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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ハクリの森

オープニング

 草間興信所にやってきた一人の中年男性。
 その男性が言うには最近「山」を買ったらしい。
 だけど、その山では昔「大量虐殺事件」が起こりその呪いのようなモノが存在するという。
 夜中の二時頃に殺された村人が出てくるのだという。
 そして、それを見たものを憑き殺してしまうそうだ
「…村人?」
 男性の話を聞いていたところで草間武彦が怪訝そうな顔で問いかける。
「はい…大量虐殺は…一つの村の人間が全て殺されてしまったのです」
 よくもそんな山を買う気になったものだ、草間武彦は口にはしなかったが心の中で毒づいた。
「でも…あの山にはオマモリサマがいるんです」
「…オマモリサマ?」
「はい、白髪で少年の姿をしていると言われてます。村人が殺された村の名前もオマモリサマの名前を取って
ハクリの村と呼ばれていたそうです」
「ハクリの村、ねぇ?」
 その男性の依頼は亡者となってしまったマヨイビトたちの霊を沈めてほしいというものだった。
「よろしくお願いします」
 そう言って男性は頭を下げて草間興信所を出て行った。
「午前二時に現われるマヨイビトか…」

 偶然、その場に居合わせた貴方だったがその依頼をどう解決しますか?


視点⇒シリューナ・リュクテイア

「夜中に現われる…過去の亡霊か」
 草間興信所で依頼人の話を偶然聞く事になったシリューナはポツリと呟いた。
「おや、来ていたのか」
 依頼人が帰っていくのを横目で見ながらシリューナは草間武彦に目を向けた。
「あぁ、暇つぶしに来てみた」
 シリューナが呟くと「なるほど」と草間武彦は笑いながらソファに腰掛けた。
「随分と物騒な山を買ったのね。あの依頼人は」
 しかも手放す気はないときたものだ、とシリューナは自嘲気味に笑って見せた。
「それで?」
「…どういう意味?」
「この依頼、受けるのか?」
 草間武彦の言葉にシリューナは暫く考え込んで「そうね」と呟いた。
「どうせ暇なのだし、受けてみるのも一興かもしれないわね。どうせこんな依頼なんて受ける人間は少ないのでしょう?」
 シリューナが依頼書を草間武彦から取り上げながら、視線を依頼書に移す。
「夜中の二時に現われるマヨイビトか、それに…このハクリというオマモリサマにも興味があるわね」
 そう言ってシリューナは草間興信所を後にした。
「さて、まずは…」
 シリューナはとりあえず、そのマヨイビトと呼ばれる亡霊たちが現われる前に様子を見ておこうと考え、早めに問題の山に行く事にした。


 目的の山は結構遠い場所にあり、タクシーを使って来たシリューナは予想外の金額を運転手に払う事になった。
(…後で調査請求してやるぞ…)
 今はここにいない草間武彦に毒づきながらシリューナは山へと足を踏み入れていった。
 山の中は薄暗く、まだ明るい…というには時間が遅いかもしれないが、この分の暗さなら昼間でも薄暗く、気味の悪い所に違いない。
「…さて、時間はまだあるわね」
 草間武彦から預かった地図を頼りにシリューナはハクリの村へと足を伸ばした。
 山の入り口から村へはさほど遠くなく、十分程度で着く事ができた。
「ふむ、事件当時のままになってるのか…」
 村に足を踏み入れた途端に鼻につくのは血の匂い、その死臭にシリューナは思わず鼻を押さえ、込み上げてくる嘔吐感を堪えた。
 恐らく、この死臭がいつまでもここに存在するから亡霊たちもマヨイビトとなってしまったのかもしれない。
「…これ、は…?」
 そこで目に入ったのは村の中央に立つ一つの石像。石像は少年の形を模しており、薄汚れたその石像はどこか暖かな気持ちにさせてくれた。
『誰』
 突然聞こえてきた声にシリューナは目を見開き、辺りを見渡す。
 だが、誰もいるはずもなく、気のせいかと思ったが自分を見つめている気配に視線をあげた。
「…まさか…話しかけているのは……」
 シリューナの視線の先にあるのは先ほどの石像。
『お姉さんはボクの声が聞こえるんだね』
「やっぱり…石像が…」
『そう、ボクはこの村を守っていたハクリ、村人からはオマモリサマって呼ばれていたよ』
 ハクリと名乗ったその石像は過去にこの村で起きた事をシリューナに話し始めた。

 この村は本当に平和だったんだ。
 裕福な暮らしをできた人間は一人もいなかった。
 だけど、貧しいながらも幸せな日々を送っていたんだ。
 だけど、あの日から村人は呪われた。
 この村を襲った強盗に村人は全員、一人残ることなく殺されてしまった。
 そして、優しい優しい村人達は自分の事よりも…ボクのことを案じたんだ。
 おかしいでしょ?普通では考えられないよね。
 自分が死にそうな時に、石像のボクを心配していたんだよ。
 そして…壊されそうなボクを見て…村人はマヨイビトになってしまったんだ。
 ボクさえ存在しなければ、村人が死んでしまうのは免れなくても…マヨイビトになる呪いを受けずにすんだかもしれない。

『だから、壊して。ボクを壊して。それ以外に村人を救うすべはないんだ』
「それはできない。まだマヨイビトと化した村人の姿を見てもいないのに、もしかしたら壊さずに呪いを解く事ができるかもしれない」
 シリューナが呟くとハクリは『優しいんだね』と呟いた。
「…!!空気が…変わった…」
 突然変わった空気にシリューナが回りを見渡す。時計を見れば夜中の二時、マヨイビトが現われる時間だ。
 まるでゲームの世界の中のように次々と現れる亡霊たちに正直シリューナはゾッとした。
「お前たちはそれでいいのか!時に縛られ、目を向けるべきものから背け続けて!ハクリの声が聞こえないのか、お前たちを案じているハクリの声が!」
 シリューナが問いかけるが、前進してくるマヨイビトたちは問いかけに耳を貸すこともなかった。
「…ダメか…」
『お姉さん、ボクを案じてくれるのは嬉しいけど、ボクを壊す以外に方法はないんだ。僕がムダに生きながらえたせいで罪のない人の命が奪われてしまった、ボクは今…その償いをするべきなんだ』
 だから、壊して。
 そう呟くハクリの言葉にシリューナは目を閉じて、ハクリの石像を壊した。

 壊す瞬間に「ありがとう」と聞こえたのはきっと聞き違いではないだろう。



 それから、ハクリの山、森に真夜中二時に現われるマヨイビトを見た人間はいない。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

3785/シリューナ・リュクテイア/女性/212歳/魔法薬屋

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■         ライター通信          ■
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シリューナ・リュクテイア様>

お会いするのは二度目ですよね^^
今回は『ハクリの森』に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました。
体調を崩しまして、納品日ギリギリになってしまったことをお詫びします。
『ハクリの森』はいかがだったでしょうか?
少しでも楽しんでもらえたら幸いです。
それでは、またお会い出来る機会がありましたらよろしくお願いします^^


                   −瀬皇緋澄