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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ミズの魔女が語る時。

オープニング

-…私は『ミズの魔女』です。
自分の能力を使ってここにアクセスしております。
どうか私を助けてください。
私は今、暗くて寒い場所に閉じ込められています。
どうか、私を助けてください。
私が閉じ込められている場所は…。

ゴーストネットOFFに書き込まれたのは助けを求める文章だった。
だけど、書き込みにあった住所は数十年前から
廃墟になっている大きな屋敷のみで人が住んでいる気配は全く見られない。
とりあえず、書き込みを信じてその場所に向かったのだが…?


視点⇒羽角・悠宇

「…閉じ込められたミズの魔女…?」
 悠宇はゴーストネットOFFに書き込まれた言葉を見ながら小さく呟いた。
 ミズの魔女…水の魔女とも、見ずの魔女とも呼べる…。
「とりあえず、廃屋になった屋敷のこと調べてみるかな…」
 悠宇はキーボードを叩きながら問題の屋敷の事を調べてみる。
 ネットというのは便利なもので、色々なサイトが存在する。事件のことを記事にしているサイトも結構見られる。
「ここでいいかな」
 悠宇がたどり着いた先は過去数十年分の事件などを記録しているサイトだった。このサイトでならあの廃屋で何があったのかが分かるだろう。
「えーっと…」
 マウスをクリックしながら問題の屋敷の事を調べはじめる。
「…あった」
 あの廃屋で過去に起きた事、それは一家心中の記事だった。とある会社の社長、そして夫人…当時10歳になる少女が死んでしまったこと、らしい。理由は不明。会社も上手く行っており、心中を図る動機がみられなく怪しげな事件として当時は騒がれていたらしい。
「…この記事は…関係ない、か…?」
 助けを求める魔女と関係は見られないと思い、悠宇はパソコンを切り、問題の屋敷へと向かった。
 もし助けを求めている魔女が『水の魔女』なら魔女と呼ばれる力を持っていながら何故閉じ込められているのかも気になる。水はあらゆるものに変化をする。魔女だったらその力を使って逃げ出せるはずだ。…それなのに人に助けを求めるという事はその力が封じられているという事。
 水が変化をすることができなくなるのは…凍った時のみ。自身の力の源になる何かを封じられて動けない、そういう可能性も考えられる。
「それにしても…」
 悠宇は小さく呟く。何故閉じ込められなければならなかったのか…その理由も気になる。
「悪意を持った結果にならなければいいのだが…」
 考え込んでいるうちに屋敷に着いたらしい。その屋敷は長い間、手入れも何もされてなかったせいか門は錆びつき、屋敷の周りの庭園は雑草などで埋め尽くされていた。
 何か魔女の力を封じる何かがないかと探してみるが、特におかしなものは見当たらない。
「…外には何もない…となると屋敷の中かな…」
 中に通じる場所がないかと見渡していると割れた窓ガラスを見つけた。ここなら中に入る事も出来るだろう。
「…こんな所から入る羽目になるとは…泥棒気分だ…」
 窓から屋敷の中に入る、そのことが悠宇に無意味な罪悪感のようなものを感じさせていた。
「ゲホッ…」
 屋敷の中に入って悠宇は激しく咳き込んでしまう。原因は長く掃除されていない屋敷に溜まりに溜まった埃のせい。息をするのも結構つらいものだった。
悠宇は口元を手で覆いながらそれらしいところを探してみる事にした。
「ん…?」
 リビングで悠宇は妙なものを見つける。それは至って普通の大時計なのだが、問題は針だ。
「…逆向きに回ってる…」
 確かにその大時計は普通にカチカチと時を刻んでいる、右回りではなく、左回りで。
「おかしいな…」
 歯車でも狂っているのかと大時計を開けた瞬間に異変は起きた。ゴゴゴと激しい音をたてながら大時計が左に動き、その大時計の後ろからは隠し部屋が現われた。
「…隠し部屋…いかにもって部屋だな…」
 悠宇は石でできた階段を一段、また一段とゆっくり降りながら最奥の部屋を目指した。
「……っ!?」
 奥の部屋で悠宇が見たもの、それは氷で閉ざされた部屋だった。はぁ、と息を吐けば白い吐息が見える。その氷の中心には…一人の少女が眠っていた。
「これが…ミズの魔女…」
 その魔女の顔は見た事があった。新聞記事で一家心中に巻き込まれたこの屋敷の持ち主の…娘 だった。
「…ど、どうすればいいんだよ…」
 天井にまで届く大きな氷柱、簡単な火などで溶かせるわけもない。
(…奥にスイッチがあるの…それを…)
 頭の中に直接聞こえてきた声に悠宇はハッとする。そしてその声の言うとおりに奥の部屋に行くと赤く明滅を繰り返しているスイッチを見つけた。
 スイッチを押すと氷柱の割れる音が悠宇の耳に響いてきた。
「…お兄ちゃん、ありがとう」
 その少女はフワリと宙に浮いていた。
「…おまえが…ミズの魔女…」
 悠宇が問いかけると、その少女は苦しそうに顔を歪め、そして笑った。
「そう、あたしは魔女なの。あたしの持つ力のせいでお母さんもお父さんもおかしくなって…」
 あたしを道連れに死んじゃった、と少女は言葉を付け足した。
「…この氷柱はあたしのお母さんとお父さんがあたしを恨みながら死んでいった呪いの楔…あたしを解き放ってくれてありがとう」
 次は普通に生まれたいな、そう言いながら少女の姿が段々と薄くなっていき、最期には消えてしまった。
 普通、それは人それぞれの考え方だと悠宇は思う。普通じゃないというのは人の価値観を押し付ける事だ。
 ミズの魔女もその考えの犠牲者なのだと思う。
「…次は幸せな人生、送れるといいな」
 悠宇はポツリと呟いて屋敷の外へと出た。
 そして、ギュッと唇を噛み締めて、家へと足を向けた。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3525/羽角・悠宇/男性/16歳/高校生

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■         ライター通信          ■
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羽角・悠宇様>

初めまして。
今回『ミズの魔女が語る時。』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
『ミズの魔女が語る時。』はいかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

          −瀬皇緋澄