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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ミズの魔女が語る時。

オープニング

-…私は『ミズの魔女』です。
自分の能力を使ってここにアクセスしております。
どうか私を助けてください。
私は今、暗くて寒い場所に閉じ込められています。
どうか、私を助けてください。
私が閉じ込められている場所は…。

ゴーストネットOFFに書き込まれたのは助けを求める文章だった。
だけど、書き込みにあった住所は数十年前から
廃墟になっている大きな屋敷のみで人が住んでいる気配は全く見られない。
とりあえず、書き込みを信じてその場所に向かったのだが…?


視点⇒浅井・竜也


 竜也はパソコンのモニターを眺めながら一人、唸っていた。
 ゴーストネットOFFの掲示板に書き込まれていたのは、助けを求める文章。
「きっと、廃墟となった屋敷の地下に閉じ込められているんだろうなぁ…古い家だったら地下室の一つや二つはありそうだし…」
 そう呟きながら小さく溜め息をついた。
 助ける事が嫌というわけではない。むしろ助けなくてはいけない、そう思っている…。問題なのは『ミズの魔女』と名乗る人物が閉じ込められている場所だ。暗くて狭い、おまけに自身のことを『ミズの魔女』と名乗っているからには『水』に関係あると見て間違いはないだろう。
 竜也は炎を操る事ができる、という事は必然的に『水』とは相性が悪いのだ。
「だけど…助けを求めている人物を無視するわけにいかないな…」
 そう呟いて竜也はパソコンの電源を切り、指定されている場所まで足を向けた。


 問題の屋敷はそう遠い事はなく、車で数十分のところにあった。
 遠くから見ても不気味な屋敷だと思ったが、近くで見ると、より一層不気味さが映えているような気がして竜也はブルと身体を少しだけ震わせた。

 中に入ろうと門を手にするが、錆びついていて竜也の力ではびくともしない。
 どうしたものか、と考えている時に脇の方に小さな扉があるのが目に入った。恐らくは昔に使われていた使用人達が出入りするための簡易扉なのだろう。
 こちらの扉も錆びついていたが、開けられないほどではなかった。竜也は扉を開けて、中に庭先の方まで足を踏み入れた。
 かつては美しく飾られたであろうその庭も今では見る影もない。雑草が至る所に生え、噴水には緑色に濁った水が溜まっている。
 思わず吐きたくなるような異臭に達也は鼻を押さえ、足早に屋敷の方へと向かった。屋敷の方の扉も錆びついていて、動かせない状況だったので割れた窓ガラスから入る事にした。窓ガラスから入っているという状況が何故か泥棒にでもなったような錯覚を起こして、竜也に無意味な罪悪感を与えた。
「げほっ!」
 屋敷の中に入って、達也の第一声が咳き込む声だった。中は埃が充満しており、咳が止まらなくなるほどだ。廃墟になって長いと聞くが、その間、誰も空気の入れ替えをしなかったのだろう。まぁ、空気の入れ替えとかがされていたら廃墟にはならないのだけれど。
「…どこか地下に続く道があるのか…?」
 屋敷に入ってから十分程度、竜也も色々と歩き回ってみたが、それらしい場所はどこにもなかった。
 考えられる事は二つ。
 一つ目は、あの書き込み自体がデマだったということ。
 二つ目は、ミズの魔女が閉じ込められている場所は何らかの方法で隠されている。
 竜也の予想としては後者の方だと思う。あの書き込みがデマじゃないという確証は何もないが、何故か信じられる気がしたのだ。
「……あれ…」
 屋敷を一通り回って、リビングまで足を運ぶと大時計が奇妙なことをしているのが目に入ってきた。
 普通、時計というものは右回りで動く、それがこのリビングにある大時計は逆方向に針を進めているのだ。
 おかしい、竜也はそう思い、時計の針を取ってみる。すると地響きがするような大きな音がして、大時計が横に移動を始めた。
 そして、その後ろから出てきたのは…地下へ続く石の階段。中からはカビのような匂いがたちこめている。
 少々、匂いが気になるのはこの際、仕方ないと考え、下へと足を進めた。
 中は水草のようなものが大量に生えており、先へ進む事ができなくなっていた。
「…仕方ない」
 竜也は小さく呟き、目を伏せた。そして、水草めがけて炎を繰り出す。この地下へと続く階段は石でできているし、周りの壁もコンクリートだ、火事になることはまずないだろう。
 炎で燃えていく水草を避けながら、竜也は先へと進む。
 やがて、見えてきたのは小さな部屋だった。意外と質素な作りだな、と部屋に足を踏み入れた瞬間!槍ののように尖ったものが降ってきた。
 避けられない、と目を閉じた瞬間、水たまりに足を取られ、その場にコケテしまう。地面すれすれの所まで降りてきた槍はコケタおかげで竜也を貫く事はなかった。
 悪運だけは強いな…助かって嬉しいのだが、どこか複雑な気持ちで思った。

「…誰」
 奥から聞こえた声に竜也はハッとして、そちらを向いた。
「…ミズの、魔女…?」
 達也が恐る恐る聞くと、その少女はコクンと首を縦に振った。
「私の書き込みを見て来てくれたんですね。ありがとうございます」
 ミズの魔女は深く頭を下げながら礼を延べてくる。
「いや、僕はまだ何もしてないから…」
「いいえ、貴方がここに来てくれたために、この部屋にかけられていた封印が解けたのです。だから、私は自分の住む場所へ帰ることができる」
「自分の場所?」
「えぇ、私はミズの魔女、人間達は人魚とも呼びますわね。残念だわ。貴方から火の気が感じられなければ一緒に連れて行きたいくらいのタイプでしたのに」
 そう言ってミズの魔女はすぅ、と水に溶けるようにして消えていった。


 こうして、ゴーストネットOFFに書き込まれていた不可思議な事件は解決した。
 ……だが。竜也にとっての事件はこれからかもしれない。
 明日提出するべきレポートがまだ真っ白のままなんだから。



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

5104/浅井・竜也/男性/21歳/某私立大の3年生

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■         ライター通信          ■
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浅井・竜也様>

初めまして。
今回「ミズの魔女が語る時。」を執筆させていただきました瀬皇緋澄と申します。
せっかく発注を下さったのに、納品日ギリギリになってしまい申し訳ございません。
イイワケになりますが、体調を崩しておりまして^^;
「ミズの魔女が語る時。」で少しでも楽しんでくださったら、書き手としてこんなに幸せなことはありません。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^


                  −瀬皇緋澄