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<東京怪談・PCゲームノベル>


§あかねん大ピンチ

 ある日のこと。
 メイド魔神・田中裕介は、自分の経営する〈めいどあいらんど〉に一つの箱をもって来た。
 箱と言っても、服を1着しまう程度の普通の箱。
 いつもお騒がせしている箱ではない、念のため。


「さて、コレを厳重封印する前に、色々しなくては」
 ブツブツ言うメイド魔神。
 憑き物メイド服らしい。
 服に関して(特にメイド服)はかなりこだわりや其れに見合った知識技術を持つ。いまじゃナマモノ認定されている分、一流を越えて神業か呪いだ。そこまで固執する事があったらしい。
 まず、退魔道具など此処にあるはずもなく、いったん鎌倉に戻るか、家に戻るしかない。しかし、家に帰るのはあまり好きではない。なにぶん居候が悪巧みしているのではないかとたまに悪寒が走るのだ。

 そこで、信頼置ける人物と言えば……
 長谷茜である。
「なにーひまじゃないのよー」
「すまん! この通り!」
 店に呼んで、此の箱を見張ってくれと頼み込む。
「ぶー」
 不満のようである。
 いや不満だ。
 あと、数日後に恋人とデートで浮かれていたのが、一気にこのロクでもないでっかい弟の所為で台無しなのだ。コレを不幸と言わずしてなんと言おう。
 茜にとっては今日一日が厄日となろう。


〈ハリセン巫女サイド〉
 私は、困ったものを押しつけられちゃった。
 ああ、折角のデートでおめかししようとか色々考えていたのに、ばかなメイド魔神によって粉々。
|Д゚) まーそう落胆しない
 かわうそ?が慰めてくれるけど、あまり良い気分ではない。
 この子はそんなに、悪いことしないし(かなり限定されると思うけど)。
 裕ちゃんをからかったりする時はとても役に立つ友だち。
|Д゚)b グッド
 でも、それ以外では役に立たないナマモノ。
|Д゚) がびーん!
 だってそうじゃない、ギャグにしか出てこれない存在なんだから。
|Д゚;) まーそういういちづけなんだけど、酷くない?
「さて、監視と言っても“絶対箱を開けるな”と言われてもねぇ」
|Д゚) うみ
 言ってる側から、かわうそ?が開けようとしているので、
「だめー」
|Д゚) なぅー
 ジタバタする謎生物を箱から離す。
|Д゚) 好奇心
「其れはわかるけど。お仕事なのよ?」
 わかっている、わかっているけど……。
 そんな危険物を何故、平然とこの店に持ってくるのかしら?
 気落ちしているし、占術など使う気もないし。
 なにより、裕ちゃんが信用してこう頼まれたのだから、しっかりこなさないと。
 報酬で、50万円以上の洋服やメイド服を貰って帰るんだから。
|Д゚) すげー事思ってる茜。
「そうじゃない? 呪われた服なら尚更じゃない?」
|Д゚) む、確かに

 それでも、かわうそ?が言っている好奇心は私にもある。
 簡単な理由だ。
 《こんなところ》に持って来るぐらいなら、自宅か養母のあの方のほうに行けば事が済むのではと思う。
 しかし、《こんなところ》に持ってくる、否、持って来れないというなら、中身は十中八九……、

 メイド服だ。

「はぁ、何て言うか、変態とか節操なしとか、言われても仕方ないよね」
|Д゚) ナマモノだし、深く考えるな
「いや、かわうそ?が言っても……ああ、認定したのはあんただった」
|Д゚) ふふふ
 ため息吐いて、あまり人の来ない〈めいどあいらんど〉で暇をもてあます。
 ヤッパリ気になる。
 とっても気になる。
 どんなに呪われていようとも、どんなステキなクラッシックタイプなら可愛いだろうなぁとかおもっちゃうわけで。
 裕ちゃんの所為です。メイド服を着る趣味にハマったの……。
 別に「ご主人様」とか言いたくないけどね。

 そんな言っている側から、かわうそ?が
|Д゚) 開けて良い? 開けて良い?
 と、尻尾をパタパタ振って開けようとする。
「だめだって……裕ちゃんに怒られるよ」
 と、好奇心を抑えて注意する。
――開けて……
 声がした。
 それから私の記憶は無くなっている……。
 声に逆らえなかった。不覚……。
 静香置いて来ちゃったし……。あああ。


〈メイド魔神サイド〉
 俺は呪いのメイド服の正体を見極めるべく、依頼主以外から色々情報を手に入れようと義姉や養母から聞こうと考えた。顰めっ面するかも知れないが、仕方ないだろう。
 居候は役に立たないし、俺の仕事だ。
 しっかりしている茜なら、監督できるだろうし。

 凄く、怒っていたからバイト料は奮発しないとな……

 と、後のことを考えると溜息がでる。
 出所、経緯、効果、大体のことはわかってきた。しかしどうも引っかかる。
――見たことがあるのだ。
――記憶の何処かで。
 それは、思い出しては……
 取り返しのつかないことに……

「依頼主の話では、過去に主人と結ばれなかったメイドが乗り移っていると言っていたが……」
 どうも、あの質感ではメイドが存在していた時代とはかけ離れている。
 普通、綺麗に仕舞っていても、何かしら時代を帯びて色褪せるはず。
 手入れをされてなければ同じだ。
 確かに憑依されていれば其れはなくなるが……。
 魔術により保護された物品や、九十九神と言う類なら、保存状態の有無は関係なくなるし。
 そして、神聖都ではなく、自分の母校、神室川で情報を集めた時、
「あ、それあんたの元カノジョのモノじゃないのか?」
 と、あっさり、何故かわからないが……
 思ってはならないコトを言われた。

――樟葉が憑いている?

 急いで駆けだした。
 うそだ! 嘘だ!


 そして、急いで戻った。

 ゆらりと、茜があのメイド服を着て……
「やっと会えた。裕介」
 と、涙していたのだ。
 近くにいる小麦色のことなど、気にしてられない。
 声が、頭の中に……響く。


〈どっちもピンチ〉
 取り憑かれた茜は裕介に迫る。
 裕介は、抵抗しようにもできない。
 なぜならば、過去に愛した人が今まさに、その場にいる。
 拭えない後悔、立ち直るために彼女の趣味を継いだという。
「樟葉…………」
「会いたかった。ずっと、会いたかった。だからこれからも一緒に……」
 と、裕介に迫る茜に取り憑いた樟葉。
「いや、しかし……お前は……既に」
 抵抗を試みる裕介。
「もう! いつものように迫っちゃう!」
「お、おい! まて!」
――いつものようにって何だよ!
 と、樟葉が我慢ならないのか、茜の身体を借りて裕介を押し倒す。
「ご主人さまぁ」
 甘い声、
 そして、裕介の弱点を触っていく。
「や、やめろ……そ、そんなこと、しても、お前は……」
 抵抗できない。
 すっぽり空いた空洞を埋めたかったのは裕介も一緒なのだ。
 次第に心も、支配されてしまうだろう。
「茜の身体を借りてまで……樟葉、俺にとって、茜は大事な妹だ」
「あらいやだ、この子のこと一度は惚れていた癖に……」
「ううう」
 痛いところを突かれる。
 それでも、樟葉は……ニコニコ笑って、裕介を触っていく。
 過去の再現で、裕介の理性というリミッターが解除され。
「くっう、だ、だめだ……!」
 もう、懐古か、欲望か、裕介は茜・樟葉を抱きしめて……

「な、なにしてんですかあ!」
 聞き覚えのある女性の声で理性が戻った。
「れ、麗花さ……ごふぅ!」
「不潔よ、不潔! 色魔、淫魔、変態〜!」
 あとは、なんと言えばいいのかわからない言葉とともに、裕介を拳の雨霰で血まみれにした。後締め付ける。
 その行動を起こしたのは、星月麗花。カトリックシスターである。
 いつも腹黒枢機卿、ユリウスなどに困り果てているヒステリーシスターであるが、何処で覚えたのか、格闘技はかなりモノものらしい。
 格闘技に長けているはずの裕介があっさり撃沈するのだからだ。
|Д゚) 報告間にあった……。麗花、それ以上すると死ぬ。魔神はナマモノ、死なないけど。
 小麦色が、なんとか麗花を止める。
 其れを見て、呆然とした樟葉は茜から離れる。
「あれ? 私? ああ!」
 自分の姿とやっていた行動を把握したのか(勘違いの方が強いだろう)、真っ赤になって、二階に逃げていった。
「あ、茜!」
「うえええーん! 裕ちゃんに汚されたー」
「そ、そんなことはない! 話を……!」
「裕介さん、恋人がいらっしゃる茜さんを!」
 また、麗花の拳の乱舞が裕介に……。
 このままだと、終わらないので……。

〈結局は〉
|Д゚) 旦~~ と言うことらしい……
 泣いている茜、未だ怒っている麗花、既に優男の見る影もない裕介と、幽霊の樟葉。未遂に終わっているだけで、何も此処までと言うことはないと調停役中のナマモノ。
「ご、ごめんなさい」
 幽霊は謝る。
「いえ、そう言うことでしたらその……」
 麗花は縮こまる。
「えーん、えーん」
 聞いてないのが1人いるが、気にしない方向が良いのだろうか?
「再会もできたのですし、暫く、えっとなんでしょうかその、此処でバイトをしてみればいいのではないでしょうか?」
 と、麗花が樟葉に言う。
 一線をこえて無い(はずだ)、茜も不満ながら其れには賛同らしい。

「では、お言葉にあまえまして、宜しくお願いします」
 と、幽霊はお辞儀をした。
 ともあれ、幽霊は〈めいどあいらんど〉に居残ることになった。
 裕介の野望というか、未来予想図は一変する要因ができてしまったのだ。
 前途多難というか、自業自得というか、何とも言えない状態であるのは変わりない。
 茜と麗花はそれからと言うもの、メイド魔神から1.5mは離れようと心がけているらしい。
|Д゚) まーあんなことがあれば、暫くそうなる。
|Д゚) 平和……
「平和じゃない!」
 裕介は小麦色を空高くけっ飛ばしたのであった。


おわりというか……多分つづくんじゃない?


■登場人物紹介
【1098 たなか・ゆうすけ? 18 男 メイド魔神】

【NPC 長谷・茜 18 女 今回メイドのバイトさん+被害者】
【NPC かわうそ? 既に説明不要】
【NPC 星月・麗花 19 女 教会のシスター・ネクロマンサー見習い】

【Guest 樟葉 メイド服に取り憑いていた、裕介の元彼女の幽霊】

■|Д゚) 通信
|Д゚) メイド魔神節操なし
|Д゚) 茜ピンチ。でも、何とか間に合った。
|Д゚) あのままだと……死ねたかも
|Д゚) ギャグだから死ねないけど
|Д゚) ナマモノ・メイド魔神がんばれ。いやいっそ……(ぷ)
|Д゚) ふふふふ(不気味な笑いを残す小麦色)