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【 厄日な一日 】
―あらすじ!―
ちょっとした気の迷いで禁忌の術に手を出した宇奈月・慎一郎(うなずき・しんいちろう)
おでんを媒体に死者をよみがえらせようとして――
あれれ!?おでんが色んな家具や本を吸収して巨大なモノに?!
家が壊れてもう大変!
慎一郎は、仕方なく自分が作り出してしまった巨大なモノをおでんへと変え、食べてしまったのである
―以上、あらすじ終わり!――
「―――何なんでしょう、今の声は?」
ソレは気にしないほうがいいことだよ、慎一郎君
「そうなんですか、じゃあ気にしないことにします〜」
何もない空間と喋る慎一郎
周りが怪しげな目で見てますよ
「おっと・・・そうだ、魔道書魔道書!」
慌てて近くにあった古本屋へと足を踏み入れる慎一郎
ぐるぐるとそれらしい本を探し、棚を見て回る
「う〜ん・・『根暗な未婚』は何処でしょうか――?」
ちなみに『根暗な未婚』とは、慎一郎が探している魔道書である
怪しいタイトルだが、『この世界と違う存在のついての考察、あるいは召喚法に付いて書かれたもの』っぽいらしい
ちなみに、前に持っていた本は、あらすじの件で、おでんへと変えてしまった
それだけなら、まだ魔道書へと戻せばよかったものの――
今や、全てのおでん(魔道書)は慎一郎の腹の中
気づけば後の祭り、食べてしまったものは戻せないのである
「もう少し気をつけていれば―――」
あぁ、でもおでん!
おでんを目の前にして我慢できる方がおかしいのだ!
( I LOVE ODEN !! の僕に我慢できるはずがないんです!!)
と、自分で自己完結して再び魔道書探しへと意識を戻らせる慎一郎
食べてしまった魔道書の祟りが怖そうだが、今は補填優先なのである
「う〜む、此処にはなさそうですね〜」
仕方なく古本屋を出て、新たな本屋を探す慎一郎
まぁ、魔道書なのだから簡単に見つかる方がおかしい
しかも、歩いている前を黒猫が横切ったり
鴉がこっちを見て(睨んで)いたり
靴紐がいきなり切れたり
あからさまに『今日の運勢は駄目っぽい』といわれているような感覚に陥る
しかし、頑張れ、慎一郎
負けるな、慎一郎
「あぁ、妖精さんが僕を応援してくれています〜」
はたから見ると怪しいとしか思えないことを呟きながら、歩き回る慎一郎
別の本屋を見つけ、足を踏み入れる
しかし、やはりお目当ての本は見つからない
もう一軒
またまたもう一軒
更にもう一軒
っと、いくら本屋を回っても『根暗な未婚』が見つからない
随分遠くまで歩いてきてしまい、もう日が傾いてきてしまった
「もうこんな時間ですか・・どうしましょう?」
眉を漢字の「八」のように下げ、どうしたものかと考え込む
「ん?あれは―――?」
――ふと、一軒の店へと視線が吸い寄せられる
どうも古びた怪しい店だが、飾ってあるのは本らしい
「あれは・・本屋さんでしょうか・・。よし、行ってみましょう!」
足早にその本屋へと足を踏み入れる
「こ、これは――!?」
入った途端、生唾をごくりと飲み込む
その本屋の棚に並んでいるものは、『魔物の咆哮』『黄衣の王』『ソロモンの鍵』等の魔道書ばかり
まるでパラダイスのような感じである
「おや?あれは・・碇さん?」
別の棚で何かを探しているように、白王社月刊アトラス編集部編集長の碇・麗香(いかり・れいか)が佇んでいた
「何をしているんでしょうか――?」
「お客さん、探し物かい?」
「え?えぇ、少し・・・あなたは、此処の店長さんですか?」
「あぁ、いかにも」
黒い帽子と黒いコートで身を固めた男はこっくりと頷く
「まぁ、色々見てってくださいな・・色々ありえない場所ですからねぇ」
「え・・・?」
慎一郎が首をかしげるのを見て、クックックッと怪しげな笑いをこぼす店長
「何せ此処は・・・・・な世界だからねぇ」
一部聞き取れなかった怪しげな呟きを残して、店の中へと引っ込んでしまう店長
「な、何なんでしょうか・・・っと、早く探さなきゃ夜になってしまいますね」
歩き出し、色々と本を物色する慎一郎
「おや、これは珍しい存在だねえ。魔術師なのに正当な魔術を用いない変り種だ」
「なるほどなるほど・・・我々の世界の法則すらこの場では意味を失うのか、恐ろしや恐ろしや」
「ああ、楽しいね、楽しいだろうともさ。この世界では永遠に星辰の位置など揃わぬだろうさ」
ぶつぶつと小さな声が部屋に満ちる
ざわざわ、ぶつぶつ
まるで魔道書が喋っているようだ
しかし、本探しに集中している慎一郎には聞こえない
「えーっと・・『小鍵書』・・『銀の門を超えて』・・」
ぐるぐると棚の間を歩きまわり――
ついに、碇が佇んでいる棚へと足を踏み入れた
それでも、慎一郎は本探しに夢中で声にも碇にも気づかない
「うーんと・・『根暗な未婚』・・『根暗な未婚』は・・あ、あった!!」
すっと手を伸ばした先には――鬼のような形相の碇がいた
「だーれーがーな根暗な未婚ですってーーーー!!!!!」
どっかーーーん!と怒りが爆発したように、叫ぶ碇
「えぇええええ!?違います、決して碇さんの事じゃ!?」
「えぇい!お黙り!」
「ひぇええ!?ぼ、僕はただ本を――うわぁあああああああああああ!?」
ドカバキグッシャングルグルポキン☆
―――ただいま、お見苦しい場面が展開されているのでしばらくお待ちください・・
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・
「な、何でこうなるんでしょうか・・?」
ぷらーんっと木に逆さに吊られた慎一郎(引っかき傷や殴られたらしい箇所がところどころある)がほろりと涙を流す
本屋もいつの間にかその姿を消し、そこには空き地と吊られた慎一郎のみが存在している
「今日は厄日でしょうかね・・それとも・・祟り?」
ぷらぷらと吊るされたまま考え込む慎一郎
クスクス、クスクス
どこかで笑いながら吊るされている慎一郎を見つめている男が1人
あの本屋の店長である
クスクス、クスクス
笑いながら、ふんわりと姿を消した
その跡に残ったものは――『根暗な未婚』と書かれた本だった
皆さん、魔道書は大切にしましょうね?
【厄日な一日――END】
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