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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


■性転換クッキー■

 3月14日。
 その日、草間武彦は妹の零に言われ、「いつもお世話になっている皆」へのお返しとして、零の指示で彼女が読み上げるはしから手を動かし、クッキーを作っているところだった。
「はい、そこでバニラエッセンスを適量です」
「適量ってどのくらいなんだ、結構すごいにおいだぞこれ」
「んー、2、3滴でいいんじゃないですか?」
 適量としか書いてありませんし、と零。
 とりあえずそのくらい入れて、みかんの絞り汁をお猪口で一杯分。
「おい、ホントにそのレシピで美味しいクッキーが作れるんだろうな」
「大丈夫です! いつもご贔屓にしているパン屋さんで教えてもらった特別レシピですから、間違いありません」
 疑わしそうな武彦に、胸を張る零。
「だがなあ、材料に怪しいものが混じりすぎだと思うんだが……クッキーってのはこんなもんなのか?」
「クッキーによってはそういうものもあるんです! さ、手を動かしてください。次は海老の尻尾にどんどこ亭のカニシュウマイについているグリーンピース5粒です」
「ふむふむ……」
 材料は零が集めてきたのだから、間違いない……だろう。多分。
 武彦はそう自分を説得しながら作っていく。
 やがてオーブンで焼く段階になり、零はレシピを見直し、武彦は新聞を何気なく見ているうちにチーンと音が鳴った。
「出来た!」
 なんだかんだ言って、一番はしゃいでいる武彦である。
 二人でクッキーを皿に盛り付けると、零が味見をして「おいしいです!」と笑った。
 そして零が馴染みの全員に電話をかけ終えて、どやどやと興信所は間もなく賑やかになった。
 ───何故か、生野・英治郎(しょうの・えいじろう)もいたのだが。
 みんなが食べている中、英治郎も食べながら微笑んでいる。その胸倉を、武彦に掴んでぐらぐらと揺らされているにもかかわらず。
「だから! なんでいつもお前がここにくるんだ英治郎!」
「だぁって、我が愛しの武彦が、これまた我が愛しの妹が考えたレシピで作ったクッキーを食べ損なうなんていやですからぁ」
「語尾をのばすな気色悪い。───なぁんだとぉ!?」
 英治郎の言葉に、全員が食べる手をとめる。
 あれか。
 あの電波系占い美女であり生野英治郎の実の妹であるユッケ・英実(─・ひでみ)が考えたレシピのクッキーなのか。
「因みに材料を零さんに渡したのは、パン屋のアルバイトに扮した私です♪」
「お前なーっ!」
 ぶちっと武彦の何かが弾けた。
 そう───武彦の、シャツのボタンだった。
 そして一同はそこに、世にも不思議な武彦を見てしまうことになる。
 世にも不思議な───女性の身体に変化した武彦の姿を。
 ───美人だったが。
「おいっ! 解毒剤作れ英治郎!」
 何故か、零は体質に合わなかったのか、平気なようだ。仲間達にもちらほらと、性別が変わったり無事に変わらずにいる者とが出てきてしまっている。
 英治郎はにこにこと、
「このクッキーの名前、『性転換クッキー』っていうらしいんですよ。解毒クッキーは確か、英実の飼っている不死鳥キルクの涙コップ半分の量と、これも英実が飼っている手乗り龍ウィンザの鱗10枚が必要らしいです」
 と、無理難題を言ったのだった。




■「イタイ」たしい人たち■

「おっおい日和、しっかりしろっ! こんなところで倒れるなっ!」
 ここの食べ物と相性が悪くてよかった、と体質に合わずに性転換を免れた羽角・悠宇(はすみ・ゆう)が、同じく体質に合わずに性転換はしなかったものの、女性化した草間武彦のとびきり美人の姿を見て驚きのあまり気絶してしまった初瀬・日和(はつせ・ひより)の肩を抱き、なんとか目を覚まさせようと努力していた。
「……最悪」
 洗面所の鏡を見て、顔色悪く出てきたのは、シュライン・エマである。
「鏡を見てるだけなら、兄がいたならこんな風かなって感じだけれど、身体を見下ろすとぞわわっと……」
 今まで英治郎はシュラインの中では好感度だったらしいが、今では「なんだかもう……」と無言になってしまう。彼女はとりあえず、視覚的に知らない男性に触れられているみたいで気持ち悪いということで極力自分の身体を見ないように、武彦の服を借りて着替えをする。
「結構、性転換してしまった方が多いですね」
 何やらどこぞへ電話していたセレスティ・カーニンガムが、いつもより高い声で、口調は変わらずに傍観する。いや、彼(?)もまた女性に変化していたのだが。
「む、胸が苦しい……」
 そう言いつつ、いつも和服だったので着替える必要もなかったのだが、やはりこのままでは苦しかったらしく、こちらも女性化してしまっていた高峯・弧呂丸(たかみね・ころまる)が、そそくさと着付けをしなおす。
「学校で作ったクッキーを持ってきていましたが、こういうことになりますか……」
 と、涙している男性化してしまった海原・みなも(うなばら・みなも)の隣で、「このクッキー、美味しいなの〜」と喜んでいた藤井・蘭(ふじい・らん)は、最初武彦の姿を見て「ふに?草間さん、持ち主さんみたく胸がふくらんでるの〜」ときょとんとしていたが、自分の身体も変化し始めたのに気づいた。
「僕も、女の子になっちゃったの〜。えへv この洋服、変かな? 女の子の洋服を着るなの〜! 僕ね、『わんぴーす』がいいの〜。『わんぴーす』を着たら、このカメラで草間さんと一緒に写真を撮るのー! 皆も一緒に入って撮るのー」
 わくわくする蘭の言葉に、やっと目覚めた日和にホッとしつつも、セレスティに渡されたデジタルカメラでパシャパシャと現場(?)を撮り始めている悠宇である。
「……お前ら……緊迫感というものはないのか」
 先ほどセレスティが電話をかけて届けさせたドレスに彼と共に着替えさせられながら、無抵抗の武彦が(ただ単に脱力しているだけかもしれないが)、女声で頭に手をやる。頭痛がやまないようだ。
「草間さん、この状況で緊迫感を感じる人間なんて、この面子じゃいそうにないですよ」
 セレスティは見事な西洋美人といった感じの姿になり、ドレス姿でみなもを振り返る。
「みなもさんは着替えはどうされますか?」
「着替えたほうがいいんでしょうけど、この背丈にあうものってありませんよね。僕はこのままでいいです」
 と、しっかり一人称まで変わってしまっている、みなも。
「ワンピースなら、ちょうどありますけれど……少し大きいかもしれませんね」
 蘭の身体にあわせてみながら、ついでに人数分ドレスや何やらを配下の者に持ってこさせたセレスティ。
「着るなの〜!」
 蘭はしかし、いたく気に入ったらしい。弧呂丸に着替えさせてもらいながらの彼を見つつ、シュラインはもう一度大きくため息をついて、にこにこと本当に傍観している英治郎をじろりと睨みつける。
「解毒クッキーの材料は、その、コップ半分と鱗10枚で人数分なのよね? 人数分コップ半分や鱗10枚だと相手に気の毒だもの」
「ええ、それだけあれば充分な枚数のクッキーが作れますしね♪」
「生野さん、妹さんの英実さんて、どこにお住まいなんですか?」
 みなもが、丁寧に、何故かこの問題の「性転換クッキー」をラッピングしつつ、尋ねる。
 そうだ。肝心の英実の住所が分からねば、解毒クッキーを作れる材料という、彼女が飼っている不死鳥キルクと手乗り龍ウィンザの涙と鱗も手に入れられない。
「ああ、英実は実家から離れたところの森の中に小屋を立て、そこで電波の修行を積みつつひっそりと暮らしているようです。場所は……」
 珍しく細かくメモに書きとめている英治郎の言葉に、武彦はめまいを感じる。
「電波の修行しながらひっそりって、どんな魔女小屋なんだか」
 もっともだわ、と思いつつも口には出さない、懸命なシュライン。
「さ、これがメモです。森の中には大した妨害も罠もはっていないはずですし、大丈夫ですよ♪」
 英治郎から、武彦はメモを受け取る。
「んじゃ、ものすっごく気が進まないが、留守を頼む英治郎。零に何かしたら命はないと思え」
「分かってますってv いってらっしゃ〜い}
 ひらひらとハンカチを振って、武彦ら一行を見送る英治郎であった。



■森の中の妨害■

 今は3月でそんなに陽射しも強くないが、長く歩くだろうということを予想し、セレスティの車に全員乗り込んだ。
 途中、みなもが「花束を買っていきたい」と行ったので花屋に寄り、ついでに飲み物や道中の食べ物を買い込む。
「本当に、今日中に何とかしないと私、来年までお風呂まともに入れないんじゃないかしら」
 どこか遠い目をしながら、車窓の外、流れる景色を見つめるシュラインの気持ちも分からなくはない。まあ彼女も、武彦と一緒に変化できたことに少しはホッとしていたのだが……さりげなく悠宇のホワイトデーのお返しであるケーキ1ホール、手製のものを半分切って興信所においてきた日和はそう思う。
 もし、自分が同じ立場だったらと考えると、それこそ今度こそ気絶していつ目を覚ますか分からない、と思うのだ。
「しかしな……初瀬。何故俺が化粧なんぞせにゃならんのだ?」
 目を覚ましてから出かけるまでの間、スカートでは慣れないし転びまくっていた武彦が女性用のズボンにまたまた着替えた後、日和によって化粧を施された武彦が、納得いかない、といった風に愚痴をこぼす。
「だって、そんなに美人なのにすっぴんなんてもったいないです」
「いや、日和のほうが間違いなく美人だぞ、肌のつやだってまるで違うし!」
 すかさず、さり気なく惚気ていることに気づいていない悠宇が口を出す。
「悠宇くん……それ、私を敵に回しているのかしら?」
 ひくっと口元を引きつらせながら、シュラインの半眼に気づいた彼は、「うわ、違う、違うってシュラインさん、俺はただ日和が……」と、しどろもどろになる。
「シュラインさんだって、年をまったく感じさせない美しさですよ。化粧していなくてもその肌のつやですから」
 と、幾分慣れてきたらしい、女性そのものといった感じのおしとやかな弧呂丸が微笑む。
 メッセージカードに何か書いていたみなもが、膝の上に乗せている蘭がワンピースが珍しくてはしゃぎすぎ、ボタンが取れてしまった部分を直しつつ、「でも」と口を挟む。
「英実さん、って以前お会いしましたが、なかなか一筋縄では行きそうもないですよね。森の中だって妨害がないとは言い切れません」
「まあ、幸い森の中もこの地図通りに行くのならば、車は途中で降りなければいけませんし、どのような妨害があるかも生野さんご兄妹の考えることはよく分からないのも確かですしね」
 あんずるより生むがやすしですよ、と、どこかこの状況を楽しんでいる感じのセレスティ。
「僕、英実さんにあったことがないから、紹介してもらうなの〜」
 ひとり無邪気な蘭に、「そうね」とシュラインが頭を撫でてやる。
 そうしているうちに、やがて車では通れないところまできてしまった。
 予定通りに車を降り、一行はメモを頼りに獣道を歩いていく。
「ん……?」
 シュラインが、ふと耳を澄ました。
「どうしましたか、シュラインさん」
 セレスティが振り向くと、「いえ、今何か鳥の鳴き声が聞こえた気がして」と答え、シュラインは「あっちよ」と指差し、先導する。
 するとそこには、たくさんの烏がよってたかって泥にはまった薄汚い、見たこともない種類の鳥をいじめていた。
「かわいそう、たった一羽をあんなに大勢で」
 日和が「なんとかしてあげましょう」と言い、蘭が「僕、あの鳥さん助けるなの〜」と言ったので、セレスティは近くに水辺がないか悠宇やみなも、武彦と探しに行き、シュラインと弧呂丸、蘭と日和が残された。



「まだかな、セレスティさん達。結構時間経ちますね」
 日和が言うが、確かに水辺を探しに行っただけとも思えない。
「仕方がない、ここは私達だけであの鳥を助けて、武彦さん達を探しに行きましょう。はぐれているのかも」
 シュラインが立ち上がる。くん、とその袖が引っ張られ、見下ろすと蘭が、
「僕に任せてなの」
 と、にこにこしている。
「私もご助力致します」
 と、弧呂丸もそっと微笑む。
 日和は、悠宇に預かった、こちらはセレスティのものではなく彼の持参のカメラを握り締める。───どうやら悠宇の撮りグセがうつったようだ。
 蘭が近くの、ひときわ背の高い細い葉っぱに触れ、
「力を貸してなの」
 と許可を取ると、少しだけ切り取り、たちまちのうちに鞭上の武器に変化させてしまった。
「如何な鳥とはいえ、傷つけるのは心も痛みますから……」
 弧呂丸の言葉に、蘭は頷く。
「うん、わかってる。んと、じゃあ……鳥さんたちにきずつけないように、がんばるなの〜!」
 威嚇だけのつもりで、蘭はこちらへと烏たちの注意を鞭上にした葉でこちらに引き付ける。
 一斉に襲う矛先をシュライン達に変えた烏たちはだが、鞭上の葉でなかなか近づけない上、その間に弧呂丸が唱えていた、ごくごく軽い呪文で金縛りにあわされてしまった。
 かくして鳥は、無事にシュラインの腕に保護された。日和は無論、一部始終をシャッターチャンス逃さず、撮っていたのだが。



「水辺、ないなあ」
 悠宇がぽりぽりと頭をかく。
「泥まみれの鳥でしたから、近くに泥沼でもあると思ったんですが」
 みなもも、不思議そうである。
「どうしたんですか草間さん、不景気な顔をして」
 セレスティがふと、しかめっ面をしている武彦に気づく。
「いや……なんか、既にハメられてる気がする」
「ハメられているって、どういうことですか?」
 みなもが聞きとがめた時である。
 そこに、ぐったりとした、どう見てもファンタジーに出てくるような龍の姿の小さな動物が、倒れていた。
「うわ、お、おいどうしたんだよ」
 はたして人語を解するかは不明だったが、思わずそう言って身体を揺すってしまう悠宇。
 すると、龍はぱかりと瞳を開け、武彦、セレスティ、悠宇、みなもの順に弱々しい視線を送ると、みなもに手(翼)を伸ばすようにして、ふるふると震えた。
「……もしかしてお腹がすいてるのではないですか? ほら、みなもさん、あのクッキー興信所から持ってきていたでしょう」
 それに反応しているのでは、とセレスティは言うのだ。
「じゃ、半分あげます」
 ラッピングをほどき、クッキーを出してやる、みなも。途端に龍はかぶりつき、がつがつと一気に食べ終えてしまった。
 ようやく息をついた龍だったが、きょろきょろと辺りを見渡し、シュライン達がいた方向へと飛んでゆく。
「あっ……」
 武彦達も後を追った。



 武彦達とシュライン達が合流すると、互いに今あったことを話し、龍と鳥が行きたがる方向に向けて歩みを進めた。
「もしかして『妨害』というより、試されたのかもな」
 武彦がぽそりとつぶやくと、
「私もそんな気がするわ」
 と、シュライン。
「試されたって?」
 悠宇が尋ねると、
「つまり、英実さんは電波か何かで私達を見ていて、私達が『元に戻るに値する人間かどうか』を試していたんではないでしょうか。無論、彼女だけの定義ではあると思いますけれども」
 と、セレスティ。
「うわあ、じゃあ僕、しけんうけてたんだね! うかってるといいな〜v」
 無邪気な蘭と、
「きっと受かってますよ」
 と思わずこちらも無邪気な笑みになってしまう日和。
「しかし、その英実さんという方は、一体……」
 どのような概念の方なんだろう、という疑問を、我ながら不毛な質問と気づいて口の中にとどめる、弧呂丸。
 そして、
「小屋が見えてきました」
 と、みなもが、前方に見える小屋と───出迎えるように立っていた英実を発見したのだった。



■終わりよければ全て───?■

 英実の姿を見た途端、龍はその肩にとまり、シュラインの腕にいて既に蘭から治癒を受けていた鳥もバサバサと飛び立ち、もう片方の肩にとまった。
「ようこそ、皆様。キルクとウィンザからお話は伺いました……。皆様はキルクの涙とウィンザの鱗を与えるにふさわしい方々と……判断致しました……」
 英実が言い、やっぱり、と思う一同。
 そしてその後は蘭が丁寧に挨拶をし、「僕ね、キルクさんとウィンザさんに逢いたくてここまできたの〜」と、改めて泥だらけだったキルクと、ウィンザに微笑みを送った。
 ただ、飼い主の英実にもキルクに涙を流させたりウィンザの鱗を取ったりすることは出来ないらしく、そこからは各自の腕(?)の見せ所となった。
 一同の意見が一致していのは、ヘタなウソをつくより、素直に現状を話して協力を願い出よう、ということだったので、全員で切羽詰ったこの状況を身振り手振りでキルクとウィンザに話した。
 その頃にはそれぞれの止まり木にとまっていた彼らだったが、幸い人語を解するようだった。
 だが、どうも自分たちも意識的に涙を流したりしたことはないらしい。
 みなもは、女性に対し真摯な態度は必須、とラッピングしてきたクッキーを英実に手渡している。
 個人的に、たまねぎと塗り薬も持ってきたようだったが、たまねぎはなにぶん目にしみるので最後の手段ということになり、まず、キルクはシュラインに、彼女が用意してきた映画ネメ○スや海亀の産卵、馬の出産等感動系の映像を見せられることになり、そこへ日和が持ってきていたチェロで物悲しい音楽を弾いてみせ、弧呂丸は自分が子供の頃に読んで感動した童話の本を、こちらも用意してきていたそれを読んで聞かせた。
 同じく哀しい話を聞かせて涙を流させようとしていた欄も、ついその話に引き込まれ、胡椒を持ってきていたセレスティは暫し様子を見───弧呂丸の話は続いた。
「そしてついに、画家志望だった貧しい牛乳配達の少年と愛犬は、息絶えて天国に召され───」
 そこまで読むと、キルクはぽろりと涙を流した。
 ───蘭もだったが。
「……可哀想なの〜……」
「あーよしよし、泣くな泣くな」
 さてどうやってあの電波女、ユッケ・英実と話をしようかとまともに考えていた悠宇が、手持ち無沙汰だったこともあって蘭を宥める。
 その貴重な一粒の涙を、すかさず用意していた袋でみなもがキャッチした。
「一滴あれば、私の能力でいくらでも増やせますからね」
 とウィンク(!)を送ったのは、セレスティである。
 さて残るはウィンザである。
 こちらはチェロを引き終わった日和が遊んでいたのだが、その際に身づくろいした鱗が何枚か落ちたようだ。
 シュラインが丁寧に、
「ウィンザさん、この鱗───頂けないかしら」
 と頼んでみたものの、鱗は龍にとって大事なものらしく、ウィンザはしぶっている。
 セレスティは、椅子に腰掛けて本を読んでいる英実に愚痴をこぼしている武彦を傍目に、「私が魅了でなんとかしてみましょう」と小声で言う。
 弧呂丸が、「私にもいい案があります、大事なものでしたら───」と耳打ち。
 そして、セレスティの魅了が自分に使われていることにも気づかず、ウィンザは弧呂丸の「私の作った高峯家の御守りと物々交換といきましょう」との言葉に、こくりと頷いてしまったのだった。
 やはり身づくろいとはいえ、鱗10枚のあとは痛々しい。
 そこにみなもが、塗り薬をぬってやる。クゥ、と甘えるような声に、蘭は「いいこいいこなの」と頭を撫でてあげた。



 かくして、なんとかかんとか材料を集め、英治郎に渡して即効で解毒クッキーを作ってもらった一同なのだが。
 やはりというかなんというか、後遺症というか───暫くは、性転換した間に惚れられてしまった、今は同性の人間達に、其々が付きまとわれることになり─── 一部始終をカメラやデジタルカメラにおさめていたため、この界隈では今までで更に一番の売り上げとなったのだった。




《完》

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086/シュライン・エマ (しゅらいん・えま)/女性/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
3524/初瀬・日和 (はつせ・ひより)/女性/16歳/高校生
3525/羽角・悠宇 (はすみ・ゆう)/男性/16歳/高校生
4583/高峯・弧呂丸 (たかみね・ころまる)/男性/23歳/呪禁師
1883/セレスティ・カーニンガム (せれすてぃ・かーにんがむ)/男性/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い
2163/藤井・蘭 (ふじい・らん)/男性/1歳/藤井家の居候
1252/海原・みなも (うなばら・みなも)/女性/13歳/中学生
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■         ライター通信          ■
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こんにちは、東圭真喜愛(とうこ まきと)です。
今回、ライターとしてこの物語を書かせていただきました。また、ゆっくりと自分のペースで(皆様に御迷惑のかからない程度に)活動をしていこうと思いますので、長い目で見てやってくださると嬉しいです。また、仕事状況や近況等たまにBBS等に書いたりしていますので、OMC用のHPがこちらからリンクされてもいますので、お暇がありましたら一度覗いてやってくださいねv大したものがあるわけでもないのですが;(笑)

さて今回ですが、生野氏による草間武彦受難シリーズ、第12弾です。参加なされた皆様には御存知の通り、納品日までに執筆不可能となってしまったこの作品、来年にもう一度このサンプルをとも考えたのですが、どうしても書き終えたいという思いのもと、このような形で皆様にお届けすることになりました。テラネッツ様にもとても感謝しています。そして、お待ち頂いていた皆様には、本当に申し訳なく思っています。
今回も「ひな祭られ」同様、番外編第三弾に出てきた英治郎の妹、ユッケ・英実の作ったもの、ということになりましたが本人は一言も発さなかったような(汗)。性転換クッキーをプレゼントされた英実嬢のその後も気になるところです(笑)。

■シュライン・エマ様:いつもご参加、有り難うございますv 今回ばかりはシュラインさんの中での生野氏の点数はメチャクチャに下がったと思われます、すみません;(笑) 個人的に、シュラインさんの男装はさぞやカッコいいだろうなあと想像しながら書いておりました。きっと声もバリバリにいいだろうな、と。
■初瀬・日和様:いつもご参加、有り難うございますv 早速気絶、というところが笑えました(笑)。あの後、キルクやウィンザに一目ぼれされたかどうかは……御想像にお任せ、ということで(笑)。それにしても、ケーキ1ホールの半分の行方を書く余裕がなかったのが個人的にとても痛いです; すみません;
■羽角・悠宇様:いつもご参加、有り難うございますv 生野兄妹に対して、毎回唯一といっていいほど「まともな」対応をしてくださるので、いつもとばっちりをその分受けて頂いてしまっているような;(笑)。今回は、いつものカメラに加えてセレスティさんにも頼まれる形となってデジタルカメラも引き受けてもらいましたv
■高峯・弧呂丸様:たびたびのご参加、有り難うございますv こうして外見を見てみると、本当に普段から女性とも見紛うばかりの方なので、惜しいな、という気がしないでもなかったです(笑)。キルクに涙を流させるにあたっては、個人的にとてもツボな話でした(笑)。高峯家の御守りはウィンザは大事に持っていることでしょう。
■セレスティ・カーニンガム様:いつもご参加、有り難うございますv 弧呂丸さんに負けず劣らず、普段から女性と思っても違和感がないだろうな、と、その性質を覗いて思ってしまう東圭です(笑)。違和感なくすぐにドレスを取り寄せてしまうところなんて、さすがはセレスティさんだなあ……とある意味感動してみたり。さてその後、何人、いや何十人の男性から愛の告白を受けたことでしょう(爆)。
■藤井・蘭様:初のご参加、有難うございますv 蘭さんはとてもかわいらしい印象がありましたので、口調に気をつけつつ、行動もこの場面はこんな感じかな、と進めさせて頂きました。途中の、烏たちからキルクを助ける場面は普段の蘭さんの行動ではないかも、とちょっとビクビクしておりますが;(笑)。このたびは、如何でしたでしょうかv
■海原・みなも様:たびたびのご参加、有り難うございますv 今回一人称が変わっていたのは、みなもさんだけでしたので少し新鮮な気分で書かせて頂いておりましたv たまねぎは使うことはなかったのですが、塗り薬はずいぶんと役に立ったと思います。プレイングの最後の一行が生かすことができなくて、己の力不足をひしひしと感じている東圭です……;

「夢」と「命」、そして「愛情」はわたしの全ての作品のテーマと言っても過言ではありません。今回は主に「夢」というか、ひとときの「和み」(もっと望むならば今回は笑いも)を草間武彦氏に提供して頂きまして、皆様にも彼にもとても感謝しております(笑)。
次回受難シリーズは予定どおり、海の舞台となると思います。この作品が皆様のお手元に届く頃には、既にサンプルUPしているかもしれません(笑)。

なにはともあれ、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。
これからも魂を込めて頑張って書いていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

それでは☆
2005/8/17 Makito Touko