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<東京怪談・PCゲームノベル>


§孤児と裕介と茜


〈めいどあいらんど〉は戦争状態だった。
「おにーちゃん!」
「おにぃいちゃん!」
「あーわかったから、此処は仕事場なんだよ」
 と田中裕介が、子供達をあやしている。
「おねーちゃんどうしたの?」
 この状態で半分石化しているのは学生服姿の長谷茜だった。

 3〜4人の子供がこの異空間にやってきたという。この子供達は孤児院の子供達。

「ホント孤児院の手伝いさんだったのね」
「今までどういう風に見ていた?」
「大きな弟でナマモノメイド魔神。丁度良い玩具」
「其れを言うな。それに最後の『玩具』は何だよ」
 と、漫才続けるほど余裕があるわけでもないのだが。


「つまり、色々忙しく孤児院の手伝いをすっぽかした結果、子供達がはるばる此処まで来たんだ」
 ジトメで裕介を見る茜。
「ううう」
 全くその通りなので言い返せない。
「メイド服にこだわって、他のことにかまけて、初夢を正夢にするとか馬鹿なコトしているからそうなるの。本業はしっかりやりなさい」
 茜はトンデモナイことを口にしている。
「わ、わかっているから……頼みがある」
「何?」
「まだ、見付かっていない子供達がいるんだ。捜してくるね?」
 と、裕介が頼み込む。
「はぁ。甲斐性なしというか、役立たずというか」
 茜は大きく溜息をついた。
「酷い言い方だな」
「事実じゃない」
 苦笑するしかない裕介。
「じゃ、捜してくるね。静香〜!」
 と、パートナーを呼んで茜は出かけた。

 孤児院出身である裕介。そのまま養母の跡継ぎとし孤児院を任されているのだが、こんな状態になっていた。つまり、職務怠慢。
 好きで、そうしたわけではないが、義明に胴を両断にされたり、人の恋路をからかっていたりしていて気がつけば手伝いの“て”の字もしていない有様だ。職務怠慢以外何者でもない。
 結局、裕介に懐いている子供達は、この〈めいどあいらんど〉にまで足を伸ばしたのだ。
 其れを、妹分の茜に捜索手伝いをさせる。
「愚か者」
 と、いつの間にかいるエルハンドが裕介を睨み付けていたのだ。
「師匠……」
 既に、エルハンドにも子供が群がって懐いているようだ。
 やはり年の功なのか、あやし方が上手い。
「お前もいってこい」
「は、はい! 申し訳ありません!」
 裕介は、茜の後を追った。
「おじちゃーん あそぼー」
「ん、どうした?」
 微笑み返すエルハンドは、彼らが見たことがない憧れた父親のものだった。



「で、この子かな?」
「これでは……危ないですね」
 と、静香を連れて、茜は子供を捜す。
 東京は都会のごみごみした印象があるらしいが、実のところ自然も多少ある。
「歌舞伎町……」
 茜は歩を止めてしまった。
 夜の歌舞伎町は危険極まりない。
 今は昼なので、それほど問題はないのだが、捜している子供は違うだろう。
 何処でも同じだが、迷子のお知らせさえできない街だ。
「と、言うわけで、裕ちゃん此処にいるから」
 茜は地図の区画を見せる。ただのよく売っている普通の地図だ。
「ここって……ゲイバー?」
 固まる裕介。
 推測の域だけだが……そこのママが“拾ってくれた”ようだ。
「何故その区画そう言う店を知っているか知らないけど、ハイお仕事――」
 ズンズン押し、“行ってらっしゃい”と手を振る。
 コレといって、問題なく返してくれたママだが、裕介はかなり怒られた様である。
 反省と、何かしらプレッシャーでゲッソリして帰ってきた裕介。
 其れが嫌なので、茜は行かなかったのだ。当然と言えば当然であろう。あと、色々ある訳だろう。


 危うく本当に誘拐され駆けている子供を、裕介が助け誘拐犯を半殺しにしたり、崖から落ちそうなところ、闘気の能力で助けたり、一体どれだけでてきたー! と叫びたくなるぐらいに孤児院の脱走者達を探し、助ける裕介。本人は見つけることはできないので、茜と全体を“見る”静香が必要なのだ。
 心労と疲労でくたくただが、全員無事見つけたのだった。
 流石手伝いで、孤児院生活者。あやし方は上手かった。
 飛び出すぐらいなので、7〜10歳だろう。その腕白軍団を容易くあやす。
「おにいちゃんのこいびとー?」
「お手伝いしてくれている友だちだよ」
 とか言うのも簡単に聞き流すように答える。
 茜のことだ。
 エルハンドの周りには、遊び疲れた子供達が彼の膝枕で寝ている。
 猫も集まり始めているので、更に〈めいどあいらんど〉は戦争状態だ。
 商品を守らなくてはいけないし、子守りもしなくては行けない。
「何故猫もいるのでしょうか?」
「私がいるから誘われてきたのでは?」
 しれっと答えるエルハンド。
 苦笑するしか無かった。

「どうしたの?」
 泣いている子供をあやす茜もなかなか胴にいっている。
「うまいな?」
「なに、慣れているから」
「どうしてだ?」
「色々♪ 内緒♪」
 ニヤリと笑う茜に、何かしら悪寒を感じた。

「ごはん〜」
「ごはん〜」
「にゃー」
 子供がお腹をすかす。
「コンビニじゃダメだからなぁ……裕ちゃん。このメモに書いている食材用意して」
「使い走りか? いいが……。」
 苦笑する裕介。
「なによ? 散々探査機代わりに私と静香を使わせて」
「これ、茜、無茶を言ってはいけません」
 静香は姿を現し、子供をあやしているところ、茜を注意する。
 静香は精霊だが契約者の茜がいないと、更なる力を発揮できないのだ。茜の探査能力などは彼女からの恩恵である。ある地域を守る力はあれども、本体を守る事はできない。何時そうなったのか不明だが。
「お子様が無事でなりよりです」
 優しく微笑む静香だった。
「いえ、まあ……買い出しはしようと思いますので、静香さんも済みません」
 と、走って出かけていった。
「くそ、キャットフードで高価なモン買わせるのか……」
 メモを見てブツブツ言う裕介。
 こう言うとき、かわうそ?がいるなら楽だなと思ってしまう田中裕介君だった。
――何でもできそうな点で。



 食事も終わり、やっと、養母と義姉が引き取りに来てくれて、一段落。
「ありがとう、茜」
 と、頭を撫でる裕介。
「なによ、もう子供じゃないんだから」
 照れている茜だが、なすがままである。

「おねえちゃんばいばい〜」
「勝手に出て行っちゃダメだよ〜」
 と、にこやかに別れを告げる茜と腕白達。
「さて、私たちも戻るか」
 エルハンドも子供達に遊ばれ、しわくちゃになった服や乱れた髪を整え、すたすた帰っていく。
「じゃ、ちゃんと本業を大事に!」
 茜も静香を連れて帰っていった。



――つかれた。
 裕介は溜息をつく。
 確かに疲れたが、少し。
 茜が子供をあやしているときだ。
 彼女は母親がいないのだが、何故か上手かった。多少わからないことがあったが、彼の指導の元で上手くこなす。
 その姿をみて、
――いつか俺も……家庭を持って子供ができれば……
 などと、未来のことを思い浮かべるのだった。

|Д゚) 節操なしが、たわけた夢を

 夜空に小麦色の星が光ったのは言うまでもない。



End


■登場人物
【1098 田中・裕介 18 男 孤児院のお手伝い】


【NPC エルハンド・ダークライツ 年齢不詳 男 正当神格保持者・剣聖・大魔技】
【NPC 長谷・茜 18 女 神聖都学園高等部・巫女(長谷家継承者)】
【NPC 静香 ? 女 精霊】
【NPC かわうそ? ? ? かわうそ?】


■|Д゚) 通信
現在孤児院にいるナマモノ
|Д゚)ノ おつかれー
子供達「ナマモノダー! 噂のナマモノダー!」(襲いかかる腕白軍団)
(;ノД`)ノ いやー!(玩具状態にされる小麦色)

茜「まったくもう」←散々文句言ったようなのでもう言うことはないらしい?
静香「思いを馳せるのは構いませぬが、しっかり本業をこなして下さいませ」