コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 Invisible Blade 1 セレスティ・カーニンガム編

 織田義明はなにか違和感を覚えていた。
 平穏の時と、死と隣り合わせの己の宿命。
 今の状態は満足しているわけでもない。
「他の人もそうだろうな」
 と、独り言。
 一人暮らしをしてから数ヶ月。
 先天性神格覚醒者というのは、ある意味呪いである。神秘関係を否定する親に気味悪がられ、見捨てられたのだから。
 このアパートも、天空剣で退魔行をしたときのバイト代とエルハンドの好意により得られたものだ。
 さて、逆の立場の人間と出会えば彼はどう思うだろう?
 神秘の出であり、その能力を嫌って思って逃げた人間と……
「直ぐに起こるかどうかはさておき、惹かれ合うだろうか? 考え方が異なるから敵対するだろうか?」
 義明はそう思った。
 
 
 数日後……

 毎度の事ながら退魔行を任された義明は、戦いの中で一人の少年と出会った。
 戦いが住んだ後……お互いが見る。
 歳はおなじぐらい。
「……」
「……」
「「誰だ?」」
 同時に喋った。
 緊張、相手は非実体の悪霊を何かで斬っている。
「Invisible Blade……?」
 義明が、“彼”の能力(一部だが)を見る……。
「見えるのか? あんたこそ…その刀はなんだ?」
 少年が喋る。
 おそらく義明の「水晶」の事だろう。刀身が水晶のように透き通っているためだ。そこから発せられる力は尋常ではない。
 彼が警戒してもおかしくはない……。
  
 この緊張感のなかあなたはどうする?


〈再会の予感〉
「遅くなりましたね」
 と、リムジンの後部座席でセレスティ・カーニンガムが呟いた。
 その通りは少し思い出の場所である。
 衣蒼未刀に出会った場所。
「会えるでしょうか?」
 と、色々なことを考える。
「!?」
「どうかされましたか?」
「止めて下さい」
 運転手に車を止めて貰い、ステッキをついて路地裏に向かう。
 財閥総帥といえ、能力者である。
 この路地裏で起こっていることを察知したのだ。
「何かを斬る音ですね」
 と、先に進む。
 襲いかかる悪霊も彼の力の前に無力だった。

 そして、拡がった路地裏の広場では、
 懐かしい人物がいた。
「……衣蒼未刀君」
 しかし、様子は変だとすぐにわかる。
 鋭敏な知覚での周辺把握できるセレスティだが、未刀と対峙している人物が以上に強大であるのだ。
「お待ちなさい。2人とも!」
 優しく、2人に伝える。
「!? あんたは!」
 未刀は構えながら、その声に懐かしさを感じていた。
「……」
 少年は、いきなり現れた相手に敵意がないことを知って、刀を納刀し“消す”。
「未刀君、あなたも剣を収めなさい」
「しかし、彼奴は尋常じゃない!」
「大丈夫です……彼はあなたと戦う気はないのです」
「……あんたがそう言うなら」
 セレスティと未刀のやりとりを見て、義明はお辞儀をする。
「お互い武器を持っていると巡回の警察がきたらややこしくなります、どうです? 車も近くにありますし、あ、申し遅れました。私はセレスティ・カーニンガムです」
 優しくほほえみかけるセレスティ。
「ありがとうございます。俺は織田義明と言います」
「見たところ、あなたも能力者ですね」
「ええ」
 義明はとても穏やかに答える。
 今までの異常な力を発散していない。
「……?!」
 未刀も驚くばかりだ。

 霊気や闘気、更にあの“力”が全く感じられないのだから。

「かなり修練を積んでいますね」
 セレスティは感心する。若いのに此処まで制御でき、抑止の影響もないというのは凄いことだ。
「自分が破滅しますから。つい最近に会得しました」
「そうですか、其れは良かった」
「まってください。清めをしないと……」
「あ、そうですね」
 と、義明の清めの儀式が終わるのを待って、
「あいつも、僕と同じ出なのだろうか? 退魔の……」
 未刀は首を傾げた。
「いえ、そうではないかも知れません……しかし、あなたに又会えて良かった」
「あ……僕も……」
 少し照れている未刀。
「お待たせ致しました」
 儀式が終わったようだ。
 では、参りましょうという微笑みをセレスティは浮かべ、未刀と義明を連れて行く。


〈庶民と世間知らずとブルジョアジー〉
 義明はやっぱり庶民。リムジンを見るなり驚いた。
「え? え、ええ! は、はじめてリムジンに乗るの」
「?」
 世間知らずの未刀は首を傾げる。
 貴族的に金の使い方に力が入っていないセレスティ。
 経験とか世間などの認識度の違いであるが。
 よく、環境が此処まで違う者が揃うのは草間興信所やらそう言ったところではないだろうか?
 一応、衣蒼家の出も金持ちと言えばそうだろうが、いまじゃ関係はない。
――考えてみれば茜が乗ったとか言っていたな。
 と、義明がふと幼なじみの事を思い出し、セレスティに言われるまま席に座る。
 未刀も義明の隣に座った。
 リムジンは発進する。


 簡単な自己紹介を車の中でやりとりして、
「同じ退魔の職業ですから、どうです? 一緒にやってみるのは? 捗ると思いますよ」
 と、提案するセレスティ。
「俺は構わないですが」
「……僕は……独りでいい」
 同時に違うことを言っている。
「ふむ、詳しく話をしたいというなら、私の家でお食事が良いですね」
「!?」
「?」
 また驚く義明と、首を傾げる未刀
 この2人の反応が“同時”ということが、セレスティにとって面白かった。
――意気投合すると楽しい反応が見られそうですね

 豪邸で庭師らしき人に(彼に残っている樹の香りなどでそれとなくわかる)出迎えられ、食事に招待される。
 食事は簡単ながら豪華である(コックも一流なら、パティシエも一流だ)
 庭では、ウサギが月夜を見てのんびりしているところ、3人は紅茶と菓子で詳しく話をしていた。
「なるほど、もとは神秘の出はなく、先天性と? そして縁あって、今に」
「はい」
 義明の事を聞いたとき、コレもまた運命なのですねと哀しい顔をする。
「全く反対だな。僕は、一度この力が厭だった」
「本当だ。俺の場合小さいときは何がなんだかわからなかったけどね」
 やはり、話し合えばわかる。
――良かったです。
 セレスはとても嬉しかった
 彼の膝の上によじよじ登り丸くなるウサギ。
「「猫みたいですね」」
 義明と未刀が同時に言った。
「あ」
 また同じ。
「いつも会話の中で同時に発言していますね」
 クスクス笑うセレスティ。
「何か可笑しいな」
「ああ、そうだな」
 何となく心地良かった。
 ウサギは鼻をひくひくさせて、興味深げである。
「そうだ、あの時は警戒したけどさ」
「何?」
 未刀は義明に訊く
「力抜きで、剣を交えたい」
「それは、俺も思ったところだ」
 退魔の前に剣士、戦いたくなるのだろう。
 セレスティは、其れに賛同しているようだ。
「道場があるからそこでやろうか? 今は遅いし」
「ああ、そうしよう」
 意気投合している中、
「私も見学して宜しいでしょうか?」
 セレスティが訊く。
「喜んで。セレスティさん」
 義明はセレスティに負けない優しい笑顔で答える。

「あ、セレスティ……。このお菓子うまいよ」
 と、未刀が言うと、
 ウサギが耳を立てて反応している。
「?」
「そうですか。其れは良かった。パティシエに伝えておきますね」
 ウサギを撫でながらセレスは微笑む。


 後日、長谷神社で仕合が行われた。
 セレスは見学で、天空剣師範であり、神が……。
「はぁ、今じゃもう見慣れたけど、ヤッパリ凄いなぁ」
 巫女さんはリムジンに夢中のようだ。
「この艶やかな黒! 中の豪華な……ああ!」
 悦に浸っている巫女さん。豪華な車好きという意外な面。
 こいつのことは置いておき……


「は!」
「たぁ!」
 木刀での仕合。
 単純に技での戦いだが、下手をすると命に関わる戦い。しかし、とても楽しそうだ。
 セレスティはその空気を感じ取って微笑んでいた。
「良き友だちができたようです」
「そうだな」
 セレスティは隣にいるエルハンドと話をしている。
「あいつは沢山友人やライバルがいる。これからも多く大切なモノを得ていって欲しい。孤独だったときより。あの衣蒼の少年もまた……」
「私も思います」


 心地良い木刀のぶつかり合う音が長谷神社に響いていた。


To Be Continued

■登場人物
【1883 セレスティ・カーニンガム 725 男 財閥総帥・占い師・水霊使い】

【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】
【NPC エルハンド・ダークライツ 年齢不詳 男 正当神格保持者・剣聖・大魔技】

■ライター通信
滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 Invisible Blade 1』に参加して下さりありがとうございます。
 2話目は殆どお出かけテーマのシナリオになります。友情を深めていって下さると幸いです。

 ではまたお待ちしております。