＜東京怪談ウェブゲーム　アンティークショップ・レン＞ 呪いの鏡〜夜崎・刀真編〜 「あら、あんた今日はその鏡を選ぶのかい？」 蓮の声に楓華は振り返ると無邪気な笑顔をみせた。 「だっていい加減に見習い卒業しないと仕事だってこないじゃない。」 「だけどねぇ････」 蓮はため息をつくと楓華から二面手鏡を取り上げた。 鏡はかなりの年数を経ているらしく、古びているが何やら人を魅了させるような不思議な光彩を放っていた。 「この鏡はうちでも特別のいわくつきなんだよ。何てったって何度浄化しても中から次々と怪物が出てくるという話だし、壊そうとした者もいたらしいけどどうやったって壊れもしないという話だしね。」 「だっから面白いんじゃない♪」 楓華は明るく笑った。 「浄化してもしてもなかなか浄化出来ないんでしょう？これ一個でいい練習台だわ。」 その言葉に。 蓮は再び大きくため息をついた。 「練習ったってまだあんたライティア以外の攻撃呪法、ほとんど使えないんでしょう？危なっかしいったらありゃしない。」 「だーいじょうぶよ♪」 楓華は連から手鏡を取り返すと明るく笑った。 「今日も手伝ってくれる人がいるもの。心配しないで。大丈夫。」 蓮はあまりの能天気さに呆れてため息をついた。 「分かった分かった。好きにするといいよ。」 諦めたような連の声に楓華は鏡を見つめると、外に向かって声をかけた。 「じゃああなたたち、よろしくね♪」 「はいはい。」 シリューナの声に刀真は心の中で溜息をついた。 ････何だって俺、こんなことしているんだか････ 正直な気持ちはそうである。 だが。 刀真は楓華を見やった。 これほど強引な娘も珍しい。 しかも自分で見習いと言っている。 見習いなら相手が悪ければ騙されて売り飛ばされるのがオチだ。 何を考えているのかよく分からない。 刀真は胡乱な目つきで楓華を見やった。 それから腕組みを解き、楓華にぞんざいに声をかける。 「生憎こちとら凡俗の身でな。できる事なんざ、たかが知れてるさ。さ、はよ済ませろよ。今日はこの後近所で肉の特売あるんだ。」 言ったとたん。 シリューナが吹き出した。 『なんなんだか一体････』 「何がおかしい？」 するとシリューナがにっこりと笑って答えた。 「いえ、その姿と特売がちょっと似合わなくてね････」 「ふん。」 ソッポを向いた刀真に楓華が明るく声をかけた。 「じゃあ、今から行くよ！！」 楓華が鏡を開き印を結ぶ。 「長き時に縛られし呪われし己が合わせ鏡よ････今ここにその姿を現せ････そして我が力でこなたの心を解呪せん！！」 ゴウッと轟音が鳴った。 そこには狼のような、しかし尻尾が9つに割れた怪物が現れた。 「なんだ、貴様は････」 「あたし見習い解呪師の楓華ちゃん。今からあなたを倒してこの鏡の呪いを解くのよ♪」 「ほう････」 怪物はうなった。 「見習い如きで私が倒せるものか！！逆にその身を喰らってやるわ！！」 瞬間。 狼は楓華に飛びかかった。 「どわっっ！！」 楓華はそれを慌ててよける。 刀真が溜息をついた。 「普通、自分から『お前を倒す』なんて言うか？しかも見習い解呪師のクセに････」 「そうね。」 シリューナもくすりと笑った。 どうもこの解呪師見習いのお嬢ちゃんはかなりの子供らしい。 もっとも。 だから何となく助力してやろうと思っただけなのだが。 「えーと････えーと････ライティア！！」 楓華の手から光が飛び出した。 だが狼は目を瞑ってぶんぶん首を振っただけでにやりと楓華に笑ってみせた。 「何かしたか？小娘････」 そんな狼に楓華は自分の手を見やって呆然と呟いた。 「ラィティアが効かない？唯一の攻撃魔法なのに････」 その言葉に刀真はがっくり首を落した。 「唯一の攻撃魔法って、自分から弱点をばらすか？普通････」 シリューナもくすくす笑い出した。 「戦闘慣れしていないのよ、きっと。だからああも無邪気でいられるんでしょうけど。」 そう言ってシリューナは楓華に声をかけた。 「ほら、後ろがらあきよ！！態勢はすぐに立てなおす！！」 「う、うん！！」 シリューナの言葉に楓華は狼の爪をギリギリのところでかわす。 そして楓華が困ったように2人に声をかける。 「どうしよう、ラィティアが全然効かないよ。」 刀真は頭を抱え込んだ。 シリューナは小さく笑うと楓華に声をかけた。 「集中力が足りないのよ。もっと手のひらに力を込めなさい！！」 「うん！！」 刀真も溜息をつきながら声をかける。 「右だ右！！余所見してんな！！」 「ふぎゃあ！！」 楓華は騒ぎながら狼の牙と爪をすんでのところでよけていく。 そんな楓華に刀真はぼそりと呟いた。 「見習いで生き残っているだけあって逃げ足だけは早いな。」 「そうね。普通ならあの程度の子なら既に殺されているところだわ。もっともだからやっていけるんでしょうけどね。」 楓華はとんっと狼の後ろに着地した。 そして手のひらいっぱいに力を込める。 「そうだ。集中しろ、集中だ！！」 楓華は思いっきり手のひらに力を込めると狼に向かって強い光を放った。 「ライティア！！」 光線は光となって飛び、狼を大きく引き裂いた。 辺りに黒い煙が立ち込める。 そして空気に飲まれて霧散していった。 「ふ････ふぇ････やったあ！！」 楓華がガッツポーズをあげた。 それに刀真が冷静に突っ込む。 「まだ鏡の解呪があるんだろ。」 「あ、そっか。」 楓華のマヌケな返事に刀真はがっくりと首を落した。 どうしてこんなマヌケのために時間を割いてやらねばならないのだ。 「ほら、早く解呪しろ、解呪。」 そう言いながら。 しかし刀真は懐の剣を手にしていた。 あの鏡から発する邪気があまりにも強すぎるのだ。 楓華が印を結ぶ。 「呪われし二枚の合わせ鏡よ････ここに今、解呪師、水戸楓華の力によってそなたを呪いより解き放たん！！」 光が鏡に収束した。 鏡が紫の光を弱めていく。 楓華の額に光の汗が浮かんだ。 「はあっっ！！」 楓華が鏡に全ての力を解き放った。 そして鏡から煙が収まると楓華は疲れたようにがっくりと息をついた。 全ての力を使い果たしたらしい。 そのときだった。 合わせ鏡からもう一体の化け物が現れた。 そして楓華に襲いかかる。 それを刀真は抱きかかえるようにして避けると化け物の牙を剣で叩き折った。 そして、楓華の意識が半分ないのを見て、彼女を地面に下ろした。 それから両手に力を込める。 「絶儀！！」 すると鏡からたちのぼっていた邪気がすうっとかききえるように空気に霧散していった。 そして、残る化け物を剣で一刀両断にする。 化け物は刀真に斬られると同じく黒い煙になって空気へと霧散していった。 「さて。」 刀真は息をついた。 「こいつをどうするかだな。」 意識のほとんどない少女を放り出していくには後味が悪すぎる。 それにシリューナがやんわりと答えた。 「私が回復するわ。」 そうして楓華の胸に手をあてると光を彼女に注ぎ込んだ。 すると見る見るうちに楓華の顔色が良くなってきた。 楓華が目を開けた。 そして元気に問う。 「楓華ちゃん、もしかして鏡の解呪出来たの？」 それに刀真が投げやりに答えた。 「半分な。あれはあんたには過ぎたるシロモノだったというわけさ。」 そう言って刀真は彼女達を背に歩き出した。 「あれ？お兄ちゃん何処行くの？」 それに刀真はぶっきらぼうに答えた。 「肉の特売。早く行かねぇと売り切れちまうからな。」 その言葉に。 シリューナが再びくすくすと笑った。 そしてまたそれぞれ３人の道が始まる。 □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ ■　　　登場人物（この物語に登場した人物の一覧）　　■ □■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ 【整理番号：4485／ＰＣ名：夜崎・刀真／性別：男性／年齢：180歳／職業：尸解仙（フリーター？）】 【整理番号：3785／ＰＣ名：シリューナ・リュクテイア／性別：女性／年齢：212歳／職業：魔法薬屋】 □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ ■　　　　　　　　　ライター通信　　　　　　　　　　■ □■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□ 水沢里穂です。 今回は受注頂き誠にありがとうございました。 なのに少々遅くなって申し訳ありませんでした。 刀真のお肉の特売にものすごく楽しませてもらいました。 とても生活じみてて良い感じですね。 こういうちょっとしたスパイス大好きです。 また機会があればよろしくお願いします。