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調査コードネーム:激突! 魔リーグ!! 2005サッカー開幕編
執筆ライター :水上雪乃
調査組織名 :草間興信所
募集予定人数 :1人〜2人
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今年もシーズンが始まる。
そして今年は日本プロサッカー界にも多少の変動がある。
一部リーグであるJ1は二チーム増えて、全一八チームとなった。ファースト・セカンドという二ステージ制もなくなり、年間を通じて一ステージのみ。
二部リーグのJ2のチーム数は変わらない。
一二チームのままである。
これはJ1に昇格した川崎フロンティアと大宮アルデジャスにかわって、新たにノンプロからザスパス草津と徳島ヴォルティアスが参入したからだ。
「ついに‥‥プロのピッチに立つ‥‥」
男が呟いた。
草間武彦。三〇歳。
プレイヤーとしては、けっして若くはない。
もう限界が近いといっても過言ではないだろう。
高校を卒業後、草津の温泉で働きながらサッカーを続けてきた。
いつかはプロのフィールドで戦うことを夢見て。
そう。
ノンプロの選手たちは必ず他に職業を持っている。
ぬくぬくとサッカーだけをしているプロ連中とは違うのだ。
「負けられねぇ‥‥」
握りしめた拳。
緒戦の相手はコンドルサ札幌。昨年は最下位だったチームだが大型補強をおこなって上位進出を狙っている。
「いや‥‥絶対に勝つ」
屹っと北を睨みつける。
まだ見ぬ戦いの地、札幌ドームを。
※またまたやってきましたパラレルスポーツシリーズです。
※ホームが札幌、アウェイが草津です。
選手、観客、関係者、どのようなスタンスの参加も自由です。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
受付開始は午後9時30分からです。
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激突! 魔リーグ!! 2005サッカー開幕編
暦だけは春に向かって近づいているが、北海道はまだまだ分厚い雪に閉ざされている。
今年はずいぶんと雪解けが遅いようだ。
しかし、札幌ドームのボルテージはすでに最高潮に達っそうとしていた。
二万を超える観衆が押し寄せ、ドームはバンク寸前、
「なわけがないのでぇすよ?」
客席でぼりぼりと菓子などを食べながら、なんかちっこいのが言った。
まあ、札幌ドームは六万人近い人員を収容することができるから、二万というのはけっして大きい数字ではない。客席の半分も埋まってないことになる。
しかも埋まっているのはB自由席という最も安い席だけ。
北海道最大のスタジアムは、なんだか閑散としたイメージだ。
とはいえ、J2の中ではまだ入っている方なのである。
他のチームでは観客動員が数千というのも別に珍しくない。
しょせんは二部リーグ、と、言い捨てるのは少し酷だろう。J1だって入らない試合は入らない。
その二万の観衆を、所属ダンスチームが試合前のパフォーマンスで盛り上げる。
「盛り上がってるのはあそこだけでぇすけどね」
やや冷めた目を向けるちっこいの。
名前を露木八重という。
それはともかくとして、八重が見たのは席の一角だ。
ポンポンを持って踊り狂っている集団。しらけきった目で見つめるザスパス草津のサポーターたち。
八重が座っているのはザスパス草津側の応援席。いわゆるアウェイサポーター席である。そんな場所にわざわざやってきて踊る集団がいるのだ。
ついたあだ名がアウェイダンサーズ。
もちろんコンドルサ札幌のファン連中だ。
最初はほんの数人で踊り始めたのだが、去年一年でかなり数を増して、老若男女ざっと五〇人はいるといわれている。
それがダンサーたちのパフォーマンスが始まるとアウェイサポーター席に押しかけ、問答無用で踊り始めるのだ。
もちろん彼らの席はアウェイ側にはない。
踊りが終われば、満足して自分の席に戻る。
はっきりいって迷惑以外のなにものでもない。
八重だって先刻、
「ここで踊るから邪魔なんでどいてくれない?」
などといわれて確保していた席を追い払われたのである。
つまり彼らは他人の席を不法に占拠しているのだが、べつに注意されたりしない。それどころか、大型ビジョンに映し出されてちょっとしたヒーロー気取りだ。
本来ならコンドルサ札幌の母体である北海道サッカークラブから注意なり勧告なりがあってしかるべきなのだが。
「それは期待するだけ無駄ってもんやろな」
ベンチルームで呟いたのは月見里豪。
彼の耳にも観客席の喧噪が届いている。
むしろ虚しく。
豪が所属するコンドルサは、昨シーズンJ2で最下位だった。この国に存在するプロのサッカー球団で最も弱かった、ということである。
応援だけ華々しくても哀しいだけだ。
ちなみに一昨年のシーズンは九位であった。J1から転げ落ちた直後のシーズンで九位。一緒に転落したサンフレッチョ広島は一年でJ1復帰を果たしたというのに。
J2のサッカーに馴染めなかったから。
監督の能力が足りなかったから。
J1に比べて試合数が多くて疲労の蓄積が膨大だったから。
理由はさまざまに挙げられたが、それがただの言い訳にすぎないことはすべてのサポーターと関係者が知っていた。
同じフィールドで一二チームが覇をきそうのだ。
コンドルサだけが特別に不利な条件を突きつけられたわけではない。
当然のようにチームと経営陣は避難に晒されることになった。
そこで北海道サッカークラブが打ち出したのが、五年をかけてチームを作り直すという「五カ年計画」だった。
外国人などに頼らず、生え抜きの選手を育ててJ1に復帰しても簡単には転落しないチームを作る。
だから今は成績を度外視して、まずは育成。
「ふふふ‥‥育成ね」
薄い笑いが豪の顔に閃く。
それぞれの方法でコンセントレーションを高めているチームメイトたち。
J1のチームから移籍してきたものも多くいる。
フォワードの中川。ディフェンダーの池谷。キーパーの森に高山。そして中国人選手の蝉。
いずれも即戦力たることを期待されて入団した。
「これが育成なん? 生え抜きどころか、つぎはぎだらけやん」
育成というのは一般的に育てることを指すのだが、このチームでは違う意味らしい。あるいは二年連続で最下位はさすがにまずい、と、いまさらながらに気づいたということだろうか。
たしかにまずい。
美辞麗句で飾ったとしても、プロの世界は結果がすべてだ。
努力した、では済まされないのだ。
その意味では、もうコンドルサに後はない。
「‥‥俺もやけど」
自嘲とも覚悟ともとれる言葉。
豪は昨シーズンを棒に振っている。序盤戦で怪我をして戦列を離れ、戻ってきたときには最下位が確定していた。
最初から最後まで不本意な一年だった。
運が悪かっただけ、と、言ってくれる人もいるが、不運も二年続いたら実力を疑われる。そういう世界なのだ。
「勝たしてもらうで。どんな手つこでもな」
うっとうしいパフォーマンスが終わり、両チームの選手がピッチに散ってゆく。
ホームのチームは派手に、アウェイのチームは地味に紹介するのは伝統だ。
基本的に敵チームを温かく迎えるということはサッカーにおいてはあまりない。国際試合などで、相手国の国歌が流れているときにブーイングをするというマナーのなさが日本人の誇りだ。
「それは皮肉ずぎでぇすよ?」
売りにきた菓子とジュースをさらに買い足し、ひたすら異次元胃袋に放り込んでいる八重。
ナレーションにまでツッコミをいれてくれる。
「それにしても、サッカーの名前は舌かみそうでぇすね」
もっともだ。
何語だか判らないようなチーム名ばかりである。
いちおうどのチームの名前にも由来があるのだが、さすがに全部紹介するのは無理というものだし、どうせ八重の頭では理解できない。
「余計なお世話でぇすっ!」
怒ってる怒ってる。
まあ、関係のありそうなところでコンドルサとザスパスの名前の由来は‥‥。
「どうしたのでぇすか?」
あまり紹介したくない。
「いいから説明するでぇす」
まあ、コンドルサは、簡単に道産子というのを入れ替えただけだ。
「‥‥バカでぇすか?」
ザスパスの方は、ようするに草津は温泉で有名だからだ。
ザ・スパ。
スパとは温泉という意味だ。
「‥‥タコでぇすか?」
だから説明したくなかったのに。
「あ、草間のおぢちゃでぇす。おぢちゃー! 頑張るでぇすよ!」
しれっと手を振っている。
裏切り者め。
ザスパスの選手たちがコンドルサ陣内に斬り込んでゆく。
先頭を切るのは草間武彦。
フォワードらしい果敢さだが、同時にやや猪突の感がある。
ベンチから心配そうに見つめるシュライン・エマ。チームのトレーナーであり草間の恋人でもある蒼眸の美女だ。
彼女はずっとザスパスを見つめてきた。
ノンプロ時代から。
チームメイトひとりひとりの体調や癖まで完全に把握している。
ここまで優秀なトレーナーは日本サッカー界全体でも稀だろう。小規模なチームだという事情を考慮しても。
「武彦さん‥‥」
心配そうに。
頑張って、とは言わない。
そんなことを口にしなくても、ピッチにいる一一人は死に物狂いで戦うからだ。
身を削り、命を削ってまでも。
それがノンプロ出身者たちの意地だ。
彼らが実力でコンドルサに及ばないことは、彼ら自身が一番よく知っている。チームの基盤となる財政力が違うし、金で良い選手を集めることもできない。練習施設だってずっとずっと見劣りする。
何より練習に使える時間そのものが違う。
コンドルサの場合、練習場の整備から施設の清掃まで、なにからなにまでボランティアがやっくれる。
ひるがえってザスパスは選手が自分で整備するのだ。練習場も。芝を刈ったり雪をかいたりも自分でやる。
しかも選手たちは全員、他に仕事を抱えていた。
これは、いまはJ1にいるアルビレスクス新潟も同じだった。
選手が最初に購入するものは長靴。専用グランドもなく、市民公園を借りて練習していた。閉鎖時間を過ぎて公園の管理人に追い出されることなど日常茶飯事だったという。
サッカーにだけ専念していられる状況ではなかったのだ。
なにもかもやってもらえるコンドルサとは、力の蓄積そのものが違う。
もし彼らにコンドルサに勝るものがあるとすれば、ハングリー精神と、あとは、
「サッカーが好きだって気持ちだけだっ!」
草間が駆ける。
コンドルサゴールを目指して。
実力で劣るからこそ先制しないといけない。
主導権を握られたら、ずるずると敗勢に追い込まれていくだろう。
「先に点を取るっ!」
直線的なドリブル突破を図る草間。
「そうはいかねえ」
立ちふさがる影。
豪だ。
「く‥‥っ」
「ザスパスで注意が必要なのはアンタだけや。草間」
執拗なマーク。
簡単には抜かせてもらえない。
こんなところで時間を使わされたら、コンドルサのディフェンダーたちが守備を固めてしまう。
「どけぇ!」
「そないいわれてどくかいっ!」
技巧と技巧。
力と力がぶつかり合って火花を散らす。
「くぅっ」
焦り。
そのとき、
「草間さんっ!」
背後からかかる声。女性のものだ。
全国に数人しかいない女性Jリーガー、月見里千里である。
振り向きもせずにバックパスでボールを戻し、走り抜ける草間。
「ちっ!」
豪が舌打ちをする。
ボールを持っていない選手に対してチャージをかけることはできない。草間の突破は見送るしかないのだ。だが、むろんボールは前に進んだわけではないので不利になったわけではない。
ボールを奪えばいいだけの話だ。
「千里ぉ!」
獣のようなスライディングタックルが襲いかかる。
「甘いっ」
クライフターンで回避する千里。
ちなみにこのふたり、偶然姓が同じなわけではない。
じつの兄妹である。
兄妹が別のチームに所属しているのだが、これ自体は珍しくはないだろう。
珍しいのは、妹が兄を認めていないということだろう。
兄の方はべつに妹を嫌ってなどいないが、逆もまた真なり、というわけにはなかなかいかないらしい。
「私は‥‥あなたを、越える!」
えらい気合いだ。
彼女が選手として認められれば、女性Jリーガーの地位向上にも役立つはずなのだ。
兄の追撃をかわして左サイドを走る。
ディフェンスは‥‥。
「三枚っ! なんとかなるっ!!」
細い足から繰り出されるボール。
パワーこそはないが、まるで外科医のメスのような正確さでディフェンスとキーパーの間に落ちる。
飛び出すキーパー。
「あかんっ! 罠やっ!!」
豪が叫ぶが、一瞬遅かった。
ピッチに触れたボールが軌道を変えて、吸い込まれるように草間の足下へ転がる。
にやりと笑う千里。
正確なだけではなく、回転を与えていたのだ。
「たしかに受け取ったぜ。千里!」
鋭く振り抜かれる草間の右足。
必死に戻るキーパーの手を弾き、ゴールネットを揺らすボール。
「しゃっ!」
草間のカッツポーズ。
「先制よっ!」
ベンチではシュラインも喜んでいる。
前半三分。
ザスパス草津の先制点によって試合が動いた。
そして‥‥。
「はぁ‥‥はぁ‥‥」
フィールドに崩れそうになる千里。
「もうちょっとだ。しっかりしろ」
それを草間が支える。
誰がどう見ても千里のスタミナは限界を超えている。
だが、もう交代枠はない。
コンドルサの猛攻につぐ猛攻を支えるため、ザスパスはすでに三人の選手を交代させているのだ。
時計は後半四五分。
正規の試合時間を終了してロスタイムに入ってる。
得点は一対一。
豪が後半終了間際に放ったシュートが枠を捉え追いつかれてしまったのだ。
観客席は異常なまでの盛り上がりを見せている。
「あと何分よ‥‥」
いらいらと時計を見るシュライン。
選手たちはもうすでに限界だ。
ことごとくコンドルサに有利な判定を取られ、体力と精神力を削られ、おそらくはもう攻撃に転じるだけ力は残っていないだろう。
ホーム有利の法則だ。
残された戦法は、最後まで守りきってドローに持ち込むことくらい。
こういう状況であるために、千里を下げることができない。
ボランチは中盤と最終ラインとをつなぐ最も重要なポジションだからだ。ゲームのコントロールもここからおこわれる。
もし千里が抜ければザスパスはディフェンスラインの維持すらできなくなってしまう。
「弱体だから‥‥」
選手層が薄いのだ。
プロになったばかりのチームの弱点が浮き彫りになっている。
「草間さん‥‥前戦へ‥‥」
譫言のように呟く千里。
フォワードは、下がってはいけない。
いつかくるチャンスボールのために、もしかしたらこないかもしれないチャンスボールのために、敵陣内で牙を研いでいなくてはいけないのだ。
いつでも襲いかかれるように。
「こんな状況で‥‥」
草間がうめく。
味方が、ぼろぼろになって、決死の守りをしているときに、守備に参加するなというのか。
「こんな状況だから‥‥敵はかさにかかって攻撃してくるから‥‥絶対に前戦までボール送るから‥‥」
ふらふらの身体で草間の背を押す。
「いって‥‥」
「だが‥‥」
「いけ! 草間!!」
激語である。
周囲のチームメイトたちが親指を立てて見送る。
まかせろ、と、言っているのだ。
「わかった」
万感の思いを短い言葉に託し、駆け出す草間。
最期の一瞬まであきらめない。
勝負を捨てない。
それがザスパスのサッカーだ。
「みんな‥‥」
心配そうにシュラインが見守る。
このチームに有名な選手などは一人もいない。それでもここまで戦ってこれたのは団結力が大きな要因だ。
それが、雑草たちのプライドである。
「守るよっ! きっちりっ!!」
『応っ!!』
千里の言葉に仲間たちが唱和した。
「気合いだけじゃ勝てんで」
幾度目か判らない波状攻撃を仕掛けるコンドルサ。
その先頭には元サンフレッチョの中川。左サイドからはヴィッセルにいたこともある和城。そして中央部に豪。
このうち誰か一人だけでも今のザスパスには止められないだろう。
ほとんど弱いものいじめのような攻撃である。
みるみるうちに崩されてゆく防御陣。
しかし、
「守るといったら守るっ」
自らの身体までも盾に使って、千里がパスコースを塞ぐ。
「良い判断やが」
咄嗟に危機を悟った豪が、ドリブルへと切り替えた。
「それも‥‥計算のうち‥‥」
倒れ込むようにして千里の足がボールを絡め取る。
「兄さんの性格は‥‥よく知ってる‥‥」
攻撃的な性格の兄が勝負に出ないはずがない。そこまで読んで心理戦を仕掛けたのだ。
必ずしも確率は高くなかったが。
転々と転がるボール。
すかさずザスパスディフェンダーがクリアする。
否、クリアではない。
パスだ。
メッセージ付き。
大きく前戦へ蹴り出される。
その落下点には、草間が待っている。
「お前らの気持ち。しっかり受け取ったぜっ!」
ワントラップから身を翻し、コンドルサディフェンスを置き去りにして駆ける。
駆ける駆ける。駆け抜けてゆく。
「武彦さん! いけいけいけいけ!!!!」
端正な顔を紅潮させ、シュラインも叫ぶ。
足下でペナルティエリアに入ったことを示す白線が後方に飛んでゆく。
射程圏だ。
振りかぶられる足。
「これで終わりだっ!」
「そいつはどうかな?」
シュートは‥‥放たれなかった。
素早く滑り込んだキーパー。オリンピック日本代表のゴールを守っていた守護神でもある森がボールをかすめ取る。
「そん‥な‥‥」
ふたたびザスパス陣内へ送られるボールを、膝から崩れた草間が見送った。
もう味方にはコンドルサの猛攻を支えるだけの力は、残っていない‥‥。
スタジアムを歓声が包んでいる。
結果は二対一で、ホームのコンドルサが劇的な勝利を収めた。
サポーターたちは盛り上がり、選手たちの健闘を称えている。
ピッチに崩れ落ちていた敗者たちも、わざわざ草津から応援にきてくれた人たちに挨拶するためアウェイサポーター席へと歩み寄る。
最後まで死力を尽くして戦った誇り高き敗者たちだ。
温かい拍手を送る草津サポーター。
と、そのとき、
「おめえら強くなったら応援してやるぞ〜」
コンドルササポーターが下卑た笑い声を立てる。
勝者の余裕だろうか。
それとも酒にでも酔っているのだろうか。
あまりにも非礼な一言だった。
「こんな勝ち方で嬉しいんでぇすか?」
冷めた声と表情で、八重が言った。
食い散らかした菓子を片づけながらだったので、迫力がないことおびただしい。
全力で戦い、力尽きて敗北した騎士にそんな言葉を投げつけるとは。
「ひとりがそういうことをすると、札幌のサポーターみんながそうだと思われるでぇすよ?」
戦いである以上、勝敗は仕方がない。
しかし、敗者を遇する方法を知らぬものが最終的な勝者なった例が、歴史上、ただのひとつでもあっただろうか。
「ガキがえらそうなこといってんじゃねぇよ」
さすがに殴りかかってくるようなことはせず、そのコンドルササポーターは去っていった。
勝利の余韻に水を差された、というところだろう。
無言のまま肩をすくめた八重が、誇り高き騎士たちのためにふたたび拍手を送り始めた。
雪に閉ざされた銀色のドームに夕日が反射している。
疲れ切った戦士たちを癒すように。
おわり
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086/ シュライン・エマ /女 / 26 / ザスパス トレーナー
(しゅらいん・えま)
1009/ 露樹・八重 /女 /910 / ただの観客
(つゆき・やえ)
1552/月見里・豪 /男 / 25 / コンドルサ MF
(やまなし・ごう)
0165/月見里・千里 /女 / 16 / ザスパス MF
(やまなし・ちさと)
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■ ライター通信 ■
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お待たせいたしました。
「激突! 魔リーグ!! 2005サッカー開幕編」お届けいたします。
ひさしぶりのパラレルシリーズでした。
楽しんで頂けたら幸いです。
それでは、またお会いできることを祈って。
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