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ハクリの森
オープニング
草間興信所にやってきた一人の中年男性。
その男性が言うには最近「山」を買ったらしい。
だけど、その山では昔「大量虐殺事件」が起こりその呪いのようなモノが存在するという。
夜中の二時頃に殺された村人が出てくるのだという。
そして、それを見たものを憑き殺してしまうそうだ
「…村人?」
男性の話を聞いていたところで草間武彦が怪訝そうな顔で問いかける。
「はい…大量虐殺は…一つの村の人間が全て殺されてしまったのです」
よくもそんな山を買う気になったものだ、草間武彦は口にはしなかったが心の中で毒づいた。
「でも…あの山にはオマモリサマがいるんです」
「…オマモリサマ?」
「はい、白髪で少年の姿をしていると言われてます。村人が殺された村の名前もオマモリサマの名前を取って
ハクリの村と呼ばれていたそうです」
「ハクリの村、ねぇ?」
その男性の依頼は亡者となってしまったマヨイビトたちの霊を沈めてほしいというものだった。
「よろしくお願いします」
そう言って男性は頭を下げて草間興信所を出て行った。
「午前二時に現われるマヨイビトか…」
偶然、その場に居合わせた貴方だったがその依頼をどう解決しますか?
視点⇒佐久間・啓
今回の事件を受ける事になったのは本当に偶然のことだった。
草間か興信所に行った所、依頼人と草間が話しているのを聞いてしまった。
「その事件、俺に任せてもらえねぇか?」
依頼人が立ち去った後に草間に啓は申し出た。草間は最初からその気だったみたいで資料を無言で渡してきた。
啓は資料を受け取ると簡単に目を通す。虐殺事件が今回の事件を生んだのならば、何かトリックのようなものが存在するはず。そう考えた啓は「んじゃ、行ってくるわ」と行って草間興信所から出ようとした、が…草間に引き止められた。
「何?」
「何か感づいたのか?」
草間の言葉に啓はフッと笑うと「いや?」と言葉を返した。
「だけど、幽霊の正体見たり枯れ尾花ってよく言うだろ?」
啓はそれだけ言い残すと、草間興信所を後にした。
とりあえず、そう呟きながら啓が向かった先は自分が所属する会社。弱小な会社だが、様々な事件記事を書いてきたのだから、今回の事件のモトになった虐殺事件についてもきっと調べているだろう、そう啓は考えた。
「ビンゴ」
会社に着いてすぐに啓は資料庫に向かい、探している記事をあさり始めた。大量の資料が存在する部屋の中で一時間くらいを過ごした頃に目的の資料を手にした。
「えぇと…」
資料に溜まっている埃を払いながら啓はファイルをパラパラと捲り始める。相当昔の資料なのか、中の紙はかなり黄ばんでいる。
「………………オマモリサマは人間だったのか」
ある程度まで読み、啓がポツリと呟く。
資料を読み、分かった事、それはいくつか存在した。
まず、ハクリの村という場所では数十年に一度、白子症の子供を「オマモリサマ」と崇めていたということ。
そして、虐殺の十数年前までは存在していたという事。
分かったのはこれだけだった、いや…これだけでも結構情報を得た方なのかもしれない。後は問題の山に登って真相を確かめるだけ。
「とりあえず、一夜を明かす覚悟で行かないとな」
啓はそう言うと、寝袋とテントを持って車に乗り込んだ。
そして、数時間後…問題の山に着いた頃にはもう辺りは真っ暗だった。
人里から離れているという事もあって、物音一つしない不気味な雰囲気を醸し出していた。
「さて、ここらでいいか」
ドス、と荷物を降ろし、テントを張る。そして寝袋で寝て二時を待つ……というのはオトリ作戦だった。
こうして、人がいるということを強調していれば向こうからやってくる、と啓は考えた。
「そろそろか」
小さくそう呟いて木の影から見ているとヒタヒタと歩いてくる足音に気がつく。その足音がこちらに向かってきている事に気がついた啓は息を潜め、テントの方に視線を向けた。
「…デテイケ、デていけ…コこは…ワタしの…ムらだ…デテイケェェエェェッ!!!」
そう叫ぶと同時にテントの中に入り、ソレは寝袋に尖った枝を突きたてた。
「動くな」
ソレが寝袋に枝を突きつけると同時に啓もソレにナイフを突き立てた。少々荒っぽいやり方とは思ったが、相手は何人も殺している殺人鬼、これくらいしないとこちらの身が危ない。
「…ガ、ァ…でて、いケ…」
ソレの正体を見た啓は驚きで目を見開かせた。驚くのも無理はない。
なぜならソレの正体は…――。
「…老人?」
そう、啓の目の前にいるのは紛れもなく老人、言い方は悪いがはっきり言ってもう長くは生きられないくらいの老人だ。
しかも、驚くのはもう一つあった。
「……白い髪…?」
このくらいの老人に白髪は当たり前かもしれないが、少しキラキラとするそれは最初から白い髪の持ち主だからだろう。
「…まさか、この村の最後に生まれたオマモリサマ?」
オマモリサマという存在がこの虐殺事件があった時、子供だとしたら老人のような年齢だろう。
「ムらカラ…デテいけ、でて、いけ…」
その言葉しか知らないかのように老人は繰り返す。
そこで一つの仮説を啓は立ててみた。
虐殺事件ともなれば、村の人間はまず自分達の村を守る存在、つまり「オマモリサマ」を必死で守ろうとしたのかもしれない。
あるものは「オマモリサマ」がまだ子供だからという理由で。
またあるものは「オマモリサマ」さえ生き残れば自分達は助かるという浅ましい理由で。
村の人間がどちらの理由で「オマモリサマ」を助けようとしたのか、それは当事者のいない今となっては分かるはずもない。
だけど、一つだけ変わらない事がある。
村人が選択したその行動は今は老人だけれど、一人の人間を壊してしまったのだろう。
村を守るためと言いながら、目の前で自分を守るために死んでいった村人を見て、「オマモリサマ」は何かがキレてしまった。
そのせいで発狂した「オマモリサマ」は村に近づくもの全てを敵とみなし、殺していたのだろう。山を訪れる人間と、村人を殺していった強盗たちとの境界線を失ってしまいながら。
「おい、じーさん…」
何も声がしなくなったことを不思議に思った啓が老人の方に向き直ると、老人は地面に倒れて死んでいた。その瞳には涙を浮かべて。
「…この爺さんも…村に憑かれた亡者だったのかもな」
ポツリと呟いて、啓は村の方を見る。
「もしかしたら、村人もオマモリサマでさえも真の犯人に気がついていなかったのかもな。村そのものがもしかしたら………いや、確証のない事は口にしないほうがいいな」
フッと笑い、啓は山を降りた。
その後、マヨイビトが現われたという噂はぱったりと消えた。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1643/佐久間・啓/男性/32歳/スポーツ新聞記者
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■ ライター通信 ■
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佐久間・啓サマ>
まず始めに、納品が遅くなって申し訳ございません!
締め切り本当にギリギリになってしまいました…。
体調を崩したり、色々とあって…(イイワケ……。
でも、精一杯頑張って書かせていただきました。
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです^^
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^
−瀬皇緋澄
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