コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<白銀の姫・PCクエストノベル>


Ghost Castle

 ジャンゴから1日半かかる丘の上に夜になると現れる半透明の廃城があるという話が持ちきりになった。
 そこの奥にいる、主のなぞなぞに挑戦し勝てばアイテムと脱出ができるそうだ。
三下「いやですよぉー!! こわいじゃないですかぁ!」
嬉璃「うるさいんぢゃー」
 酒場では話しを聞いて三下は恐がり叫び、嬉璃が怒鳴る。
 あやかし荘から此処に引っ張り込まれた二人。
零「相変わらずですね」
草間「いや、何て言うか……のんびりしていられんぞ?」
雫「たのしそうじゃない?」
 此方も、何だかんだ引っ張れ込まれた3人の勇者。
 他の“勇者”達も物は試しに向かう人もいる。

 それぞれは別行動であの夜の城を目指す。憑いている(?)女神がそれぞれ違うために。
 さて、あの城に何があるのか?
 無事に帰ってこれるのか?


1.酒場にて
「未だよくわからないわね」
 シュライン・エマは眉間に皺を寄せていたころだ。
 図書館で世界の成り立ちや、言語について調べていたわけである。
「少し休憩かしら」
 と、いつも集う酒場に戻ると、
 馴染みの顔がワイワイ騒いでいた。
「どうしたの?」
「姉さん!」
 と、零が駆け寄って“Ghost Castle”の話をする。
「う〜ん。皆の役に立つような物が手に入ればいいのだけど」
「ですよねぇ」
 二人して考える。
「確かに大きな手がかりを持つのなら願ったりかなったりだ。ただ、出ることができないとなると難しい」
 草間が煙草を吸いながら、頭をかいていた。
「さてと、此処でぼうっとしても仕方ないわ、あたし達も行きましょう」
「って? 俺も、か?」
 シュラインの言葉に草間は目を丸くする。
「当たり前じゃない」
「なんと言うことだ」
「何を言っているのよ。帰りたいなら動かないと」
「たしかに、図書館で缶詰生活はもう飽きた」
 草間が重い腰を上げた。
 そして装備の支度というわけだが、
「俺はよくわからん」
 と草間は言う。
 何せ、この世界というのはよくわからない。科学技術と魔法が両方存在していると言う以外では近頃良くあるRPGと変わらない。其れが異界化したという時点以外コレといった重要情報がないのだ。
 シュラインは街の図書館で様々な知識を手に入れるため良く通っている。
 それでも、よくわからないことが多かった。
 其れに、全ての情報を本で得られるわけではない。冒険が必要になる。
「懐中電灯に、予備電池、あと、筆記用具など必要ね。聖水はルチルアちゃんから買えばいいかしら?」
「そうですね」
 異界の中でも買い物という物は楽しい。
 “完全な帰還”を草間も、シュラインの様子を少し笑って眺めていた。


2.出発
 装備が整い、
「あまり戦わない方向が良いわね」
 と、シュラインは言う
「では……私は他の人を抑えに行きます。多分嬉璃さんが三下さんを虐めているでしょうし」
 零は手を振って走っていく。
「やれやれ、じゃ、2人だけか?」
「そうみたいね。慎重に行きましょう」
 と、目的地に向かった。

 遠くから半透明に見える城、蜃気楼のよう。
 しかし、近づくにつれて、其れはしっかりとした城だった。
 大きな城という訳ではないが、“砦”か“小さい城”を連想させる。日本の住宅事情からすればそれでも大きいモノだろう。
「近寄らせないための、カモフラージュってわけね」
 このゲームの視点が“人間の視点”であれば、確かに効果はある(上から見下ろす場合あまり意味がない)ものだ。
 門は開いていた。
「おじゃましまぁす」
 と、シュラインは心の中で呟き入っていく。
 草間は念のため、銃をもち、シュラインを守る事に専念する。
 中は暗い。20mはあるのだろうか? 広間を通り抜ける。
 意外に静かである。
「おかしいわね」
「おそらく迷っているか……」
 草間は、いきなり聖水をシュラインの後ろに投げつけた。
「な! 何するの!」
 驚くシュラインに草間は彼女の指をさした。
 聖水で苦しむ幽霊……それがシュラインを襲おうとしていたのだ。
「音のでないアンデッド?」
「のようだな」
「ありがと」
 銀製の弾を用意して、草間とシュラインは進む。

 大きな廊下から何処かで聞いた声がする。
「たすけてくださぁい」
「あの声は三下君?」
 警戒しながら、その場所まで進む。当然地図を簡単に書きながら、だ。

 三下が、壁に埋まっていた。
「……石の中にいるってどこかのゲームにあったわね」
 シュラインが苦笑する。
「勇者になっているのに情けない」
 草間は煙草を吸って溜息を吐く。
「好きでなったわけではないですよぉ」
 完全に泣きべその三下。
「モリガンさんが何れ助けに来てくれるでしょう、あたしじゃ助けることができないわ」
「ううう」
「で、何か手がかりとかわかる?」
「えっと、ですね……この先にいる、謁見の間の城の主との謎々を間違えたらこうなっちゃったんですぅ〜」
 大泣きする三下。
「はぁ……なるほどね。ありがとう」
「僕は、僕はどうしたらいいんですかぁ?」
 哀願する三下。
「どうって言われても……ねぇ」
 シュラインがお手上げのポーズ。
 多分、ジャンゴにいるモリガンも溜息をついているだろう。
 なにぶん、知らないルールが多いのだ。
「ま、モリガンにすくいを求めろ。そうすれば生きて帰れるさ」
 草間はもう行くぞとシュラインを引っ張っていく。
「ごめんなさいねー」

「あああ! たすけて〜!」

 情けない勇者の叫びが城を木霊していた。

 確かに、冒険者や勇者の“なれの果て”を見かける。半透明のオブジェになっていたり、三下のように壁にめり込んでいたり、している。
 生きて帰れないというのは、一度ジャンゴに転送される事になり、此処での記憶を少しだけ忘れるのではないだろうかという事だろうか。其れは蜃気楼のように。
「戦いに来た訳じゃないから? あれ以降なにもないな?」
「そうね、それだけリスクがあるのかしら?」
 2人でどんなものか思案する。
 ファンタジーにおいて謎かけというのは文章自体も謎だ。詩的であり、其れを読み間違えると外しやすい。スフィンクスなどの謎かけのようなものだろうか?
 そして、謁見の間にたどり着いた。


3.答え
 謁見の間は、時代を感じさせるほど、錆びた大きな鉄扉だ。
――我に何のようだ?
 と、軋む音を立てながら、扉が開く。

 薄暗がりの中、
 半透明の城の主が玉座に座っていた。
 輪郭だけ王として残っている様に見えるが、それは違うだろうと、シュラインも草間も感じている。
「我がなぞなぞを解きに来たのか?」
「そうです」
 シュラインが答える。
 主は、ふむ、と行ってから、
「一つしか言わぬ。よく聞いて答えよ。間違えれば、此処まで来た愚か者のようになるぞ?」
 主の言うことに頷くシュライン。

――では始めよう。
  私はあなたに必要なモノ。役に立つときあれば、無駄なときもある。
  私はあなたが求めるなら沢山あり、求めなければ少ない。
  私がなければあなたは役に立たない。私は何?


  

 暫く時間がながれる。
 主は永遠を生きる感覚を持っているらしく、急かすことはなかった。
 シュラインは考えた。
――時間、かしら?それとも…知識? んー……時間だと配分の問題だし、平等だから……知識の方かしらね。
 悩み抜いた結果、決まった。
「知識よ」

 静寂

「聡明なる女性よ。良く答えた」
 主は満足そうだ。
「では、コレを受け取るとよい」
 と、奇妙な水晶球……オーブを渡してくれた。
「コレに、隠された知識が眠っておる。ソレを引き出せるのはお主による」
「ありがとう。質問があるのだけど?」
「其れはその宝珠に訊くがよい」

 と、城の主は幻のように消えて、城も消えた。

 気が付くと、城はなく、朝日が昇っていた。
「……知識ね……」
 シュラインは虹のように色とりどりな波をもつ拳大サイズの綺麗なオーブを眺めて、呟いた。
――知識を探求せよ。
 と、其れが囁きかける。
「何にせよ、無事で良かったな。何か役立ちそうだ」
 草間は、煙草を美味しく吸っている。
「そうね」
 シュラインは、朝日の風を気持ちよく感じた。
 まだ、この世界の謎はわからない。
 しかし、導いてくれるものが手に入った。
 図書館での缶詰は多少楽になるだろう。


 まだ、冒険は始まったばかりなのだ。


End


■登場人物
【0086 シュライン・エマ 26 女 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】


■ライター通信
 滝照直樹です。
 Ghost Castle に参加して下さりありがとうございます。
 知識の宝珠を上手くご利用して下されば幸いと思います。

 謎かけや、パズルなどこの文章タイプでは難しいかなと思いました。

 又機会が有れば、宜しくお願いします。