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学校の怪談 〜小麦色を触れ！〜
さぁ今年もやってきました清比良神社恒例『清比良祭り』！！
今年の年男…いや、年ナマモノはかわうそ？だぁ！
皆〜準備はいいかぁ！！
得物は持ったかぁ（ぇ）！！
司会はご存知、天津拓海でぇす！
チリンチリンと、ママチャリに中学校の制服でマイクをもった拓海。
「いつでもいいぞー拓海ちゃん！」
ご声援ありがとうございまぁす！
かわうそ？の行水も済んだね？
では、今年も元気に行ってみよー！！
バァンと運動会で鳴らすような音が鳴り響き、白いはっぴに鉢巻のかわうそ？が走り出した。
｜Дﾟ) ふっふっふ…
早くもかわうそ？囲まれています！！
ええーっと、あれは町内演歌カラオケ愛好会のおじさん達だぁ！！毎年必ず7割成功を収めているベテラン集団だぞぉ！
どうする、かわうそ？！！
「始まったみたいですね」
かわうそ？が年ナマモノをすると聞いて、楠木町にやってきたが、あれよあれよと参加する事になっていた初瀬・日和と大曽根・千春は公式逃走ルートが書かれた簡易的な町の地図を持って立ち尽くしていた。
「かわうそ？さんは無理に触ろうとすると逃げてしまいますし〜何時ものように『ＯＳＵ』のケーキをご一緒できればと思います〜」
のほほーんと自前のメイド服で首を少し傾げつつ、手にはバスケットを下げている千春。
「あの様子だとかわうそ？さんも息抜きしたいと思いますし、どこかでお茶の準備でもしましょう」
「そうですね〜」
二人は貰った地図を眺め、何処がいいかと思案をめぐらせる。
「中学校の屋上なんてどうですか？ちょうど真ん中あたりだし」
かわうそ？―年ナマモノを触る事が目的のお祭りに、少女二人はのほほんと中学校へと足を向けた。
凄い！凄いぞ！今年の年男！！いや年ナマモノ！
ベテランおじさん集団をすり抜けたぁ！
次に待っているのはぁっとと、どいてくださーい。司会妨害は厳禁ですよ〜。引いちゃいますよ〜
爆走ママチャリ住宅街を爆進中。
｜Дﾟ＃) 拓海、乗せるなり
嫌でーす。年ナマモノは自分で走ってくださーい。
小指まで立てて満面笑顔の拓海。
そして暴走ママチャリに互角でついて行っているナマモノ……。これで一般人が触れると思うのか！
住宅街を風のように、一人と一匹は通り過ぎていく。
中学校の屋上で下を覗き込む日和。
「あれは、草間さんの所の零さん？」
手で扇を作り遠くを見つめる日和の後ろで、ノンビリと屋上にシートを引きお茶の準備を始めている千春。流石メイド喫茶と言えど喫茶店で働いているだけに手際がいい。
「いろんな人が参加してるんですね〜」
「通常ご参加の方は危険ですからこちらには入らないようにしてくださーい」
交通整理の赤棒をやる気なく振りながら、隣町から交通整理で呼ばれていた、東堂は一人ブツブツと愚痴を述べる。
「はいはい、文句言わない。市民の安全を守るのも公務員の仕事」
タバコが吸えないストレスからか、少々ぶっきら棒な課長に、
「いや、課長…それは警察の仕事ですよ……」
と、突っ込みを入れつつ赤棒を振る。
「いいなぁ、俺も参加してぇ！」
一人、赤棒を振りながら、少々興奮気味の駆音に東堂は冷たい視線を投げかけつつ、
「行けば」
と一言言い捨てた。
｜Дﾟ) とぉ！！
あ、ごめんなさーい！
「ｺﾞｹﾞﾌッ！！」
東堂が「行けば」と言った瞬間、駆音はその頭をかわうそ？に踏み台にされ、拓海のママチャリに引かれていった。
「あぁ！！交通整理の人が引かれました！」
日和が屋上から身を乗り出すように叫んだ瞬間、マイクの大音量が耳に入る。
どうやら、そろそろかわうそ？がこの近くに来ているようだ。
公務員さん良かったね！今年の厄払い完了だよ！！
屋上から視界に捉えられる範囲内に、走る かわうそ？ が見える
日和は屋上から身を乗り出すと、
「かわうそ？さーん！」
と、中学校の裏門に差し掛かった かわうそ？ に向かって大声を張り上げた。
そして、お茶の準備を済ませた千春も、ニコニコと屋上の桟まで歩み寄ると、日和の隣から可愛らしく頬に手をあてて、
「ＯＳＵのケーキで一休みしたらいかがでしょうか〜」
と、まるで目の前に居るかのような口調で問いかける。
日和はなんとなくそれじゃ聞こえないのではないだろうか？と思いつつも、また かわうそ？ を呼ぶ。
｜Дﾟ)ノ 日和〜、千春〜
どうやら声は届いていたようで、かわうそ？ は校舎の側面を駆け上がってくる。
そして、
かわうそ？屋上へ駆け上がったぁ！！
の声と共に、拓海のママチャリさえも屋上を駆け上がり、なんだか屋上にママチャリが着地した瞬間、鈍い音がした。
「わ……」
「あらあら」
屋上の桟でその光景を見ていた日和と千春だが、驚いたのは日和だけで、千春は何時もと変わらない笑顔のポーカーフェイスを決め込んでいた。
「あ…あれ？君達なにしてるの？」
ママチャリから降りた拓海が簡易喫茶状態の屋上を眼を真ん丸くして見ている。
「かわうそ？さんがお祭りで年男をされると聞いたので」
日和の説明に拓海はそれでも疑問符を隠せない。
「屋上なら誰も来ないでしょうし〜かわうそ？さんに一休みして頂こうと思いまして〜」
日和の言葉を付け足すように答えた千春の腕の中で完全にくつろぎ状態の かわうそ？。
「やっほー千春ちゃん」
スタッと屋上に降り立ったのは、魔法のドリルで華麗に変身ドリルガールこと銀野・らせん。
「あらあら、らせんちゃんもお祭りに参加してたのね〜」
「かわうそ？くんがお祭りに参加するって聞いたらね☆」
ドリルガールの姿のままでガッツポーズを取っているらせんを見て、またもぽかんと口を開けて直立不動の拓海。
「すっごーいお茶の用意できてる〜」
今度は誰？と視線を移動させれば牧・鞘子が屋上に降り立った。
拓海は凄い人間関係だなぁなどと思って見ていたが自分だってママチャリで屋上まで駆け上がっている時点で同類である。
たったったと日和は広げられたシートに戻ると自分が持ってきたバスケットを広げ、自分が焼いて持ってきたケーキを取り出す。千春もお店から用意してきたケーキを取り出し、コポコポとティーポットにお湯を入れ湯気立つ紅茶を かわうそ？ の前に並べていった。
（ﾟ〜ﾟ)
「……かわうそ？」
完全に大量のケーキに舌鼓を打ち始めた かわうそ？ に拓海はため息を隠せない。
小麦色の手にはどんどんスポンジがこべり着いていく。
こんな状態の かわうそ？ に触るならいいのだが、触られたらちょっと大変だろうな、などと思いつつ。
「司会さんも如何ですか？」
行き成り話しを振られたことで拓海は自分を指差しきょとんと瞳を瞬かせると、嬉しそうに照れながらへにゃりと笑う。
「ありがとね。でもごめんね」
低調に断られ、千春はそうですか〜と少し残念そうに顔をしかめたが、シートの上で美味しそうにケーキをほお張っている かわうそ？ さんの姿を見たら、自然と気持ちが和んでしまった。
「濡れたままですね」
日和はタオルを取り出すと、行水で濡れた かわうそ？ の毛並みを綺麗に拭いていく。
｜Дﾟ) ありがと〜
ブルルっと身震いして一度水を飛ばし、また日和が丁寧に拭いていくタオルの中でなすがまま。
らせんと鞘子も加わって、優雅なお昼のティータイムとしゃれ込んだ。
まるで誰もがお祭りの事など忘れかけていた頃。
「あの……」
と、ギィっと屋上の扉が開き、小さな男の子が一人身体を半分除かせながら、かわうそ？ と少女達へと視線を向けていた。腕には『清比良祭り実行委員会』の腕章が付けられている。
｜Дﾟ)ノ 柊〜
「やぁ秋杜」
「かわうそ？…さん！か…会長！？」
少女４人の視線が一気に自分に向いた事に、多少狼狽した感のあった実行委員―柊・秋杜が、その輪に加わっている かわうそ？ と拓海に眼を丸くした。
タッタッタッと かわうそ？ はクリームとスポンジまみれのまま秋杜に駆け寄っていく。
「また…クリーム、口に…着いて、ますよ」
駆け寄った かわうそ？ の口を秋杜はハンカチで拭きながら、顔を上げる。
「あの…屋上は、立ち入り…禁止…なん…です。すいま、せん」
申し訳なさそうにそう告げる秋杜に、日和と千春は顔を見合わせる。
ここにお茶の準備を用意したのは自分達だからだ。
「かわうそ？…さんも、早く…戻って、あげて…下さい…ね」
｜Дﾟ) うむ
それでは、失礼します。と、閉められた扉から かわうそ？ は皆の元へ戻ると、
｜Дﾟ) かわうそ？行くなり
｜Дﾟ)ノ またな〜
「じゃ、僕も行きますか」
ピョンっと屋上から飛び降りるように駆け出した かわうそ？ を追いかけるように拓海もママチャリにまたがりその後を追いかけていく。
「じゃぁ私もパトロールに戻りますね」
かわうそ？ を追いかけるようにらせんは飛び上がり、日和と千春に見送られ速度を上げた。
「なんかケーキご馳走になっちゃったけど、正直私まだ かわうそ？くんに触ってないのよね」
と、鞘子も屋上から一度運動場へと降りると、また近くの民家の屋根へと飛び上がっていった。
「どうします〜日和さん」
「怒られちゃいましたね」
オドオドとしつつもきっちり言って去っていった秋杜の言葉に、肩をすくめてくすっと笑う。
「千春さんは、かわうそ？さん追いかけますか？」
「う〜ん、あたしは〜かわうそ？さんとお茶が出来たので帰ります〜」
「なら、私もかわうそ？さんとお茶が出来たので、帰りますね」
屋上から降り、学校の敷地無いから出た日和と千春は顔を見合わせ、言葉を交わす。
結局最後までお祭りの概要を理解せずに、少女二人の清比良祭りは終わったのだった。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【3524 ／ 初瀬・日和 （はつせ・ひより） ／ 女性 ／ 16歳 ／ 高校生】
【0170 ／ 大曽根・千春 （おおぞね・ちはる） ／ 女性 ／ 17歳 ／ メイドな高校生】
【2005 ／ 牧・鞘子 （まき・さやこ） ／ 女性 ／ 19歳 ／ 人形師見習い兼拝み屋】
【2066 ／ 銀野・らせん （ぎんの・らせん） ／ 女性 ／ 16歳 ／ 高校生（／ドリルガール）】
【NPC ／ かわうそ？ ／ 無性別 ／ ？ ／ かわうそ？】
【NPC ／ 天津拓海 ／ 男性 ／ ？ ／ 中学生】
【NPC ／ 柊秋杜 ／ 男性 ／ 12歳 ／ 中学生兼見習い神父】
燈ライターより
【NPC ／ 駆音 （くおん） ／ 男性 ／ 28歳 ／ 広報課員】
【NPC ／ 東堂俊哉 （とうどうとしや） ／ 男性 ／ 29歳 ／ 広報課員】
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■ ライター通信 ■
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学校の怪談 〜小麦色を触れ！〜にご参加いただきありがとうございます。ライターの紺碧です。天然さん二人といった感じだったので、ギャグ性よりもほのぼの性を重視しました。無意識って怖いですね（笑）屋上では本当にお祭り忘れそうな雰囲気だったのではないかと思います。
それではまた、千春様にである事を祈りつつ……
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