れで良いではないか。」
「ぜんっぜんよくないぃ〜〜!」
まるで子供のように駄々をこねるティレイラに、やれやれと溜息をついたルイセはふと、何か違和感を覚えた。
「どうかしたルイセ?あ、もしかして気が変わった〜?」
「そんなわけな…?!」
「あ……あぁ〜〜〜っっ!」
なんとルイセの身体から、煙のようなものが出てきたのだ。ピンクと白のマーブル、それはまさしくあの秘薬を入れたときの紅茶の色。
「ま、まさかこの紅茶に何か盛ったのではあるまいな!!」
「えへへへ〜〜。」
「えへへではない!!」
いたずらっこのように満面の笑みを浮かべるティレイラ。
反して今にも額に青筋が見えてきそうなルイセだったが、怒声むなしくその身体はどんどん小さな人形へと変化していくのだった。
「さ〜あルイセ、あっそびましょ〜〜♪」
「この……覚えていろ!!」
目的を達成し、一晩存分にルイセを玩具にして遊んだティレイラだったが、その後損ねた御機嫌をとるのにとてつもない苦労をしたことは、言うまでもない。
そして残った秘薬を一体どうするのか、それはティレイラのみぞ知る――。
【END】
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■ ライター通信 ■
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今日は、担当させていただきましたライターの光無月獅威です。
楽しんで頂けたらとても嬉しいです。
今回お届けするアイテムは
ティレイラさん:極秘ルートより【人形変化の秘薬】
ルイセさん:ティレイラさんからのお詫びの品【手作りドールドレス】
になります。今回のノベルの想い出にどうぞお受け取り下さいませ。
それでは、この度は発注有り難う御座いました!
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