コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 Invisible Blade 3 皇茉夕良編

 あれから友情を深め、退魔行も2人で行う事が多くなる織田義明と衣蒼未刀。
 義明は未刀に剣と神秘を教えていた。
 彼は知識を徐々に物にしていく。
 あなたも未刀の変わる姿が楽しく思えた。

 ある日、2人は大きな仕事に出掛ける。まずは下見だ。
 どうも、おかしなマンションがあるらしい。死人の山を見つけたと通報が入ったのにも、駆けつければ、そんなことは全くなかった。
 警察では全くわからないようになったため、長谷家に“仕事”が来る。其れを通じて、義明達が仕事を受け持つ形になった。
 故に、建築家でもないが、下調べで一度訪れる。義明。
「異様な気分になる」
 未刀が呟く。
「固有異界か? 超越するための儀式なのだろうな」
「超越……こんな能力をもって何を得たいのだろう?」
「何、霊長の魂の高みを目指すなど、魔術師を筆頭に神秘使いにとって基本的なことだ」
「そうか……」
 お互い、まずは間取りを調べた後、本業準備の為に一度戻る。
 “気配”がする。
「魔術師か……三滝を思い出す」
 義明はごちた。
「三滝?」
「ああ、前にかなり戦った死者の魔法使いさ」
 
――あの神の子に封門の剣士か……。
――嬉しいぞ……織田義明、衣蒼未刀……そして……
 
 “気配”は喜んでいた。

〈その人に会えない〉
 下見に向かう前に茉夕良は発見者と話をしたかった。
 しかし、
「え? むりですって?」
 茉夕良は目を丸くする。
「何でも、錯乱から発狂したため、暫く治療中。現場遭遇時にかなりショックを受けているようだよ」
「残念」
 手がかりになる、事情聴取が出来ないのは痛いことだ。
 義明から、話を聞けば、その人物が発見した死体の山というのは一家心中のようだった。
 見取り図などを調べると、全く謎である。円形の塔のような建造物、地階と13階を突き抜ける、中央に対辺にドアのあるエレベーター、そして隔離された気分になる居住区は、エレベーターを繋ぐ一本の通路で“仕切られ”ている。
「情報もなにもあったものではないが、下見するしかないって事」
「猪突猛進か?」
 義明の言葉に、未刀が溜息をつく。
「何を言うか。空気も掴めばタネ仕掛けもわかる」
「そうしかないようね」
 と、茉夕良も溜息をついた。

 それが、数日前のこと。


〈下見〉
 確かに人が住んでいる。
 入ったとたんに、この異様な閉塞感は尋常ではないが、住民は生きている。
「気にしていないのかしら?」
 と、考え込む茉夕良。
 未刀はこの状況に過去を思い起こしたのか、警戒心が強く、義明はずっと無言のままだ。
「事情聴取してもなにもないわね……」
 と、反対側を調べようとしたとき、
 彼女は立ち止まった。
 汗だくに成る程の……何かを感じ取る
「どうした?」
 未刀が、
「……死が酷いわ」
 と、呟く。
 まるで濁流のように生きている人間との居住区との境目が違った。閉塞感ではない。見えない地獄の門。 しかも“死の臭い”だけで、魂も思念も無い。
「どういう事かしら? こんな矛盾が」
――あってなるものか、と。
「在るとすれば其れは在る。此処はそう言う異界だ」
 義明が口を開いた。
「しっかり準備を整えて、また来た方がいい」
 と、義明は茉夕良に言う。
「そ、そのようね……、これだけの手がかりじゃ何もわかりはしないわ」
 異質な空間生と死がある建造物。
 住民にとって、この異質さは感じていないのか?
 住民は全員、コミュニケーションを取っていないようだ。

――もし、尋ねたら
――引き返せない事に

 と、全員が思っている。
 茉夕良は力こそあれ、装填されている“抑止の一・影斬”こと義明や、戦闘にも通じてきた未刀に及ぶわけではない。
 知り合いから借りているモノさえとりに行けば、何とか自分を守れるかも知れない。
 早くこの異質な空間から出るべきだと思った。

 そして、気分が重いまま、マンションを出る。


 曇り空にそびえる、
 この建造物は、
 この世界の……
――何かに通じる道に見えたのは茉夕良の気のせいなのか?



〈影斬〉
「どうする?」
 未刀が義明に尋ねた。
 茉夕良が情報集めのために居ない時に。
「彼女をあそこに連れてはいけない」
 口調が違う。
「まさか“影斬”に?」
「……ああ、今なっている。あそこは……完全に破壊するべきだ」
 何かを越えた口調。
「……確かにそうだが。何故茉夕良を連れて行かないんだ? 僕も連れて行くのは賛同しない方だけど……聞いてくれないと思う……」
「単に足を引っ張る。“義明”とお前と一緒に遊びにも行ったが、これだけは違う」
 今までの義明と違う。
 影斬になったとたんに、これほどまで威圧感があるのか。
 いや、神というのは元からこう言うものか?
 未刀は何とか口を開く。
「何か都合が悪いことが影斬にはあるんだ」
 影斬の答えは、
「ああ、彼女の真の力と“私”の真の力と相殺される事はないが、あのマンションに渦巻く、強力な闇と死に茉夕良が取り込まれる。そうなると、影斬として彼女を斬り、その力を封じるか殺さなければなければならなくなる」
 近くで、乾いた音がした。金属がコンクリートに落ちたときの音だ。
「茉夕良!?」
「聞いていたか」
 その言葉を聞いた茉夕良が立ちすくんでいる。
 驚く未刀、聞いて当然だろうなと態度の影斬。
「どうして? 足手まといに……なぜ、隠した力を見切ったの? 闇と死を操ることを……」
 茉夕良は隠していた真の力を言われ呆然としている。
「なぜ? そんな目を?」
 それほど“影斬”の目は“使命”として冷酷なモノだった。
 まるで全てを見透かされているように。
「義明……“義明”の考え方を聞きたい」
「“義明”も、共に戦おうとは思っていない。遊び友だちを危険な所に向かわせるつもりもないと言うことだ。表の世界の友だちとして、だ。聞いていたはずだ」
「わ、わたしは……」
 言葉を選ぶ。正直に言わないと、今の彼には嘘を見破る力が“義明”の時よりあるのだ。
「……なら、訊こう茉夕良。君が憧れる蒼王翼の固執なまでの吸血種討伐を認めるとするか? わたしが“彼女”なら、今此処ではなく、出会った場所で斬っていた」
「……」
 言葉が出なかった。

 茉夕良にとって悲しかったのは、義明は自分に心を開いていなかったと言うことだろう。
 対極に位置する“影斬の使命”と“闇”は相反している。表裏一体である。
 共存は難しい。闇を持っていても、使い方を誤らない限り、良いのだが。
 その、有効に使うことをするなら良いとさえもあの“彼女”は認めていなかったではないのか?
 影斬として“影の力”と“闇の力”は広義に位置するものらしい。

 しかし、
「単に、君は表の世界を歩けばいいのだ。君は、表の世界で称賛を浴びている。こういった事に深く関わることなどしなくて良い。力を隠し、表だけで生きていればいいのだ」
 と、影斬は言った。
 それは、一瞬、優しさが篭もっていた。

 しばらくの沈黙……。

 茉夕良の目から熱い何かがこぼれ落ちた。
「……」
 何も言えない。
 正否はともかく、確実なことは。
――2人は自分を危険なところに行かせたくないだけだと。
「私は、魔女から調べてもらった資料を渡すわ」
 と、未刀にメディアを渡した。
「待っている……本当に2人の……」
 そこで詰まった。

――悲しすぎたから。
――暫く考える必要がある。

「……じゃ、お仕事頑張ってね」
 と、彼女は長い棒のような物体を拾い上げ、走って去っていった。


〈仕事〉
「影斬」
 未刀は悲しそうに呼ぶ。
「其れに、あのマンションはただならぬ“現象”を持っている」
 その言葉で、2人の会話は……、
「有意義な情報が“めでぃあ”に入っていればいいけどね」
「ああ、まずは調べるか。その後に行っても、間に合うだろう」
「そうか、どのみち……」
「そう言うことだ」

 影斬はモバイルにメディアを読ませ、ファイルなどをさらっと眺めた。
「あそこにある現象の話はないな。ただ、過去に似たような事件があるか内科というウワサか、建造した人物の名前が載っている。コレでも十分だな。最も……」
「重要なのは、一番気にしている“現象”をあそこから切り離すことと言いたいんだ……」
「ああ」

 2人はそれ以降、言葉を交わさなかった。

 数日後、あのマンションは大掛かりな解体作業に取りかかっていた。
 かなり厳重に立ち入りを禁止している。

 それを遠くで、茉夕良が眺めていた。
 あれから、2人に会っていない。
――私は彼らのことをどう思っていたのかしら?
 と、悩むのであった。


4話に……?

■登場人物
【4788 皇・茉夕良 16 女 ヴィルトゥオーソ・ヴァイオリニスト】


【NPC 織田・義昭/影斬 18 男 装填抑止・神】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】


■ライター通信
 滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 Invisible Blade 3』に参加して下さり、ありがとうございます。
 戦闘になる前に、義明と未刀は茉夕良さんを敵地での戦闘に向かわせない事になりました。
 表で明るい将来をもつ人を行かせないのは、普通かも知れません。
 それと、かなりの戦いになるとして2人は考えたのでしょう。

 では、今回はこれにて失礼します