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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


神の剣 異聞 Invisible Blade 3 秋築玲奈編

 あれから友情を深め、退魔行も2人で行う事が多くなる織田義明と衣蒼未刀。
 義明は未刀に剣と神秘を教えていた。
 彼は知識を徐々に物にしていく。
 あなたも未刀の変わる姿が楽しく思えた。

 ある日、2人は大きな仕事に出掛ける。まずは下見だ。
 どうも、おかしなマンションがあるらしい。死人の山を見つけたと通報が入ったのにも、駆けつければ、そんなことは全くなかった。
 警察では全くわからないようになったため、長谷家に“仕事”が来る。其れを通じて、義明達が仕事を受け持つ形になった。
 故に、建築家でもないが、下調べで一度訪れる義明と未刀。
「異様な気分になる」
 未刀が呟く。
「固有異界か? 超越するための儀式なのだろうな」
「超越……こんな能力をもって何を得たいのだろう?」
「何、霊長の魂の高みを目指すなど、魔術師を筆頭に神秘使いにとって基本的なことだ」
「そうか……」
 お互い、まずは間取りを調べた後、本業準備の為に一度戻る。
 “気配”がする。
「魔術師か……三滝を思い出す」
 義明はごちた。
「三滝?」
「ああ、前にかなり戦った死者の魔法使いさ」
 
――あの神の子に封門の剣士か……。
――嬉しいぞ……織田義明、衣蒼未刀……そして……
 
 “気配”は喜んでいた。



〈困ったボクッ子〉
「確かに君は退魔師だけどさ……あの人にも頼まれたこともあるが……」
 織田義明は、目の前いる秋築玲奈をみて困っている。
「未だ、早い気よ?」
「い・や・で・す! あの人がお仕事連れてってくれなかったし」
 と、頑なに助太刀する玲奈。
 あの人というのは、元天空剣裏門下生でメイドがとても好きな退魔師だ。なにか同じような仕事に連れてってもらえず、玲奈はこっちにお邪魔したらしい。
「義明、此処も何かの縁。色々知っているかもしれない。連れて行った方が良いかもしれない」
 未刀も半ば諦めている様子だ。
「はあ、仕方ないな……たしか“空間使い”だっけ?」
 折れる、義明。
「はい♪」
 ガッツポーズをとる玲奈。
「ボク、何とかお手伝いします!」
 純粋で無垢な笑顔が2人にとって複雑な心境にしてしまった。
「勝手に忍び込んで、いざこざが起きるより、マシか……。其れに……」
 義明は溜息をつく。
「退魔師や神秘関係仕事だし、年齢も関係ないか……」
「やったー!」
 喜ぶ玲奈。
 元気なボクッ子は2人に抱きついた。

 苦笑する義明と未刀である。


〈空間と異界〉
 義明は、少しだけ“三滝尚恭”について話し、そのあと慎重にマンションに入った。
「う、う〜ん……、よくわからない空間だね。ボクの能力とは少し違うのかな?」
 閉塞感を感じつつも、敏感にこの“異界”に対し何かを感じた玲奈。
「正解だったかもしれないな」
 未刀が義明に言うと、
「其れはそうだけど、お守りも頼まれているからねぇ。あまり嬉しくもない」
 肩をすくめる義明だった。
「ま、いっぱしの退魔なら自分の身は自分で守るだろうね」
 と、この異空間にあの“気配”を感じとり、警戒する義明だった。

「各階はまわらなくて良いの?」
「ああ、今は下見だから。この1階のロビーとエレベーター。そして“人が住んでいるところ”だけ。今日はすぐに帰るから」
「は〜い」
 と、玲奈はめぼしい場所に印を付ける。自分しか見えない印だ。
 下見中、義明は“気配”に気をつけながら玲奈に彼女の能力を説明した。
「君は収納空間。エーテルかアストラルのどれかに“袋”を作って繋げ、武具を入れている。ここは地図を見れば分かるけど、建物の構成を利用した結界だから、かなり別物だよ」
「そっかあ」
 と、異質な空間しか感じない玲奈は、各階に印を付けていく。
 確かに、人が住んでいて、人が生活している空間だ。
 ただ、何故ここまで異質なのだろうと玲奈は思った。

 未刀は反対側を見てきたようで、義明に首を振って答える。
「そうか」
 義明は頷くだけだ。
「どうかしたのですか?」
「下見は地下駐車場を見て帰ろう」
「はい」

 地下駐車場に着く。
「あ!」
 玲奈がガクガク震えエレベーターから出られなくなった。
 義明が彼女を安心させるために手を握ってあげた。
 暖かい感覚で玲奈がなんとか落ち着いた。
「……な、なに? ここ」
 そのまま彼女は義明にしがみつく。
「やはり空間には敏感だね」
 未刀はそう言って、先に出て、駐車場を見渡す。
 非常灯と僅かな電灯だけで薄暗い。
「此処だけ、“魔力”が感じるのもおかしいな」
「魔力というより……人の霊が集まっている感じがします」
 震える玲奈。
 まるで、霊の群れが襲いかかるのではないかと言う怯え。
 未刀は優しく、玲奈の頭を撫でた。
「大丈夫。早く帰ろうか」
「は、は……い」
 頷く玲奈。
「今持っている装備だけでは、ここの原因と立ち向かうことは難しい」
 義明はかなり、汗ばんでいる。
 マンションからでた後……
 義明がいきなり倒れた。
「義明さん!」
「義明!」



〈抑制〉
 義明のアパート。
「心労?」
「ああ。多分、闘気と神格の薄い膜を作り君を守っていたんだろうな。生身の躰で」
 と、マント姿の銀髪の男が玲奈と未刀に言った。
「夕刻になれば起きる。今はほら……」
 と、男が眠っている義明を見るよう促す。
 義明には仄かに青白い光が灯っている。
「神格と闘気が調整している。今は触ると感電に似た事になるからそっとすればいい」
 と、彼はそのまま義明のアパートから出て行く。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
 未刀と玲奈が彼を送り出した。

 夕刻、あの黒いマントの男が言ったとおりに義明が起きた。
「すまん。迷惑をかけた」
 すぐに謝る義明。
「大丈夫ですか?」
 玲奈が訊いた。
 無言で頷く義明。
「あの気配はただ者ではなかったから……今度は“切り替えて”あそこに向かう」
 と、義明が言った。
 玲奈は首を傾げた。
――切り替えるって、なに?
「義明」
 未刀が、彼を呼ぶ。
 未刀は義明の武器一式の入ったケースを持っている。
「行こう」
「ああ」
 


 玲奈がその言葉を少し思い出したのは……
 マンションのロビーからであった。
 良く顔をだして未刀と義明の鍛錬(あと自分も)をしたとき。
「“切り替える”から気をつけろ、未刀」
 と、言うこと。
 本気になるというレベルではない。
――彼は、世界に現存できる“モノ”を封印し、抑制していたのだ。



〈槍使い〉
 怪しい地下を調べる玲奈達。
「玲奈、解呪はできる?」
 と、未刀が訊く。
「何とかやってみます!」
 と、印を結び真言を唱え、
 ある点に向かって霊力を飛ばした。

 何かが割れたような音に砂煙のような現象。

 何もなかったはずの空間に……階段が現れた。


「ビンゴだ……」
 玲奈は指を鳴らす。
 彼女が勇気を出せるのは、2人がいる事と、対幽霊結界をしっかりかけているからもある。
 しかし、一番、この中で怖いものが
 味方にいるからだ。

「私が本体を仕留める。あれは厄介だから。未刀、玲奈を頼んだ」
「ああ、幾らその状態でも、気をつけろ、“影斬”」
 と、言っている。

 影斬、義明が“装填抑止”になるときの名前。
 神の柱としての名前であり、世界が常にこの世界を守るために装填しているものだ。
 無敵に近いが、此を滅ぼせるのは世界以外にない。

 玲奈は、切り替えると言う意味を此処で再認識したのだった。

 未刀と共に、階段を登る。
 死の気配が充満している、機械室だった。
「これは、魂の牢獄じゃない!?」
 玲奈は、直感で分かった。
 あの、霊が大量にいると言う事が恐ろしかった理由が此だった。
 ボイラーや様々な機器があるが一番の要は、奥にあるプールだ。そこから天井に向かってポンプがのびている。
「これって……魂の情報を送り続けている機器なの?」
「……多分そうだな」
 と、玲奈の言葉に、相槌をうつ未刀。
 既に2人とも武器を持っている。
「何かが……いる」
「はい……」
 と、2人は身構えた。
 陽炎のように一瞬空気が揺らめいた。
「見えない暗殺者!」
 未刀が叫ぶ。
そして“Invisible Blade”を一閃する!
 其れは空を切った様にしか見えない。
「そこぉ!」
 玲奈は、直感で槍を回し、後ろに“突いた”。
 手応えがある!
「此って!?」
「透明な精霊。おそらく番人なのだろう! 目で見るな、心の目で見ろ!」
 と、2人は背中を合わせ、見えない敵と向かい合っていた。


 影斬は、14階まで一気に駆け上る。障害となる何かを全て切り刻み、壊し、消滅させた。
「やはり、現象化したか三滝」
 水晶を構え直し、言う。
 そこには、半透明な男が立っている。
 その男の下には、紛れもなく人間が倒れていた。
――この男に取り憑けたが、堪えられなかったようだ……
 すでに、其れは生き物ではない。
 三滝は既に忌屍者だった。
「残念し、知識だけで存在するというか……。今楽に……」
――その必要はない、影斬。我、今は知性がある。しかし、今となっては意味がない。そろそろ薄れる
「どういう……そうか……」
 納刀する義明。
――大体見当は付くだろう? 抑止となった織田義明、否、影斬。 我が永遠の探求せし魂。
――この男も我のように神を目指した。心理を手に入れたと勘違いしたのだ……。
 だが、お前の神気に堪えられなくなったのだ、と三滝は言った。
 そして、其処にいなかったかのように、彼は消えた。
「愚かな……」
 影斬は、憑依された男を見下ろす。
 干からびており、目は白く濁っている。腐敗速度も尋常ではない。
「私を使い、この塔で力を得ようとしたのだろう。門が二つ、そして神の剣の私の力をつかって」
 今でも動きそうな男。忌屍者になるための下準備はしていたのだろう。

 影斬はすぐに水晶を抜き……今にも消滅しそうな男が立ち上がった。



 未刀と玲奈は、絶妙なコンビネーションで、この牢獄にいた“暗殺者”を屠った。
 未刀の間合いと玲奈の間合いは違う。刀と槍のリーチだ。
 既に、気配を感じ取る術を持つ2人は“暗殺者”を一匹一匹、確実に仕留める。
 玲奈が槍で床に貼りつけしたところを、未刀が“斬る”。また未刀が牽制したのち、槍がなぎ払うのだ。
 ずっと、一緒にいたが、共に戦うのは始めてである。しかし、その感じをみじんも見せない素晴らしいモノだった。
「おわったー!」
 と、玲奈は汗を掻いて地面に腰を下ろす。牢獄の魂はそこから出られない。
 あとは、解呪・浄化するために、“義明”を待つだけ。
 しかし未刀は、何かを感じていた。
 未刀は玲奈を抱え、走る。
「ど、どうしたの? 未刀さん!」
「いいからあとだ!」

 未刀は守るように抱き、その場から離れる。
 しかし、恐ろしいほどの爆音と光に包まれた。




〈空間少女〉
 マンションは中だけ崩れていた。かなり壁の結界は強いらしい。
 しかし、その力は中にある殆どを消滅や破壊し、人の気配すらない。
 いや、義明しかいない……。
「助けられなかった……」
 と、悔やむ義明。
 あの魔技は、忌屍者となって魔力の暴走による、昇格を目指そうとしたのだ。
 義明は、影斬として、其れを食い止めようとしたが、相手はスイッチを押すだけだったらしい。
 結局、求めたモノは現れず、抑止の一に殺された。
 その反動が、此である。
「……いくら、世界を守るといっても……人を守れなかったら……意味がないじゃないか……」
 と、ガレキに自分の拳を叩きつける義明。
 痛かった。
 心もなにもかも。
 親友となりつつあるあの少年。仲良くなった女の子を守れない悔しさが義明を苦しめた。
 

「そろそろ大丈夫かな?」
 と、在らぬ空間から声がする。
「? ま、まさか」
 義明は驚く。
 空間に穴が開き、そこから
 未刀と玲奈が顔を出したのだ。

「義明!」
「義明さん!」
「!? 無事だったのか! 良かった」
 出てきた2人に向かって、義明は駆ける。
 そして、大粒の涙で、2人を抱きしめて泣いた。
「お、おい、いきなりどうしたんだ?」
「よ、義明さん。く、くるしい!」
「よかった! よかった!」
 2人は、義明に何か言いたかったが、この様子を見て、肩をすくめるだけにした。

 見ての通り、玲奈が空間を開けてシェルターを作り上げたのだ。
 魔力爆発は物質界しか影響しなかったらしく、彼女の空間には全く影響はなかったのだ。


4話につづく


■登場人物
【4766 秋築・玲奈 15 女 高校生(予定)】


【NPC 織田・義昭/影斬 18 男 天空剣士/装填抑止】
【NPC 衣蒼・未刀 17 男 妖怪退治屋(家離反)】

■ライター通信
 滝照直樹です。
 『神の剣 異聞 Invisible Blade 3』に参加して下さりありがとうございます。
 奥の手を使う玲奈ちゃんを書いてみました。
 
 では、4話目で最終話。玲奈さんが彼らに対してどう思っているか書いて下さると、結果がよりよくなると思います。

 |Д゚) ←次回を期待しているらしい