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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ハクリの森

オープニング

 草間興信所にやってきた一人の中年男性。
 その男性が言うには最近「山」を買ったらしい。
 だけど、その山では昔「大量虐殺事件」が起こりその呪いのようなモノが存在するという。
 夜中の二時頃に殺された村人が出てくるのだという。
 そして、それを見たものを憑き殺してしまうそうだ
「…村人?」
 男性の話を聞いていたところで草間武彦が怪訝そうな顔で問いかける。
「はい…大量虐殺は…一つの村の人間が全て殺されてしまったのです」
 よくもそんな山を買う気になったものだ、草間武彦は口にはしなかったが心の中で毒づいた。
「でも…あの山にはオマモリサマがいるんです」
「…オマモリサマ?」
「はい、白髪で少年の姿をしていると言われてます。村人が殺された村の名前もオマモリサマの名前を取って
ハクリの村と呼ばれていたそうです」
「ハクリの村、ねぇ?」
 その男性の依頼は亡者となってしまったマヨイビトたちの霊を沈めてほしいというものだった。
「よろしくお願いします」
 そう言って男性は頭を下げて草間興信所を出て行った。
「午前二時に現われるマヨイビトか…」

 偶然、その場に居合わせた貴方だったがその依頼をどう解決しますか?


視点⇒高峯・燎

「燎、いい話がある。とある山に金塊が眠っているらしい。興味があるなら共に来るか?」
 兄弟である弧呂丸が突然言って来た言葉。
 燎は何か裏がありそうだ、と勘ぐりながらも同行してやる事にしてやった。
「それで?いい話ってのは?」
 弧呂丸が準備をしている中、問いかけると「金塊だ」と短い返事が返ってきた。金塊なんて山で掘れるのか?いや、俺は掘ることにこだわりすぎなのか…?
「まぁ、別に忙しいわけじゃねぇし付き合ってやるよ」
とにかく見逃すにしてはおいしすぎる話だと思い、弧呂丸の目的が何であれ、ついていく事にした。
 そして、車で行くこと数時間、場所が山だけにかなりの距離があり、山に到着したのは夜の一時過ぎだった。
 夜中、という事もあって重々しい空気が山全体を包んでいる。
「そういえば、何で今日はこの山に来たんだ?観光、にしちゃ時間は遅いし」
「仕事だ。この山でかつて大量虐殺事件があったらしい、その時殺された村人がマヨイビトとなって出るんだと」
 弧呂丸の話を聞いて燎は心の中で「昔見た映画のことだな」と口にすることなく呟いた。
 なるほど、そういう事か。
 燎が過去の事を思い出し含み笑いをする。暗かったせいか燎が笑っている事に弧呂丸は気がついていないようだった。
(つまり、簡単に言うと…っていうか簡単に言わなくても…こいつ怖いのか)
 確かに弧呂丸は素直に「怖いからついて来て」なんて言わないし、言っている所も想像がつかない。
 金塊がある、なんて見え透いた言葉で自分を騙そうと画策するほど今回は余裕がなかったらしい。呪禁師として毅然と振る舞っている様に見えて、内心はビビッてる様子がとても面白おかしかった。
 そこで燎は一つの面白い、そして単純な悪戯を思いついたので実行してみる事にした。
『…ぁ…〜…ぅぁ…ぁぁ…』
 オバケの声真似をして驚かすなんて幼稚なことだと自分でも思うが、今の余裕のない弧呂丸には効果抜群だろう。
 燎の予想通り、弧呂丸はかなり驚いたらしく肩をビクッと竦ませていた。
「ははははっ!コロ助、今マジでビビッたろ!あ〜おかし…」
 こんな弧呂丸は滅多に見られないので思う存分堪能させてもらおう。それにしても今の弧呂丸の顔はかなり面白かった。笑いを堪えるのが少しばかりキツイ。
「…っ!燎っ!!!」
 弧呂丸が勢いよく振り向いてくる、そして燎は弧呂丸が振り向いたところを狙ってあるものを投げ渡した。
「…指輪…?」
 咄嗟的に受け取った弧呂丸は渡された指輪を見て少し驚いているようだった。
 燎が渡した物は銀で作られた魔除けの指輪。
「即席で作ったモンだけど、簡単な魔よけにはなるだろ。コロ助、お前が仕事を終わらせないと帰れそうにもないから、早くしろ」
 俺は金塊を掘るから、そう言って背中に背負っていた安全と書かれた黄色いヘルメットとスコップを取り出した。弧呂丸はその二つを見て盛大な溜め息をついてみせた。
 それから少し歩いたところに村の『跡』らしき場所についた。中央には石碑のようなものがあった。恐らくは弧呂丸から『オマモリサマ』というものを奉っていた場所だろう。自分に怪異を何とかする能力はない、いや…あるのかもしれないけれど面倒なのでしない。だから仕事の本番になっている今、弧呂丸をからかうのはやめておこうと燎は心の中で思った。
『誰……?お兄さん』
 弧呂丸が石碑に近づくと、白い光に包まれた少年が現われた。上品そうな少年で生きていた頃はそれなりの身分があったのだろう。
「私の名前は高峯弧呂丸と申します。依頼されてマヨイビトになったこの村の住人を救いに来ました」
 弧呂丸がそう言うと少年は淋しそうに顔を俯かせた。
『昔はあんな風に人を呪ったりする人達じゃなかったんだ。だけど死んでしまったという悲しい事実が彼らを変えてしまった…。ボク一人の力じゃどうしようもできなかったんだ…』
「私と力を合わせたらいかがでしょうか?一人より二人の方が成功率はあると思いますけれど…」
 弧呂丸が申し出ると少年は静かに首を横に振った。
『ダメだよ、この村に関係のないお兄さんを危険な目には合わせられないよ。村人って言っても一人や二人じゃないんだよ。マヨイビトになった住人は何十人もいるんだ…』
「いいえ、無関係ではありませんよ。私は仕事でこの件を依頼されたんです。目的は一緒だと思いますが?」
 弧呂丸がそう言うと『…ありがとう…』と少年は笑いながら答えた。
 その時、自分の腕につけていた時計が二時を指しているのが目に入り「コロ助!二時だぞ」と叫んで教えてやった。静かだった森は二時になると同時にマヨイビトと化した村人達が姿を現し始めた。
「……わ、たしら…の…村…には、いるのは…だれだぁぁぁっ!!!」
 一人のマヨイビトが叫んで弧呂丸に襲い掛かってくる。弧呂丸はその攻撃を避けながらマヨイビトと化した村人を解放する手段を考えていた。
「どうしたら彼らを救う事ができるのですか?」
 弧呂丸が問いかけると少年は小さな声で呟いた。
『…心残りをなくせばいい。村人をマヨイビトから解放するには一気に品聞く手はならない。一人一人していたらお兄さんもボクももたない…。あの石碑を壊して!』
 少年が指差したのは少年自身を奉っていた石碑だった。
『彼らはボクの事が気がかりで囚われたままなんだ。ボク自らがあの石碑を壊すことは出来ない、だから…お兄さん、頼むよ…』
 弧呂丸はつらそうな顔をしながらもそれしか方法がないと考えたのか、能力を使い石碑を壊した。
 石碑を壊した途端、少年の姿が一層薄くなり、マヨイビトと化していた村人の姿も生前のように穏やかなものになった。
『…そんな顔しないで。ボクは自分をこの森に移す。この森自体がボクになるんだ。だから消滅するわけじゃない…』
 最期に村のみんなを救えてよかった、そう言って少年、ハクリの姿は消えた。

 そして、この日…燎が弧呂丸を見たのも最後だった。
「あのやろぉぉっ!!!」
 弧呂丸が仕事を終え、燎が本当に金塊があるかもしれないと山を掘っていた隙に弧呂丸は事もあろうか、燎を置いて帰ってしまったのだ。
 しかも不幸な事というのは続くものらしくて、この日…燎は財布を忘れてきていた。
 だから電車やタクシーに乗ることもできずに徒歩で自宅まで帰りついたのだ。自分でもよく帰れたものだと感心するほどだ。
 それだけならまだ許せたかもしれない。金塊の話まで全くのウソだったのだ。
 山のふもとに住むおばあちゃん(73)に聞いてみると金塊などあるわけがないと笑われたのだ。
「弧呂丸!!だましやがったな!!!」
 しかし、弧呂丸は「金塊だと言っただけで本当にあるなんて言ってないだろ」と屁理屈のような言葉を返してきたのだった。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

4584/高峯・燎 /男性/23歳/銀職人・ショップオーナー

4583/高峯・弧呂丸/男性/23歳/呪禁師
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■         ライター通信          ■
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高峯・燎様>

こんにちは^^
今回はご兄弟での発注をありがとうございました^^
普段、あまり複数での発注はあまりないので
楽しく書かせていただきました^^
この話が少しでも面白いと感じてくださいましたら
書き手として幸いでございます^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^

                   −瀬皇緋澄