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<東京怪談・PCゲームノベル>


いつか見た夢。

ー 真夜中の電話 ー

氷崎・葵が仕事に疲れ布団の中へと滑り込んだ2時間後、電話のベルが氷崎・葵の部屋へ鳴り響いた。
「うーん、リーゼさん出て下さい。」
寝ぼけながら氷崎・葵は傍らのリーゼへと言ってみせた。
リーゼは少し飽きれながら
「私は出れないでしょ。早く起きなさい。」
その言葉に氷崎・葵は渋々起き上がり電話の受話器を取り上げた。
「もしもし。」
氷崎・葵は電話に出ると寝ぼけた声で言葉を発した。
「平野菜月です。ごめん、寝てたよね。」
電話の主、平野菜月は申し訳無さそうに氷崎・葵に言ってみせた。
その声に氷崎・葵は
「どうかしたんですか?何かありましたか?」
心配そうに平野菜月へ声をかけた。すると平野菜月は自分の見た不思議な夢を話しはじめた。そして氷崎・葵にリーゼがいることによって同じような体験をした事は無いかと聞いた。しかし氷崎・葵はそういった体験は無いと述べると平野菜月は少し考え
「明日、鏡の館という所に行くのだけれど一緒にきてくれないかな。」
そう氷崎・葵へと話した。
「わかりました。じゃあ明日待ち合わせて一緒に行きましょう。」
平野菜月はその言葉を聞くと電話を切った。そして氷崎・葵も明日の事を考えながら布団の中に潜り込んだ。

ー 鏡の館へ ー

氷崎・葵は昼食を終えると仕事を途中で抜け出し平野菜月との待ち合わせの場所へ向かった。
平野菜月と合流した後、平野菜月は氷崎・葵に電話で話した夢の話を再度聞かせてみせた。
「何度聞いても不思議な話ですね。一体なんでそんな夢を見るんでしょうか?」
氷崎・葵とリーゼは平野菜月と蒼イオナを見つめた。
「何でだろう。でもとても不思議な懐かしい感じがするんだ。」
平野菜月はふと立ち止まると、氷崎・葵に言った。
「蒼イオナ、何か知っているのではなくて?」
リーゼは蒼イオナへと問いかけた。しかし蒼イオナは
「……。」
言葉を詰まらせた。その態度に3人は顔を見合わせた。
以前不思議な少女の集団を追いかけて偶然訪れた鏡の館。
鏡の館の主である「由比真沙姫」は解決できない問題は無いと言っていた。
平野菜月はその言葉を信じて鏡の館へと向かって行った。
鏡の館に着いたのは一時過ぎ。郊外にある鏡の館まではたどり着くのに少し時間がかかる。
平野菜月は鏡の館の呼び鈴を鳴らすと、しばらくして扉が開いた。
「いらっしゃい。お久しぶりね。あら?今日はお友達がいるのね。」
由比真沙姫の言葉に平野菜月は氷崎・葵を見ると
「はい、彼女は氷崎・葵さん。私の友人です。」
平野菜月の言葉が終わると氷崎・葵は頭を下げると
「氷崎・葵です。よろしくお願いします。」
と鏡の館の主へ言ってみせた。
由比真沙姫は少し微笑むと平野菜月と氷崎・葵を館の中へと招き入れた。
由比真沙姫は平野菜月と氷崎・葵を居間へと案内するとソファーへ座るよう言い、自分もソファーへと腰を下ろした。
「で、今日はどんなご依頼なのかしら?」
由比真沙姫は足を組むと平野菜月へと尋ねた。
その言葉に平野菜月は夢の内容を由比真沙姫へ聞かせた。そして
「何故その夢を見るのか知りたいんです。夢の中の自分は誰なのか真実が知りたいんです。」
平野菜月は真剣な顔でそう言った。傍らの蒼イオナはその言葉を聞くと少しうつむいた。
氷崎・葵は蒼イオナのその態度を不思議に思いながらも平野菜月へ顔を向けた。
その様子を見た由比真沙姫は
「わかったわ。では正式に依頼としてお受けします。」
そう言うと立ち上がり
「準備があるのでここでしばらく待っていて。」
そう言うと居間から立ち去っていった。その様子を見た蒼イオナは平野菜月に向かい
「ねえ、やっぱりやめようよ。夢が何だっていいじゃない。」
と珍しく平野菜月の動を止めるような言葉を発した。
いつもの蒼イオナなら平野菜月に夢の正体を突き止めるよう勧めるはず。
なのに、今日の蒼イオナの言葉はそれとは反対だ。平野菜月はその行動に疑問を感じながら蒼イオナに向かい
「夢が何か確かめたい。いつもの蒼イオナなら一緒に行ってくれる。そうだろう?」
平野菜月の言葉に蒼イオナは言葉を濁しながらも
「う、うん……」
と答えた。氷崎・葵とリーゼはその様子を黙って見つめた。
「用意ができたわ。心の準備はどう?」
平野菜月の座るソファーの背もたれに手をかけると由比真沙姫は4人に声をかけた。
その言葉に平野菜月は迷わず
「大丈夫です、行きましょう。」
と答えた。蒼イオナはその言葉に不満そうな顔を浮かべたが平野菜月の意思に従うというような意味合いの言葉を由比真沙姫へと述べた。
氷崎・葵とリーゼも同意の言葉を由比真沙姫へ言ってみせた。
その言葉を聞くと由比真沙姫は
「では向かいましょう。真実へ。」
由比真沙姫はそう言うと館の奥へと進んでいった。
そして4人も館の奥へ、真実の見えるという場所へと足を進めた。


ー 夢の中へ ー

「さあ、この部屋よ。」
由比真沙姫は鏡の館の一室で立ち止まるとドアノブへ手をかけるとゆっくりと扉を開いた。
開かれた扉は赤いカーテンと壁紙で部屋中が赤く染まっていた。
部屋の壁際に置かれている鏡には赤い布がかかっていてどのような鏡なのか今は確認できない。
そしてその傍には薄いブルーのロウソクの刺さった燭台。燭台には美しい薔薇の模様が描かれており、平野菜月の見た限りではかなりの値段がするだろうと思われるような美しいデザインの燭台だった。
由比真沙姫は部屋に入るとまず鏡にかかっている赤い布を外し鏡が見える状態にした。
平野菜月の目の前に現れた鏡は燭台と同じく薔薇の模様があしらわれたデザインでとても美しいものだった。
「わあ、素敵。」
氷崎・葵は感嘆の言葉を出し周りを見つめた。
次に由比真沙姫は薔薇の模様の燭台を手に取ると、手のひらから炎を出しロウソクに灯をともした。
そして4人に向かい
「これは夢の中へと入る事ができる、泡沫の鏡。さあ、鏡の中へ」
と言った。しかし平野菜月はひとつの疑問を湯真沙姫へぶつけた。
「え、でも夢の中へ入るのなら私が夢を見なければ入れないんじゃないんですか?」
その言葉に由比真沙姫は少し笑うと
「一度見た夢なら今寝て夢を見なくても大丈夫よ。この鏡はそういう鏡なの。」
由比真沙姫は平野菜月の右手を取ると
「あなたが知りたいと言う夢を思い浮かべて鏡の中に入って。そうすればその夢に中に入れるわ。」
そういうと燭台を持つ手を肩まであげると鏡の中へと入りはじめた。
平野菜月もあの夢を思い浮かべながら鏡の中へと入っていった。
初めて入る鏡の中はグニャグニャとして平野菜月と繋いだ手のぬくもりが無ければ落ちていきそうな感覚に襲われそうだった。
数分経った頃、由比真沙姫は
「着いたわよ。」
そう言うと目の前に見える光の中へと入っていた。
氷崎・葵は光のまぶしさに目を閉じた。
しばらくして目を開いた時目の前には夢の光景が広がっていた。


− 真実 ー

「ここの世界では私たちの姿は夢の住人には見えなくなっているわ。だから安心して動いていいわよ。」
由比真沙姫は平野菜月にそう告げた。平野菜月はコクリと頷くと夢の中の自分を捜しはじめた。平野菜月の後を氷崎・葵も小走りに追いかけた。
「平野さん、どのあたりに夢に中の平野さんはいたんですか?」
と尋ねると平野菜月は周りを見回すと
「確かホールの真ん中あたりだった気が……」
平野菜月はそう呟くと夢の中の住人の談笑する声を聞きながら、夢の中の自分を捜した。
人々が集うホールの中央に向かうと貴婦人達が集っている場所が見えた。
「あそこだ。」
平野菜月はそう呟くと貴婦人達の中央にいる人物へと向かって行った。
「待って平野さん。」
氷崎・葵はそう言うと平野菜月を追いかけた。
そしてそこにいたのは夢の中で見た小さな少年。
小さいながらも紳士的な態度で貴婦人達に接している。
しかし平野菜月と氷崎・葵は次の瞬間叫び声をあげた。
「あ!」
小さな紳士の傍らにいたのは蒼イオナ。
平野菜月はその光景を見ると傍らの蒼イオナを見つめた。
氷崎・葵とリーゼも顔を見合わせ蒼イオナを見つめた。
そう。この夢は蒼イオナの記憶が平野菜月に流れ込んで見た夢だったのだ。
蒼イオナが昔傍らにいた小さな紳士。その小さな紳士の傍にいる蒼イオナはとても幸せそうだ。
「あ……」
氷崎・葵が言葉を発しようとした瞬間リーゼが
「葵。」
と言いその行動を止めた。そう。これは平野菜月と蒼イオナが話すべき問題。
平野菜月はその光景を見ると蒼イオナを見つめた。
「知ってたんだな。でも何故……何故なんだ。」
その言葉に蒼イオナはうつむくと
「……私の事を知ってもらいたかったの。だって、私……菜月の事が好きだから。」
蒼イオナの絞り出すような声に氷崎・葵は言葉を無くした。
永遠に叶わぬ思い。蒼イオナはそれをずっと繰り返してきたのだ。
蒼イオナは死なずに生き続けるが、人は死ぬ。必ず終わりがやってくる。
そして自分の傍らにいるリーゼも繰り返してきたのだろう。
なんて切ない思い。氷崎・葵は目頭を熱くした。
「菜月もいつかはいなくなってしまう。でも……せめて生きている間に私の事をもっと知ってほしかったの。だから、だから。」
氷崎・葵に蒼イオナの言葉は胸に切ない程突き刺さった。
同時にうつむいた蒼イオナから嗚咽の声が聞こえてきた。その様子に平野菜月は
「わかった、わかったよ。泣くなって。」
平野菜月はそう言うと蒼イオナに近づき頬にそっと手を添えた。
泡沫の鏡の影響だろうか。いつもは触る事のできない蒼イオナに平野菜月が触る事ができる。
平野菜月は蒼イオナの頬に伝わる涙をそっと拭った。
「菜月……」
蒼イオナは平野菜月をじっと見つめると切なげな表情を見せた。
叶わぬ思い。でも一緒にいる間は自分の事を知ってほしい。
蒼イオナのそんな気持ちに答えるように平野菜月は蒼イオナに顔を近づけた。
そして
「蒼イオナの気持ちはわかったよ。ありがとう。」
そういうと蒼イオナの唇にそっとキスをした。
氷崎・葵はリーゼを見つめるとリーゼの手をそっと握った。

ー いつもの二人 ー

泡沫の鏡から鏡の館へ帰ると由比真沙姫は
「どうやら解決したようね。依頼料もいただいたし、また何かあったらお待ちしてるわ。」
そう言うと鏡の館から平野菜月と蒼イオナそして氷崎・葵とリーゼを送り出した。
鏡の館を出てすぐ蒼イオナが
「さ、さっきのは夢だったんだから。気にしないでよ。」
と恥ずかしそうに平野菜月へと照れたように言ってみせた。
その言葉に平野菜月も
「ああ、そうだな。気の迷いってやつだな。」
笑いながら蒼イオナへと言ってみせた。その言葉に蒼イオナは
「な、なによ!私だって気の迷いなんだから!!」
そう言うと怒って平野菜月から顔を背けた。
平野菜月はそんな蒼イオナに笑いかけると蒼イオナも少し間を置いて平野菜月へ笑いかけた。
平野菜月はこれからも見るかもしれない蒼イオナの記憶を大事に胸にしまっておこうと思った。
そんな二人の様子を見て氷崎・葵とリーゼは互いに顔を見合わせて微笑んだ。

そして平野菜月と蒼イオナと別れた後。
「あーあ、何だか妬けちゃうな。平野さんと蒼イオナさんいい感じなんだもの。」
その言葉にリーゼは微笑むと
「ふふ、確かに二人はとても良い関係だったわね。でも私たちもそうではなくて?」
と氷崎・葵へ向かって言ってみせた。その言葉に氷崎・葵は満足そうに微笑むと平野菜月と蒼イオナの幸せを思い浮かべた。

そして氷崎・葵とリーゼはまた日常へと戻っていったのだった。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
整理番号 4794/ PC名 氷崎・葵 (ひざき・あおい)/ 性別 女性/ 年齢 24歳/ 職業 ペットショップ店員
整理番号 4715/ PC名 平野・菜月 (ひらの・なつき)/ 性別 男性/ 年齢 25歳/ 職業 フリーター(ソフトウェア会社)

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■         ライター通信          ■
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>氷崎・葵様

ご注文有り難うございました。
平野菜月様についていくというご指定でしたのでこのような感じになりましたがいかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけると嬉しいです。
また機会がありましたらよろしくお願いします。
ご注文有り難うございましたvv