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零ちゃん奮闘す! ―気分は名探偵―
●オープニング【0】
「じゃっ、よろしくお願いしますっ!!」
「あっ、あの……」
草間零が呼び止めるよりも早く、依頼者である少女は草間興信所を出ていってしまった。依頼料の入った『給料』と記されている封筒と、連絡先のメモを零に押し付けて――。
草間武彦が事務所に戻ってきたのは、そのすぐ後のことであった。
「……どこの誰なのか、調べてほしい?」
帰ってきた草間は、自分が出かけていた間の出来事を零から聞いてそう言った。
「そうなんです」
さらに詳しい話を始める零。依頼者の少女曰く、商店街にあるケーキ屋で見かけた学校帰りと思しき少年のことを調べてほしいのだという。
少女自身、少年のことを調べようと思ってケーキ屋の近くで張っていたのだが、時間が悪いのか日が悪いのか、少年には会えなかったのだそうだ。
少女もバイトなどで忙しく、なかなか時間の取れない身。どうしようかと思案していた所にここの話を聞いて、出たばかりのバイト代を丸々握り締めて依頼にやってきたということだ。
「それがあるってことは……引き受けたのか」
「すごく早口で、あっという間に押し付けられてしまって……。私が探偵だって思われちゃったみたいなんです」
草間の質問に、零は申し訳なさそうな顔をした。すると草間は少し思案してから、ふっと笑ってこう言った。
「まあ引き受けたんなら仕方がない、調べるか」
「よかったあ……」
ほっと胸を撫で下ろす零。しかし、草間の言葉には続きがあった。
「ただし今回は、零1人でな。いい修行だ」
「はいっ!?」
何と零、1人で調査することが決定。まさかの展開であった。
「じゃあ、行ってきます」
「ああ、気を付けてな」
日が改まり、準備をして調査に出かける零を草間は事務所で見送った。そして、零が出かけて数分後、草間はどこかに電話をかけ始めた。
「もしもし。ああ、俺だ。実はな、零が1人で調査をすることになったんだが……すまないが、影でフォローなりしてやってくれないか? ただし、零には気付かれないようにそれとなくな。それさえ守ってくれれば、後は任せる」
……何だかんだ言いつつ、草間は零のことが心配のようだ。
さて、ひっそりこっそり動いてみましょうかね?
●壁に耳あり【1】
「ふう……」
何人目かに電話をかけ終わった所で、草間は息を吐いて首をコキコキと前後左右に動かした。と、そんな時である。事務所の玄関の方から、くすくすと女性の笑い声が聞こえてきたのは。
「もう少し小さな声で話せばいいのに。外に聞こえていたわよ?」
そう言って入ってきたのは、たまたま事務所を訪れた大和鮎である。草間がしまったという表情を見せた。自然とついつい、声が大きくなってしまっていたのだろう。
「可愛い子には旅をさせろって言うものねぇ」
楽し気な様子で草間の顔を見る鮎。草間はばつの悪そうな顔をして、鮎から顔を背けた。
「……何だ。俺がこういうことするのが意外なのか?」
「いーえ。我が子を谷に突き落とす獅子っていう感じでは間違ってもないものね。とりあえず、詳しいお話聞かせてもらえる?」
鮎はにっこりと微笑んで、草間から詳しい話を聞こうとした。草間は小さな溜息を吐き、鮎にそれを話し始めた。
「へえ……考えてるんだ、ちゃんと。ちょっと親馬鹿気味だけど、獅子はやってるのね」
話を聞き終えた鮎は、感心した様子で草間を見た。
●言わんとすることは分かる【2】
「それにしても、考えるべきは考えているんだな……あんたも」
尋ねるべきことがあり事務所にやってきた真名神慶悟は、軽い世間話を少しした後でそのように草間に言った。感心したような慶悟の口調である。
「そりゃあ、な。……万一のことを思えば、考えにゃいかんだろ。嫌でもな」
苦笑する草間。
「……いい加減お前とも長い付き合いだ。分かるだろう? 色々とあることだし」
「確かに。色々とある……か」
慶悟が煙草をくわえて、火をつけた。
「『備えあれば憂いなし』だな」
煙を吐き出しつつ、そう言う慶悟。草間が大きく頷いた。
「で、聞きたいことは何だ?」
「ああ。その少年だったか、探す相手が通うというケーキ屋の場所を教えてほしい。電話でもよかったが、書類があるならそれを見せてもらった方がより正確だ。……ちょうど近くに居たしな」
「そういや言ってなかったか……」
ぽりぽりと鼻の頭を掻く草間。そして今回の調査内容を記した書類を、慶悟に差し出した。
「草間。心配なのは分かるが、少し落ち着け」
慶悟は書類を受け取りながら、そう言って草間を窘めた。
●素朴な疑問2つ【3】
「はあ。依頼者の方もそのケーキ屋さんの近くで張り込みをされていたのに、探してもらいたいという少年とは会えなかったのですね」
調査内容を記した書類を興味深く読むのは、相変わらずの和服姿である天薙撫子だった。電話で詳しい話を聞こうとしたのだが、来れるなら来た方がいいだろうと草間に言われ、てくてくと事務所にやってきたのである。
「零が言うには、そういうことらしい。聞いたのは俺じゃないからな」
「……張り込みをされた日時がありませんね」
「呆気に取られているうちに、調査費を押し付けられたそうだからな。そこまで聞けなかったんだろう」
撫子の素朴な疑問に苦笑する草間。
「依頼者の方に、それを詳しく聞くようには零さんに言わなかったんですか?」
「あー……それか」
次なる撫子の疑問に、草間は少し思案してからこう言った。
「今の所は言うつもりはない。そのことに自分で気付いたらたいしたもんなんだが……どうだろうなあ」
草間が心配そうな表情を見せた。それを見て、撫子はくすっと微笑んだ。
●お役に立ちます【4】
「あのっ、零さんどうされたんですか?」
中学生くらいだろうか、小柄で可愛らしい少年が事務所にやってくるなり草間に尋ねた。草間は少年――ブルーノ・Mを見て目をぱちくりさせる。
「……確か零の知り合いだった、よな?」
「はいっ!」
草間の問いかけに、ブルーノは元気よく答えた。
「零は今……と、その前にだ。何で零がどうしたのかって聞くんだ?」
「えっ? だって……零さん、商店街で何かお店の人たちにあれこれ尋ねてましたから」
「ああ、そういうことか。お前は聞き込み中の零を見かけたんだな。零はな、探偵の仕事中なんだ、今」
ブルーノの言葉を聞いて草間は納得した。
「探偵……?」
ブルーノが首を傾げた。ブルーノのその様子に、草間は探偵について簡単に説明をした。
「なるほど、情報収集、聞き込み、尾行、張り込みなどをするんですか」
へえ、といった様子のブルーノ。どうやら本気で探偵という職業を知らなかったらしい。
「だったら……僕も零さんと一緒に調べたいです!」
「ダメだ」
即座に草間に却下されるブルーノ。しょんんぼりと肩を落とした。
「……え、ダメですか?」
「一緒にはダメだ。調べるなら、影でフォローしてやってくれ。それとも、零と一緒でなきゃ嫌か?」
草間がニヤッと笑みを浮かべた。
「……いえ、零さんのお役に立てるなら!」
右手をぐっと握り、ブルーノは語気強く言った。
「よーし、いい心がけだ」
うんうんと頷く草間。これでまた手伝いの人間を1人確保である。
「あ、そうだ」
ふと思い出したようにブルーノが言った。
「こちらに連絡をするにはどうすればいいんですか?」
「そりゃ普通は電話だろ。携帯電話があればそ……」
「すみません、持っていません」
間髪入れずそう言い、ぺこりと頭を下げるブルーノ。
「……後でここに連絡しろ。俺から頼まれたと言えば、どうにかしてくれるはずだ」
呆れた顔になった草間は、とある携帯電話の番号を記したメモをブルーノに手渡した。
●ここにも、気分は名探偵【5】
「へえ、ケーキ屋さんで見かけた男子学生かぁ。もしかしておれのことだったりして!」
そう言って笑ったのは、大きめな目で人懐っこそうな顔をした少年であった。が、それを聞かされた唯一の人間である草間は、少年――葉室穂積に対してじとっとした視線を投げかけていた。無言で、くすりともせず。
「……って、無視しないでさ。何か言ってよ、冗談なんだから。おれ、恥ずかしいじゃん!」
2、3度手をパタパタと振ってから、参ったなといった様子で穂積が短髪である頭を掻いた。
「知ってるか。芸人殺すには放置が一番なんだぞ。ルミネや末広亭では効果的だ」
「おれ芸人違うって!」
「……冗談だよ」
慌てる穂積に対し、草間がニヤリと笑った。
「もう、冗談きついなぁ」
「そっちが先にやったからやり返したまでだ。だいたい、そのケーキ屋知ったの今だろ?」
「まあね」
草間の言葉に穂積が笑って頷いた。
「えーと、役割は零ちゃんの手伝い、だよね。それもバレないように」
「ああ、そうだ」
「無難な手段なら、常連を気取って毎日通えば、制服から学校割り出せるよね。で、向こうも常連だと話は簡単なんだけどねー」
確かに、相手が常連であるならば簡単である。毎日通っているうちに、いつかは会えることだろう。そこで上手く話を持ってゆけば、相手の名前とかも分かるかもしれない。
「……あ、どんな制服だっけ?」
「知らん」
草間の答えに、穂積の表情が一瞬強張った。
「え、えーと……?」
「ここにある書類見てみろ。そういう部分がすっぽり抜け落ちてるんだ」
苦笑しながら書類を穂積に差し出す草間。書類を受け取った穂積は、ざっと読んで唖然とした。
「うわー……映画のあらすじ以下じゃん、これ」
「別に止めてもいいぞー。無理強いする気はないしな」
「いやいやいや、さすがにそれはさぁ」
穂積は首を横に振った。
「ほら、おれも少しは探偵さんの気分も味わってみたいじゃん? それに、零ちゃんの初仕事もその依頼人の子のことも応援してあげたいしね!」
「……だな」
ふっと草間が笑った。
●60点【6】
「……おっさんならほったらかすとか妨害するとか、横から依頼かっさらって生活費にあてるとか色々あったのに」
「おい、何か言ったか?」
ぶつぶつと小さな声で文句を言っていたのが聞こえたのか、草間が村上涼に声をかけてきた。
「いぃーえぇー? べぇーつぅーにぃー?」
間延びした返事を返し、涼は出された茶をすすった。
「それはそうと、電話したタイミング悪くなかったか? その格好だと、また今日も就職活動やってたんだろ?」
リクルートスーツ姿の涼を見て、少し申し訳なさげに草間が言った。ところが、涼は明後日の方を向いて遠い目になった。
「……ふ……」
あ。何か触れちゃいけなかったみたいです。
「どーせ若い方がいいのよね……」
いや、何の話だ。
「この恨みっ、今回の依頼でっ!!」
「電話でも言ったけどな、気付かれないようにこっそりだからな。覚えてるよな?」
1人燃え上がった涼に対し、水をかける草間の一声。途端に鎮火する涼。
「せんせー……それ、私の一番の不得意科目なんですけどー?」
「別に100点でなく、60点の出来でいいんだぞ」
「ああ、不可は止めて、不可は」
嫌そうに首を振る涼。よく分からない人に解説――大学では60点未満には単位が出ません。
「まあ……真面目にやりましょうか」
「不真面目にやるつもりだったのか、おい」
涼のつぶやきに、草間が突っ込みを入れた。
「おっさんだったらそうだけど、違うもんね」
涼がさらりと言い放った。呆れる草間。
「お前なあ……」
「ただねー。学校帰りにケーキ屋に……男の子って寄るもんなの?」
そう言い、涼は首を傾げた。
●しみじみしてしまう【7】
「武彦さん、本題に入る前にちょっといい?」
食料を持って事務所にやってきたシュライン・エマがそう言うと、何が言いたいのか察知した草間はすぐさま苦笑いを浮かべた。
「……電話があったんだな」
「ええ。可愛らしい男の子の声で。武彦さんに言われたってね」
やれやれといった視線を草間に向けるシュライン。電話がかかってきたのはブルーノからであった。そう、草間がブルーノに渡したメモに記されていたのはシュラインの携帯電話の番号だったのだ。
「仕方ないだろ。携帯持ってないって言われたしな」
「それはいいの。でも、そうしたんなら先に連絡して? あるのとないのとじゃ、違ってくるから」
「……すまん、忘れてた」
釘を刺すシュラインに、草間が謝った。
「はい、これ。取りに来るように伝えておいたから、後で渡してあげて」
シュラインは調達してきた携帯電話を草間の机の上に置いた。
「でもほんと、零ちゃんのことが心配なのね、武彦さん」
思案顔になりシュラインがつぶやいた。
(まさか零ちゃんが1人でだなんて……出会った頃からすると、ずいぶん時間も流れたものねえ)
出会ってから今までのことを思い返し、うんうんと頷くシュライン。ある意味母親のような心境である。少し寂しくもあるのだが、それ以上に嬉しさもある。
「……放っておけないからな」
草間がぼそっと言った。だからこそ、零をこちらへ連れてきた訳で――。
「それで武彦さん。他に誰が手伝うことになったの? 後で連絡取ってみるから、私」
シュラインは草間から他の面々のことを聞くと、後で連絡網を構築したのであった。これで情報の共有化がはかれるはずである。
●調査は続くよ【8】
さて、零が1人で調査を始めてから3日が経過した。
「じゃあ、今日も頑張って行ってきます」
「ああ、気を付けてな」
調査4日目となる零を送り出す草間。さすがに4日目ともなると、出かける時の言葉に『頑張って』と入ってくるらしい。つまりそれは、調査が芳しくないということの表れでもあるのだが。
「こりゃ、長期戦になるか……?」
1人きりの事務所でぽつりつぶやく草間。もしも1週間程度で片が付かないようであれば、自分が出てゆくつもりでいた。いくら何でも、延々と零をこの依頼にかかりっきりにさせる訳にはゆかないからだ。
無理であった場合には、それを依頼者にきちんと伝えるのも探偵としての責務である。恐らく零のことだから、見付かるまで毎日出かけてゆくことだろう。それは誠実な行動であるのだが、ある面では不誠実であるとも言える。そう、仕事であるがゆえに。
「……制服のデザインや会った時間帯が分かったから、どうにかなるとは思うんだがなあ」
3日間のうちに、シュラインが依頼者の少女に電話をかけて抜け落ちていたその辺りの情報を補ってくれていた。他の皆にも、そのことは伝わっているはずである。
さあ、今日こそ探す少年は見付かるのであろうか?
●探し人見付かる?【15】
「さーて。今日は、ど・れ・に・し・よ・う・か・な」
ケースの中に入っているケーキを、1つずつ指差しながら選ぼうとしている穂積。件のケーキ屋でのことである。
「よし、今日はチーズケーキだ!」
「毎日ありがとうございます。これでもう4日連続ですよね?」
女性店員がそう穂積に話しかけてきた。そう、穂積は草間に連絡を受けた日から連続でこのケーキ屋でケーキを買っていたのである。常連を気取ろうとするならば、このくらいはしなければならないと直感的に思ったからだ。
「だってさぁ、ここのケーキ美味しいし」
笑う穂積。いや、実際食べてみてここのケーキは美味しかったのだ。嘘でも何でもなく。穂積的には今川焼きなケーキがあれば最高かもしれないけれど……って、どんなケーキだ、それは。
「こんにちは」
と、そこに零が登場。
「あら、いらっしゃいませ。ごめんねー、やっぱり分からないのよー」
すまなさそうに女性店員が零に言う。聞かれる前にもう答えてしまったのだろう。
「ん、どしたのさ零ちゃん?」
偶然を装って穂積が零に声をかける。あくまでたまたま零に会ったという形である。
「あ、こんにちは」
ぺこりと頭を下げ、零が穂積に事情を説明した。
「へーえ、そりゃ大変だぁ。おれがもっと長く通ってたら、力になれたかもしれないけど……ひょっとして、ここの常連さんだったりして、探してる人」
そう言い、穂積がちらりと女性店員を見た。けれども女性店員は首を横に振る。
「常連さんだったらすぐ分かりますよ。10代の男の子の常連さんなんて少ないんですから」
それはそうだ。分からないというなら、やはり違うのであろう。
「じゃ……」
「じゃあ、最近よく見るようになった10代の男の子は居ませんか?」
穂積が何か言おうとしたのと同時に、零が女性店員に尋ねた。穂積は心の中でガッツポーズをした。何故なら、自分が言おうとしていたのと同じことを零が自ら言ったのだから。
「ええと……このお客さん?」
女性店員が穂積を指差した。ま、予想通りの答えである。
「そうかぁ、探し人はおれのことなのかぁ」
こらこら、乗るんじゃない。というか、それ2度目ですから……残念!
「って、おれ以外でっ! 冗談言っても、何も言ってくれないし……」
穂積が女性店員に突っ込みを入れた。
「ボケは放置です」
おや、何かどこかで聞いたような女性店員の台詞。
「他に、どなたか居ませんか?」
零が女性店員に尋ね直した。すると少し思案してから、女性店員は何かを思い出したように言った。
「そういえば……少し前に来たお客さん、こないだも来たわ。そうよ、そうそう、紺のブレザーに臙脂色のネクタイの男の子」
それを聞いて、穂積はまたしても心の中でガッツポーズをした。シュラインから連絡が来た制服の情報が、まさにそれなのだ。
「今日もこないだもモンブラン1個だけ買っていったのよ。うん、思い出したわ!」
これはもう間違いないだろう。顔を見合わせる零と穂積。
「探してる人って、今言った人じゃない?」
穂積がそう言うと、こくこくと零が頷いた。
「私……その制服がどこの学校なのか、調べてみます!!」
店を飛び出す零。だが、店を出た所で零の足がぴたっと止まった。足元に、生徒手帳と『23区内私立高校男子制服大全』なる本が落ちていたからだ。
不思議なことに、生徒手帳は本に付箋がついていたページの学校の物であった――。
●調査終了!【16】
「……という訳でですね、その生徒手帳を落としたのが探していた人だったんです」
嬉しそうに草間に語る零。無事に調査を終え、報告書を書き上げた日のことである。
「そうなのか。そういう偶然もあるんだなあ」
素知らぬ顔で草間が言う。この場に居た他の7人も、やはり素知らぬ顔をして聞いていた。ブルーノが調査終了祝いとして差し入れたクッキーを摘みながら。
零はさらに報告を続けた。
「あのケーキ屋さんに行ったのは、骨折で入院している叔母さんのお見舞いを買うためだったそうです。何でも、あのケーキ屋さんのモンブランがお好きらしくって……その叔母さんが。お見舞いが毎日じゃなかったのは、部活動の都合もあったということです」
なるほど、方やバイトの都合、方や部活動の都合となれば、なかなか出会えるはずもない。分かってみれば単純な話だった。
「お二人が上手くゆくといいですね」
少年のことは依頼者の少女にきちんと伝えた。この後どうなるかは、もう当事者たちの問題である。あれこれと干渉するのは野暮というものであろう。
「よーし、何はともあれ……ご苦労さん」
草間は零の頭にすっと手を伸ばすと、大きく撫でてあげた。
零もご苦労さまだったが同様に、あるいはそれ以上にご苦労さまなのが他の皆である。
本当にお疲れさまでした!
【零ちゃん奮闘す! ―気分は名探偵― 了】
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【 整理番号 / PC名(読み)
/ 性別 / 年齢 / 職業 】
【 0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま)
/ 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員 】
【 0328 / 天薙・撫子(あまなぎ・なでしこ)
/ 女 / 18 / 大学生(巫女):天位覚醒者 】
【 0381 / 村上・涼(むらかみ・りょう)
/ 女 / 22 / 学生 】
【 0389 / 真名神・慶悟(まながみ・けいご)
/ 男 / 20 / 陰陽師 】
【 3580 / 大和・鮎(やまと・あゆ)
/ 女 / 21 / OL 】
【 3948 / ブルーノ・M(ぶるーの・えむ)
/ 男 / 中学生? / 聖霊騎士 】
【 4188 / 葉室・穂積(はむろ・ほづみ)
/ 男 / 17 / 高校生 】
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■ ライター通信 ■
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・『東京怪談ウェブゲーム』へのご参加ありがとうございます。本依頼の担当ライター、高原恵です。
・高原は原則としてPCを名で表記するようにしています。
・各タイトルの後ろには英数字がついていますが、数字は時間軸の流れを、英字が同時間帯別場面を意味します。ですので、1から始まっていなかったり、途中の数字が飛んでいる場合もあります。
・なお、本依頼の文章は(オープニングを除き)全16場面で構成されています。他の参加者の方の文章に目を通す機会がありましたら、本依頼の全体像がより見えてくるかもしれません。
・今回の参加者一覧は整理番号順で固定しています。
・大変お待たせさせてしまい、申し訳ありませんでした。ここに零の奮闘振りをお届けいたします。
・零が少しずつ一人立ちするようなお話はそのうち書いてみたいなと思っていたのですが、タイミングが合って今回書かせていただきました。まあ現状ではまだまだ一人立ちは難しそうですけれども……ね。出来ればこのシリーズは続けてゆきたいのですが……さて、いかがでしょうか?
・今回、フォローした過程は参加者全員の文章に目を通さないと全容がつかめないと思います。よければ他の方の文章にも目を通してみてください。
・サブタイトルの元ネタは、分かる人は分かっていただければと思います。そのままですから、調べてみると分かるでしょうけれどね。
・葉室穂積さん、初めましてですね。制服から学校を絞り込めるという発想は正解でした。ただ常連という訳でもなかったので、その辺りは少し残念でした。あと、OMCイラストをイメージの参考とさせていただきました。
・感想等ありましたら、お気軽にテラコン等よりお送りください。きちんと目を通させていただき、今後の参考といたしますので。
・それでは、また別の依頼でお会いできることを願って。
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