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<白銀の姫・PCクエストノベル>


悪の喫茶店☆お花見大作戦!!

●プロローグ

   喫茶店☆プリティープリンセスへようこそ!!

 この度、プリティープリンセスこと略して《プリプリ》の宣伝も兼ねて【プリプリお花見大会】が開催される運びとなりました。
 その経緯はというと――――

                 ☆

「無事開店した《プリプリ》だが、客の出足がイマイチ悪いように思うのだ」
 ムスッと偉そうな口調で重々しく邪竜の巫女ゼルバーンがひとつの問題を提示した。
 そんなゼルバーンの姿は、プリティープリンセスの制服であるウサ耳付きウェイトレスというキュートな出で立ちではあるけど。
 同じく邪竜の巫女にしてウェイトレスであるルチリアもウサ耳姿で考え込む。
「やっぱりぃ、悪を行いながら人気店って難問なのかな? かなあ?」
「何を言う! 私たちは悪を行い、邪竜クロウ・クルーハ様に捧げ――!」
「それはわかってるけどね、お客様がこなくてお店が潰れちゃったら邪竜さま以前の問題だよ?」
 ぐ‥‥。
 ルチリアなんかに意見されてしまった。
「そうだな、前向きに考えて、ここは春という事もあり――」
「お花見大会にけってーいっ☆」
 私が先に言おうと思っていた事を‥‥またしてもルチリアめ‥‥拳を震わせながらゼルバーンは続けた。
「そうだ。お花見でわが店主催でお花見を開き宣伝すると同時に、酒席やお祭騒ぎにまぎれて様々な悪が行えるのだ」
「わーいお花見、わーいわーい♪」


 しかし、話はそれだけで収まらなかった。
 事前調査により入手した情報によると、享楽的な女神マッハもその日はお花見に参加するらしい。いくら享楽的な気質の女神とはいえ目の前で行われる悪を見逃すだろうか。
「丁度いい! 女神をおとしめてこそ悪の華、われらが力を見せてやろうぞ!」
「え〜、大丈夫かなァ」
 《プリプリ》には女神アリアンロッドにそっくりな新人ウェイトレスのリアンさん(自称)もいる。
 ややこしい事にならなけれはいいのだが。
 と不安を抱えながらお花見大会の日は刻一刻と近づく。そして、噂の《プリプリ》美形マネージャーの正体は一体。


 女神vs邪竜の巫女のお花見大会、果たして勝者はどちらだ!?



●プリプリ流の優雅なお花見

 ここはお花見広場である。
 緑豊かな広大な土地の各所で満開の桜が咲き、桃色の楽園に集いし人々は心から歌い、舞い踊る。
 誰もが宴のひとときを楽しんでいた。
「今回はお花見なんだねっ。桜餅とか出すのかなっ?」
 解流 佐里巳(げる・さりみ) はローラースケートで人波を風のように駆け抜ける。
 手には料理やドリンクを載せたシルバートレイを持ち、ウサ耳の付いたウェイトレスの制服――その姿こそ喫茶店プリティープリンセスの一員の証なのだ。そして、大勢のウェイトレスたちとお花見会場を駆け回ることになる。今日がプリティープリンセスお花見出張日だ。
 佐里巳の隣には不安そうに周囲を眺めるウェイトレスがいた。
「これだけの方々が集まっているのですね。今日は忙しくなりそう‥‥私、仕事についていけるかしら‥‥」
 女神アリアンロッド――の面影を持つ(というか本人にウェイトレスの制服を着せたらこうなるのではないかと思われるほどよく似ている)リアンはささやくように呟いた。
「一生懸命がんばれば大丈夫だよ! とにかくミーも頑張ってお客様確保をめざすよっ!」
「‥‥そうね、私たちは精一杯自分ができるだけの働きをするだけ――今日の主役はお花見に集まった皆様なんですから」
 目を細めてなぜかしあわせそうにお花見の光景を見つめるリアンにつられて、佐里巳もお花見の様子を見渡した。
 ふと、ひときわ異様に盛り上がっている一団を見つけた。
「あれって女神のマッハさんかな?」
 そう、享楽の女神、マッハを中心としたお花見軍団だった。
 彼瀬 蔵人(かのせ・くろうど) はマッハご一行様の一員としてお花見の花形(?)である前日からの席取係を見事に務めたのだ。

 それは、忘れもしない夜桜の中の出来事――――
「マッハ様、春とはいえいまだ夜は冷えます。お寒くはありませんか‥‥」
「ああ、冷えるね。体の芯から冷えるようだよ。こんな夜は人肌が恋しくて、誰かにあたためてほしくなる‥‥」
「そんな! あなたと僕は女神と一勇者でしかありません! そのようなことがあってはならな――」
 蔵人の口を封じて、マッハの女性らしさを帯びた体が迫った。
 ――――赤い髪。
   ――――赤い瞳。
      ――――燃えるような深紅の赤。
「女神とはいえ、あたしも女だからね‥‥今夜はやさしく頼む」
「‥‥マッハ様」
「今はただひとりの女。だからマッハと呼んでほしい」
 見つめあった二人は、美しい夜桜の下、お互いの熱情を確かめる顔をよせ――――

「ストーーーップ!! ままままま、待ってください! 人の想像を勝手に作り上げて語らないでください」
「あははは!! なんだ残念、こっからが面白かったんじゃねえかよ、な?」
 酒瓶を抱えながら豪快に笑うマッハに、蔵人は頭を抱えた。
「‥‥面白いもなにも、単に寒い中でゴザをひいて毛布に包まっていただけですし」
「そうだね。そして寒い風の中で二人は互いに人肌を求め合うように‥‥」
「ストップ! だからそのノリはやめてください本当に! だいたいですね、場所取りは僕一人だったわけですから‥‥」
「まあなんだ、あれだね。おまえのおかげでこんな良い席も取れたんだからね、そりゃ感謝のひとつもしたくなるってもんよ、ふふふ」
 前日の晩から蔵人がたった独りで、まだ寒い中をお花見用の場所を確保していたのだ。夜食には蔵人お手製の五段重の弁当を用意しての場所取り――ちなみに蔵人一人分だ――花見の食料もなんとなく当てにできる人がいなさそうなので、お弁当に五段重×4を用意。そのお手製弁当を広げてマッハたちはドンちゃん騒ぎに興じているのだ。
 狼狽する蔵人を愉快そうにからかうと、マッハはぽんぽんとその肩をたたいた。感謝の仕方が間違っていると思うのだが、この女神にはきっと通じないだろう。

                             ○

「仲良しさんで楽しそうだねっ」
「そうだよ! そしてプリプリのメインターゲット!」
 唐突に横からニョキッと現れたウサ耳のルチリアに驚く佐里巳。さらに隣からウサ耳ゼルバーンが現われ力強く同意した。
「あのマッハたちの一行を苦しめることでクロウ・クルーハ様もご満足されることだろう」
「じゃあ皆がんばろうっ、おーっ」
 ゼルバーンに言葉に、佐里巳はにぱっと笑った。これが邪竜の巫女と女神マッハたちとの戦いの合図となった。
「う〜ん、でもどうしちゃえばいいかなぁ。女神のマッハちゃん、ガードが高そうだもん」
「ふふふ、ここはミーに任せてほしいネ! 悪のプランはたっぷり考えてきたから――あぁ、こんないくつもの悪を思いついちゃう自分が怖いよっ」
 佐里巳は巨大な袋を抱えると、勢いよくローラースケートでマッハたち酒席の真ん中に突っ込んだ。
 ズデデデーーー!!!
「な、なにごとだよ!?」
 思いっきり転倒して袋を広げた佐里巳は中に詰め込んでいた桜の花びらを撒き散らす。宴の会場は一瞬にして花びらだらけになってしまった。続いてルチリアも間髪入れずにその後にさらに花びらの山を作る。
「手口1、桜の花びらをどっさりと、料理が見えないぐらいに盛っちゃう作戦☆」
「さりみちゃん、ないすっ」
 きらーんと瞳を光らせる佐里巳とルチリア。
【邪竜様ポイント+5】(佐里巳)
【邪竜様ポイント+5】(ルチリア)
 蔵人が花びらをかきわけ女神を助け起こす。
「大丈夫ですか、マッハ様――これは一体何事でしょうか‥‥」
「おっと、こいつは風流だね。さくらまみれになって呑む酒もまた格別だよ」
 すっかり出来上がっているせいか豪快に笑うマッハは全然気にしていないようだ。なかなかの強敵のようで佐里巳はさらに闘志を燃やした!
 蔵人がふと気がつくと、宴会で出た缶ビールや食べ物の袋などお花見で自分たちが出したゴミが見当たらない。何が起こっているというのか。
「これも新手の攻撃でしょうか‥‥マッハ様、気をつけてください‥‥!」
「えへへ、手口2! ゴミをこっそり拾っておいて、善良な人々を『私達のゴミが消えた!?』 と驚愕させちゃう作戦っ」
【邪竜様ポイント+5】
「きれいになっていいんじゃない?」
 しれっと受け流すマッハ。
 いや、相手に気づかれずに悪を行えたので佐里巳としては満足する場面なのだろうけど、それでもこの胸に去来する敗北感は何なのだろう。
「それに前以上にゴミを出されてミーたちが忙しくなっただけみたいだしっ〜‥‥もういいもん! 手口3、女神様にお酒といってお酢を出しちゃう作戦っ!!」
 そう叫んで花びらの海をえっちら泳ぐように女神の元にたどり着いた佐里巳は、にこやかな営業スマイルでマッハにさも当然のようにお酌をした。
「えっとォ、プリプリから日ごろお世話になってる女神様に差し入れですっ。遠慮なく呑んでね!」
 しかし、コップを差し出した瞬間、横から電光石火のごとき早業で蔵人がコップを奪った。
 花見が始まったら始まったで、なんだかんだいって人の良いせいでパシリにされ続けていた蔵人だが、なみなみと注がれた佐里巳特製の『それ』を一気に空になるまで飲み干した。
 お酢の一気呑み。
 ‥‥‥‥。
 蔵人は平然としている。

 効いてないのか?

「ヤア、コレハヨイオサケデスネ‥‥」
 カクカクカク。
 動きがカクカクしてるー!?
 人間離れした動きで振り返った蔵人は、ガクガク全身を痙攣させると、頭と耳からピー! と湯気を吹いて倒れてしまった。あ、なんだか白目をむいてるし‥‥。
【邪竜様ポイント+10】
「は! いま、なにがあったのでしょうか?」
 数秒で蔵人復活。こちらもただものではない。
 佐里巳は悟った。
 まずは蔵人をなんとかしなければならない、と。――スライム女子中学生vs合気道家死神、その真価がここで問われようとしている。
「――――手口4、桜餅を葉っぱだらけにして渋い味にしちゃう作戦」
「その挑戦、受けさせてもらいます」
 バチバチバチ。
 熱い火花が二人の視線で交差する。
 ゆっくりとつかまれる桜餅。
 佐里巳特製のその渋い味に耐えられるか、蔵人。
 あるいは、佐里巳の渋い味が蔵人の耐久力を軽々と突破してしまうのだろうか。
 ぱくっ。
 にこやかな笑顔で蔵人は一口で食べた。
「うそ!? ミーの桜餅をヘイキで食べちゃったのっ?」
「‥‥いや、これは‥‥」
 ゼルバーンが遠く彼方を見つめるように蔵人を見ている。
 蔵人は、笑顔のまま動かなかった。意識を失い真っ白に燃え尽きていた。
「最後まで自分の女神を守り通したか、この男‥‥敵ながら見事だ」
 桜散る青空に大きく映し出された蔵人の笑顔があった。
【邪竜様ポイント+5】
 ゾクゾクゾク。
 背後からどす黒い殺気を感じた。
「ふぅ〜ん、お痛もここまでくると見過ごすわけにはいかないね」
 パキポキと嬉しそうに拳を鳴らす女神マッハ。享楽の女神はケンカも三度の飯より好きなようだ。
「細かいことはまぁ、いいよねっ! あ、ちゃんとポイントも溜めないとねっ! 今日の分の集計よろしくね〜♪」
 どろどろに溶けて逃げよう佐里巳。
「あ! 待て!」
「待つのはあんただよ。この燃えあがった心をちゃんと発散させてくれるよね。責任を持ってさ」
「ちょ、ちょっと待て、責任者のルチリアを今呼んで‥‥」
 ルチリアもすでにいなかった。
 気がつくとマッハよゼルバーンだけになっている。絶体絶命というか未来予知はどうしたゼルバーン。
 そのとき。
「いい大人なんだから、女神でも邪竜の巫女でも、ここは公共の場なんだから周りに迷惑をかけないで楽しくやりましょう」
 すでにリタイヤしていたかと思われたあの男がよみがえった。
 後に語るに、ゼルバーンは地獄で仏に出会った気分だったよと語ったそうだ。
 蔵人は、笑顔ひとつで邪竜の巫女と享楽の女神のいさかいを収めてしまった。
「あり難い‥‥今日の恩義は覚えておこう」
「ちょっと待ってください」
 爽やかな笑顔と友に立ち去ろうとしたゼルバーンとぐいっと肩をつかんで引き止める蔵人。先程まで仏のように見えた笑顔が別の何かに見えた。

 それから約半日をかけ、ゼルバーンはお母さん風お説教を聞かされたという‥‥。





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【4907/解流 佐里巳(げる・さりみ)/女性/14歳/中学生】
【4321/彼瀬 蔵人(かのせ・くろうど)/男性/28歳/合気道家 死神】

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■         ライター通信          ■
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 こんにちは、雛川 遊です。
 シナリオにご参加いただきありがとうございました。ノベルの作成がここまで遅れてしまい本当に申しわけありませんでした。お花見の話がこんな若葉のきれいな季節に‥‥(汗)
 それでは、あなたに白銀の姫の導きがあらんことを祈りつつ。


>佐里巳さん
【今日までの邪竜様ポイント+45】を獲得しました!

>ルチリア
【今日までの邪竜様ポイント+15】を獲得しました!