コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:すすめっ! 宇宙戦艦クッサマー!!
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜4人

------<オープニング>--------------------------------------

 西暦が宇宙暦にとってかわられてから二〇〇余年。
 人類の居住権は、ごく自然に太陽系全体にまで広がっていた。
 大きな戦いを経験することもなく、異星人の侵略を受けることもなく。
 ただし、人間という種族それ自体が精神的な成長を果たしたわけではない。犯罪は依然として後を絶たなかったし、富の配分に対する不公平だって是正されていない。
 ようするに地上を這い回っていた頃から全く変化ないわけだ。
「居住スペースが広くなった分だけスケールが大きくなってしまうというだけだ」
 呟く男。
 軍服をだらしなく着崩し、艦橋なのにタバコなどくゆらせている。
 草間武彦という。
 汎人類統合軍に所属する宇宙戦艦クッサマーの艦長である。ちなみに階級は大佐だ。
 人類が政治的に統合された現在、誰と戦うために軍があるのか、というのは誰しもが思う疑問だが、内乱だの大規模な犯罪組織だのに対応するためには一定の軍事力が必要になるのだ。と、汎人類統合政府は主張している。
 たしかに宇宙海賊などと戦うのに、警察の軽装巡視艇では役者不足ではある。
「だからって、こんな大仰な戦艦なんかが必要になるとも思えないけどな」
 自己否定的なことを言う草間。
 宇宙軍がなくなれば、彼は必然的に失業者となる。
 せっかく士官学校まで卒業したというのに。
「艦長。そろそろ目標宙域に入ります」
 オペレーターが告げた。
「第二種戦闘態勢に切り替えろ。艦内各員を総員直にもどせ」
 やや緊張感を込めて命令する。
 火星軌道にある宇宙都市マーズホートで大規模な反乱の兆しがあるという情報があった。
 それ確認し、場合によっては武力鎮圧する。
 同然、宇宙軍の戦艦が派遣されることはマーズポート側でも掴んでいるだろう。
 隠そうとするか、あるいは迎撃しようとするかもしれない。
 人類政府が知らない戦力を隠していてもなんの不思議もないからだ。
「熱源接近っ! 戦術機動兵器と推測されますっ!」
 声を裏返す索敵士官。
「やっぱりもっていやがったか」
「どうします?」
「こちらも機動兵器をだす。全機発進しろ。本艦も総力戦の用意だ」
 艦長の声が瞬く間に伝えられ、クッサマーに搭載された四機の戦術機動兵器が真なる闇へと飛び出してゆく。
 クッサマーが抱える戦術機動兵器はいずれも人型である。
 高速機動型のシャドウスラッシャーとFTR。重装備のシルヴィア。後方支援型のハイA。
 敵の接近にあわせて展開する。
「敵数判明! 四五機ですっ!!」
「そいつは‥‥なかなかだな‥‥」
 草間の頬を汗が伝う。
 まさか、いち宇宙都市にそれほどの戦術機動兵器があるとは。
「やばいかな‥‥?」
 内心に呟く。
 声にも表情にも出さない。
 指揮官が不安を見せるわけにはいかないのだ。











※なりきりパラレルシリーズ。今回はSFです。スペースオペラです。
 たぶんコメディになるはずです。
※戦術機動兵器の名前が興信所の社用車っぽいような気がするのは、気にしちゃいけません。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
 受付開始は午後9時30分からです

------------------------------------------------------------
すすめっ! 宇宙戦艦クッサマー!!


 無音の空間。
 無明の闇。
 ゆっくりと開いてゆく艦載兵器射出口。
 道標のように誘導灯が点る。
 カタパルトにドッキングしている人型戦術機動兵器、FTR。
 剣士を連想させるフォルム。
 機械の両眼が輝いた。
「FTR。啓斗。でるぞ」
 凛々しい声が艦橋に響く。
 サブスクリーンに映し出されている守崎啓斗少尉の顔。
 なかなか精悍だ。
 それはともかくとして、
「なんでお前がそこにいるんだよ」
 草間武彦が言った。
 良い雰囲気でスタートしたのに、雰囲気がぶち壊しだった。
 まあ、そもそも、FTRの専属パイロットは啓斗の弟の北斗である。したがって、草間の質問はけっして的はずれなものではない。
 ないのだが、せっかく盛り上がった雰囲気を壊したのは事実だ。
「盛り上がってるのは兄貴だけだっ!」
 スクリーンに割り込むカタチで、北斗の顔が映し出された。
 なんだかすごく怒ってる。
「北斗、お前どこでさぼってるんだ」
「さぼってねぇ! ちゃんと『俺の』FTRに乗ってるっ!」
 力いっぱい所有権を主張しているが、もちろんこの機体は北斗の持ち物ではない。所有権はあたりまえのように汎人類統合軍に帰属している。
「乗ってるって‥‥」
 草間が痴呆症にかかっていないと仮定すれば、FTRは単座型だ。
 どうやって二人で乗り込んでいるのだろう。
「そのたとえかたはやめろよ‥‥」
 艦長の嘆き。
「俺が改造したんだ。操縦系と射撃系に分けてみた」
 そんなことにはかまわずに、啓斗が胸を反らす。
 分けてみたってアンタ。
 軍の兵器ですよ?
 自分ちのチャリンコを改造するのとは、事象も次元もびっくりするくらい違うんですよ?
「嗚呼‥‥」
 白い巨塔のようにそびえ立つ始末書の山を幻視し、草間艦長ががっくりとうなだれる。
 こんなときは、あの娘に慰めてもらおう。
 そうだ。そうしよう。
 視線をさまよわせる草間。
 だが、気になるあの娘は艦橋にいなかった。
 シュライン・エマ。
 戦艦クッサマーの戦術オペレーターである。臨戦態勢の時にいないはずはないのだが。
「シャドウスラッシャー。シュライン。いきまーす!」
 いま、なんか聞こえた気がする。
 おそるおそるスクリーンを見た草間の目に飛び込んできたものは、艦橋にいるはずの、いなきゃいけないはずのシュラインが、人型戦術機動兵器シャドウスラッシャーで出撃していく様だった。
 身体にぴったりしたスペーススーツが色っぽい。
 それはいいとして、
「なんでシュラインが出るんだよっ!?」
 困ったもんだの草間くん。
 どーしよー。どーしよー。
 戦術オペレーターが出撃しちゃったよ。
「武彦さん」
「どーすんだよ。この状況」
 いちおう、恋人同士ではあっても仕事とプライベートは別。
 厳しくたしなめようとする艦長。
「私もちょっとは目立ちたかったの。ダメ?」
「ぅ‥‥」
 青い瞳で見つめられると、弱い弱い。
「ぜんぜん問題ないぞ。一暴れしてこい」
 ほら、簡単に籠絡された。
 しょせん草間などそんなものである。
 肩をすくめる守崎ツインズ。夫婦漫才は放っておいて、さっさと出撃してしまおう。
 だいたい、遊んでる暇だってない。
 虚空に駆動炎の軌跡を描くFTR。
 問題はあれだ。シュラインという優秀な戦術オペレーターが不在の状態で、どうやって戦うのか、という点であろう。
 かなり重要なポイントのような気もするが、
「よし。マロを代用にしよう」
 さらっと決めちゃう。
 ちなみにマロとは、漢字では麿と書く。
 シュラインが作ったオモチャである。
 オモチャなのだが、いちおうは戦術コンピューターを搭載していて、航法援助とかもできたりする。ついでに音声入力が可能だ。
「ハイジ。さっさと発進するでおじゃる」
 口調は、とことん奇態だが。
 発進準備に手間取っていた巫灰慈が唇をかみしめる。
 どうして、こんな奇態な口調のロボットに命令されなくてはいけないのだろう。
 しかもオモチャなのに。
 人間としての尊厳が根底から否定されたような気がする。
 それでも命令には逆らえない。
 二重の屈辱だ。
「く‥‥だが‥‥っ!」
 操縦桿をひく。
 一気に加速するシルヴィア。
 まだだ。
 まだ、心の刃は折れていないっ!
「巫。遅かったのである」
「‥‥‥‥」
 ハイAで先に出撃していた亜矢坂9すばるが通信スクリーンに現れる。
 がっくり。
 どうやっても、変な口調からは逃げられないらしい。
 きっと、そういう星の下に生まれちゃったのである。
「俺の運命を勝手に創作するなっ!」
「わがままなやつなのである」
「わがままなのか! それはわがままなのかっ!!」
 不毛な論争だ。
 それはともかくとして、敵は四五機である。
 侮れない数だ。
 というよりも、クッサマー級の大型戦艦でも搭載数は四機なのだ。大規模の機動艦隊くらいのものである。四五機もの戦術機動兵器をつれているのは。
「正直。勝算はどのくらいある? すばる」
 シュラインの問い。
 すばるが搭乗するハイAは後方支援型の機体である。
 円盤のように平べったい頭部が特徴だ。
 戦闘能力そのものは高くないが、索敵や分析などの能力は他機の追随を許さない。
「敵機の性能が未知数なのである。したがって、この時点での判断は予測ではなく願望というべきなのである」
 しごく当然の答えだ。
 とはいえ、逃げるという選択肢は、この時点では存在しない。
 まずは戦ってみなくては、どんな情報も得ようがないのだ。
 爪弾いてみなくては弦の調子はわからない、ということになろうか。
「やってやるぜっ!」
 巫のシルヴィアが加速する。
 危険な発言なのである。
「いや、むしろ、俺の歌をきぐえふぅっわっ!?」
 さらに危ないことを言おうとした北斗が、前部座席の兄に殴られる。
「無言のままなぐるなっ! つーかどうやって殴ったっ!?」
 苦情。
「ディスプレイの上を見ろ。グーのマークがあるだろう?」
「あるな。なんだこれ?」
「こっちのスイッチを入れると」
 がこん。
「ぐべっ!?」
 マジックハンドが飛び出して、北斗の顔面を殴る。しかもグーで。
 もちろんこんな機能が最初から付いているわけがない。
 飛び散る鼻血。
「なんでこんなもんがっ!!」
 怒り狂う弟。
「改造した」
 冷静な兄。
「アンタの改造はこんなんばっかかっ!!」
 漫才が続く。


 迫りくる敵の戦術機動兵器群。
 まだ肉眼で機体を確認することはできないが、圧迫感は相当なものである。
 相対距離が近づくまでに、もっと情報を集めようと、すばるがハイAの頭部を回転させる。これ自体がレーダーになっているのだ。
「通信波をキャッチしたのである」
 淡々と告げるすばる。
 なんだろう。
 いまさら交渉でもしようというのか。
「全機に転送して」
「了解したのである」
 FTR、シャドウスラッシャー、シルヴィアの送られる映像。
「‥‥‥‥」
 シュラインが絶句した。
「‥‥‥‥」
 巫も絶句した。
 スクリーンに映し出されているのは男だった。
 赤い軍服を着て、黒いアイパッチをつけて、海賊みたいな帽子をかぶっている。
「‥‥なんか‥‥」
「‥‥いろいろ‥‥混じってるな‥‥」
 ぽそぽそと呟く双子。
 まったくだ。
 しかも、なぜかマントは青かったりする。
「地球の諸君。ごきげんよう」
 しゃべり方も、どっかの総統みたいだ。
「ごきげんようである」
 律儀にすばるが応える。
 どうでもいいが、パイロットたちのなかに地球出身者はいない。巫とシュラインはイオの生まれだし、啓斗と北斗とすばるは月面都市生まれだ。
 西暦が廃されてから二〇〇年以上。地球は、人間が住むには少々劣悪な環境になってしまっている。
 したがって、地球の諸君という呼びかけは、ちょっと的はずれだろう。
「ワレワレハ火星人ダ」
 男が告げる。
 変な声で。
 もちろん、まったくウケなかった。
 少し寂しそうだ。
「私は火星新政府軍のシオン・レ・ハイ中佐だ。貴軍は領域侵犯をおかしている。ただちに進路を変更し、この宙域から退去せよ」
 型どおりの言葉。
「けっ」
 巫が吐き捨てる。
 人類が政治的に統一されたのに、新政府とは笑わせる。
 しかもいっちょまえに、支配宙域まで決めているとは。
「私たちは汎人類統合政府から派遣されたものだ。マーズポートへの立ち入り検査を要求する」
 強気に攻めるシュライン。
「ま、無駄だろうけどね」
 内心で呟きつつ。
 火星新政府など名乗っている連中だ。
「熱源接近なのである。九五パーセントの確率でミサイル群なのである」
「散開っ!」
 すばるの警告とシュラインの指示は同時だった。
 思い思いの方向へ散る四機の戦術機動兵器。
 もちろん誘導兵器のミサイルは自動追尾してくる。
「二時方向に囮を射出するでおじゃる」
 マロの声が割り込み、クッサマーから高温を放つ囮(デコイ)ミサイルが撃ち出された。
 軌道を変えるミサイル群。
 その隙に突入してゆくFTR。
 加速性能では随一なのだ。
 すでに両腕にはライトセイバーの眩い輝きがある。
 接近戦こそFTRの本領だ。
 みるみる相対距離が縮まり、敵影がスクリーンを占拠する。
 うさぎ、ウサギ、兎、USAGI。
 兎のむれ。
 先頭にいるのは、赤い兎。
 たぶんこれがシオンとかいうやつの機体だろう。
「うさざだなぁ‥‥」
「うさぎだねぇ‥‥」
 ぼけーっと呟く双子。
 構図的には、たくさんのうさぎとたわむれる剣士の図だ。
 あんまり絵にならない。
 FTRがかっこいい分、余計に滑稽だ。
「ウサギ型の戦術機動兵器なんて聞いたこともないわね」
「こういう愉快な見た目のヤツに限って実力は侮れねぇもんだ。気を引き締めていくぜっ!」
 シャドウスラッシャーとシルヴィアが虚空を駆ける。
 息のあったコンビネーションだ。
 同期で、同年で、同郷出身な二人なのである。オペレーターとパイロットという職分は違うが、付き合いもだいぶ長い。
 シュラインの恋人はクッサマーの艦長の草間で四歳年上だ。一方の巫の恋人も他の戦艦の艦長で四歳の年長である。
 どこまでも共通点の多い二人だ。
 シャドウスラッシャーのビームライフルとシルヴィアの両腕にセットされた無反動カノン立て続けに咆吼する。
 次々と火球に変わるウサギ型戦術機動兵器。
「弱っ!?」
「めっちゃ弱っ!?」
 びっくりだ。
 近くをビームが通過しただけで爆発してしまうとは。
「なんつーもろさだよ‥‥」
 啓斗も呆れる。
 FTRが蹴っただけで、がっつり飛んでいってしまう。
 ちなみにがっつりとは、月面都市の方言で「非常に」というほどの意味である。
 使い方としては、
「がっつりうめぇぜっ!」
 みたいな感じに使う。
「出演は北斗である」
「勝手にナレーション入れた上に例題に出演させるなっ!」
 北斗が怒っている。
 まあ、ナレーション挿入は、すばるだけが使える必殺技だから。
「遊んでないで働くでおじゃる。北斗少尉。考課に響くでおじゃるよ」
 マロからの通信。
 こんな機械にボーナスの査定まで握られているとは‥‥。
 屹っとスクリーンを睨みつける。
 まだだ。
「まだ、心の刃は折れちゃいないっ!」
「それはさっき巫がいっていたのと同じ台詞である。だいたいにおいて二人は同じ次元と言うことである」
「がーん」
「俺と同じってのがそんなに不満かっ!?」
 バカばっかりだ。
 まあ、こんなバカたちでも、相手が弱すぎるので危機に陥ることはなかった。
「私を一緒にしないでっ」
「俺も含めるなっ!」
 シュラインと啓斗が怒ってる。
 気持ちは判らなくもないが、類は友を呼ぶ、とかいうし。
 蛙の子はカエルともいうし。
 朱に交わればシュラシュシュシュともいうし。
 君の瞳はひゃくまんぼるとともいうし。
「‥‥おい‥‥だれかすばるを止めてやれ」
 巫の呟き。
 もう、誰にもとめられない。
『自分で言うなっ!』
 双子の声が唱和する。


 さて、ウサギ型戦術機動兵器が弱い理由は、すぐに判明した。
「つまり、ほとんどが無人操縦機なのである」
 とは、すばるの説明だ。
 プログラムに従って動いているだけで、自律機関は搭載していない。
「マロ以下ってことね」
「それ以上でも、それ以下でもないのである」
「はいはい」
 横道に逸れようとするすばるは放っておいて、
「どれだけハードウェアが優秀だって、所詮、機械は機械だ。人間が動かす戦術機動兵器に勝てるわけがない」
 と、啓斗。
「だからこそ、あいつは強敵だ」
 北斗が続く。
 あいつとは、赤いウサギである。
 シオンとか名乗った敵の士官が操る戦術機動兵器。
 トリッキーな動きで、こちらの攻撃をかいくぐる。
「宇宙空間で反復横跳び‥‥」
 意味不明さも武器のひとつだ。
「いやまぁ、たしかにはやいんだけどな」
 困った顔をする巫。
 超高速で移動する赤ウサギ。
 高速機動型のFTRより速いくらいだ。
「だーっ! 当たんねーっ!」
 なんか北斗が怒っている。
 なんというか、ウサギにバカにされているようで、非常に腹が立つ。
「レトロなゲームで、こんなのがあったわねぇ」
「それはモグラたたきでおじゃるよ。シュラインどの」
「マロは物知りねぇ」
「それほどでもないでおじゃる」
 シュラインとマロが会話している。
 なんか、友達のいない少年みたいである。
「ひどっ!? それはひどっ!」
 むくれるシュライン。
「だいたいパターンが判ってきたのである。接近格闘なら、それは弱いのである」
 しれっと言うすばる。
 ただナレーションに侵入していたわけではない。こんなんでもいちおー優秀なのだ。遊んでいると見せかけて、ちゃんと分析をやっていたのである。
 どうだ。すごいだろう。
「すごかねぇ! それがおめぇの仕事だろうがっ!!」
 巫ザルが吠える。
「うるさいヤツなのである」
「俺が悪いのかっ! そんなの俺が悪いのかっ!?」
 ギザギザなハートの巫は置いておいて、
「置いていくなよぅ」
「FTRとシャドウスラッシャーで捕まえるのである。シルヴィアは追い込み役なのである」
 てきぱきと指示を下す。
 どんなときでもマイペースなすばるであった。

 ややあって。
 シャドウスラッシャーの腕の中でもがく赤ウサギ。
「美しくなったな。シュライン」
「シオン兄さん‥‥」
「ソレ違ウ」
 ボケ空間に入ろうとするものどもを啓斗のFTRが小突いた。
「啓斗クン。私は君を‥‥殺す」
「まだ言うかっ!」
 がこがこと赤ウサギを揺するFTR。
「うおぉぉ」
 変な悲鳴を上げるシオン。
「いいんだけどね‥‥べつに‥‥」
 なんだかけっそりとするシュラインだった。
 隊長機を捕獲したことで、どうやら終幕のようである。
「もっとも、もうほとんど敵も残っていないけどな」
 肩をすくめる巫。
 しょせんウサギはウサギ。たいして強くなかった。
 三〇分あまりの戦闘で、残存は一五機ほどであろうか。
「あとはマーズポートに入港して、査察をおこなうだけである」
 えらそうに腕を組むすばる。
 もっともではあるが、
「すばるがいうと、みょーに説得力がないなぁ」
 とは、北斗の台詞である。
 くすりと笑う啓斗。
 たいして活躍もしなかったクッサマーが、のこのこと近づいていた。


  えぴろーぐ

 結局、マーズポートの叛乱は未発に終わった。
 首謀者は捕らえられ裁判を待つ身となり、主だった幹部たちも拘束された。
 宇宙戦艦クッサマーは輝かしい功績を立てたのだが、
「ウサギ帝国に勝っただけじゃねーか」
 と、酷評されるのは、ちょっとだけ可哀想である。
 ところで、マーズポート解放の後、クッサマーの陣容に多少変化があった。
「だからー なんでおめーがここにいるんだよっ」
「いやぁ」
 はっはっはっ、と笑う男。
 アイパッチはやめて、サングラスなどをしている。
 どこからどうみてもシオンだ。
 とりあえず処分保留となった彼は、クッサマーに預けられることになったのである。
「ちなみに、軍本部がもてあましただけという噂もあるのである」
「噂じゃなくて事実だろ‥‥」
 すばるの言葉にうなだれる啓斗。
 バカばっかりのパイロットチームに、さらにバカが追加されるというのか。
 げっそりだ。
「同族嫌悪でおじゃるな」
「ほっとけっ!」
 余計なことを最悪のタイミングでいったマロが蹴り飛ばされた。
「ああ‥‥マロ‥‥」
 哀れなマロを抱きしめるシュライン。拗ねる草間。このへんはどうでもいい。
 ようするにシオンはパイロットとしての腕もあるし、赤ウサギの性能も捨てるには惜しかったので、クッサマーに載せることになったわけだ。
「赤じゃないですよ? 金色に塗り替えたのです」
 シオンがしれっと言った。
 赤から金へ。まあ、黄金パターンというやつだ。
「すこし古すぎじゃねーか?」
「まあ、どうせすぐにまた赤くするのさ」
 言いたいことを北斗と巫が言っている。
 仲良きことは美しき哉。
 愉快な仲間を加え、クッサマーの航海は続く。
 宇宙は、平和そのものである。
『つーかまとめんなっ!』
 すばるの割り込みナレーションに、愉快な仲間たちのツッコミが唱和した。













                      おわり


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0568/ 守崎・北斗    /男  / 17 / FTRパイロット 少尉
  (もりさき・ほくと)
0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 戦術オペレーター 中尉
  (しゅらいん・えま)
0554/ 守崎・啓斗    /男  / 17 / FTRパイロット 少尉
  (もりさき・けいと)
2748/ 亜矢坂9・すばる /女  /  1 / ハイAパイロット 少尉
  (あやさかないん・すぱる)
3356/ シオン・レ・ハイ /男  / 42 / 赤いなんとか 中佐らしい
  (しおん・れ・はい)
0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / シルヴィアパイロット 中尉
  (かんなぎ・はいじ)

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

お待たせいたしました。
「すすめっ! 宇宙戦艦クッサマー!!」お届けいたします。
宇宙まできちゃいましたねー
さてさて。次はどこにいきますかー
西部劇、時代劇、海洋冒険、宇宙戦闘ときましたから。
次は‥‥ファンタジーですかね。
悪い魔法使いクサマージを倒しに、とか。
でも弱そうだなぁ。
さて、楽しんで頂けましたか?

それでは、またお会いできることを祈って。