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<白銀の姫・PCクエストノベル>


Fairy Tales -another- 〜湖の騎士〜


 Tir-na-nog Simulatorの中にある擬似世界ゲーム「白銀の姫」が異界化したその日、開発スタッフの一人が謎の意識不明で病院に運ばれた。



【フラグ1:Alea jacta est】

「あそこで壺磨いてる娘、居るだろう」
 アリアって言うんだけどね、と数日前からこのアンティークショップ・レンで見られるようになった白い髪の少女。店主である碧摩・蓮に何を吹き込まれたのかお客に対して「ご主人様」などと言う不思議な少女だ。
「彼女、誰かに似ているわね」
 一つ磨き終わり、次の壺へと移動していたアリアを見つめ、シュライン・エマは呟く。確かに見た事はあると思うのだが、それが誰なのか思い出せない。
「不思議な女性ですわね…」
 シュラインの隣で優雅にお茶を頂く、なぜか漆黒のナース服を着込んでいる海原・みその。
「流れが、読めませんわ」
 血の流れる生き物ならば誰であろうとも読み取れる、血族の流れがアリアからは読み取れない。
「不思議で当たり前さ、あの子はあそこに置いてあるパソコンから出てきたんだよ」
「「は?」」
 蓮の爆弾発言に、みそのとシュラインは顔を見合わせる。
「パソコンって言うと、アレみたいだよね〜」
 一人壁にもたれかかるようにして、話を聞いていた御守殿・黒酒が面白半分に比喩したような言い方でにっと笑う。
「パソコンから人が出てくるなんてねぇ。流石のあたしもビックリさ」
 冗談めかしてそう言いながら、キセルの灰を落とす蓮。
「こんにちは」
 そこへちょっと小難しそうな青年が一人、店の中へと入ってくる。
「いらっしゃいませ」
 数日前からこのレンで働き始めているアリアが、青年に声をかけ、また棚においてある壺磨きを開始する。
「お客みたいだね」
 今日はあの子の事をお願いしようと思ってたんだけどね〜などと一人愚痴て、
「ちょっと待ってておくれよ」
 その声に呼ばれるようにして蓮は立ち上がると、青年を迎え入れる。
「あの、ちょっと前にここに売られたと思うパソコンを、引き取りたいんですが」
 蓮は青年の言葉に、あぁアレか…と、今まで話題にしていたノートパソコンに視線を移動させる。
「うわ……」
 お客である男性も蓮の視線を追いかけ、机の上で潰れているノートパソコンを見つけるとあからさまな声を漏らす。
「あんなんでよければ、持っていきな」
 男性は手を伸ばしパソコンを裏返すと、ほっとしたような息を漏らす。
 最新電子機器の扱いに疎い蓮は、男性がどうしてほっとしたような顔を浮かべたのか分からずに首を傾げるが、当の男性は本当に嬉しかったのかノートパソコンをポンポンと叩く。
「あ!的場先輩、こんな所に居た!」
 青年を追いかけるように店の中に入ってきた女性。
「は…白銀の姫が、黛くんが大変なんです!」
 女性の言葉に、アリアがピクリと反応する。
「黛くんが何で!?」
「もう言葉じゃ説明できないです!とりあえず戻りましょう!!」
 女性は青年の腕を掴み、強引に店の外へと連れ出す。青年は余りの事に驚きつつも、一度蓮に振り返る。
「じゃ…じゃぁこれ頂いてきます!後日また伺わせていただきます!」
 女性に引きずられるように店を後にした青年の背中を見つめ、蓮は店の奥へと視線を移動させる。
「なぁ、どう思う?」
 蓮の視線を受けて、お互いが顔を見合わせる3人。
「どう思うも何も、白銀の姫は今都市伝説にさえなってるゲームよ?蓮さん」
「わたくしの妹も、確かそのゲームにはまっていたように思いますわ」
「ボクも白銀の姫は気になってたんだよね〜」
 どうやら3人とも知っているらしい情報に、蓮はふむっと腕を組むと、
「あたしゃそう言った事には、てんで疎いからね〜」
 確かに、アンティークショップを営んでいれば新しいものよりは古いものに詳しくなるかもしれない。
「とりあえず、追いかけるっかなぁ」
 バイクの鍵を指先で回し、黒酒は二人が出て行った先を見つめる。
「わたくしもご一緒いたしますわ」
 妹が参加しているゲームがどんなものなのか気に掛かる。それに、御方様へのいいお土産話ができるかもしれない。
 パタパタとレンから出て行く黒酒の後を追いかけるみその。
 数秒後、バイクが走っていった音が、レンの店の中に響いた。
「蓮さん。お願いがあるのだけど」
 二人が出て行ってから数秒後、シュラインは口を開く。そして、後日また来ると言った彼と話が出来るよう交渉する。
「あぁ構わないさ、まるで話しが分からないあたしよりは、シュラインの方がいいだろう」
 その言葉に、シュラインはお礼の言葉を述べ、彼が見せに来たら連絡してくれと、店を後にした。
「あの…蓮様……」
 お客様との交渉中は口は挟むべからずを守りきったアリアは、おずおずと蓮に話しかける。
「あぁ、アリアははくぎんのひめから来たんだっけねぇ」
 それなら気になっても仕方が無いか、と蓮は店の戸を閉じた。



【フラグ2:vivere est militare】

 気が重い面持ちで、先日レンから連れ出されるように連れ戻された的場・要は、パソコンのお礼を兼ねてレンに訪れた。
「先日はすみませんでした」
 菓子折りを手に店の中へ入ると、的場は壺を磨いていた少女―アリアに詰め寄られた。
「貴方は創造主とはどういう関係なのですか!?」
 先日的場を迎えに来た女性の言葉に出た『白銀の姫』に反応したアリアは、もう一度来ると言った的場を待っていた。
「えっと…君は?」
 的場は訳が分からずにオロオロとアリアの顔を真正面に見据える。
「そう急かすんじゃないよ、アリア。シュラインが来るまで待つんだ」
 店の奥から出てきた蓮の言葉に、アリアは落胆すると店の奥へと戻っていく。
「あんたと話したいって人がいてね、ちょっと待ってもらえるかい?」
「えぇ、まぁ」
 蓮の言葉に的場は曖昧な言葉を返し、菓子折りを手渡すと差し出された椅子に腰掛ける。数分後、シュラインが店へとやってきた。
「ありがとう、蓮さん」
「あぁ気にするんじゃないよ。あたしにはてんで分からない内容だからね」
 嘲笑とも取れる苦笑をもらして、蓮は店の奥のアリアを呼ぶと、的場が持ってきた菓子折りを肴にお茶を淹れさせ、そのままその場で話しを聞くように促した。
「初めまして的場さん。私はシュライン・エマ」
「初めましてシュラインさん。的場・要です」
 シュラインはにこっと笑顔で片手を差し出し握手を交わす。そして、すぐさま本題に切り替えた。
「的場さん、貴方が『白銀の姫』の関係者らしいと聞いてお話しを聞こうと思っていたんです。先日、そちらに黒酒くんとみそのさんがお伺いしたと思うのだけど、私が聞きたいのはそれとはまた違うと思うの」
「どういう…事ですか?」
 差し出されたお茶の湯のみを握り締めシュラインの言葉がまるで分からないといった風貌ではなく、どこか思い当たる節があるからこその同様が的場から見て取れる。
「私も、白銀の姫に取り込まれた人間の一人なの」
「「え!?」」
 驚きの声を上げたのは、目の前の的場と、話しを聞くように立っていたアリア。
「どうして今此処に?」
 そう、的場の後輩黛が消えた理由だと思われる、ゲーム内への旅立ち。
「今ゲームの中には女神と言う存在が居て、彼女達にお願いすれば現実世界へと戻れるんです」
 ただし、これには条件があって、勇者―現実世界の記憶を持ったままゲームに取り込まれた人間に限る。
「私は、その女神の一人アリアンロッドのコピーです」
 話しを聞くだけのつもりだったアリアが一歩二人に歩み寄る。
「あぁ、だから見た事があったのね」
 シュラインはどうしても彼女に会った事があるのに何処出だか思い出せなかった理由が分かった。見たと言っても一瞬だったのから記憶に薄かったのか。
「あの、待ってください。最初から説明してくれませんか?僕は確かにただのゲームだった時の白銀の姫に触れていましたけど、この今の現状は僕たちには分からないんです」
 うろたえる的場に、シュラインとアリアはどちらが先に口を開こうかと顔を見合わせると、シュラインが先に口を開いた。
「白銀の姫が人を取り込むと言う都市伝説が生まれている事はご存知?」
 シュラインの問いかけに、的場は頷く。シュラインはそれを確認すると言葉を続ける。
「さっき、私も取り込まれた人間だと言いましたよね、そして帰ってくる事が出来た事も」
 これにも、的場は頷く。そして、口元に手をあて少し考え込むように視線を落とすと、
「だったら、白銀の姫に取り込まれたらしい黛くんも帰ってくる可能性はあるんですね」
「勇者としてゲームに降り立ったのなら、私の力で送還することは可能です」
 ゲームの世界から来た実際の女神(のコピー)が答えたのだからコレは本当なのだろう。
 そして、的場は恐る恐ると言った感じで顔を上げる。
「勇者としてゲームに降り立たない人も、いるんですか…?」
 超常現象に対しての耐性・力を持った人間は、現実世界の記憶を持ち白銀の姫に降り立つ事が出来る。取り込まれたと言う概念があるからこそ、外に、元の世界に戻りたいと思う。だから一度勇者となった人間は、ゲームと現実世界を行き来できるようになる。
 だが、何の力も持たず超常現象に対しての耐性もない人間は、白銀の姫に降り立った時点でノンプレイヤーキャラクター所謂NPCとして白銀の姫の世界で暮らす事になる。
「そして、世界の不正終了が行われる事で、不正分子として排除されます」
 残酷なアリアの言葉に、的場は瞳を白黒させ、頭を抱える。
 関係者であった的場にもこの目の前のアリアに対しての疑問だってあるのだろうが、今は突きつけられた現実を理解する事で精一杯のようだった。
「それで私は、ゲームの世界で唯一現実世界と繋がっていると言う場所を探しているの。そこから、取り込まれNPCと化してしまった人たちを助けるために」
 タイムリミットは次の不正終了。
「そんなものが、あるんですか?白銀の姫はゲームですよ!?ネットワーク上で展開されていた…今は凍結してしまったゲームなんですよ!」
「なん…ですって…」
 現実で稼動するはずが無いゲームが、都市伝説となって人を取り込む。
 そして的場のこの言葉に、アリアが口元を震わせ瞳を見開く。
「創造主は私たちを見捨てたのですか!?」
 アリアは攻め立てるように的場に歩み寄る。
「さっきから貴女が言っている創造主って、浅葱先輩の事ですか?」
 アリアは祈るように胸の前に手を置くと、名を告げる。
「そうです、コウタロウ・アサギ。創造主の名前です」
 アリアの言葉に的場は瞳を逸らし薄く笑う。
「そう、ですよね…実際あの世界に息を吹き込んでいたのは、浅葱先輩ですもんね……」
 自嘲気味の笑顔を浮かべた的場は、一気にその場にうな垂れると叫んだ!
「浅葱先輩が死んで!都波先輩も倒れて!僕たちだって、本当は……!!」
「え……?」
 今的場は何て言ったのか?
 アリアは心がどこかへ飛んで言ってしまったかのような喪失感に襲われる、だが自分が取り乱すよりも前に、目の前で泣き崩れている的場。
「アリアちゃん。創造主が居なくなったって、的場さんは関係者だって言ってたもの。世界を救う手立てはまだ残ってるわ」
 シュラインは立ち尽くしているアリアを励ますように声をかけ、的場に振り返り問いかける。
「的場さん。私達はこの怪異をどうにかしたいと思っています。本当に心苦しいのだけど、的場さん達に話を聞かせてもらえないかしら?」
 シュラインの言葉に、的場は肩を落としたまま、ポツポツと語り始めた。
「僕たち『白銀の姫』開発チームに異変が起きるようになったのは、浅葱先輩が死んでからです」
 並外れたプログラマーだった浅葱・孝太郎。白銀の姫の全ての根源を司っていた彼が死んだ事で、企画その物が凍結されようとしていた。だが、この白銀の姫を諦めていない人がいた。
 それが、研究室チーフの都波・璃亜。
 彼女はいつでも白銀の姫が息を吹き返させられるように、世界だけは作り続けていた。ある日、白銀の姫を起動させているサーバが異常をきたす。その異常に気付いた時には、璃亜はもう意識不明で倒れていた。
 そして先日、試験プレイヤーだった黛・慎之介が消える。
「その浅葱くんが死んで、都波さんが意識不明……」
 この言葉を聞いた時、シュラインの中で一つの仮説が生まれる。だが、まさかと思いたい。
「白銀の姫を動かしているサーバの近くで、意識不明で倒れていたのよね」
 確認するように復唱して、シュラインは問いかける。
「はい」
「これは私の仮説なのだけど、その都波さんの魂だけが白銀の姫に取り込まれてしまっているって事、ないかしら?」
 白銀の姫が異界化して生まれた『妖精』という不可解なイベント。
「そんな事――…」
 と、的場は言いかけ、ゲームの世界から逆に出てきたと言うアリアを見て、口をつぐむ。
「的場さん。その都波さんの写真なんかあれば見せてもらえないかしら」
 加えて、白銀の姫に置いての『妖精』というイベントがどういったものであるのか、と。
 その後、生気をなくしてしまったアリアを何とか宥め、自分がどうにかして見せますから、と根拠の無いたんかを切った的場を励まし、シュラインの一日は終わった。





 翌日、的場に教えられるままに、白銀の姫のシナリオを書いたと言う人物に会うため、シュラインはアトラス編集部もある白王社へと来ていた。
「広野・朝芽さんにお会いしたいのだけど」
 翻訳の仕事でなんどか訪れている白王社では、もうシュラインの顔は知れ渡り、すんなりと彼女の元へと案内してくれた。
「私が、広野・朝芽です」
 訝しげな表情を隠せないまま、朝芽は自分のデスクからシュライン前まで来ると短く自己紹介を交わす。
 その後、編集長とは顔見知り名事もあり、シュラインは白王社内の簡易喫茶で朝芽と軽くお茶でもしながら、本題である質問を投げかけた。
「白銀の姫のシナリオですか?」
 私が知っている分だけでいいですか?と念を押され、シュラインは頷くと、朝芽は語りだす。
 それは、件の不正終了が起こる邪竜復活のその後や、もっと後に予定されていた部分も含まれていたが、シュラインが聞きたかったのは、その中の妖精シナリオ。
 朝芽はしばし考えるように瞳を泳がせると、
「妖精はアレですよ妖精の眼<グラムサイト>で見えるようになる隠しキャラクターで、魔法使いキャラクターに妖精魔法を伝授してくれるって言うイベントですね」
「え…?」
 シュラインがゲームの中で見た妖精は、明らかにそんな風貌ではなかった。だが、この朝芽の言葉でゲーム内で彼女が言っていた「もっと先のイベント」の意味が分かる。
「妖精は、アヴァロンへ行くためのイベントじゃないの?」
「アヴァロンへ行くためには、私は確か王の墓を知る者に出会うべしっていうシナリオにしたと思います」
「その話し、詳しく教えていただけないかしら?」
 アヴァロンはその名のとおり、アーサー王の墓碑がある伝説の地。そしてアーサー王伝説に置いて、ただ一人エクスカリバーを湖に捨てる役目を仰せつかった人物が居た。それが、『墓を知る者ベディヴィア』彼から話しを聞くためには『リア・ファレル』を持ってくるように言われる。『リア・ファレル』1つと引き換えに、1PCをアヴァロンへと飛ばす。
「ヴェディヴィアは何処に居るか知っているかしら?」
「ごめんなさい、私はシナリオを書いただけだから…」
 どこに実装されたかまでは知らないです。と、付け加え、彼女は瞳を伏せる。
「白銀の姫って、今…都市伝説になっちゃってるみたいですね」
 記者と言う職業上そういった情報は流れてくるのだろう。しかもそれが自分が多少なりとも関った事があるものなら気にならない方がおかしい。
「お話しは以上ですか?なら、私は仕事に戻りますね」
「え?えぇ、ありがとう」
 朝芽は逃げるように席を立ち、簡易喫茶から駆けて行った。
 そして朝芽の居なくなったテーブルで、シュラインは一人考え込む。

 意識の無い研究員。
 本来あるはずの無いイベント。

 シュラインは何かを決意したようにぎゅっとショルダーバックの細い紐を握り締めると、椅子から立ち上がった。
 そこへ、携帯の着信音が鳴り響く。
 立ち上がったまま携帯を開くと、的場から写メールが送られてきていた。

『この人が、都波璃亜先輩です』

 の一言をつけて。
 髪の長い人当たりのよさそうな温厚そうな微笑を浮かべた女性。情報の何処に必要性があるのか分からないが研究員独特の白衣に身を包んでいる。
 あの妖精の顔がノイズにぶれて原型をとどめていなかった事が悔やまれた。



【フラグ3:usus est magister optimus】

 差し出されたコーヒーをただひたすら混ぜながら、不機嫌を全身から滲み出している黒酒。
「シュライン様は『はくぎんのひめ』とどういうご関係がおありだったのですか?」
 優雅にココアを口に運ぶみその、そっと瞳をシュラインに向けた。
「私も『白銀の姫』に一度取り込まれた人間なのよ」
 上手い具合に現実世界とゲームをやりくりしているシュラインに、流石だと思わざるを得ない。
「でもさ〜、当事者が一番何も知らないってよ〜く分かったよぉ」
 黒酒が不機嫌の理由。それは、黒酒が知りたいと思っていた情報を製作者側が殆ど知りもしなかった事。
 どうして白銀の姫が人を取り込むようになったのか。
 これじゃ、自分の方が詳しいのではないかと思わされる。
「あら、私はそうでもなかったわ。黒酒くんとみそのさんは白銀の姫には行った事がないのね」
 本当のアヴァロンへと向かうイベントフラグの立て方が分かっただけでも、アスガルドに居る草間や潤の助けになる。シュラインにとっては嬉しすぎる偶然だった。
「わたくしも、妹に出会う事が会ったらお話ししておきたいと思いますわ」
 妹がやりこんでいるゲームに興味があっただけのみそのだったが、事の他精神的ダメージを受けている開発チームを見て、どうにかできないだろうかと多少思い始めていた。
「ま、でも〜これは役に立ちそうな情報だと思うんだよね〜」
 白銀の姫を動かしているサーバ。
 スーパーコンピューター『Tir-na-nog Simulator』。
 何処にあるかまでは聞きだす事が出来なかったが、大学にあることだけは確かだろう。
 それだけ分かれば黒酒には壁やセキュリティなど問題ではない。唯一問題があるとすれば、浅葱・孝太郎が書いたと言うプログラムが自分に理解できるか、それだけ。
「白銀の姫を稼動しているコンピューターに直接介入できれば、世界の不正終了を止める事ができるものね」
「開発チームの方々は諦めていないようですので、頼み込めばそのこんぴゅーたーの場所まで連れて行ってくれるかもしれませんわ」
 内側からNPCとして取り込まれてしまった人達。ゲームから出られない人達を助けるため。外側から不正終了を起こす白銀の姫を止めるため。
「そっち関係の人探しは蓮さんに任せましょう」
 はっきりいって蓮の人物ネットワークの広さは計り知れない。きっと蓮自身は不得手でもその筋の専門家を幾人か知っているに違いない。
「じゃ、蓮さんからの連絡待ちって事で〜」
 何時の間に飲み干したのか空のコーヒーカップを机に置き、黒酒はバイバーイと帰っていく。
「では、わたくしも失礼致しますわ」
 深く一度腰を折り、みそのも帰っていく。
 シュラインはカップを片付け、パソコンの電源を入れた。








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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1388 / 海原・みその (うなばら・みその) / 女性 / 13歳 / 深淵の巫女】
【0596 / 御守殿・黒酒 (ごしゅでん・くろき) / 男性 / 18歳 / デーモン使いの何でも屋(探査と暗殺)】
【0086 / シュライン・エマ / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】

【NPC / 的場・要 (まとば・かなめ) / 男性 / 24歳 / 大学院生】
【NPC / 広野・朝芽 (ひろの・あさか) / 女性 / 25歳 / 雑誌記者】


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■         ライター通信          ■
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 Fairy Tales -another- 〜湖の騎士〜にご参加ありがとうございます。ライターの紺碧です。今回は話を聞くだけというノベルになってしまいましたが、次はきっと動的なお話しにな…る?と思います!(うわぁ…)
 この現実世界で彼らに出会えた事が、本編で役に立てばいいと思います。きっとこの先のイベントに置いて、今回聞いたシナリオは確実に役に立ってきます、堂々とプレイングにお書き下さいませ(笑)
 それではまた、シュライン様に出会える事を祈りつつ……