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<東京怪談・PCゲームノベル>


学校の怪談 〜小麦色を触れ!〜


 さぁ今年もやってきました清比良神社恒例『清比良祭り』!!
 今年の年男…いや、年ナマモノはかわうそ?だぁ!
 皆〜準備はいいかぁ!!
 得物は持ったかぁ(ぇ)!!
 司会はご存知、天津拓海でぇす!

 チリンチリンと、ママチャリに中学校の制服でマイクをもった拓海。

「いつでもいいぞー拓海ちゃん!」

 ご声援ありがとうございまぁす!
 かわうそ?の行水も済んだね?
 では、今年も元気に行ってみよー!!

 バァンと運動会で鳴らすような音が鳴り響き、白いはっぴに鉢巻のかわうそ?が走り出した。

|Д゚) ふっふっふ…

 早くもかわうそ?囲まれています!!
 ええーっと、あれは町内演歌カラオケ同好会のおじさん達だぁ!!毎年必ず7割成功を収めているベテラン集団だぞぉ!
 どうする、かわうそ?!!



「本当に触れるのかなぁ」
 かわうそ? に触れるというその大変さを知っている牧・鞘子は首を傾げつつ、本部で受け取った公式ルートのチラシに視線を落とす。
「きゃ…」
 鞘子は行き成り大量の人に押しつぶされそうになりながらも、体勢を保つと、このままではらちが明かないと、自分がもっている身体能力を活かし、近くの民家の屋根へと飛び上がった。
 これならば、かわうそ? が今何処でどうしているかも分かるし、自分が かわうそ? を追いかける道筋に障害も無くなる。
 鞘子は意気揚々と屋根と屋根を飛び越えたが、そこへどこかで見たような高校生の女の子が かわうそ? を抱きしめているのを見て、自分のゴール直前で抱っこ作戦はちょっと無謀だっただろうかと考える。
 公式ルートを走り抜けるという制約があるために、エーテル界やアストラル界に逃げ込むという事はないだろうが、やはり人と人の間をすり抜けるナマモノの特性はすばらしいものだと鞘子は改めて思わされた。



 凄い!凄いぞ!今年の年男!!いや年ナマモノ!
 ベテランおじさん集団をすり抜けたぁ!
 次に待っているのはぁっとと、どいてくださーい。司会妨害は厳禁ですよ〜。引いちゃいますよ〜

 爆走ママチャリ住宅街を爆進中。

|Д゚#) 拓海、乗せるなり

 嫌でーす。年ナマモノは自分で走ってくださーい。

 小指まで立てて満面笑顔の拓海。
 そして暴走ママチャリに互角でついて行っているナマモノ……。これで一般人が触れると思うのか!
 住宅街を風のように、一人と一匹は通り過ぎていく。


 ママチャリと同じ速度で走る かわうそ? に負けじと食いついている参加者のバイタリティとテンションに圧倒されつつ、
「あわわ」
 余りの凄さに屋根を踏み外しそうになりながら鞘子は後を追いかけた。



「通常ご参加の方は危険ですからこちらには入らないようにしてくださーい」
 交通整理の赤棒をやる気なく振りながら、隣町から交通整理で呼ばれていた、東堂は一人ブツブツと愚痴を述べる。
「はいはい、文句言わない。市民の安全を守るのも公務員の仕事」
 タバコが吸えないストレスからか、少々ぶっきら棒な課長に、
「いや、課長…それは警察の仕事ですよ……」
 と、突っ込みを入れつつ赤棒を振る。
「いいなぁ、俺も参加してぇ!」
 一人、赤棒を振りながら、少々興奮気味の駆音に東堂は冷たい視線を投げかけつつ、
「行けば」
 と一言言い捨てた。

|Д゚) とぉ!!

 あ、ごめんなさーい!

「ゴゲフッ!!」
 東堂が「行けば」と言った瞬間、駆音はその頭をかわうそ?に踏み台にされ、拓海のママチャリに引かれていった。



「あらら」
 かわうそ? に蹴られ、ママチャリに引かれていった公務員さんの姿に鞘子は瞳を大きくして、口元に手をあててご愁傷様ですなどと思いながら、蹴られるという行為でも かわうそ?さんに触れていいなぁなんて思ってしまった。

 公務員さん良かったね!今年の厄払い完了だよ!!

 やっぱり蹴られても触ったことには変わりないから厄払いされたことになるんだ。なんて思いながら、今度は かわうそ? がどういった行動をするのだろう?なんてちょっと期待してみてしまう。
 鞘子はちょうど疾走する かわうそ? と平行して屋根と屋根を飛びながら移動していると、前方にこの辺りの子供が通う中学校が見えてきた。
(あら?)
少し瞳を細めると、中学校の上に人影が見える。
 屋上の人影は中学校へと疾走する かわうそ? に手を振り、呼んでいる。その呼び声に答えるように かわうそ? も屋上へと駆け上がっていく。
 だが、鞘子が一番驚いたのは、あの司会の男の子拓海もママチャリで屋上へと駆け上がっていった事だった。
 あらまぁと、額に手で扇を作って眺めてみると、屋上に降り立つ少女と、それを迎える見知った顔に鞘子は笑顔を浮かべた。
「やっほー千春ちゃん」
 銀野・らせんはスタッと屋上に舞い降りると、大曽根・千春と、ケーキの準備をしている初瀬・日和に駆け寄る。
 かわうそ? は千春の腕の中だ。
「あらあら、らせんちゃんもお祭りに参加してたのね〜」
「かわうそ?くんがお祭りに参加するって聞いたらね☆」
 ドリルガールの姿のままでガッツポーズを取りながら、らせんは周りを見渡す。そこへ、
「すっごーいお茶の用意できてる〜」
 らせんが屋上に降りたのを見て、屋根と屋根の間を跳躍しながら鞘子も屋上に降り立った。
 そして、進められるままにケーキと紅茶を頂く。
 ぽかんとその光景を見ている司会の拓海を尻目に、ケーキをほお張り始める かわうそ? と少女達。
「あの……」
 ギィっと屋上の扉が開き、小さな男の子が一人身体を半分除かせながら、かわうそ? と少女達へと視線を向けていた。腕には『清比良祭り実行委員会』の腕章が付けられている。

|Д゚)ノ 柊〜

「やぁ秋杜」
「かわうそ?…さん!か…会長!?」
 少女4人の視線が一気に自分に向いた事に、多少狼狽した感のあった実行委員―柊・秋杜が、その輪に加わっている かわうそ? と拓海に眼を丸くした。
 タッタッタッと かわうそ? はクリームとスポンジまみれのまま秋杜に駆け寄っていく。
「また…クリーム、口に…着いて、ますよ」
 駆け寄った かわうそ? の口を秋杜はハンカチで拭きながら、顔を上げる。
「あの…屋上は、立ち入り…禁止…なん…です。すいま、せん」
 申し訳なさそうにそう告げる秋杜に、日和と千春は顔を見合わせる。
 ここにお茶の準備を用意したのは自分達だからだ。
「かわうそ?…さんも、早く…戻って、あげて…下さい…ね」

|Д゚) うむ

 それでは、失礼します。と、閉められた扉から かわうそ? は皆の元へ戻ると、

|Д゚) かわうそ?行くなり
|Д゚)ノ またな〜

「じゃ、僕も行きますか」
 ピョンっと屋上から飛び降りるように駆け出した かわうそ? を追いかけるように拓海もママチャリにまたがりその後を追いかけていく。
「じゃぁ私もパトロールに戻りますね」
 かわうそ? を追いかけるようにらせんは飛び上がり、日和と千春に見送られ速度を上げた。
「なんかケーキご馳走になっちゃったけど、正直私まだ かわうそ?くんに触ってないのよね」
 と、鞘子も屋上から一度運動場へと降りると、また近くの民家の屋根へと飛び上がっていった。
「屋根の上を飛んでいくってズルじゃないですかー!」
 何時回りこもうかと考えていた鞘子に、下からぶーっと頬を無眩ませた自分と同じくらいの中華っぽい格好の水嶋・未葛が文句を垂れる。
「ずるって言われちゃうと困るけど、これも手段の一つ、ね」
 と、未葛に笑いかける。未葛は何やら考え込んだように一度視線を落とし、鞘子に笑いかけると、
「なるほどね!ありがと〜」
 と、手を振って去っていった。
「なんだったんでしょう。あの子」
 ちょっと不思議に思いつつ、追走すると、ゴールである神社の鳥居が見えてきた。
(よーし!)
 鞘子は屋根から下りると、鳥居の前へと駆け出す。
 そして、振り返ると、さっきの女の子未葛が鳥居から一番近い出店から手を振っていた。
(まさか…)
 自分と同じようにゴールで かわうそ? を待ち構えて抱っこしようという魂胆か!と、小さな闘志を燃やしていると、かわうそ? が走ってくる姿が見えた。
「かわうそ?く〜ん!」
 なぜさっきお茶をしている時に触っておかなかったのかと後悔しながら、声を張り上げる。

|Д゚)ノ 鞘子〜

「あれ?さっきのお姉さんじゃん」
 シャカシャカというママチャリを扱ぐ音と共に、かわうそ? が走ってくる。

「かわうそ?く〜ん」
|Д゚) 鞘子〜〜

 まるでバックにキラキラでも飛びそうなスローモーションのドラマを演出して、かわうそ? が鞘子の腕の中に飛び――…
「きゃぅ!」
 込まずに、やっぱり頭を蹴りつけられる。
「あわわ」
「え?」
 踏まれた頭の上に暗い影が出来る。ゆっくりと視線を上に向けると両手を伸ばした未葛に押しつぶされた。
「大丈夫?お姉さん達」
 鞘子を足蹴にした かわうそ? は、華麗に空中三回転を決め、鳥居の中で立っている。年ナマモノがゴールすれば、司会である拓海の役目は終わるので、鳥居入り口で潰れた鞘子と未葛を気遣って声をかけたのだった。
「あんもー!」
 悔しそうに鞘子の上でぶーたれている未葛。
「あの…どいて、もらえる?」
 トホホと、ため息を漏らして、せっかく胸の飛び込んだ かわうそ? をそのまま連れ去ろうと思っていたのに…と、鞘子はガクッと肩を落とした。
「でも、いっか」
 かわうそ?に蹴られた事で、一応お祭りの本分は果たせた事だし、と頭に手を伸ばすと、べったりとスポンジ屑が手に着いた。
「………」
 余りの事に言葉を失いかけたが、鞘子は肩をすくめると、クスクスと笑顔をもらす。
 こうして鞘子の清比良祭りは終わりを迎えたのだった。










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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【3524 / 初瀬・日和 (はつせ・ひより) / 女性 / 16歳 / 高校生】
【0170 / 大曽根・千春 (おおぞね・ちはる) / 女性 / 17歳 / メイドな高校生】
【2005 / 牧・鞘子 (まき・さやこ) / 女性 / 19歳 / 人形師見習い兼拝み屋】
【2066 / 銀野・らせん (ぎんの・らせん) / 女性 / 16歳 / 高校生(/ドリルガール)】

【NPC / かわうそ? / 無性別 / ? / かわうそ?】
【NPC / 天津拓海 / 男性 / ? / 中学生】
【NPC / 柊秋杜 / 男性 / 12歳 / 中学生兼見習い神父】
燈ライターより
【NPC / 駆音 (くおん) / 男性 / 28歳 / 広報課員】
【NPC / 東堂俊哉 (とうどうとしや) / 男性 / 29歳 / 広報課員】
緑奈緑ライターより
【NPC / 水嶋・未葛 (みずしま・みくず) / 女性 / 20歳 / 駄菓子屋・幻楼堂の店員】


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■         ライター通信          ■
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 学校の怪談 〜小麦色を触れ!〜にご参加いただきありがとうございます。ライターの紺碧です。かわうそ?さんはこの後、大禊の儀を行わなければならないので、最後に抱っこするという行動はダメになってしまいました。ごめんなさいです。邪魔されたのもありますが(ボソボソ)
 それではまた、鞘子様に出会える事を祈りつつ……