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□風邪と勘違い
天薙撫子は恋人織田義明がアパートで一人暮らししていると言うことから、良く彼の家に向かうことが多くなった。
ご飯を作ってあげたり、談笑したり、時には……と言うのがいつものこと。
色々事件は遭ったとしてもごく平凡で楽しい日。
幸せ一杯である。
今回は少し違うようだが……。
「こほこほ」
撫子は風邪をひいているようだった。
「だ、大丈夫よ、ね」
と、呟く。
毎年風邪というのは「今年の風邪はしつこい」と言われているのだが、不摂生であればどれも同じで、ぶり返すモノはぶり返し長引く。流行るウィルスが変わっている事が多いし、やはり個人差もあるわけだ。
つまり、「今年の風邪はどういう症状か」と言うべきではないか、と思わなかったりそうでなかったり。風邪とは何となし分別されている感じのある「インフルエンザは今年何型が流行っている」というようなものだと撫子は思った。
「義明君には心配をかけたくないです」
と、身を震わせて着物用の外套を深く着る。
そして、義明の家にたどり着いた。アパートと言っても小綺麗で、可愛らしいところだ。
「よしあきくん♪」
甘い元気な声で愛する人を呼ぶ。
「撫子?」
ドアを開ける義明。
にっこりと微笑む撫子。
「おじゃましますね」
「寒かっただろうに、さ、中に」
と、彼女の肩を抱いて中に入れる。
部屋の中は2DKという意外に広い。各部屋は襖で仕切られている。
ココアを差し出す義明。
「ココアすきなんですか?」
いただきますと言ってから、マグを可愛らしく両手でもって飲む撫子
「んー暖まるだろ? 昔は甘すぎて苦手だったんだけどね」
相変わらず優しく、天然そうにしている義明。
今まであったことや専門的な話をして時を過ごす。撫子はその時絶対、風邪をひいていることを隠し通していた。
其れが行けなかったようだ。徐々に彼女の風邪は酷くなるようである。
ただ、普通なら気付くはずなのに義明は其れに気が付いていない。
「〜こういう事があったんだ」
「え? あ、あはは」
「?」
元から天然素質同士なので、気が付かないのであろうか。
すでに食材を買ってやってきている撫子は食事の用意をすると言う。
義明が手伝うと言っても、断られているため自分の部屋に戻っている。
「うう、流石に……風邪が」
と、食材を並べたとたんに撫子は倒れた。
台所で何か良からぬ音がしたので義明が駆けつける。
「撫子? ……!?」
台所で、倒れている撫子を見て驚く義明。
顔を真っ赤にして、息が荒い。
「だ、大丈夫か? 風邪? え、えーっと……」
と、おろおろする義明。
何が起こったのか全体把握できないほど、混乱している。
「おい、おい……」
抱き上げようとするのだが、
帯が緩んでいるらしく、着物がはだけている。
――義明の頭の中(カウント10)
1.構わず抱き上げてベッドに
2.まだおろおろ
3.ちょ、一寸だけ……
――だあ! 勝手に選択肢表示出すなあ!
と、アドベンチャーゲームのような選択肢が脳内に現れて悩んでいる自分に突っこんでいる。
そう言うときに限って、お約束があるもので……、
長谷茜は数日前から撫子の様子がおかしいと思い、心配で義明のアパートに向かっていた。
「たぶん、風邪のはずなのよね〜」
いつも料理を教えて貰っている師匠的存在で、義姉妹(?)になるだから心配で仕方ない。
というより、お互い天然さやその手は危ない最高なので放っておけない。
「神格者でも引くときは引くのかな?」
と、首を傾げる。
「よしちゃーん。撫子さんいる〜?」
と、堂々とドアを開ける茜。
もう勝手知ったるなんとやら。
そこで、茜が見たモノは……
――台所で義明が撫子を襲うような姿だったのだ。
「あ、茜!」
「よしちゃん……」
茜は顔面真っ赤にして、鉄でも溶けそうな焔を身に纏っていた。
手にはいつの間にかハリセン。
「まて? 何怒って……た、たいへん……な……」
「このひとでなしぃ! へんたぁい! けだものー!」
「ぎゃあ!」
冬の乾いた空気に良く響くハリセンの音。
――別の意味で義明は“人ではない”が……(それは\(゚Д\) (/Д゚)/こっちに置いておく)
義明はビンタを喰らったかのように頬を赤くしている。しっかりハリセンの跡も付いている。
「ま、まて……いきなり倒れたんだ……」
「ふーふー。……そうなの? ケダモノじゃないよね」
「俺はそこまで! って、何年幼なじみしてるんだ おまえ!」
茜はしっかり撫子を看る。
――あ、風邪だったんだよね。
「ゴメン、よしちゃん」
ぺこりと謝る茜。
「ああ、わかってくれればいい……しかしどうすれば……」
「ああ、もう。何かオロオロして、みっともない」
溜息を吐く茜。
「水枕に、タオル。それに、汗でびしょ濡れだから着替えとか用意! 介抱は私がするから!」
「あ、ああ、わかった」
いそいそと用意するする義明。
そして寝室になっている部屋に撫子を運び、
「はい、着替えさせるから、邪魔、邪魔。覗いちゃだめ!」
「わ、わかっている〜!」
と、追い出されるよっしー。
撫子を介抱してから1時間ほど経過。
ずっと、義明はオロオロしっぱなしだった。
「あ、わたくし……」
と、意識を取り戻した撫子。
義明の大きなパジャマ姿になっていて、一気に赤面するわけだが、状況を把握、整頓するが風邪の所為でぼうっとしてまとまらない。
「気が付いた?」
茜がホッと安心した様子で訊いてくる。
「あ、茜さん」
額には冷たい濡れタオル。
「よしちゃん、撫子さんが倒れたときオロオロして、全然役に立たなかったの」
「其れはそうだけど、勘違いも一足飛びするんじゃない」
と、事情を話す。
「ご、ごめんなさい。心配かけないようにしようとして、えっとその……ごめんなさい」
恥ずかしいあまり、撫子は布団で顔を隠した。
「大事にならなくて良かったです」
「ああ、ほんとうに……」
2人は安堵と“撫子さんらしい”と言うことで微笑んでいた。
で、このあと撫子はというと、
茜のおかゆと置き薬の解熱剤で落ち着かせ、再度熱をはかる。
「あ、39.8……」
「40近くじゃないか……無茶して」
「ごめんなさい」
と、色々茜と義明に言われながら此処で暫く安静となる撫子。
家の方に連絡を入れて、迎えに来て貰うことにした。
今までオロオロしていた、役立たずの義明もすっかり落ち着いて優しくしてくれる。
――風邪ひいて少し良かったかなぁ。
と、ちょっぴり思う撫子であった。
End
■登場人物
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生(巫女):天位覚醒者】
【NPC 織田・義明 18 男 神聖都学園高等部・天空剣剣士】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】
■かわうそ?通信
|Д゚) ……はりせーん
|Д゚) ……オロオロよっしー書いていて楽しかったとさ
|Д゚) 役立たず……っぷ
義明「小麦色〜!」
|Д゚)ノシ ≡≡≡≡3 んじゃなかよくー。
義明「あ、アレに構うまえにしっかり看病しなきゃ……」(回れ右)
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