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<PCシチュエーションノベル(ツイン)>


『cherry blossom time ― 桜が咲く頃にあなたと ―』


【水鈴】


 とっても綺麗な桜。
 たくさん、咲いたよ。
 ひらひら、ひらひら、ひらひら。
 水彩絵の具で塗ったみたいな水色の空、そこに重ね塗りしたような白の雲。
 いち、じゅう、ひゃく、せん、まん………たくさん、たくさんの数え切れないような桜の花びらたくさん、その空に踊るみたいにふわふわと風に舞って、飛んでいるんだよ。
 花びらは上手。
 まるで音楽にあわせてワルツを踊るように風に乗って、虚空で踊る花びらは本当にとても上手な踊り手さん。
 見ててうきうきしてくるの、心が。
 だから私もくるくるとワルツを踊ったんだよ。
 虚空で舞い飛ぶ桜の花びらに合わせて、ワルツを踊ったの。
 もちろん即興でつけた踊り。私が踊りたいように踊る。拍子も何もかもでたらめ。ただ春に流れる桜の花びらを体全部使って表現する。
 どう。上手?
 じゃあ、私と一緒にワルツを踊りませんか?
 お題は桜。
 春を詠うように綺麗な淡い薄紅の花を咲かせ、
 風に身を任せて虚空を好きなように舞う桜の花びらが、
 私のワルツのお相手。
 私も桜の花びらもワルツを踊る。
 四分の三拍子で。
 くるりとその場で回転して、スカートを上品に上げて、丁寧にお辞儀。
 桜の花びらが拍手喝采をしてくれるように私を包み込んでくれた。
 風に揺れて、私の首筋をくすぐる髪の毛がひどくくすぐったい。
 私は髪の毛を掻きあげてくすくすと笑う。
 そうだ。今日のおやつ。桜餅。まだその匂いを覚えている。桜の匂いは桜餅の香りと同じ?
 私は背伸びして桜の花の香りを嗅ぐ。
 空間いっぱいに舞い散っている桜の花びら。
 空間を満たす薄紅。
 桜の花霞みの中で私は鼻をぴくぴくとさせる。
「う〜〜ん、でも桜餅の香りしない。桜の花と桜餅の香りは違うのかな〜?」
 腕を組んで私は小首を傾げる。
 そしたらくすくすと笑う声。
 笑うのは誰?
 私はくるりん、と後ろを振り返った。そしたらお友達のスノードロップの花の妖精さん。
「あ、こんにちは、妖精さん」
「こんにちはでし♪ 何を考え込んでいるんでしか?」
「えっとねー、桜の花びらは桜餅の香りはしないんだね、って」
「わわ、桜餅を食べたんでしか!!! 美味しかったでしか?」
「うん、すごく美味しかったよ」
 妖精さんはものすごく羨ましそう。今度は私がくすくすと笑う。
「妖精さんはスノードロップの花の妖精さんなのに、花よりも団子なんだね♪」
「はいでし♪ よく言われるでし」
 私たちはくすくすと一緒に笑う。
 降る花びらは冬に見たしんしんと降る雪に似ていた。
 しんしんと降る白。
 しんしんと降る淡い薄紅。
 雪はとてもツメタイ。触れたら溶ける。
 だけど私の体を打つ、私の掌に落ちたひとひらの花びらは溶けなくって、ずっと乗ったまま。
 風に飛ばされて、それはふわりと空間を舞って、他のたくさんの花びらと一緒になって、またワルツを舞う。
 私と妖精さんは一緒になっていつまでも桜の花びらを見ていたんだよ。



【璃生】


 今日は春休み最後の日。明日からはまた学校が始まる。
 だから私はお部屋のお掃除を朝からしていた。
 綺麗に部屋を掃除して、新しい教科書をちゃんと並べられるように机の棚を片付ける。硝子の瓶に花も生けて飾った。
 ぴかぴかの机。綺麗なお部屋。香る、花の匂い。うん、満足。
 私はこくりと頷いて、掃除道具なんかを片付けて、ベッドに腰を下ろして一息つく。
 台所から持ってきたジュースを一口飲んで、溜息を吐いて、窓を見た。
 部屋の換気のために網戸にしてあるけど、肌寒さは感じない。春の陽気。差し込んでくる春の陽光。ぽかぽか。
 網戸から吹き込んでくるそよ風は心地良かった。
 床の上に置いてある小さなテーブルに半分飲んだジュースの缶を置いて、私はベッドから立ち上がる。
 白のレースのカーテンを開けて、網戸を開いた。
 吹き込む風。
 踊る髪。
 右手で無造作に前髪を掻きあげて、私はどこかから吹き飛ばされてきたのであろうひとひらの桜の花びらを出迎える。
 それは開いた網戸のスペースから風に乗って入ってきて、ひらひらと、ひらひらと、ひらひらと、揺れ動きながら床の上に落ちた。
 私はくすりと笑う。何となく私の知らない場所から飛ばされてきたそのたったひとひらの花びらを無下に捨てる気にはなれなくって私はそれを手に取った。
「あなたはどこから飛ばされてきたのかしら?」
 淡い薄紅の花びらがそれに答えてくれる事は無いけど、それでも私は構わなかった。
 その花びらを掌に乗せたまま、私はベランダに出た。
 風はいよいよ強く吹いて、私の髪を掻き乱す。春の風は悪戯っ子。だから私はちょっと学校に行く時以外はこの時期はスカートは気後れしてしまう。
 掌の上にあったはずの桜の花びらはいつの間にかどこかに飛んでいってしまっていた。私はその事にかすかに胸に痛みを覚えた。
 そうだ、この感触は毎年この桜の時期に感じている。
 桜の花びら舞う場所で見る掲示板。そこに書かれているクラスメイトの名前。そこに去年のクラスでせっかく仲良くなった子の名前が無かったのを見た時なんかに。
「明日のクラス発表、どうなのかしら?」
 ちょっと私は憂鬱な気分。
 はふぅー、溜息が自然に零れてしまう。
「わんわんわん」
 先ほどまで風に飛ばされて流れてきた桜の花びらを追い掛け回していた犬のなずながベランダに出た私を見つけて、甘えた声を出してくる。
 私は手すりにもたれながら頬にかかる髪を耳の後ろに流して、なずなに声をかける。
「散歩に行く、なずな?」
「わん」
 なずなは嬉しそうにそう鳴いて、私は笑う。
 あの桜の花びらは風に飛ばされていってしまったけど、風上の方に歩いていけば、あの桜の花びらが咲いていた樹に行き着くかもしれない。
 そう想ったら嬉しくなった。
 春は出会いの季節。
 あの花びらとは別れてしまったけど、でも風が吹いてくる方の場所で、私はどんな出会いをするのだろう?
 それがとても楽しみで、私は心弾ませた。



【水鈴】


 とても綺麗な桜。
 ふわふわ、ひらひら、とても本当に綺麗。
 顔を上げて桜を見上げる。首が痛くなるぐらいに首を逸らして。
「とととと」
「うわぁ、大丈夫でしか、水鈴さん?」
 私の背中を押してくれるスノードロップの妖精さん。
「うん、大丈夫。ごめんね、妖精さん」
「いえいえでし」
「でも本当に綺麗だね♪」
「はいでし♪」
「う〜〜〜んっと綺麗。来年も来年も綺麗?」
「来年も来年も綺麗でしよ♪」
「そっか。うん、そうだよね。良かった♪」
 うん、本当に良かった。
 だって来年も来年も綺麗だったら、いつか出逢う運命の人とも一緒に桜が見えるもん。一緒に見たいもん。だから本当に本当に嬉しかったんだよ。
 風に飛んでいく桜の花びらさん。
 もしもあなたが私の運命の人の所まで飛んでいったのなら、どうかその人に伝えて。えっとね、私は、水鈴はここに居るよ、って。
 私は桜の花びらさんにお願いをする。
 そしてその桜の花びらさんが飛ばされていった方を見る。
 そしたらそこにおばあさんが居た。重い荷物を持っていて大変そう。
「妖精さん」
「はいでし」
 顔を見合わせあった私たちはこくりと頷きあった。
 一緒におばあさんの方へ走っていって、大変そうなおばあさんににこりと笑う。もちろん、両手を出して。
「おばあさん、はい。私が荷物を持ってあげる」
「まぁー、まぁー、重いよ、この荷物」
「大丈夫。私、力持ちだから♪」
「じゃあ、お言葉に甘えて頼んじゃいましょうかねー」
「どうぞ♪」
 そして私は両手で荷物を持って、おばあさんと一緒に歩いた。
 おばあさんは遠くの方で生まれたお孫さんの赤ちゃんの顔を見に行ったんだって。
 かわいかった? って、訊いたら、おばあさんはとても嬉しそうに微笑んだ。
「お嬢ちゃん、ありがとうね」
 駄菓子屋さんがおばあちゃんのお家。店番をしていたおばさんがなんだか私たちを見てびっくりとした顔をして、それでおばあさんがおばさんに私が荷物を持ってくれたんだよ、ってお話したら、おばさんがにこりと笑って、私の頭を撫でてくれた。
「ご苦労様、お嬢さん。はい、お礼にこれをあげるわ」
 おばさんがくれたお礼はラムネのジュースだった。
 ありがとう、おばさん♪



【璃生】


 私と愛犬のなずな、両方の好きな散歩コース。それが家の近くにある大きな公園。
 広い敷地内に作られたハイキングコース。
 そのハイキングコースの道に沿うようにたくさんの桜の樹が植えられていた。
 だからハイキングコースの道は自然に桜の花びらのトンネルが出来上がっていて、私はその道を歩くのが大好きだった。
 それはなずなも同じようで、ひらひらと空間を舞う桜の花びらを落ち着きなく見上げている。そんな彼女の姿が本当にかわいらしかった。
 ハイキングコースの途中にはベンチが設けられていて、そのベンチでは仲の良いおじいさん、おばあさんが座っていて、何を話すでもなくただ桜の花を見ていたり。
 または桜の樹の根元にシートを敷いてお弁当を食べている家族連れ。
 もしくは友達同士でお花見を楽しんでいる人たち。
 本当に皆、幸せそう。
 あんな風におじいちゃん、おばあちゃんになっても仲良くしていられるのは憧れる。
 家族連れはもちろん、幸せそうで、微笑ましくなる。
 皆でわいわい騒いでいる人たち。通り過ぎる瞬間にちらりと横目で見た彼と彼女。こういう勘は結構自信がある。好きあってるんだろうな、って想ったの。二人を見て。ものすごく初々しい二人。付き合って間もないか、それともまだお互いを意識しあっているけど伝えられていないとか。
「お幸せに」
 つい呟いてしまう。
 アンダンテ。歩く時のような緩やかなリズム。
 あの二人もきっとそんなリズムで関係を深めていくんだと想う。
 私は歩きながら桜を見上げる。
 とても綺麗に咲き綻ぶ淡い薄紅色の花びら。降るようにひらひらと舞い落ちて、私を打つそれ。
 桜が綺麗に見えるのなら、それは良い春が迎えられている証拠。
 今、この私の眼に映るのは本当にとても綺麗な桜。
 それは証。私が良い春を迎えられている。
 お父さんやお母さん、弟になずな、それから時折出会う妖精さんとかたくさんの友達。
 私の周りにいる皆が私に色を付けてくれる。幸せな色、楽しい色、嬉しい色。だから私は幸せ、嬉しい。
 私は願う。
 皆がくれるモノを私も私だけの誰かにあげたい、って。
 それは誰?
 私が、好きになる人。例えば恋人。いつまでもいつまでも…私がかわいいおばあちゃんになるまでずっと一緒に居たい、って願う人。
 ―――そう想ったら、恥かしくって何だか顔が熱くなってしまった。
 手で顔を扇いでいたらなずなが不思議そうに私を見ていた。なんだか私は笑ってしまう。
「だけどね、なずな。予感がするの。こうやって桜の花びらが舞う中をいつも一緒に歩くのはお父さんやお母さん、弟にあなただったけど、でもいつか大切な誰かと一緒に歩くんだって」
 私はなずなの頭を撫でながら、青い空を流れるように舞う花びらを見上げる。
「誰なんだろうね、それは。なずな」
 いつか出逢うと予感する誰か。それはきっと私の運命の人。とても大切な私の相手。私たち二人出逢って一緒になる事で、私たちは初めてちゃんとこの世界に生まれ落ちるのだと想う。
 私は無意識にそう確信していた。
「早く逢いたいよね、なずな」
 ぎゅっとなずなを抱きしめながら呟いた私の頬を私の涙が伝って、まるでそんな私を慰めてくれるように息も出来ないぐらいのたくさんの淡い薄紅の花びらが私を包み込んでくれた。



【水鈴】


「こっちだよ、妖精さん。ほら、ここの川原の桜が一番綺麗ぇー」
 私はラムネを握り締めながら川原まで走ってきた。
 川原の横の道は左右両側桜の樹が植えられていてすごく綺麗。桜の花びらのトンネル♪
 淡い薄紅の雪がひらひら、ひらひら、ひらひら、舞う中を私は妖精さんとくるくる回ってワルツを踊りながら歩くの。
 くるりん、と回って、それで妖精さんと顔を見合わせてにこりと笑い合う。
「妖精さん、ラムネ、飲もうか」
「はいでし」
 ラムネの口の所に巻かれているビニールを外して、んしょ、ってビー玉をT型のゴムの蓋で押せば、
「うわわわわ、妖精さん、すごい泡!」
「わわわわわ、走ったのがいけなかったんでしね」
 私と妖精さんは顔を見合わせてにこりと笑いあうと、二人で瓶の口から溢れ出すラムネをぺろりと舐めた。
「あまぁ〜〜い」
「美味しいでしね」
「うん」
 二人くすくす笑って、それで半分よりも少し上ぐらいの量になっちゃったラムネを私は飲んだ。妖精さんにもおすそわけ。妖精さんはどこかから出したコップでラムネを飲んでいる。
「ねえ、妖精さん」
「何でしか?」
「このビー玉、取れないかなー?」
「ラムネのビー玉って、どうやって入れてるんでしかね?」
「うん、不思議」
 多分、スーパーとかで売っているプラスチックの容器のビー玉なら取れたと想うの。だけど私がおばさんからもらったラムネの瓶は硝子の瓶で、だからビー玉は取れない。残念。
 私は半透明のラムネの瓶越しに世界を見てみた。
 世界は不透明で、あやふやで、とってもとってもとっても変な風に見えた。
 でもね………



 桜の花の美しさは変わらなかったんだよ。



「いつか………」
「ん、何でしか、水鈴さん?」
「ううん、なんでもないよ、妖精さん」
 ―――いつか運命の人と一緒にこの綺麗な桜の花の下を歩いて、お花を愛でたいな、って言ったんだよ、妖精さん。
 川原の桜。その中に一本、私の背の高さの位置に枝をつけている桜の樹があったの。
 私はそれを見て、それでこう想ったの。願掛け、してみようかな、って。
 だって桜の樹はとても特別のようなお花。
 人の想いを桜は溜め込むんだって。その想いの力で花を咲かせるから、だから桜は綺麗なんだって。
 じゃあ、私が願掛けをしたら、そしたらその想いも桜の樹に溜め込まれて、その想いが花を咲かせて、それでひょっとしたら私の運命の人がその私の想いの力で咲いた桜を見てくれるかもしれないから。



 ねえ、私の運命の人。あなたはその私の想いで咲いた桜の花を見て、私の事を想ってくれる?



 私は背伸びして、ひとつの蕾みに口づけをした。
 ―――どうか早く、運命の人と出逢えますように。
 唇を離して私は妖精さんに川を指差す。
「見て見て、妖精さん。花びらが川に落ちて、流れていっているよ。それもすごく綺麗」
「そうでしね。見に行きましょうでし」
「うん」
 妖精さんと一緒に私は川の方へと走っていった。風に流れる桜の花びらと追いかけっこをしながら。



【璃生】


「あ、ごめんね、なずな」
 誰かに呼ばれたような気がして急に立ち止まった私を不思議そうに見上げたなずなに私は顔を横に振って、にこりと微笑んだ。
 私は周りの桜の花と花びらを見回す。
 花吹雪。とても綺麗だった。息も出来ないぐらいのたくさんの桜の花びら、舞い狂う光景はすごく綺麗だった。
 川のせせらぎもまたこの風景によく似合っている。
「元気な娘ね」
 私は川に落ちて流れて行く花びらを追いかけている小学校高学年ぐらいの女の子を見て心和ませた。詠うように澄んだ彼女の透明な笑い声を聞いていると、本当に心安らいだ。
 マイナスイオンがその声の響きに含まれているのかしら?
 自分で想った事についつい笑ってしまう。


 いつか出逢う人もこんな風に私の心を癒してくれるのだろうか?
 心安らぐ、涙出るような嬉しさと幸せを感じさせてくれて、私はちゃんとここに居るって、その人の存在の中に感じられるような。


「ねえ、桜の妖精さん。あなたは知っているのかしら?」
 目の前の背の低い桜の樹に私は問いかける。
 そしてその次に起こった事を何と説明すればいいのだろうか?
 ひとつの桜の蕾み。
 それがゆっくりと、ゆっくりと、私の目の前で花開いて、咲き誇る。
 とても綺麗な花。
 かわいらしくって、
 凛としていて、
 そしてとても優しい。



『璃生、私だって居るんだよ♪』



 咲いた桜の花、その妖精が私の目の前にワルツを踊るように他の桜の花の花びらと一緒に飛んできて、私の額にキスをしてくれる。
 聞いた言葉は何だったのだろう?
 たくさんの種類の花に囲まれた場所で私はとても大切な誰かと一緒に居て、そしてその誰かが私にそう言ってくれて、どんな時にも私に立ち上がる力と勇気、温もりをくれる。
 それは未来のビジョン。
 まるで夢の中に居るような心地の中で私はその光景を見るのだけど、でもそれは夢のような現実感の無い感覚ではなく、いつか必ず来る未来だという事が私にはわかった。
 そして私はつい今さっきそれに似た声を聞いたのを覚えていた。
 私はそちらを向く。川の方を。
 だけど淡い薄紅の花霞みの向こうにあの女の子はもう居なかった。
「また逢えるよね、いつか」
 果たしてあの女の子が今見た運命の人なのかはわからない。だけどいつか私はまた彼女と逢えるのだと想った。
 咲いた桜の花からひとひらだけ花びらが落ちる。
 私はそれを手の平で受け止めた。
 手の平の上のひとひらの淡い薄紅色の花びらは、とても瑞々しくって、そしてそれはそれだけでも美しかった。たぶんきっとこの花びらはずっとこのまま。私と彼女の約束が果たされるまで。
 ―――彼女? 決まっている。私は無意識にそう呟いて、頷いた。
 吹く風は花びらと共に私の髪を躍らせる。私は髪を掻きあげて、空を見た。
 どこまでも広く晴れ渡るこの蒼い空の下、あなたもそこに居て、この空を見ていますか? 桜の花びら、舞い飛ぶ空を。



【ラスト】


「うん、私も見ているよ」
 何でか私はそう想った。
 蒼い空を見上げながら。そして妖精さんと一緒に笑いながら、桜の花びらを追いかけた。



 掃除した部屋の机の上。
 前にキャンディーが入っていた硝子瓶の中にビー玉とおはじきを入れて、そしてその上に敷くように私はあのひとひらの桜の花びらを乗せた。
 それは本当にとても綺麗だった。



 桜の花。
 それは想いを溜める。


 私の想いと、
 あなたの想い。


 だからこの花びらは約束の証。
 いつか出逢う私たちの。



 それはそう遠くない未来の話で、私とあなたは笑いながら………



 ― fin ―


 ++ライターより++



 こんにちは、涼原水鈴さま。
 こんにちは、笹川璃生さま。
 いつもありがとうございます。
 このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。


 今回はご依頼、ありがとうございました。^^
 桜の花は本当に大好きで、その花を使ったお二人のお話を書く事が出来て本当に嬉しかったです。^^
 プレイングも本当にいつも素敵で、今回の水鈴さんが桜に口づけをするシーン、璃生さんが花びらを持ち帰るシーン、それらが書かれたプレイングを見て、それで今回のお話がふわぁっと思い浮かびました。^^
 本当にいつも素敵なプレイングで、それを読むのが凄く楽しみで、そのプレイングを下にお話を考えるのが凄く嬉しいのですよ。
 今回のお話、お気に召していただけましたら幸いでございます。^^
 本当に早く水鈴さんと璃生さん、お二人が出逢えると良いですね。^^



 それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
 ご依頼、本当にありがとうございました。
 失礼します。