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<東京怪談・PCゲームノベル>


商物「過現未」

「あれ?」
そう桐生暁は声を上げ、ふと、路地の影に引かれて足を止めた。
たまには健全に昼の街で遊ぼう、という企画が友人達と立ち上り……と、言うよりもオールで遊んだ延長線上、ハイテンションの勢いを借りてお上りさんになってみようイェァー!とばかりに、中華街に雪崩れ込んだ所である。
「どしたの暁ー、早くちきんだっく食おうぜ、ちきんだっく!」
「てか、ニワトリなのかアヒルなのかどっちかにしろよ!」
天然のボケに鋭いツッコミ……というよりも複数人にリンチ状態でボコにされる友人にケラケラと笑って、暁は飲食店の看板に紛れそうな路地を指差した。
「ん〜、でも俺今、こっちに行きたい気分だから、置いてって〜」
気まぐれな暁の言動に慣れたものか、友人達もあっさりと……というよりも、早く空腹を満たしたい、生存本能を最優先に去っていく。
 その背にバイバイと軽く手を振って暁は、さて、と腰に手を当てた。
 狭い路地。続く石畳の古びた風情の何が自分の気を引くのかが解らない……けれどそれが却って面白く、暁は靴の踵に答えてコツコツと、快く響く足音を立てながら小路を歩き出した。
 軽く両手を広げただけで建物の壁に指先が触れる、街を訪れる者達へではなく、住まう者が通用に使う路地なのだろう。なんとなく、秘密の抜け道めいた感覚に暁は小さく笑いを零した。
 そのまま指先で、右はザラつく石壁の感触、左に漆喰の柔らかな手触りを感じつつ歩を進めて、暁はピタリと足を止めた。
 左手の中指、爪の先にかかる柔らかな感触が、艶やかな木のそれに変わる境……建物と建物の狭間、通り抜ける以外に目的のない道の途中、まさしく忽然といった様子で店が構えられていれば、暁が飛びつかない筈がない。
「うわ〜、面白そう。何屋?」
鼻先を窓につけるようにして、薄暗い路地より更に明度の低い店内を覗き込めば硝子製のオイルランプが幾つも並んでいる様が見て取れた。
 店舗の外観、円形と菱形を線で組み合わせた格子に絡む植物めいた紋様が大陸のそれを思わせて一見、雑貨の販売を兼ねた中華飯店めいているが、装飾の施されるのは華やかな朱ではなく、黒漆の艶やかさはどこか和風である。
「やってんの、ここ?」
店内のあまりの暗さに基本となる疑問を抱きつつも、暁の手は既に真鍮の取っ手を回している。
 扉は90度の直角まで開いた時点でく、と手応えを残して止まり、薄いながらも明暗の差に暁の影が足下から長く内に向かって伸びていた。
 雑然としているそれこそが整えられた状態であると感じられる店内は狭いようで広く、薄暗さに埃臭いようでいて実の所そんな事はない……暁は躊躇なく足を踏み入れた店内を遠慮なく見渡した。
 正面奥に広く畳敷きの台場があり、其処に到るまで膝から腰へと順に高さを変える台には駄菓子や子供だましの籤が並ぶかと思えば妙に古びた本が積まれ、ガラスケースに真贋を問いたくなる無頓着さで装飾品の類が並ぶ。
 歩みを進めれば鼻を擽るのは乾いた生薬の香、壁かと思えばそれは棚で、小さな引き出しに和紙に墨でひとつひとつ、納められた薬種の名が記されている。
「……変な店〜!」
この場合は期待に違わない、という意味で誉め言葉である。
「そいつぁどうも」
内心の断定を声にした、紛う方なき独り言に答えが返り、暁は咄嗟に振り向いた。
「あぁ、こりゃ失礼を。あまりに熱心に品を御覧の様子にちょいと商売っ気が擽られてねぇ」
ふぅ、と紫煙と共に気楽な調子で続けられる言に、暁は相手を注視した。
 藍色の和装を着流しにした男は、無精な様子で髭の浮いた口元をにぃと笑いの形に引く。
「陰と陽と、その間に構える故に陰陽堂と、そう冠しましたるこの店の主でさぁ」
笑いの形を保った口元に挟まれたままの煙管の先が揺れ、立ち上る煙が天井に向かって柔らかく散じた。
「ここ、何屋さん?」
陳列された商品を見ても一向に店の傾向が判別のつかない疑問を、暁は店の責任者にこれ幸いとばかりにぶつける。
「懐具合に適うのであれば、店の中の品は何でもお売り致しますよ。籤のついた飴からそこの大棚も売り物。あそこの子等も、兄がコシカタ、妹がユクスエと。申しましてうちの立派な商品で」
促されて視線を向ければ先までは確かに居なかった子供が二人、台場の端に腰をかけ、揃って大判の……どうやら百科事典と思しき重たげな本を互いの膝の間に置いて眺めていた。
 白と黒、対照的な色彩の衣服を纏った子供達は、名を呼ぶ店主の声に反応して、本をそのままにタタタと軽い足音で駆けて来た。
「おっと」
そのままの勢いで、右と左に手を取られて声を上げた暁に、にこにこと店主が笑う。
「お気に召したなら、どうぞお持ち下さいまし」
こちらの都合など存ぜぬ様子で煙管をふかす、言い様は既に暁が子供達を連れ帰ると決めてかかっている。
「こんな辺鄙な店に足を踏み入れる位だ。急ぎの用は御座いませんでしょう。お代はどうぞこの子等に一つずつ、揃いの品でも買い与えてやって下さればそれでよし。夕を過ぎてから朝までの間に、店に送り届けてやって下さいましな」
呈のいい子守かと、反論を受け付けずに店主は飄々と続ける。
「そうそう、この子等は占が得意でね。コシカタは後、ユクスエは先、見通す事にかけちゃ、ちょっとしたモンですよ」
 くいと両側から同時に手を引かれて、足が自然に出口に向く。
「気を引かれるならば、その子等が。今必要という事ですよお客様」
目元だけを深める笑いが、たなびく紫煙越しに曖昧に光る。
 引かれるままに戸外に出れば、パタンと背後で軽く扉が閉まった。
「何処に行く?」
右の手をキュ、と握られて見れば金の瞳で見上げる少年……コシカタ。
 強請る言葉ではあるが、声は淡々として感情に薄い。
 左手が、次いで軽く引かれる。
「何して遊ぶ?」
銀の瞳を見下ろせば、少女……ユクスエの長い白髪がさらりと流れる。
「遊ぶのはいいんだけど、さ」
ぱちくりと目を瞬かせて、暁は軽く肩を竦めた。
「自己紹介くらいはさせてよ」
人間関係の基本を求める暁に、子等は同時に頷いた。


 そして、場を替え、時を代え。
 暁は子供達を引き連れて、小さなライヴハウスを訪れていた。
 都心から少し離れるが、子供連れである事を配慮した上での選択である……年端の行かない子供をライヴハウスに連れ込むなという説もあるが、暁にとっても楽しい遊びでないと、子供達を楽しませる事は出来ないだろうとそれなりの考えがあっての事だ。
 とはいえ、金に染めた髪とカフスピアス……そして一見カラーコンタクトレンズを嵌め込んだように見える赤い瞳とで、場所柄としては暁に難はないが、コシカタとユクスエはその年齢もあって周囲からしっかりと浮き上がり、目立つ事この上ない。
「俺がいっつも顔出すトコは最後は皆で踊ったりして楽しいんだけど、人が多くて危ないからねー」
ライトが目まぐるしく色味を変え、大音響の中で会話にも声を張る必要のある店内で、暁はペットボトルのジュースを二人に渡しながら笑う……因みに踊る、とは乱闘の事である。
 しかし子供という存在は、概ね女性に好評である。
「ヤーダー、可愛いーね、年いくつー?」
「え〜、何処の子なの〜?」
場違いな物珍しさに目立つ子供達に構い立てたい女性達が群がるのに、暁は笑っていなす。
「俺が七つの時に産んだ子なのー、父母同伴だからナンパは勘弁してやってねー♪」
父であり母であるという詐称を平気で主張する暁のあしらいに、女性達がはしゃいだ声を上げて、去っていく背に軽く手を振って、暁はコシカタとユクスエの頭を片手ずつでくしゃりと撫でた。
「さっき車持ってるトモダチにテルしたから、皆が集まったら他遊び行こーね♪」
好みのバンドが出ているワケでもないのに深夜に及ぶライヴハウスの営業時間内の限りまで、子供達を付き合わせるつもりはない。
 その心積もりでありながら、ライヴハウスをチョイスしたのは、この年頃で先ず足を踏み入れない場所であると思ったから……子供にとって何よりの財産は経験である、という養い親の教育の受け売りであるが、些か外してしまった気がしなくもない。
「う〜ん、つまんなかったかな〜?」
苦笑混じりに問えば、コシカタ、ユクスエ共に楽しそうでも迷惑そうでもない、見事なまでの無表情ながら、同時に首を横に振って否定した。
「見た事のない人がとても沢山居て」
「初めて来た場所だから面白いです」
こちらの目論見とは多少見解が遠いながらも、表情に欠けるとはいえ子供らしい素直さが覗く感想は、暁に気を使っての方便ではないようで安堵する。
「こういうトコ、好き?」
けれど安心に調子に乗った暁の問いにはまた首が横に振られる。「よく解らない」と。
「そっか……まだちょっと難しかったかなー」
この年頃ならまだアイドルの方が馴染みがあるか、と若さとの溝を弱冠17歳にして痛感して、天を仰ぎかけた暁は己の視線の流れにふと……違和感、否、親しい姿を認めた気がして人と人との間に赤い眼を凝らした。
 人の頭の位置は多少の高低はあれど一様、その色はやはり金が多いが多彩で諸々のアレンジが加えられて多種でもある。
 その中に、ごく自然な栗色の髪を見つけて腰を浮かせた暁の手を、コシカタとユクスエの小さな手が留めるように押さえた。
「暁様」
左右から響く名を呼ぶ声は、スピーカーを通して割れて意味の掴めない歌声よりも深い。
「あれは暁様の知ってる人?」
コシカタが問うて添えた手に力を込め、暁の注意を引くのに目を向ければ、金の眼差しが射抜く強さで暁を見た。
「……過去の縁が穿った、癒えない傷」
触れた手の、子供の体温の暖かさと裏腹、冴えた温度を保つ声に暁は口を開きかけるが、不意に呼ばれた名に遮られる。
「桐生……?」
あまりに懐かしい声は幻のように微かで、けれど確かに実体を伴った姿で暁の目の前に立った。
「……あれ、すっげ久しぶり。元気してた〜?」
親しい者への気易い呼びかけで、暁はその少年に笑いかけた。
 嘗て、暁を化物と呼んだ、彼を。


 少年と交友があったのは中学生の頃、記憶の中よりも背も高く表情も大人びたが、何の手を加えぬとも栗色の髪はそのままで、暁はその暖かみのある色がとても好きだった事を思い出す。
「……久しぶり」
何時の間にやら、声も低くなっている。
 奇妙な感慨に、笑みを深める暁だが、相手が居心地悪そうに腕を擦る癖を見て苦笑する。
 今の今まで。
 存在自体を思い出す事すらなかったというのに、一度前にすれば蘇る想い出のなんと多い事か。
 教師受けするタイプの優等生なのに同じ音楽が好きで、その為か価値観も近く話が合ったが、何かと奔放な振るまいをする暁が教師の不興を買う前に防波堤となっていた為か、少々説教臭い所が難点だった。
「どしたのこんなトコで」
気易く聞く暁に、相手も漸くほんの僅かだが口元に笑みを刻む。
「それはこっちのセリフだよ。俺、わりとここに来るけど今まで桐生見かけた事ない」
咎めるような口調になったのに気付き、彼は口元を押さえると小さく「ゴメン」と呟いた。
 暁は笑って肩を竦め、手を握ったままのコシカタとユクスエに挨拶を促す。
 場違いな子供の姿に相手は目を丸めて、目角を強めた。
「桐生……幾らなんでも年端の行かない子供を連れてきていい場所じゃないだろ」
「ここ、ちゃんと入場料にお子様価格設定してあるのに?」
「そういう問題じゃない!」
暁のずれた見解を両断するセリフも昔と同じで、言った当人もそれに気付いてか、ふと笑いを零す。
 懐かしさに背を押されてか、歩み寄りかけた一歩を肩にかけられた手が止めた。
「あっれー、桐生生きてたんだー」
間延びした声を合図としたかのように、半円に人垣が出来る。
「俺ら覚えてるー? 中学一緒だったろよー」
未成年だというのに酒の匂いを漂わせた一群に、暁は首を傾げた。
「……誰だっけ?」
同級生、同じ中学、と思考の材料を与えられてもとんと見当がつかない。
 それは目の前の少年と同じ中学であるという事でもあるが、何せ途中で転校した為、想い出を手繰るに便利な卒業写真集などもなく十把一絡げな同級生は顔すら思い出せない。
「桐生冷てぇのー、沢山遊んでやったじゃん、なぁ?」
ケラケラと笑う声には嘲りの色ばかりが強く、不快な感情を掻き立てる。
「桐生が転校してからさー、コイツもてんで弱っちくなっちゃってー。俺らがおトモダチになってやってたんだぜー?」
その言を肯定するように……俯いた友人の反応に、おトモダチと呼ばれる関係の質を知り、暁は軽く眉を上げた。
「で、ナニ桐生はガキ連れてー? へぇ、いい目の色してんじゃん、コレ、カラコンー?」
内の一人が笑いながらコシカタの前にしゃがみ込み、無造作に指を……その目に向けて突きだした。
 眼球に触れよう距離にも、コシカタは表情を変えずにただその指先を見詰めている。
 その指を、暁は足の甲で掬うようにして高く蹴り上げた。
 腕が弾かれるような勢いで後ろに倒れた相手は、その加重がかかった一点……人差し指を抱えて痛みに転がる様に、仲間が俄然いきり立つ。
「……そういえばさ〜」
顔を目掛けて振るわれた拳を避け、暁はふと掴んだ記憶の糸を手繰り寄せる。
「あんた等だったっけ? 俺がコンタクト洗ってる最中にトイレ飛び込んできて使うなだの出てけだの、くっだんねー縄張り主張したの?」
思い出したら過去のむかつきも共に蘇り、暁は不満を示して子供っぽく下唇を突き出した。
「てめぇ!」
激昂した相手が同時に襲いかかる、それに暁はコシカタとユクスエを背に庇う位置に腕を引いて移動させ、幼いぬくもりから手を抜いた。
「……あのお礼、ろくに出来ないまま転校しちゃったからさ〜。今、返しとくね?」
正面の相手の襟首を掴み、そのまま前に踵を滑らせる体重の移動をかける。均衡を崩して前のめりに倒れかける相手の身体を自分の肩に支点を置いて背から床に叩き付ける、何処かリズミカルな動作でも演奏とは違う質の大音響が立ち上がって、衆目がそちらに集まった。
「ケンカだ!」
正しい認識に途端、周囲が沸く。
 ライヴハウスに集まる人種は大なり小なり血の気が多い……店内に乱闘の輪が周囲に広がるのに、さほど時間を要さなかった。


 騒ぎが拡大する中から、何時の間にやらちゃっかりと抜け出した暁は、出口近くに観客と化した女性客達の中にコシカタとユクスエを姿を認めて胸を撫で下ろす……そして、彼等を保護する位置に立つ、栗色の髪の少年に軽く手を振って見せた。
「コシカタとユクスエ見ててくれたんだね、アリガト♪」
暁の姿を認めてまた、右と左に手を繋いでくる子等にも御礼を促し、暁も相手に軽く頭を下げた。
 それに困ったような顔で見て、彼はぽつりと呟いた。
「桐生、その目……」
暁の瞳は生来、血の色を透かしたような赤である……少年と机を並べていた折は、世間に気を使ってわざわざ黒のカラーコンタクトレンズを入れて居たのだが。
 先の連中との悶着の際は折悪しくそのコンタクトを洗っていた最中、気付いた少年が止めに入って揉み合いになり、持ち出されたナイフが暁の頬を深く抉って何かがぷつりと切れた。
 気付けば、少年達は周囲に倒れ伏し、ただ一人立っていた彼は、怯えた目で暁を「化物」と呼んだのだ。
 人に有らざる赤い瞳と、強い血の香に誘発されてか、酷い渇きに長く伸びた犬歯とでは弁明の余地もなく……否、彼の眼差しと言葉がただ痛くてそのまま学校を飛び出し、二度と登校する事なく今の街に引っ越した。
 経緯を思い返しても、不思議と彼に対する怒りは浮かばない。
「うん、あの頃はカラコンはめてたんだけどね〜。ホントのトコめんどいし〜。今はそゆこと気にしなくていい友人も増えて楽チン♪」
だから気にするな、と込めた思いに彼は深く俯く。
「……ゴメン、俺は気にさせたよな」
「うん!」
暴言を詫びる意図を感じ取って、暁はそれは力強く頷いた。
「ホントに事だから仕方ないけどさ〜、ちょーっとばかしこんな俺でも傷ついちゃったよん」
しくしくと態とらしい泣き真似に、真摯な謝罪を逸らされた相手の、不満と困惑とを綯い交ぜにした表情に、暁は一転笑いを零した。
「でも会えて嬉しかった。ホントなつかし〜」
暁の真意に、相手が苦笑する。
 既に過去の、関係なのだと。
「解った。じゃ、元気でな」
暇を告げる少年にバイバイと手を振ろうと……して両手が塞がっている事に気付くが、その手を握るコシカタとユクスエが代りに小さく手を振って、暁の意を代弁するのに笑う。
 背を見送る暁の手を、くいとユクスエが引いた。
「穿たれた傷は、塞がらない」
求めに応じて視線を合わせれば、瞬きのないユクスエの銀の眼差しが遠くを見るように暁を透かして澄む。
「瞳と同じ色の血は……とても暖かい」
人の間に紛れる異端の運命を、称するには残酷なようでいて何処か優しい響きを持つ。
「……うん、そうかもね」
傷は、人の命を糧として喰らう化物である事実は変わりようがない。
 しかしその、暁の傷を受容れてくれる友も居るのだ。
「……本当は凄く……甘えさせてくれるのがこそばゆいけど嬉しいんだ」
傷を抱えた暁の有り様を、そのまま全て抱き締めるように。
 胸に宿る暖かな想い、それをもたらす幾つもの面影に、暁は僅かに目を細めた。
 意思を誤魔化すそれでなく、コシカタの称する傷から、ユクスエの言う血に、与えられたぬくもりと同じ温度で。
 しかし、淡雪が空気に溶ける如き穏やかな微笑みは、刹那の事。
「お礼にお菓子あげるね♪」
暁は乱闘を収める為に店員が不在となったカウンター、その脇に積まれたスナック菓子を目敏く見つけると、常と変わらぬ悪戯っぽい笑顔でガサガサと子等の手に落とした。
 迎えを理由に店を出た折に、菓子の支払いに置いた代金―ライヴハウスの飲食品はべらぼうに高い―が、ごく一般的な価格を規定にしている事を、本人以外は誰も知らない。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【4782/桐生・暁/男性/17歳/高校生アルバイター、トランスのギター担当】

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■         ライター通信          ■
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初めてお世話になります闇に蠢く駄文書き、北斗玻璃に御座います<m(__)m>
え〜……お初なのに遅くて申し訳ないです……ッ!
ですが、色々な意味で深みのある暁君は書いてて実に楽しゅう御座いました。ちょっとだけ格闘シーンが書けて満足ー♪とか思いながらも、北斗ばかりが楽しんでしまっていない事を心から祈っております。
それではまた時が遇う事を祈りつつ。