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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ミズの魔女が語る時。

オープニング

-…私は『ミズの魔女』です。
自分の能力を使ってここにアクセスしております。
どうか私を助けてください。
私は今、暗くて寒い場所に閉じ込められています。
どうか、私を助けてください。
私が閉じ込められている場所は…。

ゴーストネットOFFに書き込まれたのは助けを求める文章だった。
だけど、書き込みにあった住所は数十年前から
廃墟になっている大きな屋敷のみで人が住んでいる気配は全く見られない。
とりあえず、書き込みを信じてその場所に向かったのだが…?


視点⇒泰山府君・―

 泰山府君はその日、暇つぶしにゴーストネットOFFを覗いていた。すると、そこに興味を惹く書き込みを見つけた。
 その書き込みは『ミズの魔女』を名乗る人物からの書き込みで内容は助けて欲しいという書き込みだった。
「ほう、魔女とな。確か仙人に似た能力の持ち主だったようなきがするが…そのような事は良いか…」
 泰山府君は書き込みを再度見て書き込みの不自然な箇所を見つける。
 それは『ミズの魔女』の『ミズ』の部分。ひらがなではなく、カタカナということはわざわざ無変換キーでカタカナに変えたということ。
「このミズの部分…水なのか…それとも見ズなのか分からぬ。本当にこの女人が閉じ込められているのであれば、助けてやりたい」
 そう呟き、泰山府君は書き込みにある屋敷へと足を向ける事にした。

 その屋敷は人が住まなくなって長く経っているためか、かつては美しかったはずの庭園も雑草が所狭しと生えており、屋敷は窓ガラスなどが割れていた。
「この大きな屋敷には誰もおらぬのか、ならば勝手に入ったところで咎められる事はないな。早く助けを求めている女人を救わねば」
 屋敷の門を開けて、泰山府君はまずは庭園へと足を踏み入れた。門は錆びついていて開けるのに少しばかり疲れてしまう。
 庭園を抜けて、屋敷の前まで来ると屋敷は異様な雰囲気に包まれていた。人の住まない屋敷は脆くなるのが早いというが、それは本当のことらしい。
「随分と古びておるな…」
 屋敷のドアを開けて、泰山府君は中に入る。中も埃だらけで思わず咽てしまった。床も所々が腐っていて、床が落ちてしまいそうな場所が何箇所も目に入ってきた。
「…ふむ、確か書き込みには『寒くて暗い場所』と記されておったな。…それらに該当するものといえば…地下牢か?」
 このような大きな屋敷ならば地下牢が存在するのも頷ける、泰山府君は小さく呟いて地下牢を見つけるために屋敷の中を歩き回った。
 屋敷を歩く中で泰山府君は奇妙な部屋を見つけた。
 それは、女性が好みそうな内装の部屋だったが、窓という窓が全て板で打ち付けられている。それは中にいた人物が外に出られないようにするためか、中にいる人物が外から見えなようにするためか、どちらかは分からなかったが、どちらにせよ…中にいた人間が喜ぶような事ではなかった。
「…なんともおかしな屋敷だな…」
 その部屋の隅っこにベッドに隠されるような小さな各誌部屋を見つけた。
 屈んでやっと通れるくらいのその小さなドアを通って泰山府君はその奥にある冷たい地下牢を見つけた。
「……このような場所とは…普通の人間ならば見過ごしておったな…」
 その地下牢は人が二人ほど入れるくらいの広さだった。そして、その奥にいたのは…白い服を着ていた少女…の白骨だった。
『…書き込みを見て来てくれたの?』
 その白骨の側からボゥと白い光に包まれた少女が現われた。着ているものは白骨と同じなのでその少女と白骨は同一人物なんだろう。
「助けを求めておったのは貴様か…」
『うん…そうだよ』
「尋ねても良いか?何故貴様はこのような場所にいるのだ」
 泰山府君が問いかけると、少女は悲しそうな顔をして「お父さんやお母さんにここに入れられたの」と呟いた。
「…両親に…?」
『そう、私は僅かだけれど感知能力を持っていたの…その事を知った両親が…この地下牢を作って私を閉じ込めた…』
 その少女の両親は死ぬその間際まで少女を忌み嫌い、外に出す事はなかったという。そして、この地下牢の存在を知る両親が死に、少女は病で死ぬまでこの冷たい地下牢で過ごしたのだとか…。
「…他の人間は出そうとはしなかったのか?」
『私は…閉じ込められる寸前に死亡届を出されていたの。それに…この地下牢はお父さんやお母さん以外に知る人はいない…だから…二人が死んでしまったために私はここで一生を過ごす事になったの…』
「…それはつらかったであろう…」
 泰山府君の言葉に少女は緩やかに首を横に振った。
『閉じ込められた事はつらくなかった…。人は…人間は普通じゃない人を認めようとはしないから…』
 だけど、と少女は自身の頬を涙で濡らしながら言葉を続けた。
『…お父さんやお母さんに嫌われたまま会えなくなったのが凄くつらかった…。もう…どれだけ叫んでも…二人に私の声は届かない…伝わらない…。それが…凄くつらい…』
 少女は涙をボロボロと流しながら嗚咽まじりに呟く。
これほどの仕打ちをされて両親を慕う心があるとは…と泰山府君は心の中で思ったが口にすることはなかった。
「もう苦しむ必要はない。今、我が貴様を解放してやるから…」
 泰山府君が青龍偃月刀『赤兎馬』を出現させながら言う。
「…今度は幸せな人生を送れると良いな」
 そう言って泰山府君は牢の柵ごと、少女の霊を斬った。斬られた少女の姿はやがて見えなくなり、地下牢の中には静寂のみが残った。
 泰山府君は最初来た道を戻り、屋敷の外に出て空を仰ぐ。
 願わくば、あの薄幸の少女が次に生を受けるとき、笑っていられる人生だといい…と思った。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3415/泰山府君・―/女性/999歳/退魔宝刀守護神

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■         ライター通信          ■
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泰山府君・―様>

初めまして。
今回『ミズの魔女が語る時。』を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
『ミズの魔女が語る時。』はいかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^


              −瀬皇緋澄