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<東京怪談・PCゲームノベル>


お願いBaby!


〜OP〜


嗚呼、嗚呼、嗚呼、こんな場所に来てしまって。

君は…トム・ソーヤか…それとも、アリスか?

君の好奇心が、この王宮の扉を開く鍵となったのか?
無邪気に、さまよい歩いて此処まで来たのか?
ならば、猫をも殺すの言葉通り、その身を一思いに喰らうてやろうか?


それとも…、


違うのか?
切なる願いを抱えているのか?
それは、千年の呪いに匹敵する願いなのか?


動かしてみよ。


私の心を。
君の言葉が、私の心を動かせば、或いは…。

嗚呼、或いは、この王宮で飼っている、大事な「奴隷」を貸してやらない事もない。
それとも、この孤独の王の力、奮ってやらない事もない。

さぁ! 言葉を!
私の退屈を癒す言葉を………頂戴。




本編



 目の前をふよふよと、シャボン玉のような透明の球体に入った鼠が通り過ぎていく。
 足元には、燕尾服を着た二足歩行の犬と猫が、何事かを言い合いながら立ち話をしていた。
 ここは、何だ?
 ここは、何処だ?
 思わず辺りをキョロキョロと見回し「アレ?」と首を傾げる。
「おっかしいですねぇ? えーと、さっきまでは、確かに公園を歩いてた筈なんですけど?」
 そう言いながら、ぼんやり長い長い廊下に立ち尽くす、シオン。
 そこは、無限回廊とも言うべき、長く広い廊下だった。
 廊下の両端を虹色の水が川のように流れ、花の様な匂いが何処からともなく鼻腔を擽る。
天井には凝った装飾の施された照明器具が点々と並び、柔らかな灯りを点していた。
 廊下には、無数の色んな形をした扉が並び、前を通る時に、何故か獣の鳴き声や、人のすすり泣く声、陽気な宴会を繰り広げているような騒がしい物音等、様々な音が漏れ聞こえてくる。
「…多分、ここは、公園じゃ、ないですよ…ね?」
 そう言わずがものがな事を小さく呟き、しきりに首を捻りながらもシオンはとりあえず歩き出す。
 不思議な出来事というのは、結構見慣れていたし、自分自身「結構、不思議?」な人間だったりするので、動揺するより先に体が動いてしまうのだが、そんなシオンでも「こりゃ、凄い」と感嘆せずにはいられないような光景が、彼の目の前に広がっている。
 壁に掛かっている絵の数々は、何だか、まるで向こう側に別の世界があるかの如く動いているし、廊下に展示してある品々も、やっぱりちょっと不思議っぽい。
「んー、不思議ワールドですねぇ」なんて、ちょっと嬉しげに呟けば、「ハロ〜、ハロ〜、ハロォ〜?」と、弾んだ声が天井から聞こえてきた。
「ワォ、もしかして、入ってきちゃたの? あの、入り口から?」
 見上げれば、天井に立つ派手な格好をした道化が一人。
 重力を無視し、真っ逆さまの体勢で此方を見上げながら、「あーあー、知らない、知〜らないっと!」と道化が笑う。
「入り口? いえ、私は公園を散歩してたら、何だかこんな場所に来てたんですけど…、あの、此処、何処ですか?」
 シオンが、戸惑いながらもそう聞けば、「千年王宮! 狂気の王宮!」と笑い転げ、そして「公園から、呑気者が一人やってきた! ありゃりゃ、門番の怠慢だね! これは、ご主人様に御注進しなきゃ!」と叫んで、トットットと駆け出す。
「…千年王宮?」
 小さく呟き、眉根を寄せたシオンの耳に「逃げな! 逃げな! 門番来るよ! 門番着たら、八つ裂きだ!」と、遠くからの微かな道化の声が聞こえてきた。
 門番??
 首をかしげて辺りを見回す、シオン。
 八つ裂きだなんて、物騒な事を言われたが、然し、何の気配も…。
 と、そこまで考えた時だった。
 

 銀色の光が、眼を射、何かが自分の目の前を通り過ぎるのをシオンは確かに見た。


 咄嗟に、しゃがみ込むシオン。
 自分の頭上を「シャキン」と、何だか物騒な音を立てて巨大な何かが通り過ぎるのを、感覚だけで確認する。

「な、な、何ですか?!」

 そう叫び、恐る恐る頭上を見上げたシオンの眼に、薄汚れた麻袋を被り、眼の部分にだけ真っ暗で小さな穴の開いた、上半身裸の大男の姿が目に入った。
 手には大きな鋏が握られている。
 そして、その鋏の先端は間違いなく、シオンの頭部を狙って、今突き出されようとしていた。
「っ! ぅあ!」
 息を呑むような声を挙げながらも、前にすっ飛び、何とか鋏から逃れるシオン。
 ガンッ!と、固いものを削るような音が聞こえ、振り返れば、鋏の先端が絨毯の床を抉っている。
「んーと、アレが、当たったら、ガンッって、なって、プシューッって来て、バタンキューっていうのは確実でしょうから…」
 ゆっくりと、大男がこちらに顔を向けてくるのを、ヒヤヒヤするような気持ちで眺めながらシオンは一言(これは…うん、逃げましょう!)と決心して、駆け出した。
 別に、相手に立ち向かっても良いのだが…。
「ん、んん、が、ぐ……ぐるる…」
 喉の奥で意味不明の唸り声を低く発し、だらだらと袋の隙間から、涎と思われる、よく分からない液体を流している大男と、がっぷり格闘っちゅうのは、何だろう出来れば…否、出来なくとも避けたい。
 鋏を振りかざし、「が…ぁ、ぐ、ぐぅ、…ぐる…!」と喚きつつ追っかけてくる大男に背を向け、シオンは一目散に駆け出した。
(うはぁ! こういう、ホラーゲーム見た事あるような! アレって、生存率何パーセントでしたっけぇ?)
 そんな事を考えつつ、駆けに駆けていると、その内、目の前に大きな扉が現れた。
 何も考えずに飛び込めば、真っ青な石の壁に、金銀様々な彫刻を施された広い吹き抜けのホールに出た。
 二階へと続く螺旋階段が、ホールの真ん中にあり、とりあえず登り始める。
 重い鋏を持っているせいか、フゥフゥと息を荒くしている大男とは対照的に、ヒョイヒョイと軽い足取りで登り続けるシオン。
(このまま、引き離して、どっかでやり過ごしちゃいましょう)
 そう思いながら調子に乗って、「二段飛ばし〜♪」と言いつつ、大股で階段を登って射た時だった。
 ゴロリと、何か丸い感触が足の下にあると思った瞬間、盛大に後ろにすっ転ぶシオン。
「はへ?!」
 そう間抜けな声を挙げつつも、咄嗟に後頭部を庇い、そのままゴロゴロと階段を転がり落ちる。
 そして、まぁ、アレだ。
 階段を途中まで、恐怖の大鋏男が来ている訳で、自然の摂理としてシオンは、大男の足元にぶつかって落下を止めた。
「イッテテテテ…」
 そう呻きながら起き上がろうとした、シオンの顔のすぐ横の床に、ジャキンと音を立てて鋏が突き刺さる。
(ヤッバッ! こうなったら…)
 日頃、非暴力主義で生きているシオンが、やむえず己の力を解放しようと手袋に手を掛けた時だった。
「ジャック!!」
 階段の上から、堂に入った、迫力のある女の声が聞こえてきた。
「ジャック! てめぇ、んな所で何してやがんだ!」
 ドカドカと階段を駆け下りてくるその足には便所サンダルが穿かれていて、見上げれば木刀を担いだピンクのジャージ姿の竜子がいる。  
「お、竜さん?」
 ポカンとした声でそう呟けば、相変わらずの濃い化粧を施した顔を緩ませ「よぉ、シオン!」と気さくに声を掛けられた。
「何で、此処に?」
「そりゃ、おめぇ、此処が千年王宮だからに決まってんだろぉが」
 竜子の言葉に「ああ、そういえば…」と、彼女と一緒に東京内を黒須から逃げ回った記憶を掘り起こす。
 その時確かに「千年王宮」という場所の話が出ていたような気がする。
 そうか、此処が、あの時の…、とぼんやり感慨に耽るシオンを余所に「オーッス! シオンさん、おっひっさぁ〜♪」と明るい声と、「鵺、はしゃぎすぎ…。 シオンさん、命からがらのピンチを脱したばかりなんだから、もうちょっと気遣ってあげなさいよ」という冷静な声、それから「クヒッ…クッ…クククッ…ヒッ、ヒヒヒヒッ」という引き攣ったような笑い声が聞こえてくる。
 見上げれば、見知った少女二人と、初めてお目にかかる黒髪の人形めいた少女が一人、階段の上に立っていた。
「えーと?」
 キョトンとした表情のまま、「鵺? いずみ? どうして、此処に」と言えば「あたしは、ウラよ! ウラ・フェンツレン!」と叫び、「さぁ、言い直して! 質問を、頂戴?」を優雅な笑みを浮かべた。
 思わず、その訳の分らない迫力に押され、これまた訳の分からない要求を呑み「鵺と、いずみと、それからウラは、どうして此処に?」と言いなおすシオン。
 するとウラは満足げに頷いて、「馬鹿ね。 決まってるじゃない? 退屈だからよ! さ、お茶会が始まるのよ? いらっしゃい」と告げた。
 何が何だか分からない。
 大体、いきなりこんな意味不明な場所に迷い込み、おかしなピエロに会って、気味の悪い大男に鋏を振り回しながら追い掛け回されたのだ。
 その上、止めを刺すように、自分がさっき何を踏んで転んだのだろうと、目をやれば、そこにはバレリーナの衣装、チュチュを着た少女の肢体が、ゴロリ、ゴロリと転がって階段を降りているというか、落ちている。
 だが、何より異常なのは、その肢体には足も首から上も無い事で、それなのに、その身体はゴロリゴロリと不気味に転がり続けていた。
 きっとアレを踏んだんだなぁと呆然としているうちに、その少女の肢体がシオンの隣を擦り抜け、転がっていく。
「エリザ? 頭なら、中庭で歌っているのを、見かけたぜ?」
 そう竜子は、肢体に声を掛け、それから、「ったく、今日は千客万来だな」と頭を掻いた。
 ウラが、「クヒヒッ」と笑い、「お茶は、大勢の人間で頂いた方が楽しくてよ? ほら、そこのお前も、とっとと登っていらっしゃいな。 あたしの手作り絶品ケーキを、食わせてあげるわ」と、高慢な口調でシオンに言う。
 だが、シオンは、そのウラの口調なんかよりも「絶品ケーキ」という言葉に反応して、 「はい! じゃあ、お邪魔します」と、即答していた。
 呆れたように眼を瞬かせ、「あんた、ほんと、適応力高いトコ変わってねぇなぁ」と竜子が呟き、それから大男に「ジャック、持ち場に戻れ。 ベイブは、どうせ全てお見通しなんだ。 証拠隠滅だなんて、ケチ臭い真似すんじゃねぇよ」と、叱るかのような声で言う。
 大男は、「ぐぅぐぐぅぅ…」と唸って首を振り、シオンを、丸い指で指し示した。
「ああ、良いんだよ。 コイツは、あたいのダチだ」
 竜子の言葉に、残念そうに「うぐぅぅぐぐぐ…」と一つ鳴いた後、彼はのそりのそりとその場を立ち去った。
「すっごいですね、お竜さん」
 あんな大男に、言う事を聞かせる事が出来た竜子を素直に褒めたシオンだが、竜子は苦笑しながら首を振り「そりゃ、あたいがベイブから鍵を貰ってる『奴隷』だかんね。 元々の、王宮付きの奴らは、言う事聞かざる得ないんだ。 あたい自身が凄い訳じゃないよ」と言い、「ま、折角来てくれたんだから、一緒に茶飲もうぜ?」とシオンの手を引っ張って起してくれた。



「公園から?」
「ええ。 お腹空いたなって思ってふらふらしてたら、何だかこういう場所に来ちゃってて…」
 そう何故、自分が此処に来たのかを説明するシオンに、鵺が、ペロリと舌を出して「うん、それね、多分、鵺のせい」と告げる。
「え?」
 そう短く問い返せば、「鵺ね、ある用事があって、此処に来る事になったんだけど、その時に、ベーやんに公園に入り口を開けて貰ったの。 で、多分、その入り口が閉じない内に、シオンさんが迷い込んじゃったんだと思う」と、鵺が言い「でも、ほら、此処ってかなり楽しいからさ、来れて良かったね!」と、先程までの、何処のホラーゲームだよと言うべき鬼ごっこを目にした上での呑気発言に「うーん、そうなのかなぁ?」と首を傾げつつも、うっかり同意してしまうシオン。
「いや、そこは、ちゃんと否定しましょうよ」といずみが言うのだが、「あら? 今から、あたしのケーキを食べれるのよ? 全ての嫌な事が、その幸運で全部帳消しだわ!」とウラが笑い、黒いビロードで出来た美しいスカートを花のように広げてクルリと回った。
 こうやってみると、いずみ、鵺、ウラと三者三様の美少女で眺めている分には、ほんと溜息モノの眼の保養になるのだが、いかんせん口を開けば、こちらも三者三様の曲者具合で、シオンはいらぬ事を言わぬよう気をつけなきゃなぁと気を引き締める。
 正直、口喧嘩になったら負ける気満々である。
 この三人に囲まれ、罵詈雑言を浴びせられたら、どんな人間だって涙目にならずにはいられないだろうと確信していると、竜子が「ほら、嬢ちゃん方、騒いでっと迷子になんぞ」と言いながら、ウラと鵺の手を掴んで歩き出した。
 シオンも、慌てていずみの手に手を伸ばせば、「私は、迷子になんてなりません」と冷たく言われ、あまつさえ「あ、でも、シオンさんが、迷子になるか…」と小さく呟いて「やっぱ繋いで下さい」と手を伸ばしてきた。
「うう。 いずみ、私の事、何だと思ってるんです?」と眉を下げて問えば、無表情で「大きな子供」と告げられる。
 いずみの言葉を聞いて、鵺とウラが一緒に笑うと、「大人はみんな、大きな子供よ?」とウラが言い、鵺は鵺で「特に男はね」とこまっしゃくれた事を言ってくれた。



食堂という場所に案内され、シオンはこれまた仰け反る事になる。
何此処? 何? 何?
とてつもなく広い部屋にどんと置かれた長い白いクロスの掛かったテーブル。 そこにどんな宴会でも開けそうな位たくさんの椅子が並べられている。
 シャンデリアや、内装の品々も、豪奢で、でもやっぱり不思議で、テーブルの上にある銀の燭台は、シオン達が部屋に入った途端に火が点っていた。
 テーブルには、大きなお皿にてんこもりにされたケーキが乗っている。
 だが、ケーキには、上から丸々生クリームが掛けられていて、何が何だかというか、どういう種類のケーキかすら判別できない状態になっていた。


「………」


 黙りこくったまま、ケーキを見つめる四名。
 然し、ウラは「クヒヒヒッ」と嬉しげに笑い、「さぁ、たらふく食いなさいな! すべて、あたしの手作りよ? 美味しすぎて、ポックリ逝っちゃっても、責任はもたないけどね」と言いながら、勝手に席に座る。
(えーと、食べても大丈夫なのかな?)とドキドキしつつも、甘い匂いと空腹に勝てないシオンが、ヒョイと手を伸ばし、クリームの塊の中から、フォークで一切れケーキを掬い上げ、机に並んでいた取り皿に取ると、ぱくりと口の中に放り込んだ。
「……美味しい」
 小さく呟き、再び、ケーキ皿にフォークを伸ばすシオン。
 そんな彼の様子を見て、見た目に反して味は良いらしいと悟った、鵺やいずみ、竜子も席に座り、ケーキに手を伸ばす。
「うん。 美味い。 ウラ、これ、美味ぇよ!」
 竜子がそう言うのを、「フフン」と笑って「当然でしょ? 他に、どんな味がするって言うの?」とウラが言えば、鵺が正直丸出しの声で「見た目は、白いアメーバって言うか、細胞分裂間近?みたいな、どう見たって、コレ食べ物じゃないよ感があるけど、味は美味しいね」と答えた。
 当然というか、ムッとした表情をして、「鵺なんて、オーブン一つ満足に操れなかったくせに!」とウラが言えば、鵺は「だぁって、鵺は、オーブンなんて使えなくても、幇禍君が、美味しい料理作ってくれるもーん」と言い返す。
 しかし、いずみが「でも、幇禍さんとは喧嘩したんでしょ? さっき、『あんな出べその事なんて、もぉ知らない!』って言ってたじゃない」と冷静な声で、突っ込み、シオンはとりあえず(また、喧嘩したんだ)と、幇禍の鵺への献身的な愛を思い出して、ちょっと、彼に同情したりした。
 だが、その話の流れの中で、もっともどうでも良いと思われる単語に引っ掛かり、竜子は「え? 幇禍って出べそなのか?」と鵺に聞いている。
 突然ウラが甲高い声で笑い、「あたしは、デリクと喧嘩なんか一度もした事はないわ? だって、あたしは、愛されてるんですもの」と勝ち誇ったように言い放った。
 今度は、鵺が、むっとして「違うもん! 鵺だって愛されてるもん。 婚約指輪だってほら!」と、キラキラ光る赤い石のついた指輪を見せ(スタールビーという宝石なのだが、勿論シオンには分らなかった)「貰ってるし〜、喧嘩だって、鵺が我儘言ってるだけだもん」と、「じゃ、やっぱり自分が悪いんじゃん」というような事を自慢げに宣言する。
 ウラは美しい髪を、白い指先で梳くと「ククッ、でもね、出べその婚約者っていうのも、何だか間抜けよね。 デリクは体中の、何処かしこも綺麗よ?」と言った。
「幇禍君だって綺麗だもん。 美形だもん。 渋谷で、よくモデルになりませんか?ってスカウトされてるもん」
「はいはい。 でも、出べそなんでしょ?」
「誰が、そんな事言ったのよ! 幇禍君、出べそじゃないもん!」
(あ、やっぱり違うんだ)
 少女二人の遣り取りを余所にケーキをパクつくシオンは、いずみが静かに「自分で言ったんじゃない」というのを聞きながら、クリームの塊の中から、紅茶シフォンを掬い上げる。
 いつの間にか手元には、淹れ立ての紅茶が白い陶器のテーカップに注がれ良い匂いを立ち上らせており、喉を鳴らして、熱い紅茶を飲み下す。
 いずみも、美しい手付きでケーキを口に運びながら、「男の事で喧嘩出来るって、微笑ましくて良いですね」と、大人びた事を言い、竜子が「まぁ、喧嘩できる程、良い男に惚れてんのなら、それに越したこたぁねぇな」と、相手が子供であるという事を忘れているような言葉を返していた。
 鵺とウラがそんな風に一通り言いあった後、竜子がとりなすように「ほら、甘いもん食ってる時は、喧嘩しねぇ、喧嘩しねぇ」と言い、「鵺。 お前ぇ、クッキー持ってきたとか言ってたじゃねぇか。 アレも食っちまおうぜ?」と声を掛ける。
 鵺はピョコンと頷くと、「鵺のパパのクッキーは、見た目は満点、味は30点なんだから!」と、「えーと、それって、むしろ、駄目なんじゃ…」というような一言を言って、竜子と連れ立って食堂の外に出て行った。
 ウラが苛立ちを沈めようとするかのように、猛烈な勢いでケーキを口の中に放り込み始めるのを、シオンが呆然と見守っていると、いずみが、どうしてこうも、この子は冷静でいられるのだろう?と首を傾げたくなるような口調で「ほら、そんなに急いで食べると、喉に詰まるわよ。 それに…」と口を噤み、強引に自分の方にウラの顔を向けさせると、クリームだらけの唇をテーブルにおいてあった白いナプキンで拭う。
「こんなにクリーム一杯つけて」
 唇を尖らせ、されるがままになってたウラは、いずみが唇を拭き終わるのを待って、「あたしも、指輪欲しい」とポツリと呟いた。
「デリクさんって言う人から?」
 いずみが問えば首を振り、「誰でも良いの。 指輪が欲しいわ。 男から貰うの。 重大な事を忘れていた気分よ。 だって、一個も指輪を貰った事が無いなんて。 女としては、悲しすぎる」とウラが答える。
 シオンは、大袈裟な言いまわしだなぁと思いながら、何かなかっただろうか?と、ポケットを探り、それから指先に固い感触があったのを確認すると、ニッコリと微笑んだ。
 そこにあるのは、夜店なんかで売っている、玩具の安っぽい指輪。
 先程、鵺が嵌めていた指輪なんか相手にならない位の、ちゃちな指輪である。
 どうして、こんな物を持っているのかというと、先日、ちょっとした祭りの夜店のバイトをし、そこがたまたま玩具屋で、売れ残りの指輪を幾つか貰えたというだけの話だった。
 ちゃちいながらも、何だかその指輪が可愛くて、近頃ポケットに放り込んで過ごしていたのが幸いした。
「お姫様、どうぞお手を」
 そんな風に気取った声を出しながら、そっとウラの手を取り、玩具の指輪を嵌めてやる。
「…宝石じゃないですけど、許してくれますか?」
 そう首を傾げれば、ウラは、マジマジとガラス玉の嵌った指輪を眺めた後、「これは、あたしへの貢物って事?」とシオンに聞いてくる。
シオンは、笑顔を浮かべ「勿論です、お姫様」と明快に答えた。
ウラは、見る見る内に、表情を溶かし、甘い綿菓子のように、にっこり笑って「許すわ」と満足げに答える。
「じゃ、そちらのお姫様にも」と言いつつ、シオンはいずみの手を取った。
 一瞬恥ずかしげに引っ込めかけたいずみだが、シオンが柔らかく笑いかければ、頬を染め、ビーズの指輪を嵌めて貰うと、「…シオンさん、モテるでしょ?」と、俯き、ボソボソとした声で言う。
 突如、そんないずみの後ろで「俺ぁ、そんな食えねぇもんよりも、こっちの方が嬉しいんだがなぁ?」と言いつつ、ひょいと包帯だらけの手を伸ばす者がいた。
 三人が一斉に目を見開き、振り返れば、包帯を体中に包帯を巻いている青年が、もぐもぐとケーキを食みながら立っている。
「…お前、失礼よ? 何も言わずにあたしのケーキを食べるだなんて」
 ウラがそう言えば「…いただきます」と口の中のものがなくなってから、青年が告げた。
(いや…遅いし…)
 思わず胸中で突っ込むシオン。
 それから、「新座さんも、迷い込んじゃったんですか?」と問うた。
 新座。
 初見ならば、この王宮の住人だろうと考えて疑わない位、風変わりな青年だが、何度か興信所の仕事で顔を合わせているので、シオンはちゃんと覚えていた。
 だが、新座は目を見開き「あんた、よく俺の名前知ってんな。 エスパー? もしかして、エスパー? ちょっと待って、テレパシー受け取る準備するから」と、何故か両こめかみに中指と人差し指をピンと伸ばしてあて、目をぎゅっと瞑ると、「ハイ、どうぞ!」と掛け声を掛ける。
 困惑するシオン。
 そんなシオンを見上げて、堪えきれないという風に「クヒヒヒッ」と笑うウラ。
 いずみに至っては、こんな馬鹿な遣り取りには付き合ってらんないという風に紅茶を啜っている。 
 そうこうしている内に、クッキーの入った可愛い花柄プリントの紙袋を抱えた鵺達が戻ってきた。
「このクッキー…確かに、見た目は良いが30点って感じだぞ…」なんて、言いながら、既につまみ食いをしたらしい竜子が、明るい声で言い、それから新座に目を留め「また、新しい客か」と言う。
 すると新座は「客? 客か。 でも、客は、招かれないとなれない訳で、俺は、ここの城の王様だっていう奴から、追い出されちまったからなぁ…」と首を捻り「客じゃないかも」と竜子に、少し不安げに言った。
 それから、「なぁ、お前、金色だし、この城の住人の匂いがする。 もしかしたら女王か?」と問いかける。
 竜子は、ポリポリと頬を掻くと「ま、そういう風に此処の連中には呼ばれてるな」と答え「ベイブに探せって言われたのか」と聞いた。
「ああ。 女王か、ジャバウォッキーに出して貰えって。 でも、二人を見つける前に、死なないように気を付けろとも言われたから、とりあえず気をつけて来た」
「ベイブの意地悪だ。 自分で出してやりゃあ良いのに、時々、こうやって楽しみやがる。 ほんと、性格悪いよ。 それにしてもあんた、あたいに会えて運が良いよ。 この城、何処がどうなって、どんだけ広いか分りゃしねぇかんな。 あたいなんて何度迷った事か。 一日中迷い続けた時なんか、誠に見つけて貰わなきゃ、飢え死にするトコだった」としみじみ言う竜子に、いずみが「や、それは、ただ、竜子さんが方向音痴なだけでは」と小さく呟く。
 鵺が、そんな二人の会話に嘴を突っ込むように「やっほ。 ニィル君。 元気ー?ってか、こんな場所で会うなんて、超奇遇じゃない?」と、彼女も新座と知り合いらしく声を掛け、新座が嬉しげに「ガー!」と声をあげると「鵺! お前もか! どうした? しかも、何か美味そうな物持ってる!」と言いながら、クッキーの入った紙袋に手を突っ込む。
 何枚かを一気に噛み砕き、飲み下した後、先程ウラに叱られたのを思い出したのだろう。
「いただきます。 でも、何か、あんま美味くない…」と神妙な声で告げた。
(だから、遅いし…)
 再び胸中で突っ込めど、新座は、勿論そんなシオンの気持ちなど知るはずもなく、よっぽど腹が減っているのか、勝手に茶をポットから直接飲み、再びケーキへと手を伸ばす。
 シオンも、コレは負けていられないと、ケーキを皿に取りながら、「賑やかになってきたなぁ」と、少し楽しくなってきている自分を見つけた。
 そんな浮き立つような雰囲気の中で、鵺は、先程の喧嘩の事なんかコロリと忘れてしまっているのだろう。
「このクッキー、ウラのケーキのクリームを付けて食べれば、何とか味誤魔化せるかも!」と天真爛漫な声で言いながら袋の口をウラに向け、ウラも、シオンの指輪効果なのか、機嫌良く、「アラ! ホントに、見た目は美味しそうだ事!」と言い、袋の中に手を伸ばした。 
  

そうやって暫くお茶を楽しみ、鵺が「こうなったら、アレも持ってこよ!」と言いながら、何かを取りに食堂に向い、シオンが竜子から「良いか? ステゴロってのはな、最後は気合の勝負なんだ。 殴り合えばどっちも痛ぇよ。 激しく動きゃあ、そりゃ疲れるさ。 そういうのを如何に気合と根性で押さえつけるかってのがな…」と、ヤンキー講座を受けている時だった。


ジリリリリリリリリリリリリ!


 耳をつんざくような非常ベルの音が、食堂内に響き渡り、それから食堂にある椅子やらテーブルやらが一斉に暴れだした。
 それは、皆が座っている椅子も例外ではなく、激しく動く椅子に皆振り落とされ、床に転ぶ。
「! な、っ、ななな、なっ何があったって言うんですっ!」
 シオンがそう叫べば、尻をさすりながら竜子が立ち上がり、「まじぃな。 面倒臭い事が起こりやがった」と唸った。
「面倒臭いこと?」
 いずみが首を傾げて問いかける。
「ベイブが、発作を起しやがった。 アレは、誠がいねぇと止められねぇんだ。 畜生。 あいつ、何処行きやがってんだよ!」
 そう苛立たしげに竜子が言い、それから、食堂にいる皆に「此処も、あんまり安全じゃねぇ。 悪いがベイブのいる、玉座に一緒に来て貰えねぇか?」と、告げる。
 否応も無く頷いたシオンやいずみと、明らかにこれから何が起こるのかに期待してワクワクした表情を浮かべた新座と、ウラは、食堂の扉から飛び出し駆け出した竜子の後を追って走り出した。
 そんなシオン達の頭上をいつの間にか現れた道化が「女王様に御注進! 女王様に御注進! 呼んでるよ! ベイブが、あんたを呼んでるよ! 早く! 早く! 早く行かなきゃ皆殺しだ!」と、楽しげに竜子に喚き、くるりとトンボ返りを天井で決める。
「黙れ! てめぇは、城のどっかにいるかもしんねぇ、誠でも探せ! ベイブが壊れたら、てめぇだって、死んじまうんだろうがよぉ!」
 そう、竜子が怒鳴れば「おお怖い!」と道化はわざとらしい仕草で身を竦め、それから煙のように消えた。
 壁に掛かっている人物画達が狂気じみた声で「ベイブ! ベイブ! 早くあやして! 皆殺しだよ! 皆殺しだよ!」と、叫んでいる。
「くっそ! 何時になく余裕がねぇじゃねぇかよぉ!」
 竜子がそう、意味の分からない事を吼えた。
シオンは、いずみとウラの手を引き、新座と並んで竜子の後を必死で追う。
 そして、長い長い廊下の果てにある、大きな鉄の扉を、竜子が蹴り飛ばすようにして押し開いた。
 

リリパット・ベイブ。
この城の主。
久方ぶりの邂逅は、かなり酷い有様としか言いようがなかった。
「あ、ああ、あっ、来る! クるんだ! ま、誠! 何処? 何処にイる? 竜子! 竜子、来て! 魔女が、また、ま、魔女が、あ、あ、寒い、寒い、寒い…」
 錯乱したように叫ぶベイブが、玉座にいる。
 広い、広い部屋だった。
 虚ろな、凍えるほどに虚ろな空間。
 そこに、ベイブと何故か、美少年めいた美貌の少女、蒼王・翼に、見覚えのない金髪の美丈夫、そして鵺が喧嘩したと言う魏・幇禍がいた。
 自分だけでなく、コレだけの人間が迷い込んでいるなんてと、ちょっと息を呑むシオン。
 この王宮には、他にも迷い込んだまま、此処まで辿り着けず、ずっと迷ってる人もいるんじゃないかなんて怖い想像をしてみる。
玉座に蹲ったベイブの周辺に、不思議な銀色の文様が浮び上がっていた。
 その銀色の文様内ではバチバチと電気が弾けるような音と共に、銀色の稲妻のような光が走っていた。
 大剣に縋るように、しがみつく様にしていたベイブが顔を上げ、「誠? 竜子? 早く、は、やく、来ないと、つ、かまる。 つ、かまったら、壊れる。 こ、われ、る、割れる。割れて、あ、また、寒い…た、すけて、助けて…」と呟きながら、泣きそうに歪められた顔で当たりを見回す。
 まるで、迷子の子供のような、それは酷く弱弱しい姿だった。
 初めて会った時の、黒須を大剣で突き刺しながら辺りを睥睨した、あの威厳に溢れる印象は何処にもない。
 ウラが、「クヒッ」と笑って「まぁ? さっきの様子とは随分違うわ? ま、どっちにしろシケてるって事は変わりないけど」と呟いた。
 新座も「ありゃりゃ? 同じ奴だとは思えないぞ? 腹でも痛いのか?」と見当はずれなことを言う。
「り、竜子さん…アレは?」
 そうシオンが問えば、竜子が端的に「発作だよ」と答える。
「壊れる…ネ。 魔女の呪とハ、かくも恐ろシイ。 差し詰め、この赤子は、その魔女を知らず虜にしてしまった、不運な時の迷子に過ぎないと言う訳、でスカ」
 唐突に響く声にビクリと肩を揺らし、シオンは声の方向へと視線を向ける。
先程は気付かなかったが、ベイブの側に気配なく立つ男の、ダークブロンドの髪が揺れ、群青色の目が、細く三日月の形に歪んだ。
 デリク・オーロフ。
 興信所絡みの事件で一度顔を合わせた事がある。
 何だか油断ならないような印象のある、張り付いたような笑顔をした男だった。
「何て、興味深イ!」
 そう感極まったように言うデリクの側に、ウラが軽い足音を立てて走っていった。
「デリク!」
 嬉しげに名を呼ばれ「おヤ? 私の姫君。 こんな所にお出でになられて、どうなさったんでス?」と言いながら、壊れ物を扱うような手付きで、その身体を抱きしめ、そして、笑う。
 そうか。
 ウラの言っていた「デリク」という名に聞き覚えがあるような気がしたが、彼の事であったのか。
 世間って広いようで狭いなぁと考えていると、いつの間にか、背後には先程のお茶会メンバーに加えて、何かを取りに行った筈の鵺やシュライン・エマ、それに黒須まで来ていた。
 竜子が、黒須の姿を見つけ、「ったく、ヒヤヒヤさせたがって」と呟くと、少し安心したような表情を見せる。
「ウラ。 御覧なさイ。 アレこそ、究極の愛の形デス」
 デリクが、ウラを抱いたまま、そうベイブを顎で指し示した瞬間、バチッ!と音がして、彼の足元に銀色の光が飛んだ。 それを、ウラを抱えたまま、ヒョイと身軽に避け「危なイ、危なイ。 赤子が強力な力を持つと、加減を知らないカラ、面倒ダ」と飄々とした声で言う。
 黒須が、ずいと進み出て、「お前、何かやったのか?」と問いかけた。
 だがその声に怒りはない。
 ただ、本当に尋ねているだけという声音。
「何カ? 何カ?とは、何でス? ああ、そうダ、そうダ。 あなた、初めて、お会いしまスネ。 私、デリク・オーロフと申しまス。 以後お見知りおきヲ」
 そう自己紹介したあと、優雅に一礼し、それから首を傾げてじっと、黒須を見る。
「あなたも、随分、面白い身体ダ」
 そう言った後、「そして、此処は、面白い場所ダ。 もうちょっと、知りたい事もあるのだけれド…」と言いながら辺りを見回し、それから腕の中のウラを見下ろす。
「お姫様もいらっしゃる事だし、そろそろ帰らねバ」
 デリクの言葉に、ウラはむくれ「折角、女王様のお茶会をしていたのに、全部台無し! デリク、この罪は、『気狂いアリス』のバニラアイスでしか償えなくってよ?」と言う。
「仰せのままニ」とデリクは甘い声で言い、それから黒須に視線を戻した。
「出口、私一人でしたら、無理矢理作って外に出るのですガ、この子がいるので、余り無理はしたくないデス。 この、赤子、宥める事が出来ますカ?」
 そう問われ、辺りをぐるりと見回す黒須。
そして、黒須はこの上なく、面倒臭そうに顔を歪め、「何で、こんなに、いるんだよ」と呻くと、そして、「とりあえず、危ないから、ちょっと離れろ。 鵺といずみ…は、外出てた方が良いかもしんねぇ。 そこのウラとかいうお嬢ちゃんも、兄ちゃん部屋の外に出してやんな」と言う。
 何かショッキングな出来事が起こるのだろうか?
 ならば、確かに、子供達は外に出してあげた方が良い。
 シオンはそう考えるが、鵺がまず、頑迷な調子で「やだ。 見る」と首を振り、いずみも「子供だからって、お気遣い頂かなくても結構です。 ちゃんと見届けさせて下さい。 大体、貴方の正体であれだけ驚かせて頂いたんです。 もう、何が起こったって平気です」と強い表情で告げた。
ウラに至っては、黒須の言葉など全く聞いていないのだろう。
 デリクの腕の中に納まって、惑っているベイブの姿を興味深げに見つめている。
(うう、大丈夫かなぁ…)
 そう、不安に思いながら、「…ま、こういう場所でお茶会だなんて呑気な事が出来る子達だもの、それこそ、十八禁にでも引っ掛からなきゃ大丈夫じゃない?」とエマが言うので、「そうですね。 もし引っ掛かっても、ちゃんとOMCでチェックしてくれるし」とシオンも身も蓋もない事を言ってしまった。
 黒須は、もう、どうにでもしてくれというような憔悴した顔をし、「で、何でこうなったんだ? 何を切っ欠にしたんだ?」と問えば、デリクはニッコリと笑って「魔女」と一言答えた。
 その瞬間、ベイブを囲む銀色の文様がバチバチと音を立てて一層鮮やかに輝き、王宮の揺れが激しくなる。
 ビクンとベイブが一度のけぞり、口を大きく開けると「あああぁぁぁぁああっ! こ、わい、怖い、怖い、あ、こ、ろして、殺して、死にたい、終わりたい、壊して、こわ、して…りゅ、うこ……まこ…と…、ドこ? 何処? 助けて! 何処!!」と、叫び、惑う。
 そんなベイブになんとも言えない視線を送り、それから「知ってるのか?」 黒須が問えば「一応、魔術師ですかラ」とデリクが答え、「騎士団内で起きたあの悲劇については、書物でとはいえ、知識として有しておりマス。 ただ、こうやって、実際に御目文字出来るだなんて、想像もしていなかったですケドネ」と、言葉を続ける。
「然し、素晴らしイ。 千年の呪い。 まさか、本当に有効であるトハ。 この奇跡の目の当たりにして、魔術師としては、捕獲して、どういう人体構造になっているのか、解体でもしてみたいところですガ…」
 そう言いながら、本心を見せない笑みを益々深める、「ジャバウォッキー、許してくれませんヨネ?」デリクが聞き、黒須が「本当に、コイツを殺せるってんなら、何処へだって、連れてってやれよ。 本人もそれを望んでる」と、答える。
「死にたい。 終わりたい。 解放されたい。 そればっかりで、たかが人間の分際で二百年以上も生きてんだ。 誰でもいいや。 コイツ殺せるなら、殺してくれよと頼みたいとこだけどな…」
 そして、一つ溜息を吐く。
「期待持たせるだけ、持たせて、結局、無理でしたって事になるんだったら、許してやれや。 コイツの絶望は、既に今で限界なんだ。 これ以上は酷過ぎる」
 デリクは、笑みを深め「時の魔女の最期の呪に対抗出来る程の、魔術構造を発見いたしましたら、是非、再び此処を訪れさせて頂きマス」と答える。
「ま、せいぜい期待させて貰うわ」
 黒須は気のない声で答え、それから竜子に目を向けた。
 竜子は「お前、ほんっと、何処行ってたんだよ。 どうせ、しょうもない飲み屋とか、競馬とか、そういうのなんだろうけどよ、マジで何も言わず出かける癖止めろよな」とブツブツ言いつつ、黒須の隣に立つ。
「どうだ? イケそうか?」
「んー? ヤバくね? いつも以上にはしゃいじゃってる」
「でも、放っておけば、ここら辺一帯それこそ歪むぞ? そうなると、『道』が変わるし、鍵持ってねぇ、コイツらを無事出してやれる保証がなくなる」
 何やら、怖い事を相談しあう二人を見てシオンは思わず青ざめる。
(『無事出してやれる保証がない』って、じゃあ、一生此処暮らしですか?! そ、それは嫌だなぁ…) 
そう思いながら、ふと鵺達に視線を向けてみるが、喧嘩中だったとかいう幇禍が鵺に会えて嬉しいのか、何やら楽しげに彼女と話しており、鵺は鵺で幇禍や、知り合いだったらしい新座・クレイボーンと賑やかに語らっていて、何やらそこら辺一体だけ、この緊迫した空気とは全く別種の空気になってしまっている。
(つ、強者揃い…)
 そうふらつきかければ、「時間が掛かり過ぎた。 せめて、あの結界内にもう少し近づければ…」という竜子の声が聞こえてきた。
 つまり、ベイブに近づけないから、彼の発作を止める事が出来ないという訳か。
 とするなら、あの銀の結界を誰かが…。
「…やってやる」
 それは、ドキリとする程に凛とした声だった。
「あの、銀の結界の威力を弱めれば良いのだろう? やってやる」
 そう告げ、金髪の美丈夫が一歩進み出る。
 翼が、ついと彼を見上げ「出来る?」と聞けば「構成されている術式こそは違うが、接点を見つけ出し絡ませれば何とかなるだろう」と美丈夫が冷静な声で答える。
(何か、力を持ってる人なんでしょうか?)
 そう興味津々で見守るシオン。
「何より、俺は、この糞みてぇな場所から、とっとと出ちまいたい。 おい、そこの、二人」
 そう言いながら、美丈夫が、ギッと竜子と黒須をねめつける。
「誰だか知んねぇが、その結界の威力は抑えてやる。 それで、この事態の収拾を付けられんだろうな?」
 そう言われ、肩を竦めると、黒須は「ホントに、そんな器用な事やってのけてくれるってんなら、鋭意努力するよ」と答え、竜子は「任せときな!」と請け負った。
 信用出来ないという風に「フン」一つ鼻を鳴らし、それからおもむろに、彼は懐から銃を取り出す。
 シオンがぎょっとする間もなく、美丈夫はその銃弾を、ベイブの周りで閃光を放つ結界へと打ち込んだ。
 耳をつんざく音が、ホール内に響き渡る。
 そして、間を置かず、美丈夫は複雑な印を両手で組み、術の詠唱に入った。
(陰陽術!)
 何度か聞いた事のある、抑揚のない歌うような詠唱。
 無愛想な様子からは想像もつかないほど、耳に心地良い声での、その真言に思わず、シオンはうっとりしかける。
 銀の文様の上に、金色の梵字で描かれた別の文様が浮び上がっていた。
 銀と金の光が絡まりあい、一瞬眩いばかりの光を放つと、その銀の結界が放っていた稲妻のような光が収まっていた。
「長くは持たん。 とっとと行け」
 美丈夫が、目を閉じ、小さく術を唱え続けながらも、そう早口で二人に告げる。
「どぉも。 あんた、かなり良い腕してんな」
 そう、黒須が言った後、竜子と黒須は一気にベイブに近付き、竜子は前から、黒須は後ろに回り込んでベイブの身体を抱きしめた。


「お静まり下さいませご主人様」


 竜子が、ベイブの耳元に囁く。
「お静まり下さいませご主人様」



「魔女は来ませぬ。 魔女は、来ませぬ。 だって、ほら…」



 竜子が、静かな顔で天を指差す。



「貴方様が、あの魔女めを殺したのだから」



 思わず、その場にいた人間皆。
 黒須と、竜子を覗く全ての人間が空を仰ぎ、そして息を呑んだ。



いた。


玉座の天井にいた。



女が、目を閉じ、手と足に杭を打たれて天井に張り付けにされていた。
両手を開き、足を揃え、胸を深々と一本の槍を突き刺して、女がいた。


「御覧下さい。 あれが、時の魔女に御座います」
 


デリクが、震える声で「ブラブォー」と呟いた。


  
天を仰いだベイブが呟く。


「ああ…。 アレが、私の罪の証」
 その瞬間無防備に仰け反ったままのベイブの首筋に、長い髪を揺らして黒須が顔を埋め、深々と噛み付いた。

 


「天井に、女の人を磔にしておくなんて、不謹慎です! 駄目です! 即刻降ろしてあげて下さい! 可哀想です!」
 シオンの激しい抗議に、竜子が困りきった表情で「そう言われてもよぉ」と言う。
「あれはさ、ベイブが、あそこに置いとけっていうし、多分、うん、動かしちゃまずいもんでもあると思うんだ。 ま、あいつの趣味なのかな?と思わないでもないけどよ」
「でも、あれじゃあ、あんまりです。 ちゃんと、埋葬してあげないと…」
「や、埋葬とか、そういう類のもんじゃないというか…」
「じゃあ、何だっていうんです!」
 そう、シオンが追い詰めるように言えば竜子は、弱った口調のまま答えた。



「アリス。 この迷宮を作って、シオンを閉じ込めた女らしい」


 つまり、彼女が、ベイブの狂気の源か。


 シオンは、食堂の、明るい雰囲気の中、じっと考え込んでみる。
 どういう事なのだろう?
 竜子が言っていた。
 あの、時の魔女とか言う女の人を殺したのはベイブだと。
 殺された復讐に、ベイブは此処に閉じ込められたのだろうか?
 だが、デリクは、「愛の結晶」とベイブの事を呼んだ。
「う〜〜、分んないなぁ…。 愛の結晶なのに、苦しんじゃってるわけで、ベイブさんって結局一体何がどうなって、此処にいるんだろう?」
「…復讐は、憎しみを抱いて行うものです」
 いずみが唐突に悩む、シオンに声を掛けてきた。
「愛情とは、相手の事で心が一杯になって満たされる事です」
 大人びたことを言う、天才少女にシオンは視線を向ける。
「では、復讐によって相手の事で胸が一杯になるのと、愛情によって相手の事で胸が一杯になる事に、どんな差異があるというのでしょう」
 いずみが凄く難しい話をしていると思いながらも、何だか、諭すような、優しい声でシオンは答える。
「それはね、愛情というのは幸せな気持ちのことで、憎しみというのは悲しい気持ちのことだから、全然違いますよ、いずみ。 相手のことを想う時に、一つも幸せな気持ちになれないのはね、愛情じゃないのです」
 いずみが、悲しいような笑みを浮かべる。
「そうですね。 シオンさん…。 本当に、そうだったら良いのに…」
 それは、少女にあるまじき程の諦念の滲んだ言葉。
「私、ベイブさんとお話したんです。 何百年も、天井にいた女の人によって生き永らえさせられてきた、そんなベイブさんと。 シオンさん。 例えば、シオンさんの言う通り愛してるの気持ちが、幸せなものならば、どうしてベイブさんはあんなに苦しんでるんでしょうね? あの女の人は、間違いなく、ベイブさんの事が好きで、好きで、好きで、だから、ベイブさんを此処に閉じ込めてしまったのです。 可哀想だなと思います。 同時に、そうやっておかしくなってしまった苦しみを、こんな王宮の中に、色んな人を招いて、弄ぶことで癒すのは、やっぱり間違いだと思います」
 シオンは黙ったまま、いずみの言葉を聞き、それから、小さな形の良い頭に手を置くと諭すような声で言った。
「いずみ。 貴方の見聞は広い。 知識も豊富だ。 そして、凄く優しい。 でもね、いずみ。 言葉じゃ、届かない世界や、見ているだけでは分らない事実が人にはあります。 ベイブさんは、苦しんでました。 私はびっくりしました。 誰の目から見ても彼は不幸です。 しかし、本当に、今、彼が不幸で、彼が苦しんでいるのかどうかは、彼自身にしか分りません。 よしんば、ベイブさんが今、凄く苦しんでいたとしても、『千年生きなきゃならない』という呪が、時の魔女さんの愛情によって掛けられたものであるのなら…」
 シオンは、そっと笑って言った。
「幸せ、きっとありますよ。 ベイブさん、きっと幸せが側にありますよ。 長く生きなきゃならないという事は、もしかしたら、そんなに不便な事じゃないかもしれない。 このお城に閉じ込められているという事も、もしかしたら、どこか楽しい事があるかもしれない。 気付いてないだけです。 きっと、気付いてないんで素。 だからね、いずみ」
 いずみが、澄んだ瞳でシオンを見上げる。
「教えてあげましょう。 ベイブさんに。 そんな暗い顔をして、色んな人を、迷路で迷わせたりなんかしても楽しくないよって。 他に、きっと楽しい事、あるよって。 そうしたら、気付くかもしれない。 ベイブさん、大事な事に気付くかもしれない。 ね?」
 シオンの言葉に、いずみは、笑みを浮かべると、有難う御座いますとお礼を言った。
 シオンは首を振って「どーいたしまして」と答えた。


 そんな風に雑談を交わしつつ、未だ王宮の中に残っているのは、幇禍、新座の能天気三人組と、エマにいずみだけでデリクとウラは既に、自力で王宮を脱し、翼と金蝉も、王宮を辞している。
新座がいつも連れている玩具の怪獣(に見えるが、玩具では決してない)ぎゃおが、ウロウロと辺りをうろつき「変なもん喰うなよ〜?」と新座に諌められていた。
「ぎゃお?」
 首を傾げ分っているんだか、いないんだかの返事をしたぎゃおが、忽ち鵺に掬い上げられるようにして抱かれ、「おーっす! ぎゃお、ぎゃお、ぎゃおう♪」と妙な節で歌われながら、弄繰り回される。
 エマは、竜子に「姐さん!」と呼ばれながら、ドクドク幇禍の買ってきた焼酎を注がれ、これまた幇禍持参のおでんを突いている。
 シオンは、ニコニコと、緑茶を啜り、エマが持ってきたという桜餅を食べながら「やぁ、今日は来て良かったなぁv」と、呟いた。
 何だかんだと美味しいものにありつけたし、まぁ、終わり良ければ全てよしって感じで、大満足してたりする。
 勿論気になる事は多々あるが、「言わない事は、言いたくない事」と理解しているシオンからしてみれば、突っ込んで調べる気等さらさらなかった。
 いずみは、シオンと語り合って、何か吹っ切れたのだろう、「…話から察するに、歴史的事実として書物の残る程の過去の遺体が、あのように、完全な状態で天井に残されているという事になる訳で、やはり、それは、此処が異空間だからなのか…どれとも、あの女性自体が特別な存在だからなのか…」とブツブツと呟きながら、また別の事を考え込んでいる。
ガチャリと扉の開く音がしたので、食堂の入り口を振り返る。
 憔悴しきった表情の黒須がぐったりと足を引きずるようにして扉から入り、そのまま倒れこむみたいに椅子に座り込んだ。
「うー、疲れたーー」
 そう呻く黒須に「ね、ね! ベーやんどうなったの?」と、うん! 彼のことそんな風に呼べるのは、世界中で多分貴方一人だけさ!という呼び方をしながら、ベイブの容態を尋ねる鵺。
 黒須に噛まれた瞬間、ぐったりと全身の力を抜いて倒れこんだベイブを、黒須は城のわけの分らない住人に手伝って貰いながら彼の寝所に運び、竜子はこの食堂までエマ達を案内してくれたのだ。
「誠の、八重歯んとこにはな、蛇の猛毒が仕込まれてて、そいつで噛まれると普通の人間は一発で逝っちまうんだが、あの千年生きなきゃなんない王様にとってみりゃあ、丁度良い睡眠薬なんだ。 夜、眠れない時とかに、誠、噛んでやってるもん」と、竜子が説明してくれたのだが、蛇の猛毒で安眠を得る男の話なんてもんは、もう、此処まで現実離れしてるとどうでも良いという気分にすらなり、「ふーん、そうなんだぁ」とおざなりな返事しか出来なくなる。
 そうやって、あの狂気の王様を寝かしつけた黒須は、べったりと机に身を投げ出したまま、「…とりあえず、寝てるし、もうちょっとしたら起きるだろうが、ま、そん時にはいつも通り落ち着いてるだろう」と、告げる。
 シオンは、そろそろ、元の世界に戻りたいかもな〜と、思いつつ、鵺の持ち込み物そのニの品である、くさやや、スールストレーミングの入った『臭い乾物詰め合わせ』を突つき、そして、その余りの「肴としての美味しさ」にうっかり、幇禍の持ち込んだという焼酎に手を伸ばしてしまっていた。


「くひーっ! あのれすね! もう、呑めひぇんっていうか、うおぅ! ろーしたんれすか! お竜さん。 分身の術れすね? 負けまひぇんよぉぉ? 私も、増えてみせましゅ! とぉ!」
 そう完全に酔いきった口調で、シオンが喚く。
 目の前の光景が全て二重にブレて見えた。
 黒須が呆れた声で、「ま、適当に送るわ…」と言いながら「ほら、立てるか? そろそろ、帰ろうな? な?」とシオンの腕を引っ張る。
 いずみや、エマ、新座の姿もいつの間にか消えていて、今日は此処に宿泊すると言っていた鵺と、その鵺を気遣って残っている幇禍の以外は誰もいなくなっていた。
「いやれし! この季節は、まら、寒いれし! らのに、お竜さんと、須さんは、わらしの事を、寒空のした放りらすんですか?!」
 そう、公園がねぐらのシオンは、勝手な事を言いつつゴロリと床に横になる。
「わらしも、此処でお泊りします!」
 そう言って、大の字になったシオンを呆れたように眺めていた「もー、知らね。 くっそ、一人も二人もおんなじだ勝手にしろ!」と怒鳴った黒須の肩に、真っ白な手が突如乗せられた。
「んぁ?」
 そう間抜けな声をあげながら、黒須が後ろを振り返りかける
 然し、彼が背後を振り向くより先に、気配なく突如現れたベイブが、黒いセーターから覗く肩口に、力いっぱい噛み付いていた。
「んぎゃぁぁぁぁ!!」
 まるでベイブさん、吸血鬼みたいら。
 そう思いながら、黒須の叫び声が面白くて「ウハハハハァ」と笑うシオン。
 ベイブは、暴れる黒須を易々と押さえ込み、思う存分噛み付いた痕、唇の周りを真っ赤な血で染め、自分の喉に残っている黒須の噛み痕を指して「是はどういう事だ」と問う。
 その仕草は、王の傲慢さに満ちていて、あの王座で見せていた弱々しさは微塵もない。
「ど、ど、どういう事だって…、あっ、イテ、マジでいてぇっ!」
 くっきりと残っている噛み傷を手で押さえながら、黒須が涙目になって「お前がっ、ぐっ…また、あ、暴れたから、鎮静剤…代わりに…噛んだんじゃねぇか!」と、ベイブを怒鳴りつける。
 竜子が、気の毒そうに黒須を見た後「そうだよ。 あんた、まぁた、おむずかりでさ。 宥めんのに苦労したんだからね」と少し怒りの篭もった声で言った。
 ベイブは何も覚えてないのか、「…それにしたって…、こんな場所を噛んで…痕が目立つだろう…」と文句を言う。
「で、仕返しかよ! お前は、子供かっ!」
 そう思いっきり怒鳴る黒須の声を、うざそうに顔を歪めて聞いたベイブが「うるさい。 そんな大声でなくとも聞こえる…。 馬鹿か、お前は」と一刀両断し、「ぐぅぅわぁぁ! もぉ、コイツ、埋める! 知らない内に埋める! しかも、上から水を掛けて、花咲かせてやる!」と、黒須は肩を押さえながら地団太を踏んだ。


 そんな騒がしい三人のやり取りを眺め、シオンはぼんやりと笑う。


ほら、いずみ。
 ベイブさん、苦しみばかりに見えた千年の命の中でも、結構幸福な時間見つけちゃってますよ?


 そうして、何だか、満たされたような気持ちになると、シオンはそのままスゥっと眠りに落ちた。

後に、ベイブが、人外のものとの混血の血を特に好み、黒須の血も「蛇女」と融合されてるが故に、仕返しの意図以上の欲求を持って、わざわざ噛み付き啜ったという事を知って、イフリートと、雪女の混血児であるシオンが、そんな主の住む屋敷で無防備に眠りこけた事に対し恐怖を覚えたというのは、また、別の話である。


end



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2414/ 鬼丸・鵺  / 女性 / 13歳 / 中学生】
【3342/ 魏・幇禍  / 男性 / 27歳 / 家庭教師・殺し屋】
【3432/ デリク・オーロフ  / 男性 / 31歳 / 魔術師】
【3356/ シオン・レ・ハイ  / 男性 / 42歳 / びんぼーにん(食住)+α】
【1271/ 飛鷹・いずみ  / 女性 / 10歳 / 小学生】
【3427/ ウラ・フレンツフェン  / 女性 / 14歳 / 魔術師見習にして助手】
【2916/ 桜塚・金蝉  / 男性 / 21歳 / 陰陽師】
【3060/ 新座・クレイボーン  / 男性 / 14歳 / ユニサス(神馬)/競馬予想師/艦隊軍属】
【2863/ 蒼王・翼  / 女性 / 16歳 / F1レーサー 闇の皇女】

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■         ライター通信          ■
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お久しぶりの方も、初めましての方も、今回は「お願いBaby!」御参加いただきまして有難う御座います。
ライターのmomiziで御座います。
今回は、久しぶりのOMCな上、初自NPC登場でのゲームノベル挑戦って事で色々あわあわしてしまいました。
何だか、参加して下さった方のブレイングの着地点が皆さん同じ感じだったので、集合ノベルにしてみたり。
とはいえ、例によって個別に近い形で書かせてもらってるので、どの話を読んでもらっても、新鮮な楽しみ方が出来ると…えーと、いいな?(弱気)

半年振りの執筆に些か戸惑いもあったのですが、何とか書き上げる事が出来ました!
ではでは、また、今度いつ書けるのか分りませんが、これにて〜。


momiziでした。