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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ミズの魔女が語る時。

オープニング

-…私は『ミズの魔女』です。
自分の能力を使ってここにアクセスしております。
どうか私を助けてください。
私は今、暗くて寒い場所に閉じ込められています。
どうか、私を助けてください。
私が閉じ込められている場所は…。

ゴーストネットOFFに書き込まれたのは助けを求める文章だった。
だけど、書き込みにあった住所は数十年前から
廃墟になっている大きな屋敷のみで人が住んでいる気配は全く見られない。
とりあえず、書き込みを信じてその場所に向かったのだが…?


視点⇒チェリーナ・ライスフェルド


「今回の事件は興味を惹くものがあるね」
 チェリーナはパソコンの前で「うぅん…」と唸りながら書き込まれている文章を再度読み直す。
 一番最初にチェリーナの目を惹いたのが「ミズの魔女」という単語だった。なぜ曖昧に言葉を濁しているのかが気になる。「水」でも「見ず」でも文字はある。わざわざカタカナにしているということはわざと無変換でカタカナにしているということ。
「何でわざわざ『ミズの魔女』なんだろう?魔女の部分は漢字になってるから間違えた可能性は低いし……こうしてても仕方ない。考えてから行動に移さなきゃね」
 チェリーナは将来、探偵家業につきらいと考えている、だから今回の事件もそれなりに張り切っている。
 とりあえず、あの書き込みを見る限り考えられる可能性は以下の通り。

 ●本当の事件。
 ●誰かの霊魂がネットを通じて接触してきている。
 ●何か別なモノに宿った何かの魂。

「最初の可能性はないかな…」
 チェリーナは小さく呟く。本当の事件ならば警察が動いているはずだ。それとも警察ですら見逃した何かがあったのだろうか?
「よし、学級新聞の調査と称して調べちゃおう」
 ペンとメモ帳を片手にチェリーナは調べるためにパソコンを切る。そして向かうは図書館。もし事件があった場合は図書館の新聞記事を纏めたファイルの中に何らかの手がかりは存在するはず、チェリーナはそう考えたのだ。


「……忘れてた、図書館の本の数が馬鹿みたいに多い事…」
 ずらりと並ぶ本棚の前でチェリーナは小さく呟いた。これを全部調べていたら一日どころか一週間かかっても読みきれない。
 さて。どうしたものか、と考えている時にふと頭の中に何かが浮かんできた。その何かは一番奥の本棚を示しているようにも見える…。
「…なに、これ」
 頭を押さえながら、今だ頭の中から消える事のないそれを頼りに本棚の奥まで足を運ぶ。
 すると、そこにあったのは―…。
「…事件の記事をまとめたファイル…?」
 本棚にも沢山の数の本が置かれている、それにもかかわらずチェリーナは何故か迷うことなく一冊の本を手にした。
「…へぇ…」
 チェリーナは本に目を通しながら椅子に腰掛ける。資料によると、あの屋敷には一人の占い師が存在したそうだ。その占い師は本名を明かさず『ミズの魔女』と名乗っていたらしい。
「…ミズの魔女…?」
 そのミズの魔女は盲目で目が見えていないにも関わらず、全てのことを当てたらしい。だけど、そのミズの魔女はある日突然、消息が分からなくなり現在に至っているとの事。
「…どうやらこのミズの魔女が助けを求めているって事で間違いはないようね…。とりあえず、その屋敷に行って見るしかないか」
 チェリーナは立ち上がり、本を元の場所に直して携帯を開いた。万が一の時のために携帯に110番メールを作っておく事にした。
「さて、行きますか」


 問題の屋敷までの道のりは時間はさほどかからなかった。
「…うわぁ」
 屋敷を見て、チェリーナの開口一番がそれだった。重々しい空気に包まれた屋敷に思わず足を引きたくなるほどだった。
 しかし、中に入ってみないことには何もできないと思い重い足を引きずりながら門をくぐって屋敷に近づいた。

 ―…しかし。問題が一つだけ発覚した。

「…入り口がない…」
 そう、中に入ろうと決意したまではいいが、肝心の入り口が存在しない。いや、存在しないという言い方は悪いかもしれない。扉は確かに存在する。鉄板に打ち付けられて、扉の役目を果たしていない役立たずの扉が。
「どうしよう…まさか、これを使う羽目になるなんて…」
 そう言ってチェリーナがバッグから取り出したのはガムテープ、それをビッとある程度の長さまで出して、切り…打ち付けられていない窓にペタペタと貼り付けた。
 そして、思いっきりガムテープを貼った場所めがけて鉄拳をくらわした。そうすることで硝子は飛び散らないし、音もそこまで響くことはない。
「…これって、思いっきり不法侵入だよね…」
 チェリーナは小さく溜め息まじりに呟いた。
 まぁ。緊急事態ということで納得させておこう、と自分に言い聞かせながら屋敷の中に入った。
「げほっ…」
 屋敷の中は誰も住まなくなって、結構な月日が経っているのか埃まみれで思わず咳き込むほどだった。
 一応足音を忍ばせて歩いているが、中に人の気配は感じられない。
「よし…」
 チェリーナは持ってきたモバイルを手にしてミズの魔女から書き込みのあった掲示板に書き込みをした。
『そこに着いたよ、あなたはどこにいるの?』
 一応、目に着くところは探してみたけれど、ミズの魔女が言っていたような場所は存在しなかった。あるとすれば、この屋敷の住人であった人間だけが知る隠し部屋のようなものが存在するのかもしれない。
「…あっ、書き込みがあった」
『ありがとうございます。玄関をまっすぐ行ったところにリビングがあり、大きな時計があるはずです。それの長針だけを取ってみてください』
 チェリーナは言われたとおりにリビングへ向かい、時計の長針だけを取った。すると、その時計がゴゴゴと大きな音をたてて横に動き、その後ろからは隠し階段が見えてきた。
「…隠し階段…」
 階段は長いようでその奥からはかすかに風があり、その風がカビのような匂いを運んできていた。
 長い階段を降り、視界に入ってきたものを見てチェリーナは驚愕に目を見開いた。そこにいたのは小さな少女…だったものだったからだ。
 白い洋服に身を包んだ白骨。遥か頭上から差し込む光に手を伸ばしたような形になっているのは、彼女が一生懸命ここから出ようとした証なんだろう。
「ありがとう」
 突然響いた声にチェリーナはハッとして後ろを振り向いた。
「あの扉を開けてくれてありがとう、これで私はようやく眠りにつける」
「…何で、こんな所に…」
「…ここに私をいれたのはお父さんとお母さんなの。私の占いが当たるからお金儲けに私を使っていて、だけど…途中で怖くなったみたい。私、生きたかったのに。二人に捨てられても構わなかった。生きてさえいればきっといい事はあっただろうから…。だけど…私には何もない。私の名前すら知ってる人はいないの」
 少女の悲痛な叫びがチェリーナの胸を締め付け、チェリーナは苦しそうに表情をゆがませた。
「…あなたの…名前は?」
「……ありがとう、お姉さん。私の名前は若苗…みちる。私の名前を一人でも知ってくれる人がいたら、私が生きていた意味があるような気がする。だから…忘れないでほしい。私の名前を…さようなら」
 ミズの魔女…いや、みちるはそう言うとすぅっと溶けるように消えていった。


「…忘れないよ…」

 チェリーナは小さく呟き、呟いた後に一筋の涙が頬を伝った。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2903/チェリーナ・ライスフェルド/女性/17歳/高校生

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■         ライター通信          ■
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チェリーナ・ライスフェルド様>

初めまして!
今回「ミズの魔女が語る時。」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
…それなのに!納品日ギリギリで本当に申し訳ないです。
風邪で寝込んでまして(……イイワケ…)
少しでも本文を楽しんでいただけたら幸いです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^

             −瀬皇緋澄