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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ハクリの森

オープニング

 草間興信所にやってきた一人の中年男性。
 その男性が言うには最近「山」を買ったらしい。
 だけど、その山では昔「大量虐殺事件」が起こりその呪いのようなモノが存在するという。
 夜中の二時頃に殺された村人が出てくるのだという。
 そして、それを見たものを憑き殺してしまうそうだ
「…村人?」
 男性の話を聞いていたところで草間武彦が怪訝そうな顔で問いかける。
「はい…大量虐殺は…一つの村の人間が全て殺されてしまったのです」
 よくもそんな山を買う気になったものだ、草間武彦は口にはしなかったが心の中で毒づいた。
「でも…あの山にはオマモリサマがいるんです」
「…オマモリサマ?」
「はい、白髪で少年の姿をしていると言われてます。村人が殺された村の名前もオマモリサマの名前を取って
ハクリの村と呼ばれていたそうです」
「ハクリの村、ねぇ?」
 その男性の依頼は亡者となってしまったマヨイビトたちの霊を沈めてほしいというものだった。
「よろしくお願いします」
 そう言って男性は頭を下げて草間興信所を出て行った。
「午前二時に現われるマヨイビトか…」

 偶然、その場に居合わせた貴方だったがその依頼をどう解決しますか?


視点⇒高峯・弧呂丸


「大量虐殺事件ですか…」
 草間興信所に居合わせた弧呂丸はその話を聞いていて草間武彦に「私が行きます」と答えた。呪いや祟りの類であれば『呪禁師』として当然の務めだと考えたからだ。
 しかし弧呂丸には一つの問題があった。この話を聞いていると子供の頃に兄と一緒に見た恐ろしい某映画を彷彿とさせる。職業柄、怪異というものを怖いとは思わないが、子供の頃に見た映画のトラウマでどうも一人で行くのは気乗りがしない。
 まぁ、簡単に言えば怖いのだ。弧呂丸も23歳で立派な大人と言える、だから怖いなどと恥ずかしい事は絶対に口が裂けても言えない。
 そこで、弧呂丸は一つの名案とも呼べることを思いついた。子供の頃、あの映画を隣でウキウキワクワクで見ていた兄を連れて行けばいいのだ。大人しくついてくるとは思えないが、何か理由をつけて無理やり連れて行く、そして勢いで仕事を終わらせる!
 何という名案だろう。
「一人で大丈夫か?」
 草間武彦が問いかけてくると弧呂丸は「兄を連れて行きますので」と笑顔で言葉を返した。

 ―そして…。

「燎、いい話がある。とある山に金塊が眠っているらしい。興味があるなら共に来るか?」
「いい話?………」
 燎が少し眉を顰めて聞き返してくる。
 金塊があるというのは少し無理があっただろうか、弧呂丸は表情にこそ出していなかったが、内心は結構ヒヤヒヤものだった。
「まぁ、別に忙しいわけじゃねぇし付き合ってやるよ」
 とりあえず、自分の兄だが単純でよかった、弧呂丸はそう思いながら淡々と準備を始める。

 場所が遠い事から目的の山についたのは夜中の一時過ぎだった。
 時間帯はちょうどくらいかな、と思う自分もいれば…あぁやっぱりこの雰囲気は苦手だ…と思う自分もいた。
 山に足を踏み入れたところで奇妙な声が弧呂丸の耳に入ってくる。
『…ぁ…〜…ぅぁ…ぁぁ…』
 その声にビクっと肩を竦ませると背後から豪快な笑い声が響いてきた。
「ははははっ!コロ助、今マジでビビッたろ!あ〜おかし…」
 いまだ笑いが止まらないのか燎は腹を押さえながら笑いを堪えている。
「…っ!燎っ!!!」
 弧呂丸が顔を真っ赤にしながら勢いよく後ろを振り向く、それと同時に燎が何かを弧呂丸に放り投げてきた。
 咄嗟にそれを受け取った弧呂丸は自分の手の中にあるものを見て少しだけ驚いた。
「…指輪…?」
「即席で作ったモンだけど、簡単な魔よけにはなるだろ。コロ助、お前が仕事を終わらせないと帰れそうにもないから、早くしろ」
 俺は金塊を探すから!燎はそう叫ぶとどこから持ってきたのか黄色の安全と書かれたヘルメットとスコップを取り出した。
(……途中までイイ事言ってたけど…やっぱり馬鹿だ…)
 はぁ、と弧呂丸は大げさな溜め息をついて先へと進む。やがて着いた場所は、かつて村があった場所。村だった場所の中央には石碑のようなものがあった。恐らくはハクリというオマモリサマを奉っている場所なのだろう。
 村人がまだ生きていた頃はきちんと手入れされていたんだろうが、今では誰も手入れするものもいなく、苔むしている。
『誰……?お兄さん』
 弧呂丸が石碑に近づくと、白い光に包まれた少年が現われた。上品そうな少年で生きていた頃はそれなりの身分があったのだろう。
「私の名前は高峯弧呂丸と申します。依頼されてマヨイビトになったこの村の住人を救いに来ました」
 弧呂丸がそう言うと少年は淋しそうに顔を俯かせた。
『昔はあんな風に人を呪ったりする人達じゃなかったんだ。だけど死んでしまったという悲しい事実が彼らを変えてしまった…。ボク一人の力じゃどうしようもできなかったんだ…』
「私と力を合わせたらいかがでしょうか?一人より二人の方が成功率はあると思いますけれど…」
 弧呂丸が申し出ると少年は静かに首を横に振った。
『ダメだよ、この村に関係のないお兄さんを危険な目には合わせられないよ。村人って言っても一人や二人じゃないんだよ。マヨイビトになった住人は何十人もいるんだ…』
「いいえ、無関係ではありませんよ。私は仕事でこの件を依頼されたんです。目的は一緒だと思いますが?」
 弧呂丸がそう言うと『…ありがとう…』と少年は笑いながら答えた。
 その時だった、背後から燎が「コロ助!二時だぞ」と叫んできた。二時になると同時に村の中に霊の気配が一気に強くなり、マヨイビトと化した村人の姿が現われた。
「……わ、たしら…の…村…には、いるのは…だれだぁぁぁっ!!!」
 一人のマヨイビトが叫んで弧呂丸に襲い掛かってくる。弧呂丸はその攻撃を避けながらマヨイビトと化した村人を解放する手段を考えていた。
「どうしたら彼らを救う事ができるのですか?」
『…心残りをなくせばいい。村人をマヨイビトから解放するには一気に品聞く手はならない。一人一人していたらお兄さんもボクももたない…。あの石碑を壊して!』
 少年が指差したのは少年自身を奉っていた石碑だった。
『彼らはボクの事が気がかりで囚われたままなんだ。ボク自らがあの石碑を壊すことは出来ない、だから…お兄さん、頼むよ…』
 弧呂丸はつらそうな顔をしながらもそれしか方法がないと考え、能力を使い石碑を壊した。
 石碑を壊した途端、少年の姿が一層薄くなり、マヨイビトと化していた村人の姿も生前のように穏やかなものになった。
『…そんな顔しないで。ボクは自分をこの森に移す。この森自体がボクになるんだ。だから消滅するわけじゃない…』
 最期に村のみんなを救えてよかった、そう言って少年、ハクリの姿は消えた。


 あの村人達はもしかしたら分かっていたのかもしれない。ハクリがああいう選択をすると分かっていたからこそ、人を襲い、ハクリの村に誰も近づけないようにしていたのかもしれない。
「金塊はどこだーっ」
 背後を見れば燎がスコップで地面を掘って「金塊はどこだ」と叫んでいた。
 とりあえず、弧呂丸の仕事は終わった。だから燎がこの後どうしようと関係ないし、用なしなので放置して帰る事にした。


 そして、二日後…財布を忘れた燎が徒歩で自宅まで帰ってきて「だましやがったな!」と叫んでいる姿が様々な人に見られたらしい。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

4583/高峯・弧呂丸/男性/23歳/呪禁師

4584/高峯・燎 /男性/23歳/銀職人・ショップオーナー

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■         ライター通信          ■
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高峯・弧呂丸様>

こんにちは^^
今回「ハクリの森」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です^^
今回は前回とは違った弧呂丸の姿が書けて凄く楽しかったです!
怖いものがあったんだ、と一人呟いてました(笑
少しでも楽しんでいただけたら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

            −瀬皇緋澄