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【ロスト・キングダム】木霊ノ巻
「あの子を、連れ戻して下さい! お願い、今すぐ!」
母親の顔はあおざめていた。
「要するに……息子さんが家出をされた、と」
家出息子を連れ戻す――、ハードボイルドではないかもしれないが、少なくとも怪奇事件でないだけましだ、と草間は思った。もっとも、例によって例のごとく、そんな予断は後に裏切られることになるのだったが。
「あの子が家を出たのは昨日の夜か今朝早く。今から追い掛ければ間に合います」
「行き先に心当たりが?」
「山です……」
「山?」
母親は、うつむき加減に、語りはじめた。
「去年の夏休み……息子は友達と奥多摩にキャンプに行って……。そのときに止めるべきでした」
「意味がわかりません。息子さんは今も奥多摩に向かわれていると?」
「去年の夏、もう呼ばれていたんでしょう。昨日で、あの子は14歳になりましたし」
「……?」
話が見えない。草間は、とりあえず新しい煙草に火をつけるくらいしか、できることを思いつかなかった。だが、そのあと、ふいに依頼人がわっと泣きくずれたので、ライターをもったまま、火をつけるタイミングを逸してしまう。
「あの……奥さん……。ご心痛でしょうが……」
「私がいけなかったんです。後先も考えずに……こうなることはわかっていたのに。でも……私はあの子を失いたくないんです。だから……お願いします……どうか……あの子を――尚史を」
「わかりました。とにかく息子さんは奥多摩に向かっている。なら、見つけて連れ戻しましょう。ですが、尚史さんは、どうして家出を?」
「……家の恥です。できればご容赦ください」
そう言って、依頼人は深く頭を下げた。
訊いてくれるなということか。だが、それでは……。草間は内心、頭をかかえた。力ずくで連れ戻すことも、できないわけではないが……。
依頼人の一人息子――十四歳の尚史少年の写真が、草間に手渡された。一見、大人しそうな、どこにでもいる中学生に見える。
「山に……」
最後に――ぽつり、と彼女は呟いた。
「山に呼ばれているんです。あの子は」
■追跡
「呼ばれてる……。フゥン?」
黒贄慶太が、面白くもなさそうに欠伸をすると、その先端がふたつに割れた舌を見ることができた。スプリット・タン。蛇の舌。そこにもまたピアスが光る。
「どういうことさ」
言ったのは桐生暁だった。
「なにか事情があるんだろ。知ってることがあるなら教えてくれなきゃ、こっちだってさ……。助けてほしいくせに、勝手だな」
彼の、糾弾ともとれる言葉を、母親はじっと黙って聞いている。
あるいはそれさえも、自分の罰だと思っているのかもしれなかった。
「無理にはお聞きしませんが……」
四宮灯火がためらいがちに口を開いた。
「ですが……、根本的な解決を……しないことには……いちど連れ戻しても、また同じことが起こるのではないのですか……?」
もっともだ、というように、暁が同意の表情を示した。
沈黙――。
ふいに、席を立ったのはササキビ・クミノだ。
「ここでぐずぐずしていても仕方がない」
シュライン・エマが目で問いかけるのに、クミノは答えた。それだけ言うと、さっさと興信所のドアを開けて出て行ってしまう。
「それも同感。ま、とにかく、そいつを連れ戻しゃいいんでしょ?」
暁が気楽に笑ったが、シュラインはしばし、夫人の横顔を見つめ続けていた。
「くだらねェなァ」
慶太が再び、大欠伸をした。
「たぶん、公共の交通機関を使ったとは思うけれど……タクシーの可能性もあるから。中学生ひとりの長距離の客なら目立つでしょ。タクシー会社に問い合わせてみてほしいのよ。あ、それと――」
事務所を出て道を歩くあいだも、延々と、シュラインは携帯をかけ続けている。
「わかった、わかった。友人関係には今あたってもらってる」
事務所のデスクでは、煙草をにじり消しながら草間が対応に追われていた。
「ったく、人使いの荒い……どっちが所長だかわかりゃしねぇ……」
こぼしてはいるが、しかし一方で、彼女の手際を草間が高く買っているのも事実なのだ。――と、再び携帯が鳴った。
「何だよ……って、ササキビか。すまん」
「随分な電話の出方ね」
人足先に出たはずの少女の、落ち着いた声だった。実年齢でいえば彼女が、目標の少年にもっとも近い。だがおよそそんなことを感じさせないだけの、雰囲気と、凄みと、知性とが、クミノにはあった。
「今、草間のメールアドレスにデータを送ってる」
「なんだこりゃ、随分重いぞ」
「とり急ぎ集めた、アクセス可能な都内の監視カメラの画像。その中に少年が写っている可能性があるわ。捜し出せるかどうかは……草間の手腕にかかっているってこと」
「なんだと」
探偵は悲鳴にも似た声をあげた。
「一口に奥多摩と言っても。どういうルートで動いたかもわからないし、目的地がそのキャンプ場だと言い切れるかどうか。本人にどこまで本人の自我が残っているかにもよるし。だけど……対象と接触する前に保護する必要がありそうだから」
「……うお、すまん、ササキビ、事務所の電話だ。すぐかけ直す。……はい、草間興信所……ああ――」
「はい。武彦さん? え、キャンプ場がわかった?」
シュラインはメモにその住所を書き留める。
そんな様子を横目に、
「血に呼ばれたか」
「え?」
慶太がつぶやいたのを、暁は聞き逃さない。
「家の恥って言ってたろ。あそこんちの息子は――ワケありだぜ」
「ワケありねぇ……」
「あの方々の……血筋に代々伝わる何かがあるのでしょうか」
と灯火。ちょうどそのとき、シュラインが電話を切った。
「問題のキャンプ場がわかったけど」
「参りましょう……」
灯火が言った。
紅い振袖の腕をすっと広げる。
「場所さえわかれば……、わたくしは何処へでも……さあ……」
■奥多摩
「クミノさん!」
無人改札の前で、シュラインがクミノに呼び掛けた。
「見つけた?」
「まだよ。でも、この駅で降りたのは間違いない。クミノさんと武彦さんの調べてくれた通り。あと、そこの雑貨屋さんで飲物を買ってるわ」
「本人を捕まえなければ意味ないわ。瞬間移動なんて反則までしておいてそれじゃあね」
いささか冷ややかに、クミノは言って肩をすくめた。
「山に入ったと?」
「間違いないと思う。灯火ちゃんたちが探しに行ったわ。私たちも追いましょう」
東京都西多摩郡奥多摩町――。
そう、ここは東京都なのだ。こうして深い緑に囲まれていると、誰がそれを信じられよう。だが東京は、摩天楼と雑踏と情報に埋め尽くされた都市だけの場所ではない。森もあれば山もあるのだ。
そして山には、なにかが潜んでいる。
人々が畏れ忌避する、あるいはとうに忘れ去られた、それは闇だ。
都市にひそむ闇の種族である暁は、そんなことを思いながら、あたりを見回した。
春は目前とはいえ、山の空気は冷たい。
キャンプ場は、営業をはじめてはいたが、まだこの時季は利用者もほとんどおらぬようで、あたりは森閑としているのである。
ぐい、と、慶太が腕をまくった。
筋肉質の腕に刻まれた黒い紋様。
「行け」
タトゥーは一瞬で実体となり、山の腐葉土の上を駆けて行った。それは狼だった。彼の肉体に宿るタトゥーの獣のひとつが、山に消えた少年の痕跡をたどってくれるはずだ。
キャンプ場を取り囲む、高い樹々の梢では、灯火の紅い振袖姿が見られた。身軽で、空間を飛び越えることのできる彼女は、樹冠から樹冠へと、場所を変え、遠くを見渡すことができた。キャンプ場にある人工物から、少年がここを通ったことは聞いている。だが人工物のない山奥へ入り込まれてしまうと、彼女の力による追跡は困難になる。
「電車を乗り継いで来たなら……やはり本人の意志なのかしら」
山道を歩きながら、シュラインは呟く。
「母親の話では、予兆――というか、対象との接触は昨年に行われていたと。その時点でなんらかの契約的なものが行われたと見るべきね」
「戸籍も調べてもらったの」
「執念深い。いや、入念というべきか、失敬」
クミノの言葉はどこまでも大人びている。
「戸籍上は間違いなくあの家の子どもだったわ。それにしては奥さんの態度が気にかかるのよね」
「戸籍など紙の上の情報に過ぎない」
「そのとおりよ。こういうことは考えられないかしら。彼は――もともとはこの山で生まれた子どもだった」
ふいに、クミノが足を留める。
「それならつじつまが合うわ。彼は、山に呼ばれて、ここに戻ろうとしている。親としては、でもそれを引き止めたい。去年のうちに、彼はここに戻ることになっていたの。でも一年待った。昨日が14歳の誕生日だったって……14歳といえば昔なら元服。つまり彼はもう、子どもじゃないってことよ。子どもの頃は町で暮らした。でも大人になって」
しっ、とクミノが人さし指を唇にあてた。
ザ、ザ、ザ、ザ、ザ――
それは何だ。
シュラインの並外れた聴覚、クミノの、長年の戦闘経験で培われた感覚がとらえたものは。
それは樹木のささやきであり、風の声であった。
すべるように、飛ぶように。
山の空気の中を駆ける、不思議な……足音と息遣いの群れ。
(なにかいる)
ふたりは目を見交わした。
(それも大勢だ)
そして駆け出す。そこへ――
「おーーーーーーい」
声が響いた。
「見つけたぞーーーーぅ」
慶太だ。
ゆっくりと歩みよる。大木を背に、立ち尽くしている少年がいた。その前には彼を追い詰めた狼が。
「よし、戻れ」
それは狼への命令だった。もとのタトゥーへと変じる。
ふわり、と、少年の傍らに、紅い振袖の灯火があらわれたので、少年はびくりと身をすくませた。さらに、慶太の後ろからは暁が追い付いてくる。
「あんたが尚史?」
「世話かかせやがって、なァ」
「お母さまが……ご心配……ですよ……」
「母さん?」
少年は言った。
「でもぼく……行かなくちゃ」
「テメェの意志で行くのか?」
「もちろん。ぼくはかれらの一員だって、わかったんだから」
「ホントにいいの?」
暁が問うた。
「行くのは勝手だけど……だったら周囲をきちんと納得させてからにしなよ。迷惑する人らがいるんだからさ。その上で……後悔しないのだったら止めないよ。どこに行こうってのか知らないけど、家も、学校も、友達も……今の全部を、捨てていく価値が本当にあるものなのかい?」
血の色の瞳が少年を見据える。
「本当にそれだけのものがあるなら……見てみたい気もするけれど……味見のつもりが二度と取り返しのつかなくなってしまうことも、この世にはあるからね」
くす、と、笑みさえ浮かべた。
「ぼ……ぼくは……」
少年の顔に、かすかに逡巡の色がさした。そのとき――
「おーーーーーーい」
声だ。
「見つけたぞーーーーぅ」
そして、樹々のざわめき。
ザ、ザ、ザ、ザ、ザ――!
■幽谷響(やまびこ)の聲
「なにか来やがったぞ!」
慶太が吠えた。
灯火が、さっと尚史少年に寄った。彼女は彼にふれ、瞬時に山から遠ざけるつもりだった。だが、疾風はそれより速かったのだ。
「!」
灯火の軽い身体は、文字通り吹き飛ばされた。
「わーーーっ!」
少年の、尾を引く叫び。
「畜生!」
慶太の腕から狼が、背中から鷲が、足から蛇が飛び出した。タトゥーの獣たちが、いっせに牙や爪で、挑みかかった。だが挑みかかる先は――空でしかなかった。
暁は、少年の身体が木ノ葉のように巻き上げられるのを見る。そして、かげろうのように、騙し絵のように、その姿がかすんで消えてゆくのも。
「連れて行かれた!」
「何処だ! くそ! 探せ!」
慶太が獣たちに命じる。
樹木の枝が揺れた。灯火は身を起こしながら、周囲に顔を巡らせた。だが少年の姿はどこにもない。彼を探さなければ。彼女は、声を聞くことのできる人工物をもとめた。だが、山には、樹と土の石の他は何もない。ここには人の造ったものはない。彼女だけが、その世界への闖入者だった。表情のないはずの、少女人形のおもてに、畏怖にも似た翳りが差す。まわりにあるのは圧倒的な人に御し得ない自然ばかり。人の世界では、なかったのだ。
「姿勢を低く」
簡潔に、ササキビクミノは命じた。
そうだ、それは命令だった。提案とか依頼ではない。戦場では、誰かが誰かに命令をし、すみやかにそれが伝達されなければ、死、あるのみなのだ。
シュラインは賢明だった。クミノの腕もよく知っている。言われるままに、少女の背後に身を落とした。
ざあ……っ!
風だ。山を貫く一陣の突風。
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
そして声。
(やまびこ……?)
シュラインは風の中に手がかりをもとめようとしたが、舞う木の葉と土ぼこりに、目を開けていられなかった。そこへさらに襲いかかる烈風。
「これしきのことで!」
クミノが吐き捨てる。
ふと気がつくと、彼女の両手に拳銃が握られていた。一秒前までは、どこにも存在しなかった武器だ。ササキビクミノはつねに、反撃のために武器を持つ。彼女が銃を持っているのなら、それは攻撃を受けたことの証なのである。
無言で、クミノは銃を撃った。銃声に驚いたか、どこかで鳥が飛び立つ音がする。
「シュラインさん!」
暁たちが駆けてくる。
「尚史さまが……」
灯火があらわれて、申し訳なさそうに告げた。
「今のが――?」
クミノが眉を寄せる。
「おそろしく速ェ。それに気配がおかしい。なんつうか、こう……そこにいるのにいないみたいだ」
慶太が禅問答のようなことを言った。
「霊じゃない。それはわかる。むしろ……人間だ。そうだ、人間の気配だぞ」
「風より速くて姿の見えない人間?」
からかうように暁が言った。だが目は笑っていなかった。彼もその驚異を目にしていたのだから。
「でも声がしたわ」
とシュライン。
「そうよ……やまびこ……声だけの存在……?」
「でも彼を連れてった!」
暁が言った。
「確かに何かいる……この山に」
「居座ってやろうか」
クミノが呟くように言った。
「『障壁』で山ごと殲滅できる」
「彼を助けてからでないと!」
わかっている――、と、言おうとした。冗談だ、と(にこりとも笑っていなかったが)。だが、そのとき、再び。
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
「また来た!」
ザ、ザ、ザ、ザ、ザ――
「うわーーっ」
空中に放り出される、少年の身体!
「ぅおっとぉ!」
慶太が抱きとめた。
「返したぞぉーーーーーーーー」
その声を、全員が聞いた。
シュラインが、クミノが、全員が周囲に目をこらし、耳をすました。無数の、人の気配と、落ち葉を踏み締める足音が、かれらを取り囲んでいた。そして木陰にほんの一瞬、ちらついた人影。
「返したぞぉーーーーーーーー」
声が繰り返した。
「山から降りろーーーーーー」
「山から降りろーーーーーー」
「山から降りろーーーーーー」
声はだんだんと、遠ざかっていった。
「待っ……て」
弱々しく、尚史少年が呻いた。
「置いて……いかないで……」
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
■幼年期のおわり
「お察しのとおりです。あの子は、本当にはわたくしどもの子ではございません」
母親は、伏目がちに告白した。
「わたくしの子は、死産でした。でも院長先生が……ひとつだけ方法がある、と」
ハンカチで目頭を抑える。
「旧い家でございます。姑をはじめ、家中が、子どもを望んでおりましたし……あの子を預かることにしたのです。わたくしと主人だけが知っていることです。そのとき、約束したことを、ですが、わたくしたちは、忘れていた……いいえ、忘れようとしたのです。あの子は十四になれば、山へ還らねばならない。そのときが来れば迎えに来るから、と。まったく愚かなことでございます。本当に、なんて莫迦な母親なのでしょう……」
そして泣き崩れるのだった。
「ぼくは駄目だって」
うなだれた様子で、少年は語る。
「仲間に戻るには、力も覚悟も足りないって……《トケコミ》が過ぎたのだろう、《ツチグモ》にも劣るようでは、同胞にはなれない、って……。……結局、ぼくはかれらにも受け入れられなかった。去年、山ではじめてあの声を聞いたとき……ぼくは山に棲むあの一族の……特別な血を引いてるって聞かされたときは、ぼくの本当の居場所はそこだと思った。でも……そうじゃなかった」
「その産院を、教えていただけますね」
シュラインの切り込みに、母親はたじろぐ。
「あなた方の他にも、同様のケースがあるのでしょう?」
「……詳しくは存じません。ですがわたくしどものように、死産や流産の母親に、子どもを預けてくださる場合と、子どもを……取り替える場合があるそうでございます」
「そんな……ことが……」
灯火が人形にあるまじき声を出した。
「人、でございますのでしょう……? そんな簡単に……」
「いずれの場合も、《向こうから来た子》は十四歳になれば戻ってしまうのね。取り替えられた子の場合は帰ってくるのかしら」
「すみません……わたくしどもはこれ以上は……本当は、こうしてお話しすることも……」
「ご迷惑はおかけしません」
渋る母親から、なんとか、情報を引き出す。
だが彼女に訊いた、その雑司ヶ谷の産院が、つい先日、火災に見舞われ、さいわいそれはぼやですんだが、院長父娘が行方知れずになっていることがわかったのは、そのすぐあとのことだった。
「くだらねェな。んとに、くだらねェ」
と慶太。
「わけのわからんもんに呼ばれて……否応なしに攫われるだの食われるだのというから俺ぁ行ってやったンだ。てめェが決めたことのおとしまえは自分でつけやがれ。あー、くそ、イラつくな。畜生」
「自分の居場所なんて……そんなもの、誰かに与えられるもんじゃない」
暁もまた、手厳しい。
「どうしても、っていうんなら……俺があげてもいいけどね……ふふ、冗談だよ。とりあえず、今のところは」
「――で。あの一団は何者なのか。私が興味があるのはそこだけだ」
クミノが言った。
「風の中で……聞いたような気もするけど……思い出せなくて……ぼくは認められなかったから、結局、ほとんどのことは教えてもらえずじまい。……ずっと昔から、かれらは山に棲んでるって。あの山だけじゃなく。山にはかれらの路があるから、そこを風に乗って駆けるんだ、って。でも……言ってたよ。今はひっそりと隠れ棲んでいるだけだけど、もうすぐ、自分たちのことを皆が知るようになる。自分たちの時代が、やってくるんだ、って――」
「ま、依頼は果たした。興信所としてはそれでOKだからな」
草間探偵は呑気に言いながら、煙草を吹かしていた。
窓を開けると、風はすっかりやわらかい。季節は春を迎えようとしていた。
だが人知れず、巨大な事件は進行し、東京の街に忍び寄ってきていたのである。草間興信所が経験したこの事件は、そのささやかな序章でしかなかったのだ。
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
「おーーーーーーい」
(木霊ノ巻・了)
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+時々草間興信所でバイト】
【1166/ササキビ・クミノ/女/13歳/殺し屋じゃない、殺し屋では断じてない】
【3041/四宮・灯火/女/1歳/人形】
【4763/黒贄・慶太/男/23歳/トライバル描きの留年学生】
【4782/桐生・暁/男/17歳/高校生アルバイター、トランスのギター担当】
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■ ライター通信 ■
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大変お待たせいたしました。
『【ロスト・キングダム】木霊ノ巻』をお届けします。
リッキー2号「ロスト・キングダム」の世界へようこそ。
こちらは草間興信所を通じて垣間見た、本作のプロローグとなります。
そして、核心へとつながる情報や伏線が見え隠れしております。
>シュライン・エマさま
相変わらずの見事なお手並みでございます。「14歳」に注目なさったのはシュラインさまだけのようでした。しかけたネタはあばかれるためにあるのだとはいえ、ズバリ切り込まれるとどきまぎするのも毎度のことです。
>ササキビ・クミノさま
はじめてのご参加ありがとうございます。以前よりご活躍は拝見させていただいておりました。設定などの把握に慎重に取り組ませていただいたつもりですが、失敗がないことを祈るばかり。ササキビさんのクールなキャラクターが描けていればさいわいです。
>四宮・灯火さま
いつもありがとうございます。はっ、瞬間移動という手があったか……と思ってしまったのですが、人工物のない山中、というハンデもあり、おあいこ(?)だったかもしれません。
>黒贄・慶太さま
はじめてのご参加ありがとうございます。バストアップがあまりにカッコよくてドキドキしながら書かせていただきました(笑)。タトゥーアニマルズ(勝手に命名)が素敵な設定ですね。そしてスカリフィケーションというもののことを初めて知りました。
>桐生・暁さま
はじめてのご参加ありがとうございます。ヴァンパイアとしての部分や設定はあまり盛り込めませんでしたが、高校生の暁さんの視点やキャラクターを出せていればさいわいです。
それでは、機会がありましたら、今後ともおつきあいいただければさいわいです。
ご参加ありがとうございました。
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